2021年の『Windflowers』に続き、通算7作目のスタジオ作品となる『Things We Have In Common』をリリース。この3年ぶりのアルバムで、2019年の『Altid Sammen』で始まり、『Windflowers』と続いたひとつの輪を閉じます。この3作において、よりシンプルで包括的な表現への扉を開くものであり、人間のつながり、人間と自然の関係、集団的な精神性と帰属というテーマを探求してきました。
『Things We Have In Common』において、マッズ・ブラウアー、ラスマス・ストールバーグ、キャスパー・クラウセンのトリオとともにエフタークラングを結成した創設メンバーで、2007年の2ndアルバム『Parades』を最後に脱退したピアニスト/作曲家のルネ・ムルゴーが久しぶりに深いレベルで関わり、9曲中7曲を共作しています。
ルネ・ムルゴーの他にも多くのミュージシャンが参加。ベイルートことザック・コンドンをはじめ、フィンランド人ドラマー、タトゥ・ロンコ、ベネズエラ人ギタリスト、ヘクトル・トスタ、グアテマラ人チェリスト/シンガー、マベ・フラッティが重要なコラボレーターとなっています。またヨハン・ヨハンソンやダスティン・オハロランなどとの仕事で知られるイタリア人エンジニア、フランチェスコ・ドナデッロもこのアルバムに重要な足跡を残しており、「Animated Heart」と「To A New Day」で歌っているサウス・デンマーク少女合唱団も同様に重要な役割を果たした。
またコペンハーゲン・オペラ・フェスティバルの一環として、没入型オペラ『LEAVES: The Colour of Falling』を共作。2019年にはベルギーのバロック・アンサンブルB.O.Xとのコラボレーションによる全編デンマーク語のアルバム『Altid Sammen』をリリース。2021年の『Windflowers』に続き、2024年最新作『Things We Have In Common』をリリース。映画のような魅惑的な楽曲と、不朽の実験性と包容力で、長年にわたって熱狂的なファンを増やしてきた。
『Painless』まではATO/PIASに所属していたシンガーの新契約は、アーティストにとって新しい旅の始まりを意味する。このニュースとともに新曲「Like I Say (I runaway)」を発表した。
この新曲は、2022年リリースのアルバム『PAINLESS』以来の作品である。「Like I Say (I runaway)」は、ヤーニャの妹モリー・ダニエルが監督したミュージック・ビデオと共に発表された。ニルファーが家出した花嫁に扮するこの曲は歪んだディストーションギターが特徴的。 90年代のオルタナティヴ・ラジオを彷彿とさせるコーラスの下で歪んだギターのクランチが強調されている。
ニルファー・ヤンヤは「Method Actor」の発表とともに『My Method Actor』を正式に発表した。ニューヨーク・タイムズ紙が「対照的なテクスチャーを楽しむ」と評したほか、ザ・フェイダー紙が "衝撃的な復活 "と評した最近のシングル「Like I Say (I runaway)」に続くものだ。
ヤンヤはクラブビートからネオソウル、オルタナまでをセンス良く吸収し、2020年代のニューミュージックの境地を切り拓く。簡潔性に焦点を当てたソングライティングを行う彼女だが、そのなかにはスタイリッシュな響きがある。そして音楽そのものにウィットに富んだ温かさがある。それは、シニカルでやや刺々しい表現の中に含まれる奥深いハートウォーミングな感覚でもある。これはアルバムの前に発表された「Like I Say(I Runaway)」によく表れている。
ニルファー・ヤンヤがニューアルバム『My Method Actor』の第3弾シングル「Call It Love」を公開した。この曲は先行シングル2曲とは異なり、R&Bテイストのアプローチが組み入れられ、涼し気な印象を放つ。ギターやシンセ、ストリングス、スティールパンなどを導入し、オルトフォークにトロピカルなイメージを添えている。しかし、こういったゴージャスなアレンジは旧来にはそれほど多くなかった。以前よりも遥かにトラック自体が作り込まれている印象を受ける。
