Yaeji
Guarionex-Rodriguez Jr.


Yaejiは、その親しみやすいキャラクターに目を奪われがちだが、実際のライヴステージではメガスターのように変貌する。そのギャップが魅力だ。昨年、実質的なデビュー・アルバムをXL Recordingsから発表後、ニューヨークの街角の新聞販売店の売り子になっておよそ一年が経ち、ヤエジが2024年最初のシングル「booboo」をリリースした。(ストリーミングはこちら

 

ニューヨーク経由のソウルのシンガー・プロデューサーである彼女は、Brooklyn Mirageで行われたBoiler Roomのセットでこの曲をファンの目の前で初披露した。以下からチェックしてみよう。


この曲についてヤエジはこう語っている、『raingurl』からの圧倒的な注目に押され、私はクラブ、ダンスミュージック、アンダーグラウンドシーンから離れた。そして、DJとして成長し、自分のレーベルを立ち上げ、過激で安全な空間を作りながらパーティーを開き、楽しんでいる姿を目の当たりにしてきた親しい友人たちと、彼らのチアリーダーでいることがとても楽しかった」


YaejiのデビューLP『With a Hammer』は2023年4月7日にXL Recordingsからリリースされた。



「booboo」

 

Floating Points
Floating Points

Floating Points(フローティング・ポインツ)ことサム・シェパードは、新曲「Ocotillo」を発表した。次回作『Cascade』からのリードカット「Key103」に続くこの曲では、ミリアム・アデフリスがハープを、サム・シェパードが大叔母から受け継いだというクラヴィコードを演奏している。

 

この曲には、東京を拠点に活動するビジュアル・アーティスト、中山晃子さんによる「生き生きとした絵」が添えられている。中山さんの映像はいつも独創的だが、今回も作風とリンクするような形となっている。


『Cascade』は9月13日にNinja Tuneからリリースされる。以前紹介した「Birth4000」と「Del Oro」も新作に収録されている。

 

 

 「Ocotillo」

京都出身のドリームポップ・アーティストCuusheの新作「Faded Corners」に注目。 Daughter x 木村和平による写真集「湖 Awaumi」のために書き下ろしの新曲をリリース!

cuushe
cuushe

エアリーで魅惑的なボーカルと夢幻的なサウンドスケープで知られる京都出身のアーティストCuusheが、アルバム「WAKEN」以来となる新曲「Faded Corners」をリリースした。この曲は9月13日に発売される新作EPのタイトル曲。下記よりテースターと配信リンクをチェック。


高円寺の古着屋 ”即興/SOKKYOU”のオンラインショップ ''Daughter''と木村和平による写真作品「湖 Awaumi」のために子守唄として書き下ろされたこのシングルは、梁塵にフォーカスした作品であり、平安時代末期に編まれた歌謡集『梁塵秘抄』の名歌「遊びをせんとや〜」からインスピレーションを受けたドラマチックな1曲。


韓国のエレクトロニックデュオ''Salamanda''、''Asatone''でも活躍するインドネシアのプロデューサーMelati ESPによるダンサンブルなリミックス、日本人エレクトロニカ・アーティスト''aus''によるアンビエントなリアレンジと、銘々の個性を活かした3曲も収録されている。CD盤には1曲が追加収録。



 

 

■ Cuushe - Faded Corners


レーベル: FLAU

タイトル:Faded Corners

アーティスト:Cuushe

CD発売日:2024年9月13日


tracklist:

1. …

2. Faded Corners

3. Tsuki to Sakana

4. Salamanda Remix

5. Melati ESP Remix

6. aus Reprise


配信・予約リンク:  https://cuushe.lnk.to/FadedCorners


■ Cuushe



ゆらめきの中に溶けていくピアノとギター、 空気の中に浮遊する歪んだシンセサイザー、拙くも存在感ある歌声が支持を集める京都出身のアーティスト。


Julia Holter、Teen Daze、Motion Sickness Of Time Travelらがリミキサーとして参加したEP「Girl you know that I am here but the dream」で注目を集め、デビュー作収録の「Airy Me」のMVがインターネット上で大きな話題となる中、全編ベルリンでレコーディングされた2ndアルバム 『Butterfly Case』が海外で高い評価を獲得。


近年はアメリカTBSのTVドラマ「Seach Party」、山下敦弘 x 久野遥子による「東アジア文化都市2019豊島」PVへの音楽提供や、Iglooghost、Kidkanevil、Et Aliaeらの作品にボーカル参加。


長らく自身の音楽活動からは遠ざかっていたが、2020年に新たなプロジェクトFEMと共に再始動。3rdアルバムとなる「WAKEN」を発表し、リミックスアルバムにはYu Su、Loraine James、Kate NV、Suzanne Kraftら多彩なアクトが参加した。

 

Amyl & the Sniffers

Amyl & the Sniffers(アミル&ザ・スニッファーズ)は、10月25日にラフ・トレード・レコードからリリースされる3作目のアルバム『Cartoon Darkness』を発表した。このアルバムには、以前シェアされたトラック「U Should Not Be Doing That」とニューシングル「Chewing Gum」が収録されている。アルバムの詳細は以下から。


「Chewing Gum' 」についてエイミー・テイラーはこう語っている。


「人生の逆境とは、決して満たされることのない欲望です。皿洗いをしながらも、決して食事をすることはなく、近くにいながら決して十分ではなく、若さという無知を奪われながらも、それを謳歌しようとする。喜びに身を委ね、ビジョンに身を委ね、自分自身の力で、論理ではなく感情に基づいて決断を下すことが解放につながるからだ。外的な地獄にもかかわらず、炎をくぐり抜け、無傷で立ち去る。人生は仕事であり、人生は自由ではない。最終的なゴールが存在しない以上、十分に働くことはできない」


