Roger Eno 『The Skies: Rarities』 

 


Label: Deutsche Grammophon

Release: 2024年9月27日

 

 

Review

 

 

ロキシー・ミュージックのメンバーであり、その後、名プロデューサー、そして、アンビエントの先駆的な活動、あるいは環境音楽の制作等、近年では、インスタレーション展など多岐にわたる分野で活躍するブライアン・イーノと、その弟であるロジャー・イーノは、ギリシャ/アクロポリスでのライブを共に行ったりというように、単なる肉親以上の強いきずなで結ばれているのかもしれない。しかしながら、両者の経歴はまったく異なる。いわば、ベルリン三部作などボウイのプロデューサーとしての表情を持つブライアンとは異なり、ロジャー・イーノは華々しさとは無縁の一般的な人生を歩んできた。肉屋で勤務した給料を基にアップライトピアノを購入し、それで演奏を始めた。おそらく、音楽を始めたのは一般的な人々よりもおそかったはずだ。

 

 

ロジャー・イーノという作曲家は、とても不思議な人物である。いわば、それほど専門のミュージシャンとしては華々しい経歴を持つわけではないにもかかわらず、それに近い活躍をしてきた音楽家のような風格がある。それはもしかすると、いついかなる時代も、兄弟の音楽に耳を澄ませてきたからなのかもしれないし、また、その他にも多様な音楽を聴いてきたからなのかもしれない。少なくとも『Rarites』は、無類の音楽ファンとしての姿、そして音楽者としての姿、この2つを持ち合わせる作品である。このアルバムには、ベルリン・スコアリングの協力のもと制作されたオーケストラのための楽曲、クワイアを元にした重厚な声楽作品、それから、Harold Budd(ハロルド・バッド)やPeter Broderick(ピーター・ブロデリック)の主要な作品を彷彿とさせるピアノの細やかな小品が収録されている。そして、このアルバムのリスニングを行う上で、音楽そのものの純粋な楽しみのほかに、もうひとつ見過ごせない箇所や、素通り出来ない点があるのにお気づきだろうか?


それは、これらの作品は、基本的には即興演奏により制作されたこと、そして今一つは、その後の「クリア」という作曲家の考えを経て制作され、余計な付加物や夾雑物を削ぎ落とすというプロセスである。近年の音楽で問題視すべきは、選択肢があまりに増えすぎたせいで、猫も杓子も音をゴテゴテにし、派手にし、脚色しすぎるということだろう。それらの変奏的な作法やプロデュース的な脚色は、確かに現代のレコーディングの醍醐味でもあるのだが、物事を核心を覆い隠したり、本質を曇らせたり、濁らせたりすることに繋がる。それらが昂ずると、いわば音楽は濁った水になり、さらには薄汚い不純物だらけになる。例えば、川や海にたくさんのゴミがプカプカ浮かんでいるのを見て、「美しい」と言う人はいるだろうか? ジャンルを問わず、多彩な脚色を施すことは避けられぬが、少なくとも、本質を暈したりするのは得策とは言えまい。また、それらを覆い隠したりするのもまた言語道断と言うべきだろう。プロデュースや編曲は、本質を強調するためにあり、本質をすげ替えたりはできないのだ。

 

 

ロジャー・イーノは、一般的な音楽家であるにとどまらず、「純粋な表現者」であると言える。それは、彼の音楽が単なる未然の時代の復権や模倣に終わらず、制作者としての概念を音楽に浸透させているから。それは思考形態としての塑像が音楽を通じて作り上げられるかのようであり、見方を変えれば、音楽全体がそれらの概念形態の象徴となる役割を持つのである。こう言うと、大げさになるが、少なくとも、それがモダン・クラシカルとして聴きやすい形に昇華されているのは事実だろう。現代的なクラシックの一つの潮流である「ポスト・クラシカル」の流れを汲み、アンビエントや電子音楽と結びつけるという意味では、坂本龍一のピアノ作品に近いニュアンスがある。もちろん、これらのポスト・クラシカルの作風の普及に率先して取り組む演奏家の多くは、古典音楽を博物的なアーカイヴに収めるのを忌避し、現代的な枠組みの範疇にある一般的な音楽として普及させようと試みる。要約するに、彼らは古典音楽が「現代の音楽」ということを明示するのである。換言すれば、坂本龍一の遺作『12』のレビューで書いたように、「ポピュラーのためのクラシック」に位置付けられるかも知れない。これは実は、一般的にフォーマルなイメージがあるクラシック音楽は、時代の流れの中で、王族の権威付けや教会組織のための音楽から、一般大衆のための音楽へと変遷してきた経緯があるわけなのだ。そのことをあらためて踏まえると、ポピュラーのためのクラシック音楽が台頭したのは、自然の摂理と言えるかも知れない。今やクラシックは、一部の権力者のためだけの音楽ではなくなったのである。


「Breaking The Surface」は、サミュエル・バーバーの作風を思わせる重厚なストリングスのレガートで始まるが、その後には、映画音楽の演出的なスコアや、それとは対極にある室内楽のための四重奏のような変遷を辿っていく。ストリングスは、感情的な流れを象徴付け、悲しみや喜び、その中間にある複雑な感情性を、現代的な演奏効果を用いて表現している。まるでそれは、音楽的な一つの枠組みの中で繰り広げられる多彩性のようであり、それらが絵の具のようにスムーズに描かれる。表面的にはバーバーのように近代的な音響性が強調されるが、一方、その内側に鳴り渡る音楽は、JSバッハの室内楽やアントニオ・ヴィヴァルディのイタリアン・バロックである。この曲は、近年、ギリシア/アクロポリスの公演等の演劇的な音楽の演奏の系譜に属する。


「Patterned Ground」は重厚なクワイアを用いた楽曲で、楽曲の表面的なモチーフは、聴き方によってはブライアン・イーノのアルバム『FOEVEREVERNOMORE』の作風に近い。しかし、同時に独自の音楽的な表現が見出せる。メディエーションやドローン風の通奏低音を強調する声楽、対旋律を描く低音部のストリングスの対比的な構造性が瞑想的な雰囲気を帯びる。この曲は、アンビエントをクラシック側から見たようなもので、電子音楽の未来が予兆されている。

 

ロジャー・イーノの音楽者としての作風は、現時点では、オーケストラとピアノという2つの側面に焦点が絞られているようだ。重厚で荘厳な雰囲気を帯びる最初の2曲でアルバムのイメージを決定付けたあと、 アメリカの伝説的な実験音楽家ハロルド・バッドの系譜にあるピアノ曲を展開させる。そして、現代的なポスト・クラシカルの系譜にある作曲技法を用い、反復的な音楽構造を作り上げる。しかし、「Through The Blue」は、平板なミニマリズムに陥ることなく、一連の流れのような構成を兼ね備えている。それは水の流れのように澄みわたり、聞き手の気持ちを和ませる。全体的な主旋律と伴奏となる和音の運行の中には、バッハの平均律クラヴィーアのプレリュードの要素が含まれている。しかし、それらは飽くまで、簡素化、及び、省略化された音楽として提示される。ここに、音を増やすのではなく、「音を減らす」という作曲家の考えがはっきりと反映されている。それは、気忙しさではなく、開放的なイメージを呼び起こすのである。