特に昨年のアルバム『Look Now』で初期の集大成をなしたピアノバラードと、メロディー構成の天才的な才覚は、この一、二年で突発的に出現したのではなくて、若い時代からのピアノの演奏の経験の延長線上にあったことが痛感できる。オープナー「could november everything」を聞けば、ラングのメロディーセンスと作曲そのものをピアノの演奏と結びつける才覚は、活動最初期から傑出していることが理解出来る。そして彼は、それを70年代のビンテージのUKフォークと結びつけている。早書きの作品なのかもしれないが、ここには、この後、ソングライターとして一歩ずつ成長を続けるオスカー・ラングの出発点を見出すことが出来るはずである。
デモソング集なので、脈絡がなく、とりとめのないように思える本作。しかし、アーティストの音楽的な興味がどのように変遷していったのかを断片的に捉えるのに最適で、意外とオリジナルアルバムのような流れを持ち合わせていることに大きな驚きを覚える。「just 2 b with u」も同様に、オスカー・ラングのソングライティングに、ローファイやスラッカーロックの影響がちらつくことを示している。ただ、それは単なる荒削りな駄曲に終わらず、ホーンセクションのアレンジを見るとわかる通り、この時代にはプロデューサー的な才覚が立ち表れていることに驚く。アルバムの最後に収録されているラフなデモソング「fadein」もオルタナティヴフォークとして聞かせる一曲で、この歌手らしい独特の雰囲気が音楽からぼんやり立ち上ってくる。それはまだ完全な形にはなっていないかもしれないが、以降の良質なポップソングやロックソングの萌芽は、これらのベッドルームの録音の時代から目に見える形で出現していたのである。
80/100
Wild Pink(ジョン・ロス率いるバンド)は、新曲「Eating the Egg Whole」をリリック・ビデオで公開した。10月上旬にFire Talkからニューアルバム『Dulling the Horns』の収録曲。前作シングルと同様にアメリカン・ロックのワイルドな感覚が軽快なギターロックの中に揺らめく。
ワイルド・ピンクの前作アルバム『ILYSM』は2022年にロイヤル・マウンテンから発売され、2021年の『A Billion Little Lights』に続く作品だった。
『ILYSM』は、ロスの癌診断にインスパイアされた。『Dulling the Horns』は、そのトラウマの向こう側にいるロスを発見する。以前のプレスリリースでロスは説明している。「君はズームアウトする。でも、『Dulling The Horns』は、物事にどう対処し、前進し、ただ創作を続けるにはどうしたらいいかを考える気持ちから生まれた」
アメリカのフォークシンガー、Cass McCombsがサプライズアルバム『Seed Cake On Leap Year』をDominoからリリースした。本作はアーティストの初期の未発表曲を収録。渋さと円熟味を兼ね備えたアルバムで、シンガーソングライターの若い時代の音楽的な魅力を再訪出来る。
1999年から2000年にかけてキャス・マコームスがバークレーに住んでいた頃、サンフランシスコのフルトン924番地にあるジェイソン・クイーバーのアパートで録音された初期の未発表曲集『Seed Cake On Leap Year』。1990年代後半のサンフランシスコのベイエリアには、Papercuts、Casiotone for the Painfully Alone、Chris Cohen's Curtains、Mt.Egyptなど、特別なアーティストのコミュニティが存在した。最大限の誠実さと親密さがモットーで、音楽は親しい友人とだけ共有されることが多かった。グラフィティ・ライター、スケーター、60年代の古株たちは、決して遠い存在ではなく、心の片隅にもいなかった。
常に前へ、前へと進むというマインドセットを貫いたマッコムスのキャリアにおいて、この時期は短いながらも実りの多い時期であった。『Seed Cake On Leap Year』の驚くべき点は、これらの楽曲がいかに生き生きと生々しく、洞察と驚きに満ち、まだ来ていないものすべてと対話しながら残されているか、ということ。
Cass McCombs 『Seed Cake On Leap Year』
Tracklist:
1I’ve Played This Song Before
2Anchor Child
3Baby
4Gum Tree
5Wasted Again
1If I Was A Stranger