2021年の『Comfort to Me』に続くこの作品は、2024年初頭にロサンゼルスのフー・ファイターズの606スタジオで、プロデューサーのニック・ロウネイとともにレコーディングされた。カートゥーン・ダークネス』は、気候危機、戦争、AI、政治という卵の殻の上でつま先立ちをすること、そして、現代の神であるビッグ・テックのデータ獣を養っているだけなのに、オンラインで声を上げることで助けているように感じる人々について歌っているんだ」とテイラーは説明した。「私たちの世代は、匙で情報を与えられている。私たちは大人のように見えるが、いつまでも殻に閉じこもった子供なのだ。私たちは皆、受動的に、喜びや感覚や喜びを引き起こすこともなく、ただ無感覚を引き起こすだけの気晴らしを飲み込んでいる」


彼女は続けた。「カートゥーン・ダークネスは、未知の世界へ、恐ろしいと感じながらもまだ存在すらしない、迫り来る未来のスケッチへと真っ向から突っ込んでいく。子供のような闇。中途半端に悪魔に会ったり、今あるものを嘆いたりしたくない。未来は漫画であり、処方箋は暗いが、それは斬新なものだ。ただのジョークだ。ジョークだ」


「Chewing Gum」




Amyl & the Sniffers 『Cartoon Darkness』


Label: Rough Trade
Release: 2024年10月25日


Tracklist:

1. Jerkin’
2. Chewing Gum
3. Tiny Bikini
4. Big Dreams
5. It’s Mine
6. Motorbike Song
7. Doing In Me Head
8. Pigs
9. Bailing On Me
10. U Should Not Be Doing That
11. Do It Do It
12. Going Somewhere
13. Me And The Girls

Best New Tracks-  Laura day romance 「渚で会いましょう」(August Week 4)

Laura Day Romance
Laura Day Romance
 

東京のインディーフォークバンド、Laura day romanceがニューシングル「渚で会いましょう」を8月21日にリリースした。

 

前作「透明」が全国パワープレイを獲得するなど、さらに存在感を増すローラズの現在のスタンスを示すような新曲が完成。すでに昨日のデジタル配信に続いて、同曲のミュージックビデオも同時公開された。バンドのメンバーのコメントも下記よりお読みいただくことができます。

 

また、Laura day romanceは8月31日に泉大津で開催される「RUSH BALL 2024」に出演し、東京と大阪公演を来月に開催する。続いて、バンドは全国ツアー「Laura day romance tour 2024 crash landing」を控えている。このツアーは10月6日の札幌 cube gardenの公演を筆頭に、11月7日のZEPP Shinjukuで締めくくられる。ツアーの詳細については下記よりご覧ください。


Laura day romanceは、国内外のミュージックラバーにファンを広げる日本のバンド。鈴木迅が作り出す幅広い音楽性の楽曲と、井上花月の世界観のあるヴォーカル、タイトさと柔軟さを兼ね備えたリズムを刻む礒本雄太のドラミング、そして、それらを表現するためのベストな形でジョインするサポートメンバー達。

 

ワンマンライブは開催を重ねるごとに規模を広げ、2024年11月にZepp Shinjukuでのワンマンライブを控える。

 

 

「渚で会いましょう」

 

 

 

 

■コメント

 

鈴木:  いつまでも消えない記憶の中の風景やイメージがある。それは繰り返し夢に見たり、新たな経験とつながっていくことで僕の中にいっそう強く残り続けている。18 歳で曲を作り始めた頃から、それらの心象世界は僕の曲にも顔を出したり出さなかったりした。押さえつける時もあったが、そんなことは自分と作品との距離を深めるだけだと作る中で学んできた

 

 

井上:   小さい頃から海にあまり縁がなく、家族との旅行に出かけてみても行先は山ばかりだった。10 歳の頃に妹をおぶったまま深い川で溺れてしまったことで、自然の力への恐怖が増したことも関係しているかもしれない。加えて海のない県で育ったこともあり、自分と海は今後も縁遠いものだと思っていたのに、「渚で会いましょう」が次のシングルに決まった。

 

レコーディングの前にどういう想いを浮かべて歌うのがいいか、ちょっと考えたものの、杞憂だった。出来上がったアレンジや歌詞を新しい気持ちで聴いてみると、本当の海の手触りはわからないのに、なぜだかわかる。心のなかに、湿り気を含んだ日本の海がぶわっと入り込んで、切なさだけ残した波は曲の終わりと同時に引いてゆく。イメージが絶えなかった。何回歌っても良い曲だった。あなたの記憶や匂いや味や手触りと混ざり合い、各々のための曲に育っていったら素敵なことだと思うし、それができる曲だと思う。聴いてもらうのが楽しみです。

 

 

礒本:  ローラズのドラマーとして新しい試み。初めて曲に触れた時はフレーズの断片がそこらじゅうに散らばっていて、一つ一つが其々の良さを放っているものだから途方に暮れたような。各パーツがパズルのように横並ぶマスロックっぽいドラムフレーズに水面を揺蕩うような大らかなリズムセクション。緩急のついたフレーズやスリリングな演奏は、実はコンポーザーの「こんな感じ」が一つ一つ積み上がったものでもあります。ただひたすら直感のやり取り。

 

楽曲が完成に近づいていくにしたがって、点と点だったフレーズは次第に色付き、大きく柔らかな景色となりました。その時その時の直感を無造作にも美しく積み上げられた一曲だと思っています 



■ライナーノーツ(文 : 石角由香)

 

「究極は奇跡的に老若男女にわかってほしいんですよ。そこは諦めない」――
 
 
ソングライターアレンジャーでもある鈴木迅が本作「渚で会いましょう」のインタビューで話してくれた中で、この曲のスタンスについて最も芯を食った発言がこれだったと思う。イギリスのフォークミュージックやアメリカのオルタナカントリー、もちろん海外のインディポップと共振する部分もあるし、ルーツミュージックへの造詣も深い。そうしたバックグラウンドを現代日本のポップミュージックとして成立させうる主旋律をクリエイトできることも相まって、Laura day romanceはそれこそ奇跡的なバンドたりえている。それだけでも稀有なことなのに、本作ではさらに聴き手の感性を信じて一歩踏み込んだ楽曲に着手した印象が強いのだ。
 