 

続く「Above and Below」は同様に、ブライアン・イーノとハロルド・バッドのアンビエント・シリーズの影響下にあるピアノ曲。しかし、おそらく制作者は、音楽の構造性ではなく、音楽の中にある概念的な核心を受け継ごうとしている。 アンビエントの核心は、単なる癒やしにあるのではなくて、松尾芭蕉の俳句のように、気づきや知覚、自己の実存と宇宙の存在の対比や合一にこそ内在する。つまり、抽象的なシークエンスの中に、一点の閃きのような音が導入されると、それまでの静寂に気づくという意味である。例えば、「サイレンス」を説明する際に、現代音楽家のジョン・ケージは、モーツァルトの楽曲に準えたことがあった。それは表向きの概念とは異なり、「内側の静けさ」に気づき、それはいかなる場合も不動であることを意味する。それはまた、哲学的にいえば、自己の本質に気づくということでもある。この点を踏まえて、ロジャー・イーノさんは、サイレンスという概念に迫ろうとしている。この曲に接すると、いかに自分たちが日頃、異質なほどの雑音や騒音の中で暮らしていることが分かるかもしれない。また、「本物の静けさ」とは外側にあるのではなく、心の内側にしか存在しえない。まるでそのことを弁別するかのように、制作者は内面的な静寂と癒やしを見事なまでに呼び起こすのである。

 

ピアノの演奏に関しては、フランツ・リストのような華やかな技巧が出てくることはない。しかしながら、ピアノ音楽の系譜を再確認し、それらを現代的な音楽としてどんな風に解釈するかという試作が行われていることに注目したい。 「Now And Then」は、ビートルズの新曲と同じタイトルだが、その曲風は全く異なる。フォーレの『シシリエンヌ』のような導入部のアルペジオから、表現力豊かな主旋律が導き出され、ドイツ・ロマン派と近代フランス和声の響きを取り入れ、スタイリッシュなピアノ曲を作り上げる。この曲はまた、ピアノ曲のポピュラー性という側面に焦点が当てられ、初歩的な練習曲のような演奏の簡素な技術性の範疇から逸れることはない。


分けても、ピアノ曲として強く推薦したいのが、続く「Changing Light」である。ピーター・ブロデリックの作風に近いものがあるが、二声の旋律を基に休符を取り入れて、瞑想的な感覚を生み出す。この音楽の主役は、音の間にある休符、つまり「間」であり、空間性が補佐的な役割を持つモチーフと、その間に入る低音部と組み合わされて、シンプルな進行を持つ主旋律が音楽の持つ雰囲気を強調づける。そして音の減退音を維持し、ペダルで強調させ、余韻や余白という側面を演奏を通じて強調している。これらの音の減退の過程が美麗なハーモニーを生み出す。内的な世界と宇宙の持つ極大の世界が一つに結びつくような感じで、広やかで神秘的な響きがある。この曲を聞く限りでは、必ずしも現代のピアノ曲に超絶的な技巧は必要ではないことが分かる。

 

それ以降も、サステインや休符を強調するピアノ曲が続いている。「Time Will Tell」でも同じように、減退音に焦点が置かれ、繊細な音の響きが強調される。曲風としては、坂本龍一に非常に近いものがある。何か外側から突くと、壊れそうに繊細なのだが、その内側に非常に強いエネルギーを持つ。こういった感覚的なピアノ曲が、シンプルな構成、即興演奏で展開される。 Hot Chipのジョー・ゴダードとの共同クレジットである「Into The Silence」は、まさしく、アルバムの重要な根幹となる一曲だろう。


現在、ゴダードはバンドのほかにも、プロデュースやリミックス等を中心に活躍目覚ましいが、彼の参加は現代的な電子音楽の要素をもたらしている。空のように澄明で艶やかなイーノさんのピアノ演奏に、ジョン・ゴダードは果たしてどのようなエレクトロの効果を付与したのだろうか。ぜひ、実際の作品を聴いて確かめてみていただきたいと思う。少なくとも、ロジャー・イーノは古典的な音楽をよくよく吟味した上で、それらに現代的なエッセンスを付与しようとしている。ジョー&ロジャー……。両者の息の取れたコンビネーションは本当に素晴らしい。もしかすると、ハロルド&ブライアンという伝説的なコラボレーションの次世代のシンボルとなるかもしれない。



 

86/100

 

 

  

「Changing Light」





オーストリアのインディーロックバンド、Middle Kidsに注目したい。2024年6月に、待望のアルバム『Faith Crisis Pt 1』のリリース後、全国ツアーを開催した。ミドル・キッズはダイナミックで感情に訴えかけるパフォーマンスで知られている。リード・ヴォーカルとギターのハンナ・ジョイ、ベースとヴォーカルのティム・フィッツ、ドラムのハリー・デイからなるトリオ。6月7日、彼らはソールドアウトとなったエンモア・シアター(Enmore Theatre)の公演で観客を前に演奏した。


「Ppetition」とアンセム「Dramamine」でオープニングで、Middle Kidsは、新しいレコードのほとんどとすべてのファンのお気に入りとヒット曲をカバーするセットリストを披露し、観客に歌わせた。


ボーカルのハンナ・ジョイは、群衆を見ながら嬉しそうに叫んだ。「お会いできてとてもうれしい、なんてことだ!!」2019年から全国ツアーでセットリストとパフォーマンスを洗練させてきたミドル・キッズは、「Your Love」、「R U 4 Me?」、「Mistake」、「Salt Eyes」、「Bad Neighbors」を演奏した後、ニューアルバムの曲目に戻った。彼らは曲間にジョークを言うことはせず、陶酔感を感じられるショーを提供することに専念した。「Highlands」の伝染性のあるフックで、フェスの雰囲気をもたらす直前、ストリップバックされた「All In My head」はリアルな感情がショーを美しく壊すようなセットだった。


バンドが「Edge of Town」を演奏しはじめたとき、彼らは紙吹雪でステージ演出を盛り上げる準備が整っていた。会場のオーディエンスがクレッシェンドの瞬間がライブの終了を意味することを心配する中、ハンナはオーディエンスに「5曲残っている」と伝え、彼らは高いエネルギーを維持した。「Bootleg Firecracker」、「Stacking Chairs」、「Cellophane (Brain)」、「Never Start」、「Bend」でセットを締めくくり、金曜の夜を一緒に過ごしてくれた観客に感謝をした。