2You’re So Satanic
3Always In Transit
4What Else Can A Poor Boy Do
5Northern Train
Charlotte Day Wilson
カナダのシンガー・ソングライター、Charlotte Day Wilson(シャーロット・デイ・ウィルソン)が、最新アルバム『Cyan Blue』収録曲のリワーク3曲を収録した『Live at Maida Vale EP』をリリースした。このEPでは、ジャズ風のアレンジに加えて、シンガーの圧倒的な歌唱力を堪能できる。
特別バージョンのEPには、「Cyan Blue」、「Sleeper」、「I Don't Love You」のライヴ・バージョンが収録されており、いずれも象徴的なMaida Valeスタジオで行われたベンジーBのBBCラジオ1の番組のために録音された。
その後、ロリンズはしばらく表舞台から姿を消した。一般的な理由は「自分の演奏を見つめなおす」という他の人々から見ると、解せないようなものだった。1950年代後半には、まったくライブや録音から遠ざかり、数年間、みずから練習に精励していたという。以後、再び、1960年代に入り、RCAと契約を結び、ジム・ホールなどを招聘し、彼の代表作の一つである『The Bridge』に制作に取り掛かる。同年、『What’s New』を発表し、量産体制に入った。この頃、ちょうどアヴァンギャルド・ジャズの最初のウェイブが沸き起こったが、新し物好きのロリンズはもちろん、その流れに無関心ではいられなかった。ドン・チェリーとの共同作業は、『Our Man In Jazz」という目に見える形になり、以降のフリージャズ運動の先駆けとなった。
そして、1961年11月、公衆の面前での演奏を再開した。ほどなく、RCAビクターのプロデューサー、ジョージ・アヴァキャンがロリンズとの契約を取り付けた。「Without A Song」は、ロリンズのコンサートでしばしば演奏された曲で、アメリカ同時多発テロ事件から4日後のボストン公演でも披露され、同公演を収録したライブ・アルバムのタイトルにもなった。「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」は、ビリー・ホリデイが1941年に発表した曲のカバー。
アルバムの冒頭では、「Without A Song」に象徴されるように、ビバップの楽しげな響きが特徴となっているが、アルバムの中盤では、ジャズバラードに近いR&Bに近い響きが押し出されている。タイトル曲のハード・バップに属する旋法や調性の運び、そして演奏の持つ強烈な個性も捨てがたいものがあるが、他方、ギターとの室内楽のような上品な響きを持つ「Where Are You」のようなナンバーにこそ、ロリンズのサックス奏者の醍醐味が凝縮されている。「God Bless The Child」のコントラバスの精細感のある演奏、モンゴメリーの系譜にあるギター、それらをリードするロリンズのサックスの演奏もジャズの潤沢な時間をもたらすアルバムのラストを飾るスイング・ジャズ「You Do Something To Me」はジャズライブなどで映えるような曲で、楽しげな雰囲気がある。一つも蛇足がなく、完結な構成でまとめ上げられている。
ハードパップなどの新しいジャズの形式を追求する中で、ソニー・ロリンズの重要な音楽的なルーツであるカリプソやラテン・ミュージックに回帰したのが本作である。ロリンズが1970年代に展開させていくファンク・ソウルやマーヴィンやクインシーに代表されるアーバン・コンテンポラリーとジャズの「クロスオーバーの原点」を今作には発見できる。アルバムの冒頭を飾る「If Ever I Would Leave You」ではカリプソのリズムとビバップのスケールやリズムを結びつけようという試みが見受けられる。さらに、「Don't Stop the Carnival」ではカリプソのカーニバルの音楽とマイルス・デイヴィスのモード奏法を融合させ、エスニックジャズを予見している。
さらに本作の中盤でも、南米のラテン音楽の陽気で開放的な音楽性が色濃く反映されている。「Jungoso」、「Bluesongo」では、彼のアフリカ系アメリカ人のルーツを音楽という形で押し出し、それらを楽しげな演奏によって彩っている。さらに1948年公開の映画の主題歌「The Night Has a Thousand Eyes」ではボサノヴァをジャズと融合させ、クロスオーバーの飽くなき可能性を探求している。もちろん、陽気なサックスフォンの響きを心ゆくまで堪能できるはず。