 
2024 年に入り、バンドは早々にシングル「Young life / brighter brighter」をリリース。特に「Young life」はすでに春フェスなどのライブで重要な位置を担う曲になっている。そして4月リリースの「透明 / リグレットベイビーズ」収録の「透明」は全国の FM 局でパワープレイを獲得し、最近ローラズを聴き始めたリスナーにとっても親しみ深い曲だろう。
 
 
2曲とも一筋縄では行かない曲ではあるものの、井上花月が歌うメロディの美しさや、風通しのいいアンサンブルが生み出すグルーヴに自然と乗っていけるポピュラリティを纏っている。今のローラズを明快に代表する2曲に続くのが今回の「渚で会いましょう」なのが面白い。以前も鈴木は前作に対するカウンターを打っていくことに曲作りのモチベーションがあるとは言っていたが、今回もその傾向に当てはまる。
 
 
なんと言ってもこの曲、いわゆるドラムパターンの基本のキックとスネア、みたいなビートではない。イントロに続いて歌が入ると同時に特定のリズムが刻まれることで安心して乗っていけるものだと思うが、この曲ではギターリフの方がむしろ雄弁だ。少し進むとマスロック的な刻みでキックとスネアが歌メロとは別軸で刻まれている。
 
 
でも、ユニゾンする歌メロとギターリフがキャッチーで、しかも井上のボーカルは低めの地声とオクターブ上のハモリが交互に現れる構成。これがすごく気持ちをざわつかせるのだ。歌詞の意味は一旦おいておくとしても、人間が一人で歌ったり二人になったりする感覚とでも言っておこう。そしてスッとビートが抜け、ベースの生な聴き心地が自ずと耳をとらえるサビが際立つ。さらにそこに接続するサイケデリックな聴感の C セクション。もうなんだか眩暈がしそうだ。
 
 
主に曲の構造とアレンジにフォーカスして聴くと、ものすごくアバンギャルドな曲なように意識が働くけれど、歌メロはすごく強い。
 
 
J- ポップ的な強さじゃなく、イメージはフレンチポップや、それを自然と消化してきたインディポップのニュアンス。まあ、音そのものが美味しいギターリフとユニゾンしていることが歌メロをより印象的にしているのだけれど。と、同時に”こんなに変則的なリズムでどうやって歌入れをしたのか?”という素朴な疑問が浮上したのだが、井上には鈴木の弾き語りが、ドラムの礒本雄太にはトラックの断片が渡され、二段階にわたるレコーディングが行われたのだという。なるほどである。しかしそれは実現のための手法だ。鈴木は実験のための実験をしていない。
 
 
まるでオケと歌詞を切り離した聴き方になってしまったが、この謎を含んだリズムは物語や想いを平易に綴っていない歌詞とも共振して、リスナー各々の記憶や感情を予期しないところで呼び起こすはずだ。一行単位では感情移入できる歌詞が、次の一行ではもう違う文脈にあったりする。これは鈴木がこれまで書いてきた日常的な光景の中に毒や違和感を忍ばせる手法とも違う気がする。
 
 
だけれども、この曲の中で、私は忘れかけていた誰かに会う直前の感覚を覚えた。そして矛盾するけれど、聴き終えた時、もう会えないのかもしれないとも思った。ただ、舞台は夏だ。こんな感想にあまり意味がないぐらい、おそらく聴き手一人ひとりの「渚で会いましょう」がある。同じ方向を見て手を挙げるようなライブをしていないローラズの真骨頂っぽい場面が、次のライブで見られそうでワクワクする。

 

 

■event schedule

 
8 月 31 日 ( 土 ) RUSH BALL 2024
9 月 20 日 ( 金 ) FEAT. @ 渋谷 CLUB QUATTRO
9 月 27 日 ( 金 ) FEAT. @ 梅田 CLUB QUATTRO

 

■ Laura day romance tour 2024 crash landing

 


10 月 06 日 ( 日 ) 札幌・cube garden

10 月 17 日 ( 木 ) 名古屋・THE BOTTOM LINE

10 月 18 日 ( 金 ) 大阪・BIGCAT

10 月 25 日 ( 金 ) 福岡・BEAT STATION

11 月 03 日 ( 日 ) 仙台・darwin

11 月 07 日 ( 木 ) 東京・Zepp Shinjuku

 Best New Tracks -  Laura Marling 「No One's Gonna Love You Like I Can 」(Week4)  


 ー若い母親の視点を通して端的に語られる未知なる「娘」という存在について-

 

Laura Marling

もし、ローラ・マーリングがロンドンの自宅スタジオで制作した2020年に発表され高評価を得た『Song For Our Daughter』が、「架空の娘」に向けて曲を書くという観点から比喩的に書かれたものであるとするなら、続くアルバム『Patterns in Repeat』は、2023年に娘が誕生した後に書かれ、マーリングは家族という枠組みの中で繰り広げられるパターンについて鋭い考察を試みる。


この作品は、彼女の人生において啓示的な時期に根ざし、何世代にもわたり、家族という概念を通して定着してきた観念や行動を、女性/母親として深く見つめ直している。


アルバムは、ほぼ全編の自宅スタジオで録音され、ドム・モンクスが共同プロデュース、ストリングスの巨匠のロブ・ムースも参加している。さらに、レコーディング・セッションには、実際の「ローラの娘」がしばしば参加しており、アルバムの比喩的な親しみだけでなく、純粋に状況的な内容を反映している。それは音楽的な動機として「娘」がどこかに存在しているからだろう。


若い母親にとって子供はいつも驚異的な存在であるのか。ときに、親はいつも子供に何かを教えていると思うがあるが、時には、子供から重要な教訓を学ぶこともある。今まで気づかなかったなにかについて。

 