ミドル・キッズが国内で愛される理由を掴むためには、レコードを聴くよりも、実際のライブパフォーマンスを見るのが最適だ。ジャングリーなインディーロックとハンナ・ジョイの高らかなヴォーカルが融合したサウンドは、オーストラリア国内のロックファンを魅了しつづけている。

 

彼らのアルバム「Today We're The Greatest」が2021年の「ARIAアワード」で最優秀ロック・アルバムを受賞したのも頷ける。ジミー・キンメル・ライブ、ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルバート、ザ・レイト・レイト・ショー・ウィズ・ジェイムス・コーデンへの出演は記憶に新しい。ミドル・キッズには、リスナーを魅了し、ファンを深く結びつけている。

 

今週末、シドニー公演の模様を収録した『triple j Live at the Wireless – Enmore Theatre, Sydney 2024』が発売された。ミドル・キッズの最初のライブアルバムで、メンバーもお気に入り。オーストラリアのインディーロックの素晴らしさを再確認する、またとないチャンスが到来した。

 

 

「Blessings」ー最新アルバム『Faith Crisis PT.I』に収録 (Lucky Numberから発売)

 

 




ノースカロライナを拠点に活動するシンガーソングライター/ギタリストであるMJ レンダーマンがが、先週末に放送された米国の深夜番組『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』でTVデビューを果たした。レンダーマンはニューアルバム『Manning Fireworks』から「Wristwatch」を披露した。アメリカーナを基調とする安らいだフォーク・ロック。


MJ レンダーマンのニューアルバム『Manning Fireworks』は、2022年に発表した『Boat Songs』に続く作品で、今月初めにAntiからリリースされた。3月、レンダーマンはコルベールに出演したワクサハッチーと共に、彼らのコラボレーション曲「Right Back to It」を披露しています。

 


「Wristwatch」


◆ MOULD  Bristol up-and-comer explains about making debut EP   -ブリストルの新進気鋭  デビューEPの制作について語る-

 



2023年、イギリス・ブリストルからフレッシュなパンクバンドがインディペンデント・レーベル''Nice Swan''から登場した。Stiff Little Fingersのような荒削りなリフ、エンジン全開で疾走するような爽快感、現代的なポストパンク/マスロックの複雑なリズム、さらには、Green Dayのようなメロディアスな要素を兼ね備えたバンドだ。まだ洗練されていないものの、今後の活躍がとても楽しみな3人組だ。


MOULD(モールド)は、ジェームズ、ジョー、ケインの3人で構成され、以前はそれぞれ別のバンドに在籍していたという。Mouldは最初の出発点であると共に現時点の彼らの''結果''でもあるのかもしれない。昨年末、デビューシングル「Birdsong」をリリースし、瞬く間に注目株の仲間入りを果たした。現在、メンバーのうちひとりはロンドンに、そして残りの2人はブリストルにいる。


バンドはシングル「Cable」、「Glow」の発表後、デビューEP『MOULD』をリリースした。ハードコアパンクやオルトロック、エモなど、彼らの音楽にはパンクに対する普遍的な愛が凝縮されている。


EPのリリース後、イギリスの気鋭のメディア、DORKでは特集が組まれたほか、続いて、彼らの楽曲はBBC 6 Musicでオンエアされた。コアな音楽ファンの興味を惹きつけることに成功している。


今回、彼らにコンタクトを取ったのは、今後どういったバンドになるかわからないところに期待し、現代のどのバンドにも似て非なるオリジナル性の高いサウンドに魅力されたからである。


フランス・パリでのライブを目前に、最も注目すべきパンクトリオの近況やデビューEPの制作について、メンバーにお話を簡単に伺いました。Q&Aのエピソードは下記よりお読み下さい。



ーー最近、あなた方は活動拠点をブリストルからロンドンに移したそうですね。最近の生活はいかがでしょうか?


Mould:  うん。ジェームズは、今ロンドンに住んでいて、ジョーと僕(ケイン)はブリストルにいる。今のところギグが目白押しでなかなか忙しくてね。とにかくEPをリリースできてとても満足しているよ。

 


ーー2023年末に 「Birdsong」でデビューし、今年8月に記念すべきデビューEP 『Mould』をリリースしました。このEPであなたがたが最も表現したかったことは何ですか?  また、どのようなサウンドを目指しましたか?


うーん。実は、特に特定の「サウンド」を追求したわけではなかったんだ。『Mould』に至るまで、実は僕たちは一緒に数々のバンドをやってきたのだから、それがようやくひとつの結果になったという感じかもしれない。僕たちは3人とも同じ音楽に影響を受けていて、音楽的な影響はかなり多岐にわたっている。それを共有しようとした感じなんだ。「注意力の足りない人向け」というキャッチフレーズをどこかで見た覚えがあるんだけど、まさしくそれが僕らの正体でもあるのさ。

 


ーーデビューEP『MOULD』のレコーディングはどうでしたか? 印象的な瞬間はありましたか??


Mould : EPのレコーディングは本当に楽しかった。ハイライトは、ロンドンのスタジオでハッリ・チェンバースと『Glow』をレコーディングしたことかな。EPの最後に収録されていて、4曲の中で一番気に入っている。ハリーとのレコーディングは最高だった!! 大きな屋上で演奏できたし、角を曲がったところにあるカフェでは巨大なオムレツが食べられたしね。理想的だったよ!!


ーーMOULDの曲作りの秘密をこっそり教えてもらえますか? 曲作りがどのように始まり、洗練されていくのか、そのプロセスについて知りたいです。


Mould: うーん、本当に曲によって変わるからなんとも言いがたい。僕(ジョー)がアイデアを持ってリハーサルに持ち込んで、それを一緒に曲にしていくこともある。

 

または、完成間近の曲を持ち込んで、皆で仕上げをしていくこともある。例えば、『Cables』は私が書いて、かなり完成された状態で持ち込んだ曲だし、『Glow』はケインのベースラインから始まった曲で、フル・ソングになるまで一緒に作業したんだ。


だから、曲作りには特定のやり方はなくて、何が上手くいくかをじっくり見ていくだけなんだ。僕たちはとてもラッキーなことに、一緒に部屋で音楽を演奏したりすることが大好きなんだ。リハーサルではたいてい、新しいアイデアのボイスノートが詰まった携帯電話を何台も持って出てくるよ。

 


ーーデビューEPを聴くと、現時点のMOULDのサウンドは、パンクからオルタナティヴロックまで、すべてを網羅しているように感じられました。普段皆さんはどんな音楽を聴いているのか教えていただけますか?


そうだね。パンク系(パンク、ハードコア、ポストパンク、ポストハードコア、マスロック、ポップパンクなど)が多いけど、結構何でも聴くよ。今はヒップホップとブラジリアンソウルを聴くことが多いかなあ。

 


ーーさて、デビューEP『MOULD』のリリース後、あなたたちはイギリスのメディアで取り上げられるなど、少なからず注目を集めるようになりましたね。将来、どんなバンドになりたいか、今後のビジョンはありますか?