発売当時は、アメリカ盤が「Don't Stop the Carnival」を除く5曲入り、イギリス盤や日本盤が「If Ever I Would Leave You」を除く5曲入りだったが、現行の日本盤CDは6曲入りの完全版として販売されている。また、日本では『ドント・ストップ・ザ・カーニバル』という邦題がついていた時期もあったという。 「Don't Stop the Carnival」は、『Saxpohone Colossus』の一曲目に収録されている「St. Thomas」と並ぶ、ロリンズの代表的なカリプソ曲。ライブでもしばしば演奏された。
『Alfie』 (Original Music From The Score) GRP/UMG 1966
すでにミュージカルという側面では、映画音楽とジャズはその成り立ちからして密接に結びついているが、あらためてジャズが映画音楽として有効であることを示したのが「Alfie」のサウンドトラックである。特に、「He's Younger Than You Are」は映画音楽として秀逸である。
今作『Original Music From The Score “Alfie”』は、1966年に公開されたイギリス映画「アルフィー」のために作曲されたソニー・ロリンズのオリジナル盤であると同時にサウンドトラックである。編曲と指揮はオリバー・ネルソンが担当し、バックメンバーにはケニー・バレル(ギター)、J.J.ジョンソン、ジミー・クリーブランド(トロンボーン)、フランキー・ダンロップ(ドラム)、ロジャー・ケラウェイ(ピアノ)らが参加。このアルバムはR&Bビルボード・チャートで17位を記録し、評論家のロヴィ・スタッフはオールミュージックで5つ星のうち星4.2の評価を与えている。映画としては評価が芳しくない作品だが、ロリンズの音楽が映像に最適であることを象徴付けるサウンドトラック。もちろん、ソニー・ロリンズのジャズはBGMとしても十分楽しめる。
依然として、コンパクトな構成のアルバムをリリースするというロリンズの流儀に変更はない、シンプルな7曲が収録されている。そして、ビバップ、ハード・バップを徹底的に追求したサクスフォン奏者の集大成のような意味を持つアルバム。長い歳月を経て、チャールズ・ロイドのように渋さのある演奏法をロリンズは選び、円熟味のあるモダン・ジャズを完成させている。それに加えて、ロリンズは20世紀のミュージカルのような音楽性をジャズに付加している。取り分け「I See Your Face Before Me」は、静謐な味わいを持った素晴らしいナンバーである。
ニューアルバム『Rose Main Reading Room』では、前作とは対象的に「ニューヨーク的な作風になった」とスティーヴンスは説明する。本作にはNYの都市の洗練性や歴史的な文化性が反映されているほか、ウォーホールのポップアートのように「音楽自体をどのように見せるべきか?」というイデアが従来のスタイルとは違うニュアンスをもたらしたことは疑いがない。
『Rose Main Reading Room』は発売後、世界の熱心な音楽ファンの間で少なからず注目を集めている。事実、米国のオルタナティヴ・ポップの潮流を変えてもおかしくない画期的なアルバムだ。
ーーこのアルバムの主なテーマはニューヨークの歴史文化、より厳密に言えば、''アメリカ自然史博物館''のようです。 「Central Park West」のミュージックビデオもジョン・レノンが登場したり、古いセントラルパークの映像がとても印象的ですよね。この歴史的な興味やインスピレーションはどこからやって来たのでしょう? 音楽やビデオで表現したかったことは何ですか?
『Pad』は、文字通りフリンストーンズのようなミッド・センチュリーのヤシの木のようなエネルギーに満ちているから、おそらく最もLAにインスパイアされたレコードだったと思う。それでも、あのレコードを作った時、ロンドンで全部の音楽を作っていたショーン・オヘイゲンにインスパイアされたから不思議だった。『Rose Main Reading Room』は、自分にとってはロサンゼルスっぽくないかなあ。どちらかというと、かなりニューヨークっぽいかもしれない!!