次作アルバムのセカンド・シングルとして公開された「No One's Gonna Love You Like I Can」は、バッハの平均律クラヴィーアを彷彿とさせるピアノの演奏から、敬虔なボーカルが乗せられて、やがて、ストリングスの美しいハーモニーがローラ・マーリングの音楽的なイメージを高い啓示へと導く。

 

曲の歌詞についても示唆的な内容に富んでいる。若い母親の視点を通して、「娘」という未知なる存在が、想像だにしない行動を取ることへの戸惑いについて歌われている。

 

曲の冒頭は、こんなふうに始まる。ーー私が知っているように、誰もあなたを知ることはないばかりと思っていた。その時、あなたは道端のバーで、服を脱いでいたーー。昨年生まれたマーリングの娘について驚きを込め、ちょっとユニークに歌っている。


マーリングは『Patterns In Repeat』をセルフ・プロデュースし、ロンドンの自宅スタジオでレコーディングした。

 

「No One's Gonna Love You Like I Can 」のスタジオ・ヴァージョンは、マーリングがインスタグラムに投稿したものと同じように、荒々しくもきわめて親密な内容となっている。レコーディング・バージョンには美麗なストリングス・セクションもあるが、同じように、ルーム・サウンドの雰囲気さえある。2分足らずの短い曲だが、切なる想いすら伝わってくる。試聴は以下から。

 

Laura  Marling(ローラ・マーリング)のニューアルバム『Patterns In Repeat』はPartisanから10月25日に発売予定。



 「No One's Gonna Love You Like I Can」

 

Origami Angel
Origami Angel 

 

ワシントンDCのOrigami Angelは、ギタリスト/ボーカルのライランド・ヒーギー、ドラマー、パット・ドハーティによるパンクユニット。今年、新宿ACBで来日公演を行い、東京のパンクキッズの話題をさらった。軽快でドライブ感のあるエモ/ポップパンクの次世代を担う存在といえる。

 

ニューアルバム『Feelong Not Found』のリリースに先駆けて、GAMIは三作目のシングルをドロップした。前2作のシングルではメタルコアやハードコアに近いポップパンク/エモだったが、サードシングルでは、オリガミ・エンジェルの持ち味であるキャッチーなポップ・パンク/エモに返り咲いている。

 

付属のミュージックビデオでは、フロントマンが家で犬と戯れるホームドラマのような映像を楽しめる。

 

ニューアルバム『Feelong Not Found』はCounter Intuitive Recordsから9月27日に発売予定。


 「Wretched Trajectory」

Blondeshell


今、最注目すべき、米国のインディーロッカー、Blondshellのニューシングル「What's Fair」は、母と娘の関係を描いた最も生々しく、年齢以上に賢明な作品である。一方、バブルガムのようなバズソー・インストゥルメンテーションは、破壊的なハーモニーにラウド/クワイエットなギター・ワークが渦巻く、彼女がこれまで録音した中で最もキャッチーなもののひとつだ。


ブロンドシェルこと、サブリナ・タイテルバウムは声明の中で、この新曲についてこう語っている。

 

「私自身の関係が、多くのトラウマと喪失に根ざしたものだったからかもしれないけれど、常に混乱するものだと思う。何を期待していいのか、何が普通なのか、親のどんな行動がOKなのかNGなのか等々。そして、自分の経験がすべてであるとき、「普通」はどこまで重要なのか。この曲を書いたとき、私はちょうど過去をふるいにかけようとしていて、多くの疑問を持っていた」


Blondshellのセルフタイトルのデビューアルバムは2023年10月6日にPartisanからリリースされた。

 


「What's Fair」



UK/レスターを拠点に活動するSainté(サンテ)がニューシングル「Programme Channel」をYSMからリリースした。この曲は"Future Bass"を音楽的なテーマにしている。今年、ラッパーは、フルアルバム「Still Local」で快調な滑り出しを見せ、さらにこの新曲でも好調を維持している。

 

最新アルバムのレビューでは、ローカルラップのヒーローと紹介したが、SainteのヒップホップのトラックはStomzyの系譜にある都市的な雰囲気を持つ。イントロでは、チルアウト風とR&Bのクロスオーバーを基に、ハートウォーミングなリリック捌きを披露する。この曲では、Sainteはまったりしたニュアンスを披露し、ドラムンベースのビートを背景に、リラックスした感覚を擁するフロウを披露している。曲の後半では、ロンドン近郊のコアなダンス・ミュージック、とりわけ、”フューチャー・ベース”のビートがスタイリッシュな印象を醸し出している。

 

Saintéのヒップホップは、カー・マニアとしての表情と、レスターという都市の地域性、そして、ロンドンやマンチェスターといった都市のミュージシャンに引けを取らぬアーティストの”都会的なセンス”から導き出される。ある意味では、ストリートの匂いを吸い込んだリアルな感覚を持つラップが魅力。彼のヒップホップは録音現場だけではなく、リアルな空間でその真価を発揮するはずだ。

 

 

「Programme Channel」

The Telescopes / Tapete Records


UKのThe Telescopesは、数あるうちのカルト的なバンドの中でも最も伝説的な存在である。

 

元々は、13th Floor Elevatorを始めとする米国のサイケデリックシーン、そしてニューヨークのプロトパンクなどに触発されたバンドは、現在ではサイケ・ロックの大御所のような扱いを受けることもある。しかし、必ずしも、それはバンドの一部を暗示するに過ぎないかもしれない。少なくとも、テレスコープスの音楽に、炭酸の抜けたようなロックソングを求めてはいけない。

 

ザ・テレスコープスは、1980年代後半から、ブリット・ポップが隆盛を極めるのを尻目に、ギターロックやシューゲイズ、そしてサイケロックの独自体系を築いてきた。因みに、NMEは、このロックバンドの全作品をレビューしている。知る人ぞ知るロックバンドで、一度テレスコープスの音楽を知ると、その中毒性から逃れることは困難である。2024年はじめにFuzz Clubから発表された最新アルバム「Growing Eyes Become Strings」は、その集大成である。

