DDCB-12123 | 2024.10.23 Release | 3,000 Yen+Tax Released by AWDR/LR2
収録曲:
01. Movie Light (My Favorite Things Ver.) 02. Synergy (My Favorite Things Ver.) 03. 目の下 / All My Feelings are My Own (My Favorite Things Ver.) 04. うつむき / Look Down (My Favorite Things Ver.) 05. 白い椅子 / Sitting (My Favorite Things Ver.) 06. Kizaki Lake (My Favorite Things Ver.) 07. Side Step (My Favorite Things Ver.) 08. Reebok (My Favorite Things Ver.) 09. 素直 / Selfish (My Favorite Things Ver.) 10. Your Favorite Things (My Favorite Things Ver.)
このアルバムは、盟友であるダニー・ブラウンの昨年の最新作『Quaranta』に部分的に触発を受けたような作品である。序盤ではドラムのアコースティックの録音を織り交ぜ、不可解で予測不能なアブストラクトヒップホップが繰り広げられる。「i scream this in the mirror-」では、ノイズやロック、メタルを織り交ぜ、80年代から受け継がれるラップのクロスオーバーも進化し続けていることを感じさせる。メタル風のギターをサンプリングで打ち込んだりしながら、明らかにスラッシュ・メタルのボーカルに触発されたようなハードコアなフロウを披露する。そして、断片的には本当にハードコアパンクのようなボーカルをニュアンスに置き換えていたりする。ここでは彼のラップがなぜ「Dope」であると称されるのか、その一端に触れることができる。
今回、JPEGMAFIAは、ダブ的な技法をブレイクビーツと結びつけている。そして、比較的ポピュラーな曲も制作している。「I'll Be Right Time」では、 背後にはEarth Wind & Fireのようなディスコ・ファンクのサンプリングを織り交ぜ、まったりとしたラップを披露する。そして、ブラウンと同様に、JPEGMAFIAのボーカルのニュアンスの変化は、玄人好みと言えるのではないだろうか。つまり、聴いていて、安心感があり、陶然とさせるものを持ち合わせているのだ。これは実は、70、80年代のモータウンのようなブラックミュージックと共鳴するところがある。
そして続く「it's dark and hell is hot」では、イントロにおいてドゥワップのコーラスをなぞられている。しかし、その後、何が始まるかといえば、ゲームサウンドに重点を置いたようなラップである。そしてそれらのイントロのモチーフに続いて、シュールな感じのヒップホップを展開させる。
このアルバムの中盤には、いわゆるアブストラクトヒップホップ、そして、ニューヨークドリルの最も前衛的で過激な部分が出現する。ロサンゼルス/コンプトンのラッパー、Vince Staplesをゲストに招いた「New Black History」では、英国のモダンなエレクトロニックと多角的なリズムを織り交ぜたダブステップ以降のヒップホップを制作している。
ここでは、彼自らがブラックミュージックの新しい歴史を作るといわんばかりの覇気を込めて、ミュージックコンクレートやサンプリングを織り交ぜながら、刺激的なヒップホップの雛型を丹念に構築していく。「don't rely on other man」では、JPEGがアクション映画にあこがれているのではないかと伺わせるものがある。そしてブレイクビーツを生かしたビートやラップは、悪役の活躍するハリウッドのアクション映画のワンシーンを聞き手の脳裏に呼び覚ます。この曲では彼のラップが最もシネマティックな表現性に近づいた瞬間を捉えることができるはずだ。
JPEGMAFIAはどうやら、ギターロックやハードロックがかなりお好きなようである。実際的には80年代のギターヒーローの時代のメタリカ、アンスラックス、その周辺のハードロック/メタルからの影響を感じさせることがある。しかし、そうだとしても、やはりこのアルバムでは先鋭的なヒップホップのサウンド加工が施されると、「vulgar display of power」のように前衛的な響きを帯びる。そして近年のハイパーポップやエクスペリメンタルポップをラップという領域に持ち込むと、このような曲になる。ここでは彼のバックグランドにあるフレンドシップの感覚がパワフルなコーラスに乗り移る。そしてそれらのコーラスが熱狂的なエナジーを発生させる。ここまでを『I Lay Down My Life For You』の前半部とすると、続く「Exmilitary」から第二部となり、その音楽性もガラリと変化する。中には、ビンテージなソウルとブレイクビーツを組み合わせたデ・ラ・ソウルの系譜の古典的なヒップホップに傾倒している曲も含まれている。