たくさんのアルバムを出して、ゆくゆくはジャパン・ツアーをするようなバンドになれたらいいと思っているよ! 新曲も山ほどあるし、早く次の作品をリリースしたくてウズウズしているところさ!!

 

OUTSIDE/INSIDE SESSIONS

 


MOULD 『MOULD』EP      Now On Sale!!

  



Label: NICE SWAN

Release: 2024年8月2日

 

Tracklist:

 

1.Cabel

2.The Space You Take Up

3.Bird Song

4.Glow



 

◆Episode In English

 

 In 2023, a fresh punk band from Bristol emerged from ‘’Nice Swan‘’. The band ”MOULD” combines the rough-hewn riffs of Stiff Little Fingers and the exhilaration of a engine running at full throttle, the complex rhythms of modern post-punk/math rock, and the melodic elements of Green Day. This is a three-piece with a very promising future.


MOULD may be both a starting point and the result of the moment. After releasing their debut single ‘Birdsong’ late last year, they quickly became one of the hottest names in the game. Currently, one of the members is in London and the other two in Bristol.


The band released their debut EP, 『MOULD』, after the release of the singles ‘Cable’ and ‘Glow’. Their music is filled with a universal love of punk, including hardcore punk, alt-rock and emo.


Following the EP's release, the band were featured in the UK media DORK, and their music was subsequently aired on BBC Radio 6. They have succeeded in attracting the interest of core music fans.


We contacted them this time because we had high hopes for what the band would become and were attracted by their highly original sound, which is unlike any other band of the modern era.


Ahead of their upcoming live show in France/Paris, we were able to speak briefly to the band members about the most notable Punk Trio's recent developments and the making of their debut EP.

 

Please read the Q&A episode below.




--I understand that you have recently moved your base of operations from Bristol to London. How is life these days?


Mould:  We’re actually a hybrid of Bristol and London at the moment, James is living in London whilst Joe and I (Kane) are nestled away in Bristol. 

Life is grand, we’re busy boys at the moment with plenty of gigs on the horizon, and chuffed with the EP being out in the wilderness. 

 


--You debuted late last year with the release of "Birdsong", followed by your debut EP "Mould". What did you want to express with this EP? And what kind of sound did you aim for?


Mould: We didn’t go for a ‘sound’ particularly, we’ve been in many bands together leading up to Mould, It’s very much us, playing what we like at each other. We share the same influences and they’re pretty eclectic, we love a concise punky tune.. “for the short attention spanned” I’ve seen written somewhere. That we are. 

 


--How was the recording of your debut EP? Were there any memorable moments?


Mould: We had a great time recording the EP, the highlight would probably be recording Glow with Harri Chambers at his studio in London. It was the final one we did for the EP and it's our collective favourite of the four. We had the best time recording it with Harri - was a big fun day, big rooftop for us to play on and gigantic omelettes from the caf round the corner. Ideal. 



--Can you give us a sneak peek into MOULD's songwriting secrets? I would like to know about the process of how songwriting begins and is refined.


Mould: It changes song to song really. Sometimes I'll (Joe) have an idea and will bring it to rehearsal and we'll turn it into a full song together. Sometimes I might bring in a nearly finished song and we'll just work it out together/put the finishing touches to it. For example, Cables was one I wrote and brought in pretty fully formed and Glow was one that started with Kane's bassline and we worked on it together until we had a full song. 


So no set method really, we just see what works - we're quite lucky in that being in a room together playing music, or otherwise is our favourite thing to do and we usually manage to come out of a rehearsal with a few phones full of voice notes of new ideas.

 


--From listening to the debut EP, it seems that MOULD's sound currently encompasses everything from punk to alternative rock. Can you tell us what kind of music you usually listen to?


Mould: Yeah there's a lot of punk stuff (punk, hardcore, post punk, post hardcore, math rock pop punk all that stuff etc) but we'll listen to absolutely everything. Lots of hip hop and Brazilian soul at the moment. 

 


-- After the release of your debut EP, you guys got a lot of attention, including being featured in the UK media. Do you have any vision of what kind of band you would like to become in the future?


Mould: Hopefully one that puts out lots of albums and gets to tour Japan! We've got stacks of new music on the way, can't wait to start pumping it out.

 

リバプールのソロアーティスト、def.foが、待望のコンセプト・アルバム『Music for Dinosaurs』からの初リリースとなる画期的なニューシングル「Out of This World」をリリースし、再び聴衆を魅了する。
 
 
先行シングル「Out of This World」は、私たちリスナーを宇宙の鼓動に包まれた天空の旅へと誘い、孤独への挑戦と宇宙と時間の探求の驚きを探求する。これはdef.foの旅だが、参加への誘いは誰にでも開かれている。
 
 
トリップホップのリズム、サイケデリックなビジョン、そして通り過ぎようとしても頑なに邪魔をしないしつこいベースラインが融合したこのトラックは、息をのむような脅威を感じさせながら、まばらな暗闇からゆっくりとシフトしていく。進むしかないのだ。
 
 
「Out Of This World」は、SFと身近な人間のテーマを絡めながら、def.foの特異なスタイルの本質を捉えている。ムーディーなビートに包まれ、宇宙の揺らめくサウンドスケープに浸りながら、調和のとれたエーテルのような声のコーラスの甘いフックによって、私たちは再び高揚する。

 

この曲のアトモスフェリックなプロダクションは、def.foの正直な希望の歌詞に空間と時間を与え、この「Out Of This World」は、来たるアルバム『Music for Dinosaurs』を定義するユニークなストーリーテリングを垣間見る役割を果たす。このシングルは、シーンを設定し、アルバムの包括的な物語を照らす。

 

「Out of This World」は2024年9月27日にリリースされ、def.foのアルバム「Music for Dinosaurs」からのファースト・シングルとなる。https://def.fo から予約可能。



「Out of This World」



Emerging artist def.fo is set to captivate audiences once more with the release of his groundbreaking new single, ‘Out of This World’, marking his first release from the highly anticipated concept album, ‘Music for Dinosaurs’.
 
 
‘Out of This World‘, takes us, the willing listeners, on a celestial journey up through the beating heart of the cosmos, exploring the challenges of isolation and the wide-eyed wonder of space and time exploration. This is def.fo’s journey but the invitation to join is open to one and all.
 
 
The track shifts slowly out of a sparse darkness, with an implied sense of threat under its breath and a mesmerising, addictive blend of trip-hop rhythm, psychedelic vision and the kind of insistent bassline that stubbornly refuses to move out of the way when you’re trying to get past. You have no choice but to move along.
 
 
‘Out of This World‘ captures the essence of def.fo’s singular style while intertwining science fiction with familiar human themes. Steeped in moody beats and immersed in the shimmering soundscape of the cosmos, we’re uplifted once more by the sweet hook in a chorus of harmonic ethereal voices. The song’s atmospheric production gives open space and time to def.fo’s honest lyrics of hope and in this, ‘Out Of This World’ serves as a glimpse into the unique storytelling that defines the forthcoming Music for Dinosaurs album.
 