■ Peel Dream Magazine 『Rose Main Reading Room』 Launched on September 4 via Topshelf
Tracklist:
Dawn
Central Park West
Oblast
Wish You Well
Wood Paneling, Pt. 3
R.I.P. (Running In Place)
I Wasn't Made For War
Gems and Minerals
Machine Repeating
Recital
Migratory Patterns
Four Leaf Clover
Lie In The Gutter
Ocean Life
Counting Sheep
■Episode In English
LA-based Peel Dream Magazine brings a new concept to the idea of pop music in the United States. The group is newly signed to Topshelf Records and has begun work on a new album. PDM is currently based on the West Coast, but Joseph Stevens, songwriter and a pillar of the group, grew up in the area near Central Park in New York City.
The songwriter recalls that the previous album, “Pad,” had a Los Angeles feel, but the new album, “Rose Main Reading Room,” has a New York style. Like Andy Warhol's pop art, the theme of “how to present the music itself” has definitely brought a different nuance to this album. ''Rose Main Reading Room” has attracted the attention of avid music fans around the world, and is, in fact, a landmark album that will change the tide of alternative pop in the United States.
The songwriter recalls that their last album, “Pad,” had a Los Angeles feel to it, but with their new album, “Rose Main Reading Room,” they have tackled a New York style album. There is no doubt that the theme of “how the music itself is presented,” like Andy Warhol's pop art, brings a different nuance to this work. Rose Main Reading Room has garnered attention from avid music fans around the world, and in fact, it is a groundbreaking album that will change the tide of alternative pop in the United States.
In this Q&A interview, we were able to ask Joseph Stevens to elucidate his latest album. In the process, the idea of “graduating from medium-fi + alpha” emerged. Furthermore, I felt that I could catch a glimpse of the theme of “breaking away from the music of the post generation” in the conversation. You can read the episode in both Japanese and English below.
--”Rose Main Reading Room”, fourth full-length album, was released on September 4. It has been two years since your last album, but from what I have heard of the preceding singles, I feel that the album has improved as if it were different. Were there any major changes in the songwriting or production process?
Peel Dream Magazine(Joseph Stevens): Yes and no. I feel like I am always re-working my songwriting approach a bit with every record, but I didn’t take a dramatically different approach with these songs than anything I’ve done in the past. I write alone, usually at home, and build out demos that serve as starting points for the actual recordings.
On ''Pad'' I wrote primarily on organ, and on this record I primarily wrote on guitar. The harmonic sensibility of the new record is much more straight-forward than it was on Pad, which had more of a mid-century baroque pop / bossa nova feel. On most of my previous records, I did every single thing at home, but on this one I went into a few studios around LA to record specific instruments, and we also recorded drums and miscellaneous things live at our drummer Ian’s parents’ garage in the Valley (a part of LA).
I also worked on a lot of vocal parts in real time with Olivia when we were recording, which led to some spontaneous developments that wouldn’t have occurred otherwise. This record is definitely the most collaborative record to date, and has the most live-recorded sounds of any Peel Dream Magazine record yet. A lot of the subject matter is more personal and direct than it has been in the past. I didn’t want everything to be esoteric, I wanted to talk about some simple memories, and some warm feelings I have surrounding New York City.
--The main theme of the album seems to be the history and culture of New York City, especially the ''American Museum of Natural History.'' The music video for ''Central Park West'' also features John Lennon and impressive images of old Central Park. Where did this historical interest and inspiration come from? What did you want to express in your music and video?
Peel Dream Magazine:I’ve been going to Central Park since I was a baby, so it has a really special significance to me. It’s wrapped up in the wondrous whirlwind of New York City but it’s also wrapped up in my own life.
I have always liked the way New York City carries an “ancient-ness” that puts it on par with other great cities throughout human history. There’s a wonderment there, and a democratizing, optimistic feeling when you see all of these institutions that are available to the public for free, helping to enrich peoples’ lives and pass along pieces of history and art. I think art and culture sometimes seem so cheap and perilous in the modern age, but when you’re able to visit these great cultural capitals of the world, you’re able to interact with art and culture in a way that feels timeless and trustworthy.
I want to lead a life that is full of wonder and sophisticated fun, and New York is a great vehicle for that sort of thing. There’s a few songs that reference New York or the American Museum of Natural History, and I wanted to take listeners through little tours of the city with them.