このアルバムは、アブストラクトヒップホップとして複雑化した音楽の側面も内包されるが、その一方で、簡潔さという、それとは対極にある要素もある。そして、音楽を聞き進めていく内に、閉鎖的な感覚であったものが徐々に開けてくるような感覚がある。「either on or off the drugs」は古典的なソウル、もしくはネオソウルとして聴いても秀逸なナンバーである。女性ボーカルの録音を元に、ライオネル・リッチーやジャクソン、そしてホイットニー・ヒューストンの時代の愛に満ちあふれていたソウルの魅力を、彼はラップで呼び起こす。ラップのニュアンスも素晴らしく、こまやかなトーンや音程の変化には、ビンテージソウルの温かさが込められている。オーティス・レディングが現代に転生し、ラップしはじめたようにファンタスティック。続く「loop it and leave it」では、ピアノのサンプリングを断片的に配して、ミニマルミュージックをベースにしたヒップホップへと昇華させる。すでにフランク・オーシャンが行った試みだが、この曲では「Flllow me」というフレーズを通してアンセミックなフレーズを強調している。これは必ずしもJPEGの音楽がレコーディング・スタジオにとどまるものではないことを示唆している。つまり、ライブやショーケースでのパフォーマンスで生きるような一曲である。
そして、アルバムのクライマックスにも聴きどころがしっかり用意されている。「Don't Put Anything on the Bible」では、最近のイギリスのヒップホップやクラブ・ミュージックと連動するように、フォーク音楽やクラシック音楽の領域に近づいている。それはカニエ・ウェストと同じように、クワイア(賛美歌)のような趣旨が込められているが、曲そのものがスムースで、透徹したものがある。表現そのものに夾雑物や濁りのようなものがほとんどない。これが参加したBuzzy Leeの美しいボーカルの持つ魅力を巧みに引き立てているように感じられる。曲の後半では、トリップ・ホップに触発されたようなクールなラップミュージックが展開される。
アルバムの最後でも、JPEGMAFIAは、これまでに経験したことがなかったであろう新たな音楽にチャレンジする。「i recovered from this」では、メディエーションの音楽を元に、これまで芸術と見なされることが少なかったヒップホップのリベラルアーツとしての側面を強調している。このアルバムを聴くと、ラップの固定概念や見方が少し変わる可能性がある。そして、音楽でそれを試みようとしていることに、アーティストの素晴らしい心意気を感じることができる。
このアルバムについて、ビリー・コーガンはプレスリリースでこのように語っている。「この新しいアルバムを書くにあたって、私は『二度と家には帰れない』というよく知られた公理に興味を持った。この新しいアルバムを制作するにあたって、よく言われる "You can't go home again. "という格言に興味を持ったんだ。感傷に浸って過去を振り返るのではなく、むしろ前進するための手段として。成功と失敗のバランスの中で、1990年から1996年頃の私たちの音楽の作り方が、まだ何か啓示的なインスピレーションを与えるかどうかを確かめるためにね」
2006年に自主リリースした『Views/Octopus EP』(このEPのトラック「Aquarium」は、後にラッパーのキッド・クーディが「Man on the Moon」のベースとして使用した)に続き、2009年にはケヴのAlpha Pupインプリントと契約し、フルレングスのデビュー作『Drift』を発表した。また、MCのBusdriverやNocandoにビートを提供し、Flying Lotus、The xx、Daedelus、Radiohead、Smell staples Healthのリミックスも手がけている。
Jacques Greene:
ボーカリストのKaty B、Tinashe、How To Dress Wellのプロデュースや、Radiohead、Flume、Rhye、MorMorのリミックスを手がける。その一方、Givenchyやカルト・デザイナーのRad Houraniとのファッション・コラボレーション、ロンドンのテート・モダンをはじめとするアート施設とのコラボレーションなど、活動の幅を広げている。
ジャック・グリーンのきらめくオリジナル・プロダクションには、ジャンルを定義する「Another Girl」がある。その後、LuckyMeから'On Your Side'、'Phantom Vibrate'、'After Life After Party'などのEPをリリースし、アメリカ、カリフォルニア、イギリス、EU、アジアを回るワールドツアーを行い、ジュノー賞3部門にノミネートされた。「Feel Infinite」(2017年)と「Dawn Chorus」(2019年)の2枚のアルバムをリリースしている。
2019年以降も、グリーンの勢いは止まらない。2021年にリリースした『ANTH01』は、モントリオール時代からの彼の進化を示す、初期のレア音源集だ。このアルバムには、ディープ・カットに加え、"Another Girl "や "The Look "といったクラブ・ミュージックのヒットナンバーも収録されている。