 
This single sets the scene and lights the lights on the album’s overarching narrative: a gripping tale set in the whenever future or past, it is the story of humanity’s desperate escape from a dystopian Mars clinging to life itself and to the hope of seeking salvation upon a utopian Planet Earth.
 
 
‘Out of This World’ is released on 27th September 2024 and serves as the first single from the album ‘Music for Dinosaurs’ by def.fo, which can be pre-ordered from https://def.fo




def.fo 『Out of This World』- New Album

 
 


 
def.foは、来る2ndアルバム『Music for Dinosaurs』でリスナーを爽快な旅へと誘う。この野心的なコンセプト・アルバムは、聴衆を火星を舞台としたディストピアの悪夢へとテレポートさせる。残された時間は僅かで、生き残りをかけて息も絶え絶えの中、住民は大胆な星間探索に乗り出さなければならない。

 
『Music for Dinosaurs』は、def.foのサウンドとビジョンにおける豊かな折衷主義、ジャンルの超自然的な融合に対する生来の情熱、そして彼が確実に知られるようになってきたポジティブな歌詞のエネルギーを際立たせている。Psychedelicfolkhop(サイケデリック・フォルホップ)」と呼べば、近いかもしれない。もっといいのは、彼に加わってその一部になることだ。『ミュージック・フォー・ダイナソー』に浸れば、それを目の当たりにし、肌で感じることができるかも。


Def.fo is poised to take listeners on an exhilarating journey with his upcoming sophomore album, Music for Dinosaurs. This ambitious concept album teleports audiences up, up and away into a howling, dystopian nightmare set on Mars, where a troubled civilisation teeters on the sharpened edge of extinction. Time runs short, and in a desperate, breathless bid for survival, the inhabitants must embark on a daring interstellar quest, ultimately discovering a hope they can cling to on their bright new Eden, planet Earth.
 
Music for Dinosaurs highlights the rich eclecticism in def.fo’s sound and vision, his innate passion for the preternatural melding of genres, and the positive lyrical energy for which he’s surely becoming known. def.fo has created his own space and that’s where he exists. Call it ‘Psychedelicfolkhop’ and you’d be close. Better still, join him and be a part of it. Immerse yourself in Music for Dinosaurs so you can see it and feel it first hand.


イギリスのマルチ奏者でプロデューサー、ウィル・ドーリーのソロ・プロジェクト、スキンシェイプ。


すでに収録曲「Can You Play Me A Song」とラヴァーズ・ロックの女王として知られ、そのかすれたソウルフルなヴォーカルが特徴のホリー・クックをフィーチャーした「Lady Sun (feat. Hollie Cook)」が配信リリースされていたスキンシェイプの最新アルバム『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』だが、ついにその全貌が解禁となった。


『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』は、これまでの彼のどの作品とも似つかない内容となっている。幼少期の思い出やエチオピアのリズムからインスピレーションを得たと言う今作は、ウィルの心の最も難解な部分にアクセスしている。


アルバムの制作中、ウィルは様々なキーボードやドラム・マシーンを実験的に使用し、それらはトーマス・ブラントの素晴らしいドラミングの上に重ねられることもあった。トーマスはウィルのライヴ・バンドの一員でもあり、スキンシェイプの常識を熟知している人物。


今作についてウィル本人は、「1990年代へのオマージュのような曲もあれば、1960年代や1970年代に敬意を表した曲もある。ただし、受け取る側によってはそういった表現だと感じ取れない人もいるかもしれない。いずれにせよ、このアルバムが楽しく、一日の流れにさりげなく溶け込むことを願っているよ」と話している。


さらに、アルバムのアートワークを手掛けたのは、2020年リリースの『Umoja』同様、日本人デザイナーのKenichi Omuraである。



【リリース情報】



アーティスト名:Skinshape(スキンシェイプ)

タイトル:Another Side Of Skinshape(アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ)

発売日:発売中!

レーベル: Lewis Recordings


トラックリスト

1. Stornoway

2. Mulatu Of Ethiopia

3. Can You Play Me A Song?

4. Lady Sun (feat. Hollie Cook)

5. It’s About Time

6. How Can It Be?

7. Ananda

8. Road

9. Massako

10. There’s Only Hope


アルバム配信中!

https://orcd.co/0db0e46



【バイオグラフィー】


ロンドンのインディ・シーンを拠点に活動するマルチ・プロデューサー、ウィル・ドーリーによるソロ・プロジェクト。2012年結成のロンドンのアート・ロック・バンド、パレスの元ベーシストとしても知られている。


これまで、ソウル、ファンク、サイケ、ソフト・ロック、ヒップホップ、アフロビートといった様々なサウンドをキャリアで築いてきた彼は、身近にある楽器はドラム以外、ほぼ全て(ギター、ベース、キーボード、パーカッション、シタール、フルート、そしてヴォーカル)自らが手がけるという、まさにマルチ・プレイヤー。2012年に4曲入りセルフ・タイトルEPでデビューし、2014年には同名のアルバムをリリース。そして、これまでにスキンシェイプとして8枚のアルバムを発表している。


2014年にはロンドンのインディー・バンド、パレスにベーシストとして参加し、2015年の『チェイス・ザ・ライト』、2016年の『ソー・ロング・フォーエヴァー』といった2枚のアルバムの制作に携わっている。その後、スキンシェイプの活動に専念するために同バンドを脱退。2024年9月に9作目のアルバムとなる『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』をリリース。その後は、UK/USツアーが決定している。

 

Being Dead


テキサスの3人組、Being Dead(ビーイング・デッド)は入り口の作り方を心得ている。彼らの新譜『EELS』の最初の数秒で、「Godzilla Rises」の明るくハードなギター・ラインは映画のような即興性を呼び起こし、海底から出現した生物がキャンディでフリーキーなストップモーションで登場する。

 

ビーイング・デッドのレコードはモザイクのようであり、テクニカラーの呪文のようであり、それぞれの曲が自己完結した小さな宇宙のようである。夢のような『EELS』は、ビーイング・デッドというデュオの深層心理をさらに探っているが、最も重要なのは、2024年、テキサス州オースティンの小さな家に引きこもっているファルコン・ビッチとスムーフィー、2人の真のフリーク・ビッチによる、喜びと予期せぬ旅である。


ジョン・コングルトン(グラミー賞受賞プロデューサー)とのレコーディングのため、彼らはロサンゼルスに2週間滞在し、出発の数日前までレコードのための曲作りを行った。コングルトンは、彼らが新しいやり方を見つけ、ソングライティングの核となる部分を何層にも剥がす手助けをしてくれた。

 

