ブレア・ハワードンが、ホワイ・ボニーの2ndアルバム制作のためにバンドメイトのチャンス・ウィリアムズとジョシュ・マレットを引き合わせたとき、彼女が最初に見せた曲が、これからの曲のトーンを決定づけた。「Fake Out」は、「そうであることを不可能にする世界で、本物であろうとすること」を歌っており、ホワイ・ボニーの大胆なニューアルバム『Wish on the Bone』で最もラウドな曲となっている。サビでハワードンは、曲の終わりまで彼女を覆い尽くす音の壁に向かって泣き叫ぶ。「It's not my face/ I imitate/ It's not my face/ I imitate」
「これらの曲は、より良い未来への希望から書かれた。私はナイーブではないし、世界はめちゃくちゃだけど、それを根本的に受け入れつつ、物事を変えることは可能だと信じられると思う」とハワードンは言う。「私にとって希望とは強さだ。そしてそれを持つためには、現代アメリカの見せかけの存在を覆すことのできる批判的な感性を養わなければならない。"Fake Out "はそれを端的に表現している。「Something you thought/ Was only something that you heard.」
「I Took the Shot」では、陽に焼けたようなハワードンの声が、きらめくシンセサイザーのベッドの上で人間関係の解消を語る。"昔のバーで待っていた/でも君は現れなかった/だから君に買ったショットを持って行った/そしてもう一杯、道連れにしよう"。まるで青春映画のラスト・ショットのように、主人公が自分を自分以外の何かに作り変えようとして失敗した力を拒絶する。この曲は、ハワードンのソングライターとしての最大の才能のひとつである、苦闘した希望の感覚を残してくれる。
アルバムのタイトル曲、及び、オープニングを飾る「Wish On The Bone」は、タイトルもウィットがあるが、実際の音楽性にも同じような含蓄がある。ここ数年のニューヨークでの暮らしを踏まえ、ブロードウェイのような都会的なセンスを兼ね備えながらも、やはり南部的な幻想性のあるアメリカンロック、ギターロックを最終的にポップスという形に落とし込み、そして部分的には劇的なボーカルを披露している。ピアノとギターを重ね、バラードのテイストをもたらすハワードンのボーカルは、曲の進行ごとに徐々に迫力を増していき、起伏のある旋律を描きながら、サビとなるポイントへ向けて、歌声の抑揚やイントネーションをひきあげていく。結局のところ、高音部のビブラートの伸び方が素晴らしく、背後のギターやドラムのミックスに埋もれることがない。そしてこの曲では、情熱的なギターソロが曲の後半で最大の盛り上がりを見せる。まるでアルバムのエンディングのような結末がオープニングで示されているかのようだ。
エミネムの曲と同じタイトル「Rythm or Reason」において、アメリカーナ特有のビブラートの歌唱法を活かし、ここでも渋みのあるサザンロックを切ないモダンロックに置き換えている。ここではニューヨークの実際的な暮らしの様子が、オルタネイトなギター、シンセのシークエンスを交えて、センチメンタルな雰囲気を持つ曲に昇華される。ここでは、都会的な生活から引き出されるボブ・ディランのような孤独を現代的な若者の感性として歌い込んでいるのが素晴らしい。
このアルバムには甘い感覚もあるが、それと同時に、「All The Money」では、00年頃のWilcoの『Yankee Hotel Foxtrot』のようなフォークとアート・ロックをかけ合わせ、それらをザ・ビートルズの次時代のモダン・ロックとして完成させようという試みもある。ストリングスやベース、そして、ギターを短く重ね合わせ、それらを取り巻くようにして、ハワードンは、これまででもっともアートポップに近い音楽を組み上げようとしている。 これはチャンス・ウィリアムズとジョシュ・マレットとのコミュニケーションやライブセッションが上手くいった結果がアルバムの音源という形で表れ出ている。また、辛抱強さもあり、セッションを丹念に続けたおかげで、ライブサウンドとして聴いても興味深い一曲になっている。同じように、単なるレコーディングアルバムと見るのは不当であり、続く「Peppermint」でも、ライブサウンドの側面に焦点を当てている。これがレコードとしてじっくり聞かせる曲と、それとは対極に、ライブのように体を動かす曲という二つの相乗効果をもたらしていることは、言うまでもないことだろう。
デビュー作のラフなフォークソングもこのセカンドアルバムには受け継がれている。「Three Big Moon」はゆったりとしたイントロから、フィドルの演奏を交えて、夢想的な雰囲気は最大限に引き上げられる。シンプルなメロディー、口ずさめるボーカル、そして、それらの雰囲気に美麗な印象を縁取るフィドルの演奏は、Why Bonnieのフォークバンドとしての性質が立ち表れている。今週末、アメリカのカントリーラジオ局でこの曲がオンエアされることを祈るばかりだ。
アルバムのクローズ「I Took The Shot」では、内的な孤独を感じさせる切ないバラードをクールに歌っている。そして、このような曲は聴いたのは、トム・ウェイツのデビュー・アルバム以来。これは、ハワードンというソングライターが、ポール・ウェスターバーグどころか、トム・ウェイツ、マッカートニー級の珠玉のソングライティングの才能を持つことを伺わせる。シカゴのBnnyの最新アルバム「One Million Love Songs」と並んで、Fire Talkの象徴的なカタログとなるかもしれない。サザン・ロックの最後の継承者、Why Bonnie(ブレア・ハワードン)の勝利。この二作目のアルバムでは、エンジェル・オルセンのような風格が備わってきたかなあと思う。
92/100
「Green Things」
Why Bonnie 「Wish On The Bone」はFire Talkから本日発売。ストリーミングはこちらから。