Central Park West is just a first person account of me wandering through a few of the city’s great cultural institutions. With the music video, I wanted to convey this endless ocean of humanity that traverses the streets of NY - all different kinds of people - and to showcase the quirks and touchstones of the city in a dry, fun way.
ーーThe addition of Olivia's vocals this time around seems to have given the songs a more glamorous feel. If you had to name her greatest contribution regarding the new album, what would it be?
Peel Dream Magazine: Well, I think that Peel Dream Magazine is actually best when there are more voices than just mine - and I think the male-female vocal duality is really central to the overarching sound, which is rooted in shoegaze and english twee, where male-female vocals are always a cornerstone.
Having Olivia on the record allowed us to create these lush vocal backing parts such as on ''Oblast'', and it allowed us to include songs where my vocal range wasn’t really suited to the melody, because she could either take the lead vocal or do a duet kind of thing. Her greatest contribution is that musicality and versatility.
--When Peel Dream Magazine first debuted, you were doing lo-fi style rock like ”Yo La Tengo”. the band's style has changed a bit since around 2018, is it safe to assume that this is a reflection of your musical taste at that time?
Peel Dream Magazine: Yea definitely. I have phases where I’m compelled to make completely different kinds of music, and it’s important to me that I just follow my nose and make what I want. When I made the first record, I was very influenced by the Velvets, Nick Drake, Stereolab, Belle and Sebastian, My Bloody Valentine, and to a lesser extent yea, Yo La Tengo.
I would say the music I’ve made in the past hasn’t really been lo-fi by design - it’s more just that I’m a home recordist so they usually turn out kind of “medium-fi”. In the past I really had no idea what I was doing, but I’ve learned a lot about production since then, and I would say I’ve graduated to “medium- fi plus”
--What about influences from other cultures and mediums? I understand you are interested in New Age thought and Native American traditionalism?
Peel Dream Magazine: I can see why you might think that here and there about New Age and Native American stuff from some PDM songs - but other than some historical interest and curiosity, I wouldn’t really say that’s true. Sometimes I like to play off the “hippy zeitgeist” a bit, which kind of involves those things.
I’m trying to think of cultures and mediums that do directly inspire me, though. All kinds of art, for sure. Really good film is always inspiring because, like my music, it’s a pop medium that can be used to play out experimental themes to unsuspecting people.
And you can have a fun conversation through art in that way. I’m really inspired by history and politics (weirdly), and I’m always inspired by stories from the past that provide new context to the present, or challenge some kind of set idea that was in my brain.
--What was the most important aspect of the production process for this album? And what would you say are the crucial differences from your third album?
Peel Dream Magazine: I would say the biggest aspect of the production process was trying to rely on live performances as much as possible and step away from MIDI/virtual stuff when I didn't need it. So mostly live drums, piano, mallet instruments, woodwinds, and of course live guitars. Also the choice of classical guitar - not for bossa-ish parts but more for folky indie rock kind of stuff.
And going to a few outside places to record - two studios in LA and this garage we recorded in. All of that took me out of my bedroom, and out of my virtual instrument habits, and out of my own head. That’s all crucially different from ''Pad'', which was done completely at home and with tons of virtual instruments. Olivia’s voice also presented a big production shift away from ''Pad''.
--Are the band members in LA right now? If you were to look for something Los Angeles-like in the music of Peel Dream Magazine, what would that be?
Peel Dream Magazine: Yea the band is definitely LA-based right now. I’m not sure if there is anything that is overtly Los Angeles-like about my music, to be honest. Maybe!!
I don’t think about that sort of thing when I make music, and I feel attached to different music scenes in different places all over the world, and from different time periods.
''Pad'' is probably the most LA-inspired record because it literally has Flinstones-y mid-century palm tree energy - but it’s funny because I was very inspired by Sean O’Hagen when I made that record, who was making all of his music in London. ''Rose Main Reading Room'' isn’t super LA-ish to me. If anything, it's pretty New York-like!!