ビーイング・デッドは、デュオから、ベーシストのリッキー・モット(彼を加えたトリオに成長した。「Rock n' Roll Hurts」での笑い声で、このレコードで彼はついに不滅の存在となった。


その結果、『EELS』はよりダークなレコードとなり、より悪魔的な内面を引き出した。失恋あり、興奮あり、魅惑あり、ダンスあり.....。ファルコン・ビッチとスムーフィーは、どの曲でも同じことを2度やりたがらない。「Firefighters」のガレージロックのようなディストーションから、ハンドレコーダーで録音されたデモの形で登場する「Dragons II」まで、予想外だが直感的である。そして最も大切なのは、ビーイング・デッドが唯一無二の存在であるということ。


その動物の名前(うなぎ)が示すように、【EELS】の曲は柔和で、レコードは濁った水や奇妙な夢の中をそぞろ歩くようであり、その動きは神秘的で美しく、揺らめくような光沢を映し出す。全16曲を聴いていると、新しい洞窟を発見するような、もしくは、未知の深みに飛び込むような、それと同時に、完全にオープンハートな気分になる。


アーティストのジュリア・ソボレヴァが描いたアルバムのアートワークには、奇妙な妖怪が描かれている。それは『ビーイング・デッド』を象徴するのにふさわしく、歓迎的で遊び心のあるエネルギーを発散している。たとえ何か不吉なものがその向こうに潜んでいたとしても。



Being Dead 『EELS』  知られざるアメリカ 奇妙なユーモアの救い



 

その時代錯誤なサウンドは明らかに度を超しているが、ローリング・ストーンズの最初期のような作風は魔術的な魅力を持つ。サイケ、ガレージロック、サーフロック、ヨットロック。この3人組は持ちうる音楽的な駆使し、この世で最もマニアックなサウンドに挑んでみせている。まさしく「Desert Sand」を引っ提げて登場したBeach Fossils(ビーチ・フォッシルズ)のデビュー当時のことを想起させる。


サンフランシスコと並んでサイケデリックカルチャーの要衝地であるテキサスからは、時代を問わず、奇妙なバンドが登場することがある。ビーイング・デッドは、バットホール・サーファーズのカオティック・パンクと同じように、「一体、どこからこんな音楽が出てくるのか?」と首を傾げさせる。東海岸と西海岸の文化に絶えずもみくちゃにされ、かき回され、翻弄されつづけた挙句、「これはやばい!」と思い、生き残るために突然変異をするしかなくなった……。ビーイング・デッドは、ザ・ロネッツ、ディック・デイル、ストーンズ、ソニックス、ビーチ・ボーイズ、ラモーンズ、ディーヴォ、ディッキーズ、少年ナイフ、X、これらを全部結びつけ、西海岸の70'sのフラワームーブメントやヒッピームーヴメントを復刻しようと試みる。


本作はカルト的なレコードであることは否めない。ただ、若さゆえの馬鹿騒ぎはなく、内輪向けのナードな騒ぎ方でもんもんとしており、ある意味ではリンダ・リンダズとは正反対のサウンドで、万人受けはしない音楽なのかもしれない。笑い方も「ハハハ」ではなく、「ヘヘヘ」といった照れ笑い。しかし、最初の内的なエナジーは16曲を通じて、まったく印象が変化していき、本作の最後では晴れやかな印象を持って終わる。卓越性や商業性を度外視した上で、心ゆくまで彼らが理想とする音楽を追求した結果が、このアルバムには顕著な形で表れている。

 

『EELS』のアルバムのアートワークに描かれているのは、地球外生命体のようでもあり、可愛らしい怪物のようでもある。頭上に奇妙な電飾を持ち、また、同じような不思議な生物を従え、解釈次第では、奇妙な存在感を際立たせている。しかし、これらの奇妙な化け物たちは、なぜか、オディロン・ルドンが描き出す怪物のように、不気味で恐ろしくも可愛らしい感じがある。奇異な存在なのに、なぜか温かさに満ちている。これはトリオの音楽性にも当てはまる。そして、タイトルのウナギのように、3人の曲や演奏、そしてボーカルが水の中を揺れ動く。それはまた未確認飛行物体が空を舞うようでもあり、海中をゆらめく海藻のようでもある。

 

 

これらのカルトロックは、アンダーグラウンドに潜り続けたことで生み出されたものである。彼らは深く潜りすぎたため、地上に戻ってこられるかが不透明であるが……。また、同時に、東海岸と西海岸の音楽が徹底して未来か過去に潜っていく中、もうひとつの知られざるアメリカの姿を、トリオは本作の音楽に反映させている。彼らは、バイラル・ヒットやインスタ映えから目をちょっとだけ背ける見栄や体裁とは無縁の愛すべきタイプだ。ナード・ロック、そう言えば身もふたもないかも知れないが、ある意味では、現代の多くのオルタナティヴロックバンドが忘れてしまった何かを持ちあわせている。オルタナはヒップであるのはかなり例外的であって、本来は内輪向けのためのものであることを忘れてはいけない。そういった中で、ビーイング・デッドはあらためて最初期のガレージ・パンクのような形で、ロックの魅力に迫ろうとする。もちろん、それは内輪向けの音楽の延長線上にあり、それ以外の何物でもないのだ。


そういったマニア向けの音楽に親しみやすさと近づきやすさをもたらしているのが、60、70年代のシスコのサイケや、あるいはカルフォルニアのフラワームーブメントのようなヒッピーやラブ・アンド・ピースに根ざした平和主義的な考えだ。これらは西海岸の文化への親しみを表す。これらの文化はほかでもなく、資本主義社会が先鋭的になっていく中で、金銭的な価値とは相異なる新たな発想を追求しようというのが至上命題であった。その中にある共同体やリベラル思想は飾りのようなもので、これらの文化の核心にあるわけではなかった。UCLAの学生は、ヘッセの急進的な小説「荒野のおおかみ」に触発され、組織に属さないDIYのスタンスを保ちながら、これらの新自由主義の根本を構築しようとしていたのだった。それはある意味では、資本主義社会の基本的な構造である「ピラミッドの階層」への強固な反駁を意味していた。それらは中世ヨーロッパの「コミューン」のような共同体としての役割を持っていたのだった。

 

 

 「Godzilla RIses」

 

 

 

アルバムのオープニングを飾る「Godzilla Rises」を聞くと、フラワームーブメントの平和主義の思想を想起させ、それ以降のニューエイジ思想の根幹をなすワンネス的な考えをふと呼び起こすこともある。これらは結末としては、レノン&ヨーコが世界的に提示したようなラブ・アンド・ピース思考へと直結した。これらの動向は、 しかしながら、資本家や大衆を操作する類の人々にとっては、都合が悪かった。そして最終的に、これらの独自の共同体は解体されることになる。また、アフリカでも同年代に、フェラ・クティ(エズラ・コレクティヴの祖である)は、独自の国家を建国していた。これもまたヒッピー主義と同じように「ハリボテで空想的」に過ぎなかったが、アフロソウルの先駆者は、表現自体が商業主義に絡め取られていくのを頑なに拒否し、アフリカの民族性がヨーロッパ主義に植民地化されぬように徹底して反抗していたのだった。つまり、クティは音楽を作っても、権力者に魂を売ったことは一度もなかった。