2020年にNYCで結成され、現在はシアトルを拠点に活動中のAndiとKatによるドリームポップ・デュオ、Bubble Tea and Cigaretteが11月1日に2ndアルバム『We should've killed each other』をリリースすることを発表した。
Bubble Tea and Cigaretteは2022年にリリースしたデビューアルバム『There's Nothing But Pleasure』で作り上げた幻想的なドリームポップとレトロでノスタルジーなムードを融合させた世界観で注目を集め、アメリカ国内だけではなく、来日公演も含んだアジアツアーも大盛況を収めた。バンドへの期待も高まる中で完成させたこの2ndアルバム『We should've killed each other』はBubble Tea and Cigarettesがデビューアルバムで表現したサウンドを継続しつつも、更に魅惑的でノスタルジックな世界を鳴らした作品に仕上がっている。
日時:2024年11月20日(水) OPEN 18:30 / START 19:30 会場:仙台・darwin 料金:前売 ¥5,000 / 当日 ¥5,500 (D代別) LIVE : JJJ w/ Aru-2 INFO : EDWARD LIVE 022-266-7555 (平日11:00~15:00)
先日、9作目のスタジオ・アルバム『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』を9月27日(金)に発売することを発表したイギリスのマルチ奏者でプロデューサー、ウィル・ドーリーのソロ・プロジェクト、スキンシェイプ。本日、収録曲の「Lady Sun (feat. Hollie Cook)」を配信リリースした。
アーティスト名:Skinshape(スキンシェイプ) タイトル:Another Side Of Skinshape(アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ) 発売日:2024年9月27日(金) レーベル: Lewis Recordings
Tracklist:
1. Stornoway 2. Mulatu Of Ethiopia 3. Can You Play Me A Song? 4. Lady Sun (feat. Hollie Cook) 5. It’s About Time 6. How Can It Be? 7. Ananda 8. Road 9. Massako 10. There’s Only Hope
ロンドンを拠点に活動するプロデューサーでシンガー・ソングライターのリザ・ローが、「A Messenger」、「Confiarme」に続くサード・シングル「What I Used To Do」を発表した。
リザ・ローのシングルは、見知らぬ本に出会い、そのページを一枚ごとめくるような楽しさがある。次に何が起こるかわからないし、それぞれ各章ごとに違うストーリーが綴られている。前2作は、アコースティックギターを元にしたナンバーで、メディエーションからネオソウル風のフォークというふうに異なるテイストがあったが、三作目の「What I Used To Do」はインディーポップ風のシングルで、ドラムのアップテンポなビート、シンセリードが織り交ぜられ、楽しく軽妙な感覚が押し出されている。
最新EP『flourish』は、Spotifyの「New Music Friday UK」、「NL」、「BE」にセレクトされ、「the most beautiful songs in the world」プレイリストでも紹介された。今年5月にGaerbox Recordsと契約し、これまでに「A Messenger」「Confiarme」「What I Used To Do」の3曲のデジタル・シングルをリリース。現在は、西ロンドンのスタジオ13で、ジョン・ケリー(ポール・マッカートニー、ケイト・ブッシュ)とバンドと共にアルバムの制作に取り組んでいる。
『Selected Recordings 1973-2023』は10月5日に発売され、彼のソロ・キャリアの過去50年をカバーしている。このボックスセットは、ボブ・ディランの「She Belongs To Me」のカヴァーとともに発表された。
「Star」
ロンドンを拠点に活動するアートロックバンド、Man/Woman/Chainsawが最新シングル「Grow A Tongue In Time」を発表した。エクスペリメンタルフォーク調のトラックは、11月8日にファット・ポッサム・レコードからリリースされるデビューEP『Eazy Peazy』からのセカンド・リリースとなる。
バンドは 「Grow A Tongue In Time」を "嫉妬、欲望、自己憐憫に対する意識の流れ "と表現している。この曲はミニマルなベース・アレンジで始まり、ドローンとしたヴァイオリンときしむような弓状のギターが加わって徐々に進化していく。この曲は、ライブ・セットの中では穏やかな瞬間のひとつであるにもかかわらず、攻撃性に頼ることなく、有機的にその強度を高めている。
Kim Deal(キム・ディール)は、ピクシーズやブリーダーズのメンバーとして、何十年もの間、アルト・ロックのヒーローであり続けてきた。『Nobody Loves You More』は11月22日に4ADからリリースされる。ダンス・ポップに焦点を置いたシングル「Crystal Breath」が同時公開された。
本作の収録曲「Are You Mine?」と 「Wish I Was」は2011年に発表された。これらの曲の初期レコーディングはディールの5枚の7インチ・シングル・シリーズで発表されている。
『Cutouts』はバンドにとって3枚目のアルバムであり、1月にリリースされた『Walls of Eyes』に続く驚異的なペースの作品となる。実際、『Cutouts』は『Wall of Eyes』と同じ時期にレコーディングされた。レコーディングは前作と同じオックスフォードとロンドンのアビーロード・スタジオで行われた。