 

ザ・テレスコープスは1987年に結成された総合的なロックバンドで、作曲家/インストレーターであるノーサンブリア生まれのスティーブン・ローリーだけが、唯一のオリジナル・メンバー。バンドのラインナップは流動的で、レコーディングに参加するメンバーは1人から20人までいる。

 

ザ・テレスコープスは、Cheree Recordsと契約し、その後、What Goes On Recordsに移籍、インディチャートの上位の常連となった後、Creation Recordsと契約し、メインストリームでの成功を収めた。ザ・テレスコープスの音楽は、独自の境界線を押し広げ、多くのジャンルをオーバーラップさせ、インスピレーションに導かれながら独自の道を歩んできた。時を経て、

 

ザ・テレスコープスの音楽は繰り返し聴くことに喜びを見出すだけではなく、聴くたびに新しい発見をもたらす。ジャンルを超えて世界中の多くのアーティストに影響を与えたと言われている。


『Halo Moon』はザ・テレスコープスの17枚目のスタジオ・アルバムであり、ドイツのレーベル”Tapete Records”での6枚目となる。伝説的なロックバンドの新譜に注目である。それは空からやってきた。新しい始まりの前触れ。果てしない宇宙の静謐な輝き......。

 

 

「Shake It All Out」

 




The Telescopes 「Halo Moon」


Label: Tapete

Release: 2024年9月27日

Tracklist

 

A1 Shake It All Out

A2 For The River Man

A3 Come Tomorrow

A4 Along The Way


B1 Lonesome Heart

B2 Halo Moon

B3 Nothing Matters

B4 This Train Rolls On

 

Pre-order:  https://orcd.co/the-telescopes 

 

 

カナダ出身で現在ロンドンを拠点に活動するセルビア系ミュージシャン、Dana Gavanski(ダナ・ガヴァンスキー)が最新アルバム『Late Slap』の同セッションからの新曲「Ought To Feel」を発表した。

 
「強くなるためには、不快なことに慣れる必要があると気づいた」とダナは言う。前作『When It Comes』の作曲中に(文字通り)声を失っていたダナは、『Late Slap』では、逆説的ではあるが、違和感を受け入れることから生まれた新たな自信とエネルギーを、作曲と歌の両面で発揮している。

 

インディー・ポップナンバー「Ought To Feel」は、Delta 5のポスト・パンク・スタイルを彷彿とさせる、シャープでエネルギッシュな雰囲気を持っている。この曲は以下から聴くことができる。

 


「Ought To Feel」

 


カリブ海系ベルギー人の作曲家、プロデューサー、ミュージシャンであるNara Sineは、スピリチュアル、ジャズ、フォーク、フィールド・レコーディングを融合させ、新境地を切り拓く。彼女の音楽活動は、周波数と幾何学の研究に根ざし、音が物質を動かすという前提に導かれている。具体的にはエレクトロとジャズの融合により、ロンドンの音楽シーンに活力をもたらす存在。シネフロの電子音楽のマニュピレーションには、規則性や数学的な配列に関する興味が凝縮されている。


「Endlessness」は、存在のサイクルへの深いダイブを意味する。45分に及ぶこのアルバムは、10曲にわたる繊細な曲調と終始鳴り続けるアルペジオが、生命サイクルと再生の壮大で魅惑的な祝祭を作り出している。


絶賛されたシネフロの2021年のデビューアルバム「Space 1.8」に続く「Endlessness」は、ジャズ、オーケストラ、エレクトロニック・ミュージックを見事に変容させ、超越的で多次元的な作曲家として彼女をさらに昇華させた。アルバムの作曲、プロデュース、アレンジ、エンジニアリングはシネフロが担当。


アルバムには、シーラ・モーリス・グレイ、モーガン・シンプソン、ジェームス・モリソン、ライル・バートン、ヌビア・ガルシア、ナトシエット・ワキリ、ドウェイン・キルヴィントンが参加し、オーケストレーションの21人の弦楽器奏者も加わっている。




Nara Sinephro 「Endless」


Label: Warp

Release: 2024年9月6日


Tracklist:


1.Continuum 1 

2.Continuum 2

3.Continuum 3

4.Continuum 4

5.Continuum 5

6.Continuum 6

7.Continuum 7

8.Continuum 8

9.Continuum 9

10.Continuum 10

・柴田聡子「Reebok / Reebok (tofubeats remix)」が本日リリース!  小鉄昇一郎による「Reebok」のMusic Videoも公開

柴田聡子/ tofubeats
 

柴田聡子のニューアルバム「Your Favorite Things」のリミックス・アルバム「My Favorite Things」が10月23日に発売される。

 

本日(8月21日)、新作に収録されていたアーバンな雰囲気を持つダンサンブルなポップソング「Reebok」のリミックスがシングルとして各店舗で発売される。オリジナルとリミックスの併録が7inchで販売。さらに、リミックスとインストゥルメンタルの二曲がデジタルで配信されている。

 

ニューシングルのリミックスを手掛けたのはtofubeats。最近ではテレビドラマのテーマソングを制作している敏腕作曲家/プロデューサーのリミックスの手腕に注目したい。


また、アルバムのオリジナル・バージョンの「Reebok」のミュージックビデオが公開されている。監督したのは、小鉄昇一郎(Kotetsu Shoichiro)。この映像では、小鉄昇一郎氏によるアニメーションの他、先日のワンマンライブ映像も挿入されている。こちらの映像も下記よりご覧下さい。

 

 

 柴田聡子 (Satoko Shibata) - Reebok(オリジナル・バージョン)   Official Music Video
 

 

 




シングル情報 


柴田聡子「Reebok / Reebok (tofubeats remix)」

*下記のレコードショップ各店舗で販売中


7INCH | 2024.08.21 Release | DDKB-91026 | Released by AWDR/LR2


SHOP LIST(販売店リスト) [ https://music.spaceshower.jp/news/263261 ]

 

収録曲:


A. Reebok
B. Reebok (tofubeats remix)

 



シングル情報 


柴田聡子、最新作「Your Favorite Things」収録曲「Reebok」のtofubeatsによるリミックスが8月21日配信リリース。


柴田聡子「Reebok (tofubeats remix)」
Digital | 2024.08.21 Release | DDKB-91026_DIGITAL | Released by AWDR/LR2


Add/Save (配信リンク)https://satokoshibata.lnk.to/Reebok

 

収録曲:

1. Reebok (tofubeats remix)
2. Reebok -Instrumental- (tofubeats remix)





■制作者コメント


ーーもし、シングルカット出来たら最高だと思っていた「Reebok」をほんとうに7inchにしていただき、幸福すぎます! そして、tofubeatsさんによる、このまま時を止めてこの音楽の中に居させておくれ……と願わずにはいられないすばらしいリミックスまでいただき、幸福に幸福が重なり最高の気持ちです。

 

そしてこの度のすばらしいアートワークは坂脇慶さんです。アルバム「Your  Favorite Things」から軽やかにするどく展開した先が超格好良くて最高です。皆さまに感謝しかありません。ありがとうございます! 私もほんとうに楽しみです。ぜひお手にとってください! どうぞよろしくお願いいたします。ーー 柴田聡子のコメント

 

ーー当時面識の全く無かった柴田さんの「後悔」をTV番組で紹介してから早7年、当時も今も稀代のSSWであり続けている柴田さん。
そんな氏の楽曲をリミックスさせていただけて、仕事で関わらせていただけるなんて大変光栄なオファーでした。
最新作からどの楽曲が自分に届くんだろう…と思っていたところ届いたのは「Reebok」のステム・データでした。
この7インチのリリースタイミングは雨の多い季節ということで、そんな時期に合わせたリミックスになっております。
ぜひ家でゆっくりと針を落としてみてください。ーー tofubeatsのコメント

 

 

柴田 聡子 SATOKO SHIBATA


シンガー・ソングライター/詩人。北海道札幌市出身。武蔵野美術大学卒業、東京藝術大学大学院修了。

 

2010年、大学時代の恩師の一言をきっかけに活動を始める。2012年、三沢洋紀プロデュース多重録音による1stアルバム『しばたさとこ島』でアルバムデビュー。以来、演劇の祭典、フェスティバル/トーキョー13では1時間に及ぶ独白のような作品『たのもしいむすめ』を発表するなど、歌うことを中心に活動の幅を広げ、2022年、6枚目のオリジナルアルバム『ぼちぼち銀河』をリリース。


2016年には第一詩集『さばーく』を上梓。同年、第5回エルスール財団新人賞<現代詩部門>を受賞。詩やエッセイ、絵本の物語などの寄稿も多数。2023年、足掛け7年にわたる文芸誌『文學界』での連載をまとめたエッセイ集『きれぎれのダイアリー』を上梓。雑誌『ユリイカ』での特集も決定するなど、詩人としても注目を集めている。自身の作品発表以外にも、楽曲提供、映画やドラマへの出演、ミュージックビデオの撮影・編集を含めた完全単独制作など、その表現は形態を選ばない。2024年2月28日、最新アルバム『Your Favorite Things』をリリースした。



新作情報 


柴田聡子「My Favorite Things」


DDCB-12123 | 2024.10.23 Release | 3,000 Yen+Tax
Released by AWDR/LR2


[ https://ssm.lnk.to/MyFavoriteThings ] PRE-ORDER



特典情報 


柴田聡子 ニューアルバム「My Favorite Things」(一部店舗にて)予約特典施策決定。


2024年10月23日(水)に発売が決定した柴田聡子「My Favorite Things」を2024年9月8日(日)までに対象店でご予約お客様に「柴田聡子 Tour 2024 “Your Favorite Things” 追加公演 2024.05.31 [DVD]」を差し上げます。


早期予約購入者特典| 

柴田聡子 Tour 2024 “Your Favorite Things” 追加公演 2024.05.31 [DVD] 
           *SPACE SHOWER TVで放送した内容に2曲追加したスペシャルDVD。


対象期間|      

2024年8月5日(月) ~ 2024年9月8日(日)各店舗閉店時まで


対象店舗|      

TOWER RECORDS/HMV/diskunion/楽天BOOKS/COCONUTS DISK/FLAKE RECORDS/Hawaii Record
           

*詳しくは各店・ECショップにお問い合わせください。


イベント情報 


「柴田聡子のひとりぼっち’24 〜My Favorite Things〜」


【大阪公演】

2024.11.13 [Wed] ABCホール | Open 18:30 / Start 19:00


【東京公演】

2024.11.24 [Sun] ヒューリックホール | Open 16:00 / Start 17:00
Ticket | Adv. 5,000 Yen



tofubeats

神戸出身の音楽プロデューサー/DJ。学生時代から様々なアーティストのプロデュースや楽曲提供、楽曲のリミックスを行う。2013年4月「水星 feat.オノマトペ大臣」を収録した自主制作ALBUM「lost decade」を発売。同年11月「Don't Stop The Music」でワーナーミュージック・ジャパンからメジャーデビュー。


2014年10月 メジャー1st ALBUM「First Album」をリリースし、以降もコンスタントに作品を発表している。2022年 5th ALBUM「REFLECTION」初の書籍「トーフビーツの難聴日記」「REFLECTION」のLP盤「REFLECTION REMIXES」をリリース。


2023年にはUKのDJ QとのコラボEP「A440」単独SG「自由」「Lights」をリリース。
2024年4/26には待望の新作EP「NOBODY」をリリース。更なる新境地を開くプロデューサーとして活動中。

 

©Alex Manriquez

 

オークランドを拠点に活動するTanukichanがニューシングル「It Gets Easier」をリリースした。この作品は9月20日に発売される「Circles」のセカンドシングル。新曲ではシューゲイザーの新星、Wispが参加している。オフィシャルオーディオが公開されているので、下記より御覧下さい。

 

USカリフォルニア/オークランドを拠点に活動するSSW、ハンナ・ヴァン・ルーンによるオルタナティヴ・ロック〜シューゲイズ・プロジェクト、タヌキチャン最新作が、配信限定シングル「NPC」を追加収録した日本国内盤限定仕様でリリース決定!