これらのアンチテーゼや体制に対する反抗心を持った表現者がどれほどいるのだろうか。社会に順応することを示すことだけが音楽ではなく、主流派への賛同を示すために表現があるわけでもなければ、承認欲求のためだけに芸術があるわけではない。少なくとも、「お花畑思考」とエリート主義者から揶揄されながらも、1970年代の人々は、自主性を持って生きようとしていたのだったし、従属的な存在になることを是としない思考力もあったのである。そして、このアルバムは、そういった「人間としての自律性」を再び蘇らせるものである。まるでビーイング・デッドは、マーク・トウェインの名言をなぞらえるかのように、「主流派は常に間違っている」といわんばかりに、われわれの中に内在する盲信や虚妄を打ち砕こうとするのだ。


オハイオのDEVOの前衛性、それらはイギリスのニューウェイヴ、ドイツのバウハウス運動以降の前衛主義と呼応していた。これらのニューウェイブのグループは、機械産業の中で生きる人間らしさを主張し、スチームパンクやSFのようなカルチャーを飲み込み、未来志向のサウンドを制作したが、それと同時に「ロボットにはならない」と逆説的に主張していた。それらがUSのニューウェイブ、カルフォルニアのパンクの原点になった。


「Van Goes」は、その系譜に属する。WIREの『Pink Flag』(マイナー・スレットの音楽性のヒントになった)のポスト・パンクや不協和音を踏まえ、それらを西海岸の80年代のカルフォルニアのパンクサウンドのテイストを加える。さらに、彼らはそれらを古典的なガレージ・ロック、ストーナー・ロックと結びつけて、プリミティヴなロックの魅力を呼び覚ます。さらに、2010年代のニューヨークのベースメントのサーフロックやシューゲイズとかけ合わせ、現代的なサウンドに近づいてゆく。全般的には、Wet Legのようなサウンドに接近していくのだ。

 

これらの古典的なロックのスタイルは、曲ごとに自由な気風を以て少しずつ変化していき、タイトルのウナギのように、うねうねと少しずつ匍匐前進していくような感じがある。「Blanket of my Bone」では、ガレージロックとサーフロック、「Problems」では、ビートルズのようにメロトロンを使用し、 バーバンクやマージービートをリヴァイヴァルさせる。思わず「古すぎる!」と叫びたくなるような音楽ではあるけれど、聞き入らせる何かがあるのが不思議でならない。続く「Firefighters」は、Boys、Sonicsのような最初期のガレージ・サウンドを受け継ぎ、それらをニューヨークのSwell Maps、ベルファストのStiiff Little Fingersのようなパンクサウンドで縁取っている。エッジの効いたギターにYo La Tengoのようなボーカルとコーラスが合わさる。


 「Firefighters」

 

 

 

その後、Being Deadのオールドスクールのタイプの楽曲はさらに時代を遡っていくかのようだ。それにつれて感覚としての音楽もより深い場所へと潜り込んでいく。


「Dragons Ⅱ」では、バーバンク・サウンドとサイケフォーク、「Nightvision」では、ローリング・ストーンズのフラワームーブメントのロックソングという形で続いていく。しかし、これらの曲は、単に音楽性をなぞらえるにとどまらず、これらのジャンルの特徴である若者の多感さや孤独感や内的な暗さといった感覚的な何かを巧みに掴んだ上で、ジャンクなサウンドに落とし込んでいるのが秀逸である。それは、瞑想的な感覚を擁する70年代のロックの再構成のような意味を持つ一方、ウッドストックやワイト島のライヴといった原初的な音楽フェスティバルに存在したヒッピー主義や平和主義的な思想は、ロックンロールの幻惑や陶酔へと繋がる。


「Gazing at Footwear」はサイケロックやシューゲイズの系譜にある一曲で、ボーカルも4トラックで録音したような古臭さ。しかし、同時に、ビンテージな魅力があり、フリークの心をくすぐる。そしてもうひとつのガールズバンドのような雰囲気が漂う瞬間もある。「Big Bovine」はサーフロックとカルフォルニアパンクを融合させ、アルバムの中で最も心楽しい瞬間を作り出す。

 

3人の音楽は音楽のシリアスさではなく、フランクさに重点が置かれている。そしてその気安さは時々、ユーモアに変わり、音楽の持つ開放的な感覚を象徴付ける。マック・デマルコのサイケフォークの影響を反映させた「Storybook Bay」 は、インタリュードのような役割を持つが、ボーカル曲の合間にある間奏は、彼らの音楽が自宅のガレージのライブセッションの延長線上にあることを示唆している。真面目なのか、ふざけているのか見分けづらいオペラのような声も、快活な笑いというよりも、乾いたシュールな笑いを呼び起こそうという彼らの音楽の核心を担っている。つまり、深刻になりすぎないことが、彼らの音楽を魅力的にしているのだ。


セッションの延長線上にある音楽は「Ballerina」でガレージ・パンクや、Germs、Circle Jerksのようなカルフォルニアパンクのスタイルを受け継いだオレンジ・カウンティの原初的なパンクへと変化し、LAのXのようなニュアンスを付け加えている。もちろん、これらのロックソングの基底にあるのは、ダンスのためのブラックミュージックとして勃興したロックンロールである。


これらのダンスミュージックの系譜のロールに属する「Rock n' Roll Hurts」は、最終的には「テキサスの雑多性」というバンドの重要な音楽を示し、ビーチ・ボーイズのようなコーラス・グループのサウンドや、ビバップ的なニュアンスを示している。これらは、Wrens、Yo La Tengoといった2000年代のオルタナティヴロックの系譜に属する。それにパーティサウンドのようなニュアンスを添える。しかし、それはもちろんセレブレティのために用意された音楽ではない。どちらかといえば、ナード、あるいは社会的なオタクのためのパーティソングなのである。

 

音楽の表現性が強ければ、救いがあるというものではない。もちろん、扇動的であるとか、即効性があるというのも、一元的な指標に過ぎないのではないか。確かにヒップなポップスは、耳障りがよく、聴きやすく、親しみやすく、乗りやすいというように、多数の利点があることは確かだが、音楽にしても、ミュージシャンにしても、使い捨てになる恐れがあるのではないか。音楽の最大の魅力は、「一般性」にあるにとどまらず、それとは対極の「独自性」に宿る場合もある。それが一般的に知られざるものであればあるほど、何らかの副次的な意義を持ちうる。 