「Guess」は、ニュージーランドのシンガーLordeとの「Girl, so confusing」、Yung LeanとRobynとの「360」、Addison Raeとの「Von dutch」に続き、最新アルバム『BRAT』の最新リミックス曲となる。『Brat』は先日、発表されたマーキュリー賞にノミネートされたばかりだ。
「Guess」
カルフォルニア/オレンジ・カウンティのメロディックパンクバンド、Offspring(オフスプリング)がニューシングル「Light It Up」をリリースした。この曲は、コンコード・レコードから2024年10月11日にリリース予定のアルバム『SUPERCHARGED』に収録される。メタリカの『Ride The Lightning』を意識したようなアルバムのアートワーク/タイトルがとてもユニークだ。
「Light It Up」は、彼らの代名詞である疾走感のあるテンポとシャウトするようなメロディーを持つポップ・パンクである。メロディック・パンクのパイオニアであったザ・オフスプリングの初期に戻ったような熱狂的なナンバー。ヴォーカルのデクスター・ホランドは、この曲で、「背中にロケットを背負っている」と歌い、「良い人であることにうんざりしている」と主張し、バンドは曲の爆発的なクライマックスに達するにつれ、エネルギー・レベルを高めていく。
「『Light It Up』もそんな雰囲気だと思う。あなたはとてもうんざりしていて、でも何かやりたいと思っている。それは、私がパンクロックについて常に愛してきたことのひとつだ。パンク・ロックは常に、自分の攻撃性を吐き出すためのものだったし、それは今でも同じだと思う。僕は今でもそういう曲を書くのが大好きなんだ」
『SUPERCHARGED』はオフスプリングの11枚目のアルバムで、10月11日に発売される。彼らは6月上旬に新譜の発表と同時に、パワーポップ/ジャングル・ポップ調のシングル「Make It All Right」を発表している。
一方、オフスプリングの2024年ツアー・スケジュールには、Riot Fest、Louder Than Lifeなど、主要なパンク・フェスティバルへの出演がのこされている。以下からニューシングルをチェックしてみよう。
今年に入り、Luby Sparksは単独のシングル「Stay Away」、ニューヨークのカレン・O率いるYeah Yeah Yeahsのカバーソング「Maps」を発表後、新作EP「Songs for The Daydreamers」をリリースした。この最新EPでは、彼らのルーツであるシューゲイザー/インディ・サウンドに立ち返っている。EPのリリース情報と合わせて下記よりチェックしてみよう。
10月にはタイ・バンコクでの海外公演を行い、2023年3月17日より、NY、ボストン、フィラデルフィア、サンフランシスコ、シアトル、サンディエゴ、LAの全7都市にて「US Tour 2023」、9月には中国「Strawberry Music Festival 2023」を含む全7都市「China Tour 2023」、10月には韓国のストリートカルチャー・コンベンション「FLOPPY 1.0 - Let’s FLOPPY」、11月にはインドネシア「Joyland Festival」へ出演。海外での展開も積極的に行なっている。現在の最新作は2024年5月にリリースした4曲入りEP「Songs for The Daydreamers」。
Weekly Music Feature - april june マドリッド発 インディーポップのニューウェイブ
ストリーミング再生数でアーティストの人気が左右される現代の音楽業界。そしてジューンは現代のストリーミングのトレンドの波を上手く乗りこなしている。エディトリアル・プレイリスト、ローファイ・ミックスに登場し、音楽のエモーショナルな重厚さでリスナーを魅了する。2022年ヨット・クラブがアシストしたシングル "Stuck On You "は、1400万以上のSpotifyストリーミングを獲得し、"biking to your house "や "summer bruises "といった楽曲がその記録に続く。
EPのオープナー「baby's out of luck again」では、キラキラとしたギター、シンセによるレトロなマシンビート、シーケンスを散りばめ、シンセ・ポップのノスタルジックな印象を押し出している。音楽の構成は至ってシンプルだが、個性的な性質を添えているのがボーカル及びコーラスワークだ。リバーブとディレイを多角的に施し、空間性を作りだし、いわばレコーディングスタジオのアンビエンスを生かしたポップスを構築している。ジューンのボーカルは、少しファンシーな感覚を意識しているが、それは不思議とひけらかすような感じにはならない。70年代/80年代のソフィスティ・ポップのような純粋さと清涼感のある印象すら覚えることもある。
しかし、『baby's out of luck again』は、なぜなのかはわからないが、ファンシーなのに地にしっかりと足がついている。これは、アーティストが永遠の命を持たないことの代償として与えられたパトスなのか。いつ枯れてしまうか分からない。けれど、花が美しいかぎり咲き誇ろうとする生命の美しい本質を体現している。言い換えれば、音楽の神様であるアポロン(Apollon)は、いつも才能を付与すべき人間を見定めていて、そして、かなり厳しい目で選別しているのである。