前作までプロデュースを手掛けたチャズ・ベアー(トロ・イ・モワ)から新たなプロデューサーとしてフランコ・リードを迎え、その先進性とインディ・スピリッツで良質なアーティストを多数輩出してきたCarpark Recordsからのリリース。


SNS経由で大ブレイクしたUSシューゲイズシーンの超新星ウィスプをゲストに迎え、ドリーミーで浮遊感のあるサウンドからハードでエッヂの効いたギターを聴かせるグランジなスタイルまで呑み込んだ現在進行形のオルタナ〜シューゲイズ・サウンドは必聴!

 

 

「It Gets Easier」

 

 

 

*Tanukichanの新作EP「Circles」に関するインタビュー(Q&A)はこちらからお読み下さい。

 

 

「Circles」EP (国内盤)

 


アーティスト:TANUKICHAN / タヌキチャン
タイトル:Circles / サークルズ
フォーマット:CD/DIGITAL
発売日:2024.9.20
品番:PCD-20454
価格:¥2,200(税抜¥2,000)
レーベル:P-VINE
*日本語解説・歌詞対訳付
 

■Track List


1.City Bus
2.Circles
3.It Gets Easier (feat. Wisp)
4.Low
5.In a Dream
6.Npc (Bonus track for Japanese edition)


Pre-order: https://p-vine.lnk.to/tJW9X2

 

 

■TANUKICHAN (タヌキチャン)


USカリフォルニア/オークランドを拠点に活動していたインディ・ポップバンド、トレイルズ・アンド・ウェイズにヴォーカル、ギターとして参加していたハンナ・ヴァン・ルーンによるソロプロジェクト。

 

活動初期のライヴを観たトロ・イ・モワことチャズ・ベアーがプロデュースを買って出たことからキャリアをスタートさせたタヌキチャンは、チャズ・ベアーの主宰するレーベル''Company Records''からデビューEP『Radiolove』(2016)を発表、続く1stアルバム『Sundays』(2018)をリリースし、Pitchfork、Rolling Stoneといった音楽メディアでも紹介され、USインディ・シーンで注目を集めるようになる。

 

同じくCompany Recordsからのリリースとなる2ndアルバム『GIZMO』(2023)ではより深化させたオルタナ〜シューゲイズサウンドを展開、現在進行形のシューゲイズ・アーティストとして高い評価を受け、アレックス・G、オールウェイズ、メラニー・マルティネスといったアーティストのオープニング・アクトも務めるなど活動の幅を拡げている。


2023年10月には新たなプロデューサーとしてフランコ・リードを迎えCarpark Recordsからシングル「NPC」を発表、2024年9月には最新作『Circles』のリリースを予定している。

 Horse Jumper of Love 「Disaster Trick」

 

 

Label: Run For Cover

Release: 2024年8月16日

 

 

Review

 

現在、イギリスでもスロウコアのリバイバル運動が地味に沸き起こりつつあるが、ボストンの(ベーシストのジョン・マーガリスとドラマーのジェイムズ・ドーランを擁する)ホース・ジャンパー・オブ・ラブも、2020年代のスロウコア/サッドコアのリバイバルを牽引する存在。

 

スロウコアとはシアトルのオーバーグラウンドに引き上げられたグランジに対する抵抗であり、アンチテーゼでもある。


この運動は、エモの最初期のムーブメントに近く、インディーロックそのものが商業主義に絡め取られていく中、いまだ地下に潜り続けることの意義を示そうとしたのだった。その代表格が、コデイン、レッド・ハウス・ペインターズ、レッド・スターズ・セオリー、ロウとなるか。

 

スロウコアの音楽的な特徴を挙げるとするなら、内省的なサウンド、激情的なハードコアとエモの中間にある感覚をスロウテンポの重量感のあるロックソングに仕立てるということだろうか。またメインストリームに反感を示しながらも、スロウコアがシアトル/アバディーンから発生したグランジをライバル視しているのは明らかで、コデイン、レッド・ハウス・ペインターズに見受けられる、サイレンスとラウドを瞬時に行き来するような極端なサウンドが特徴である。


これらのスロウコアの音楽性は、後にポストロックへと部分的に受け継がれていったが、最近の若手バンドがスロウコアを参考にするのは、オルタナティヴロックバンドとしてのパンクスピリット、つまり、ワシントンDCのDischordのハードコアサウンドの影響があるからではないか。実際、ボストンは80年代の重要なハードコアの拠点であり、この地域から気概のあるバンドが登場するのは、必然的であるとも言える。オルタナティヴなロックをやるのに欠かせないのは、パンクバンドとしての反抗心のようなもので、それは本来硬派な気風から生み出される。


Horse Jumper of Loveのサウンドには、ポストハードコアのスクリームも咆哮もないが、ギターサウンドには、それに近い感覚がある。もちろん、パンクの基本的な解釈がアップテンポなビートであることを考えると、あえて曲のBPMをテンポダウンさせ、ダウナーな気分を歌うという反骨的な内容である。パンクの原義から距離を置いているとは言え、バンドのサウンドにはパンクのテイストが含まれている。それは、オープナー「Snow Angel」に見受けられるように、内省的な感覚の吐露と苛烈なディストーションサウンドという鋭い対比によってもたらされる。


屈強ではなく、少し弱々しげだが、彼等のサウンドの内奥には、鋭い牙のようなものがギラついている。そしてアンサンブルの妙によって、徐々にサウンドのダイナミクスを増し、スロウコアのジャンルの代名詞であるエクストリームな激情性につながる。つまり、オールドスクールではなく、ポスト世代のハードコアの性質をバンドは自らの強みにしているらしいのである。