(INTERVIEWED: MUSIC TRIBUNE PRESS 2024. September 6th)
01. Movie Light (My Favorite Things Ver.) 02. Synergy (My Favorite Things Ver.) 03. 目の下 / All My Feelings are My Own (My Favorite Things Ver.) 04. うつむき / Look Down (My Favorite Things Ver.) 05. 白い椅子 / Sitting (My Favorite Things Ver.) 06. Kizaki Lake (My Favorite Things Ver.) 07. Side Step (My Favorite Things Ver.) 08. Reebok (My Favorite Things Ver.) 09. 素直 / Selfish (My Favorite Things Ver.) 10. Your Favorite Things (My Favorite Things Ver.)
新譜『Moon in Gemini』では、『in february』や『Peaches』で聴かれた想像力豊かなインストゥルメンタル・テクスチャーをベースに、よりヴォーカルを前面に押し出したサウンドを披露している。民謡の形式を彷徨いながら、イシクは自然のイメージと人生に対する素朴な考察に溢れた愉快で風変わりな物語を語り、多くのトラックで再びスペフィと共演することになった。気まぐれなアンビエント表現が2人のソングライティングに織り込まれ、これらの音のスクラップブックは、限りない遊び心の中でゆがんだり揺れたりする。
イシク・クラルの構築する電子音楽は、IDMに属する。そして、知的な創造性を掻き立てるものでありながら、深い情感を呼び覚ますものでもある。何より、イシク・クラルの導き出す電子音楽は、水のように柔らかく、秋風のように爽やかだ。さらに何より重要なのは、彼の音楽の中には、グラスゴーの緑豊かな風景や教会のような光景、そして同じように、ケルト民謡の原初的な魅力が含まれるということである。「1- Body Of Water」では、アコースティックギターの演奏をもとに、電子音楽のキラキラとしたマテリアルを配して、そして木管楽器の演奏を付け加える。そして、パンフルートのような音色をベースにしたシンセリードを古めかしいオルガンに見立て童話的な音楽世界を築き上げていく。スコットランドの美しい風景や和やかな光景をかなり見事に電子音楽という形で縁取ってみせている。喧騒から解き放たれ、そして「内的な静けさ」を思い出すための音楽であり、それはまた瞑想的な感覚に充ちている。
イシク・クラルの表現する童話的な世界は、さながら絵画を描写的な音楽として切り取ったかのようであり、アルバムの中盤で、その物語は広がりと奥行きを増していく。「3- Almost A Ghost」に見受けられるように、彼の描く幽霊は、カンタベリーの大聖堂に出没するようなおぞましいものではなく、妖精やピクシーのような、いたずら好きの少し可愛らしいお化けである。それはまた、「指輪物語」に登場する民間伝承の考えに近い。それらは、ぼんやりとしていて、抽象的であるが、ヘンリー・ダーガーが絵本で描いたような天使的で祝福的な音楽という形で部分的に出現する。同じように、リュートのようなギターの響きを基に、ピアノの断片的な演奏やボーカルのコーラスをミュージック・コンクレートとして散りばめて、色彩的な音楽の世界を構築していく。それらに脚色的な効果を添えるのが、ハープのグリッサンド、オーケストラのグロッケンシュピール、そしてアーティスト自身のボーカルである。これらの器楽的な音響効果は、実際の音楽性に制作者が意図する幻想的な感覚を付与し、ピクチャレスクな効果を及ぼすことに成功している。最終的には、mum(ムーム)のような可愛らしいおとぎ話の世界を作り上げるのだ。
「Prelude」