以後、EPの自体は、目眩くワンダーランドのような感覚が奥行きを増し、音楽の持つ空間性を押し広げていこうとする。続く、「it's all my fault」は、親しみやすいボーカルのフレーズをもとに、ダンサンブルなシンセ・ポップを構築している。メインボーカルとコーラスワークにおいて、エイプリル・ジューンは、一人で二役を演ずるかのように、異なる雰囲気のボーカルを披露している。
ドリーミーなシンセポップは以降も続く。「pretty like a rockstar」は、Beabadoobeeのデビュー作と共鳴するものがあり、ベッドルームポップアーティストから見たロックスターへの憧れを表する。これらの理想的な自己像を見上げ、それを夢見がちに歌うような姿勢は、一般的なリスナーの心にも響く何かがあるかもしれない。マシンビートのリズム、そして、レトロなシンセの音色は、2010年代のシンセポップの最初のリバイバルを想起させるが、現代的なTiktok、Yeuleのサブカルチャーやナードな文化への親しみのような感覚が、キラキラした印象を曲に付与する。そしてやはり、オートチューンを部分的に掛けることにより、デジタル・ポップの最新鋭の音楽をアップデートさせ、ベッドルームポップやハイパーポップの次なる世代の音楽に直結させる。ガーリーでファンシーなイメージを突き出した、ソフトな感覚を持つポップネスへ。
しかし、このEPの魅力は、2020年代のYeuleのような新しいタイプのポップだけにとどまらない。その中には、米国のポピュラーシーンと連動しながら、ノスタルジックや古典的なものに対する親和性も含まれている。「sweeter than drugs」は、どちらかといえば、ニューロマンティックのようなサウンドに依拠している。2020年代の並み居るベッドルームポップアーティストが最新のポップスを書こうとする意識を逆手に取り、それとは反対に古典的なポピュラーへと潜り込む。特に、クラシカルやビンテージに対する憧憬というのは、ミドル世代以上のミュージシャンよりも、若い年代のミュージシャンに多く見受けられる傾向である。自分が生きている間に生み出されなかったもの...…。それらに何らかの不思議な魅力を感じるのは当然のこと。また、音楽そのものは、十年、そして数十年だけで語り尽くせるものではないのだから。
電子音楽をベースにしたポップスであるため、無機質な印象を覚えるかもしれない。しかしながら、このEPの音楽は、シンセポップとしての淡いエモーションが全編に揺曳している。どういうわけか、クローズ「carry you on my broken wings」では、音楽から温かいエモーションが微かに立ちのぼってくる。これぞ人工知能では制作しえない人間の手によるエレクトロポップの真髄だ。軽く聴きやすい清涼感のあるポップス、夢想的なテーマを織り交ぜた最新EPを足がかりにして、マドリッドのシンガーは今後、より大きなファンベースを獲得することが予想される。
85/100
「carry you on my broken wings」
* april juneの『baby's out of luck again』EPはNettwerkから本日発売。ストリーミング等はこちらから。
『All Your Favorite Bands』が米ビルボード・フォーク・アルバム・チャートで1位、ロック・ア ルバム・チャートで4位を獲得するなど世界的にも大きな評価を受けている。ジャクソン・ブラ ウン、ジョン・フォガティらのバック・バンドやボブ・ディランのツアー・サポートを務めるなど卓 越した演奏力も魅力のバンド。2022年にはフジロックのField of Heavenのトリを務め会場 を盛り上げた。2023年には初の単独公演を行うなど日本にも熱狂的なファンを持つ。
Sub Pop所属のシンガーソングライター、スキ・ウォーターハウス(Suki Waterhouse)がニューシングル「Blackout Drunk」を公開した。近日発売予定のアルバム『Memoir of a Sparklemuffin』に収録。シンセサイザーをベースにした軽快なダンス・ポップで今年の夏を決定付ける。
5人組は「Mob DLA」で新時代を幕開けを告げた。ダンスフロアの推進力とスタジアム・ロックのアンセムを行き来する新曲「Mind's A Lie」でも、感情を揺さぶる、社会政治的なメッセージは続いている。
サウス・ロンドンのプロデューサー/DJであるエル・マーフィーのヴォーカルと、リード・ヴォーカルのグラハム・セイルの擦れたヴォーカルが並置されたこのトラックは、ハウスやガレージを連想させる一方、過去のアルバム(2019年の「No Sense No Feeling」や2022年の「Blending」)のパンク・ポエティックな感触を保持している。憤懣やる方ない気持ちもHigh Visの手にかかるや否や、ストリートの匂いを吸い込んだ魅惑的なポストパンクへと変化してしまう。
「Mind's A Lie」は、ウェールズのムーブメント・アーティスト、セム・オシアンを主演に迎え、マルティナ・パストーリが脚本・監督を手がけ、サウス・イースト・ロンドンで撮影されたシネマティック・ビデオとともに到着した。ストリート・レベルの硬質なビジュアルは、階級格差、孤立、孤独を探求するアルバムに命を吹き込んでいる。