 

もうひとつ、スロウコアの特徴といえば、内的な美麗な感覚をインディーロックソングに折り混ぜるというものである。これらはオルタナティヴフォークでは、頻繁に行われていることだが、彼らは轟音性によって、美麗な感覚を作り出そうとする。かつてメタルバンドが行っていたような様式美を、スロウテンポのオルトロックという側面から作り出そうというのである。もちろん、「Wink」には、ヘヴィ・メタルのごときアンセミックなフレーズはおろか、シンガロングを誘う展開も出てこないが、ペドロ・ザ・ライオンや最初期のエモコアバンドのように、素朴な感覚が心地よいギターラインに乗せられ、音楽全体の叙情性が緻密に作りあげられる。


ポスト・ハードコア的な要素の他に、90年代のUSインディーロックの黄金時代に迫ろうという曲もある。例えば、それに続く「Today's Iconoclast」は、Pavement、Guided By Voices、Garaxie 500、Sebadohといったローファイで荒削りな性質を押し出したオルトロックサウンドを展開させる。90年代から00年代の原初的なオルトロックの正体とは、以前のカントリー/フォークを反映させた音楽だったのだが、彼らはこの特徴を巧みに捉えて、ザラザラとした質感を持つギターロックを構築する。そして、その中から、わずかにソングライティングの妙から生じる切ない抒情性が導き出されることもある。この曲では、Guided By Voices、Garaxie 500の時代に存在した、インディーロックバンドの拙さや未熟さから引き出される独特なエモーションを汲み出す。それは上記のバンドを知るかはともかくとして、特異なノスタルジアを呼び起こすのだ。

 

「Word」はスロウコア/サッドコアとしてはおなじみのスタイルである。ゆったりとしてラフな感じのイントロのアンサンブルから、エリオット・スミスやスパークルホースといったシンガーの代名詞である鬱屈した感覚を、ボーカル、ギターのダウンストロークのアルペジオ、そして、休符を重視したゆったりとしたドラムとベースのアンサンブルによって発生させる。これらは、ソロシンガーの作品では生み出し得ない''バンドとしての化学反応''を捉えることができる。そして、最終的には、アメリカン・フットボールの「LP1」のデモトラックのような憂鬱な空気感を生み出す。これが若いリスナーにとって、何らかのカタルシスをもたらすに違いない。

 

中盤にも、素朴なインディーロックの魅力が凝縮されている。ホース・ジャンパー・オブ・ラブのサウンドには、バンドメンバーの美的なセンスが立ち現れることがあり、それはゴシック/ドゥーム的な暗鬱さという形で出現する。そして、それは、Sunny Day Real Estateが1995年に発表した「LP2」に見出される、「音楽における美学」のようなスタイルとして現れることがある。


「Lip Reader」は、同じように憂愁をモチーフにしたインディーロックソングで、その暗さの向こうから、あたたかなエモーションがふいに立ち上ってくる。そして、夕闇の切なさのような絶妙な感覚が、ギター、ドラム、ベースの化学反応から生み出されることがある。続いて「Wait By The Stairs」は、エリオット・スミスのオルタナティヴ・フォークをロックとして再構築したような一曲。一貫して、暗鬱で物憂げなサウンドに縁取られているが、暗鬱さの向こうから癒やしの感覚がうっすらと浮かび上がってくる。どこまでも感覚的なのがサッドコアというジャンルで、バンドはその音楽形式に、ヘヴィメタルやメタルコアの重力を加えている。これが繊細でナイーヴでありながら、バンドとしての重厚感を感じさせる理由なのかもしれない。

  

バンドの音楽は、スロウコア、原初的なカレッジロック、USオルタナティヴという三つの要素が主体となっているが、もう一つ、サイケ・フォークからの影響も伺える。例えば、「Heavy Metal」は、シド・バレットのソロアルバムのような抽象的な感覚をシュールなギター、そして、物憂げなエモーションを醸し出すボーカルを中心に構築されている。ジョージ・ハリソンとバレットのフォーク・ミュージックに対する考えはきわめて対称的であり、ハリソンはアイルランド民謡の清々しさを神秘思想と結びつけた。他方、バレットは、どこまでも純粋な芸術的な感覚を押し出し、形而下の音楽をピンク・フロイドや以後のソロ活動を通じて探求していた。ハウス・ジャンパー・オブ・ラブは、どちらかと言えば、アーティスティックな感覚を擁するシド・バレットに近いフォークで、Kill Rock Stars(レーベル)に近似するサウンドと言える。


アルバムの後半に差し掛かると、American Footballの最初期の学生時代のモラトリアムのような感覚が立ち上がってくる。これは例えば、若者特有のナイーヴな感覚を捉え、それらをストレートに表現していると言える。「Curtain」は、コデインのような内的な激しさを擁するサウンド。これらのマニアックな音楽性には繊細な癒やしが存在し、それはスラッカーロック/ローファイのような激情性へと繋がる。これは例えば、マック・デマルコのツアーミュージシャンとしてキャリアを出発させたHorsey(ピーター・サガー)の「CD Wallet」に近いサウンドだ。

 

アルバムの終盤では、「Death Spiral」において、メタルの重さとエモの繊細さをかけ合わせて、「エモ・メタル」ともいうべき、異質な音楽を作り出している。「Gates of Heaven」では、90年代のUSオルタナティヴの原点に立ち返り、R.E.M、Pavementのようなカレッジロックの後継的なバンドの音楽を復刻しようとしている。クローズ「Nude Descending」は、少しだけバンドとしての遊び心が感じられ、Wednesday、Rartboysを始めとするノースカロライナ周辺の現代的なロックバンドの音楽を彷彿とさせる。この曲は、現代的なインディーロックソングの特徴である”アメリカーナの反映”という現代のインディーズバンドの主要なテーマが内包されている。




76/100


 

 *初掲載時にバンド名に誤りがございました。訂正とお詫び申し上げます。

 


 Best Track 「Curtain」