これらの童話的な音楽と並行して、アンビエント・ピアノの作風に転じる場合もある。続く「4- Grown One Lotta」では、ウィリアム・バシンスキーの「Reflection」のようなピアノのミニマリズムを参照しつつ、緻密でありながら先鋭的な作風を作り上げる。ヒップホップやブレイクビーツの編集的なサウンドをピアノの音響効果に適用するという側面では、ブルックリンのラップカルチャーに触発されたバシンスキーの現代的なアンビエントの延長線上に属する。短いピアノのサンプリングの素材も、イシクの手に掛かると、アナログレコードの音飛びのようなブレイクビーツの原初的なDJの手法によってトリップ感のあるアンビエントに昇華される。いわば童話的な音楽を制作する作家クラルは、「ストリートの音楽とオーケストラホールの音楽を結びつける」という画期的な作曲法を、この実験的な音楽の中で実践しているのである。
「6-Redcurrents」は、教会から一歩外に出て、鳥のさえずりや木々のざわめきを目に止める時のような安らぎが込められている。イシク・クラルの電子音楽は一貫して「穏やかな平和」をモチーフにしており、それらはリンゴの実が木から落ちる時、重力の概念を発見したニュートンのような気づきと発見に満ちている。実際的には、パルス音をドローンのように連続させているが、やはり聞き苦しいものやざわめきやノイズからは一定の距離を置いており、内的な静けさと瞑想性にポイントが置かれている。最終的に、精妙な感覚を持つ重層的なサウンドスケープが曲の最後に鳴り渡る頃には、この音楽作品がバレエや劇伴のための音楽という副次的な役割を持つ作品なのではないかと思わせるものがある。電子音楽としての前衛的な試作は、続く「7-Mistaken for a Snow Silent」にも見出すことが出来、水のような音のサウンドデザイン、リング・モジュラーによる色彩的な音の構築、そして、ピアノの断片的なサンプリング、アコースティックギター、そして、イシクのボーカルという多角的な構成要素によって、遊び心のある音楽が作り出されている。聴いているだけで、何だか優しい気分に浸れるような稀有な音楽である。
情景的な音楽は、それ以降も続いている。グラスゴーの村の小さなお祭りのようなワンシーンを電子音楽で縁取った「8-Gul Sokagi」は、ケルト民謡を題材に、リュートのようなギター、生活風景の反映であるフィールド録音、木管楽器やアコーディオンのような音色を交えて、夢想的で童話的な音楽世界を見事に築き上げている。これらは、東ヨーロッパの民謡をスコアとして実際に取材をして集めたバルトークのような音楽的な手法であるが、クラルの場合は、より聞きやすくて親しみやすい。そして、ターンテーブルの音飛び(チョップ)の技法を交え、それらをモダンな作風に置き換えている。「9-Stem of Water」は、やはり同じように童話的で可愛らしい雰囲気をボーカルとして反映した一曲で、パンフルートの音色でこれらの夢想的な感覚を押し出している。それは同時に、緑豊かな土地に流れる川のせせらぎのような清々しさと安らぎに浸され、音楽そのものが一つのストリームのようにゆったりと流れていく。
アルバムの後半では同じようにフィールド・レコーディングとピアノの演奏の要素をかけ合わせ、「10-After a Rain」に見出されるような情景的な変遷を描き出そうとしている。これらは、2010年代のフォークトロニカ/トイトロニカのような音楽性と結びつき、アルバムの音楽世界を深化させる。その音楽は、ピアノやハープのサンプリングを多角的に配置することで、やはり色彩的な感覚に縁取られ、サウンド・デザインに近い指向性を持っている。終盤では、これらの音楽性が停滞したり、マンネリズムに陥る場合もあり、それがリスニングの際の難点となるだろう。その一方、その安らいだ電子音楽は、治癒の音楽ーーヒーリングーーに近い意味を帯びる。「11-Behind The Flowerpoint」は、JSバッハの「平均律クラヴィーア」を電子音楽に置き換え、それらをボーカルトラックとして組み替えるという実験性が込められている。
その後の2曲では、鳥をモチーフに美麗な音楽が作り上げられる。イシク・クラルの作曲家としての未知なる可能性が示されたのが「12-Daydream Birds」である。オーケストラ・ストリングのレガート、木管楽器のトレモロの組み合わせは、最終的に民族音楽のエキゾチズムを呼び覚まし、さながら南国のような場所で鳥たちがゆっくりと空に羽ばたいていくような奇異なサウンドスケープを呼び起こす。「13-Birds Of Evening」でもフルートの演奏とハモンドオルガンのような音色を緻密に組み合わせ、至福のひととき、芳醇な時間を作り上げる。ミニマル音楽の範疇にあるが、これらの音楽の最大の弊害である気忙しさはなく、伸びやかで開放的な気風を感じさせる。