ポピュラーであれ、ダンスであれ、ロックであれ、そういったコアな音楽は、まず間違いなく商業音楽の基盤を支える重要で不可欠な存在でもある。Being Deadは、ジョン・コングルトンの助力を得て、オルタナティヴの核心を捉え、カルフォルニアの音楽に親しみを示し、サーフロックやパンクロックの側面を強調する。「Love Machine」は、少年ナイフの次世代のガールズパンクの象徴的なアンセムとなりえるし、「I Was A Tunnel」は、ベッドルームポップの知られざるローファイな側面を生かした夢想的なインディーフォーク、ドリーム・ポップの曲である。

 

彼らのフリーク性が最高潮に達するのが、本作のハイライト「Goodnight」となるだろうか。同曲は、サイモン&ガーファンクルのマイナー調のフォークソングをベースにし、軽妙なオルタナティヴロックを制作している。それに、楽しいテイストを付け加えることも忘れてはいない。そして、これらは、現代的な人々の心に深く共鳴する何かがあるかもしれない。もちろん、日本の人々についても同様である。それは、サイモン&ガーファンクルが生きていた時代の世相と、現代の世界情勢が重なる部分があるからである。このアルバムの最高のハイライトである「Goodnight」というフレーズには、言葉が持つ以上の強い迫力が込められている。

 


 

 

 

92/100 
 
 
 
Best Track- 「Goodnight」 

 
 
 
Being DeadのニューアルバムはBayonetから本日発売中です。ストリーミングはこちらから。

Peggy Gou

 

ドイツのプロデューサー、DJ、アーティストのPeggy Gou(ペギーグー)が、デビュー・アルバム『I Hear You』の拡張版をXLからリリースした。デビューアルバムとはいえ、すでに八年目の作品であるため、さすがのクオリティだった。本作にはオリジナル曲と合わせて、リミックスやエディットバージョンの楽曲が収録。今年、グーはフジロック・フェスティバルにも出演した。

 

『I Hear You - Bonus Tracks Edition』は、Koreless、Jex Opolis、そして彼女のシングル「(It Goes Like) Nanana」の 「Nanadub 」バージョンのリミックスに加え、彼女の個人的なお気に入りプロデューサー2人による限定リミックスを収録。


韓国人アーティスト(Gudu Recordsの卒業生)Mogwaaは「Lobster Telephone」を、アイルランド出身でベルリンを拠点に活動するプロデューサーSprayは「1+1=11」をリミックスしている。

 





北里彰久


昨年12月に4年ぶりのフルアルバム「砂の時間 水の街」を発表し好評を博している北里彰久が新曲「Oblivion」を配信リリースした。ローファイ風のビート、ヨットロック、R&Bのテイストを交えた渋くメロウなシングルだ。


セルフプロデュースによる今回の楽曲は、ボーカル、ギター、ベース、キーボードを北里本人が担当。


”忘却”のタイトルが彷彿とさせる、モノクロ映画のような儚く幽玄なイメージを、どこか朴訥としたぬくもりとともに絶妙なアレンジで描きだしている。


ドラム、パーカッションにはサポートメンバーとして旧知の光永渉が参加。レコーディング、ミックスは内田直之が手がけ、シンプルながらも力強い楽曲の音像に色を添えている。


カバーアートは我喜屋位瑳務の描き下ろしイラストによるもの。また、井手健介監督のMVも同日公開となる。楽曲の配信リンクと合わせて下記よりご覧下さい。


「Oblivion」




北里彰久 「Oblivion」 New Single


北里彰久「Oblivion」

[https://ssm.lnk.to/Oblivion ]

2024.09.27 Release

Released by ABS BROADCASTING / AWDR/LR2


【LIVE情報】



北里彰久とWWWによるライブ企画「One Step Ahead」を10月1日に開催!

対バンにはキセルが登場。

[ https://www-shibuya.jp/schedule/018307.php ]


日時:2024年10月1日(火) OPEN 18:30 / START 19:30

会場:渋谷WWW

料金:ADV. ¥4,000 / U25 ¥2,500(各1D代別途)

出演:北里彰久 (Band Set) / キセル


e+ [ https://eplus.jp/onestepahead1001 ]


※U25チケットは25歳以下のお客様がご購入可能なチケットです。

ご入場時に年齢確認のため顔写真付き身分証明書の提示が必要となります。

ご持参がない場合、一般チケットとの差額をお支払いいただきます。


お問い合わせ:WWW 03-5458-7685

The Cure

ゴシックパンクの帝王、そして80年代のポピュラーの代表格でもある、イギリスの名ロックバンド、The Cure(ザ・キュアー)は、16年ぶりとなるアルバム『Songs of a Lost World』を11月1日にリリースすることを発表した。バンドは、今後数週間かけて新しいトラックリストを明らかにする予定だが、本日、彼らは新曲「Alone」を公開した。以下でチェックしてほしい。


ロバート・スミスは声明の中で「Alone」についてこう語っている。"一人であること "というシンプルなアイデアで作業しながら、オープニングにふさわしい曲のオープニング・ラインを見つけるのにしばらく苦労していたんだ。レコーディングを終えてすぐに、イギリスの詩人アーネスト・ダウソンの『Dregs』という詩を思い出した。


And Nothing is Forever'と'I Can Never Say Goodbye'の2曲のライブ・ヴァージョンは、先月、限定版のエコ・ヴァイナルでリリースされた。

 

 「Alone」





The Cure 『Songs of a Lost World』


*収録曲は未公開


2008年にリリースされた『4:13 Dream』以来となるスタジオ・アルバム『Songs of a Lost World』は、制作に数年を要した。当初、2019年のリリースを予定していたが、2012年にフルタイム・メンバーとして加入して以来、リーヴス・ガブレルスをギターに迎えたバンド初のフル・アルバムとなった。

 

リリースに先立ち、バンドは2023年に33カ国90日間のライブツアー『Shows of a Lost World』でアルバムのプロモーションを行った。アルバムのリリースは2024年9月26日に正式に発表され、リードシングル「Alone」のリリースと専用サイトが公開された。アルバムのジャケットはアンディ・ヴェラがデザインし、スロヴェニアのアーティスト、ヤネス・ピルナットが1975年に制作した彫刻「Bagatelle」がフィーチャーされている。



【バイオグラフィー】


ザ・キュアー (The Cure) は、1978年に結成された英国出身のロックバンド。1978年、前身バンドとなるイージー・キュアーを母体として、ロバート・スミス、マイケル・デンプシー、ローレンス・トルハーストの三人で結成された。 翌1979年にシングル「Killing An Arab」でフィクション・レコードよりデビュー。初期はパンクを色濃く残すニューウェーブバンドであったが、メンバーの入れ替わりとともに音楽性も変遷し、現在はゴシックやオルタナティブに分類される。その活動歴は四半世紀を越えており、現在の音楽シーンの中でもその影響を受けたと公言するバンドは多い。

Oasis


先月、オアシスの2025年再結成ツアーの最初のイギリスとアイルランドの日程が発表されて以来、ヨーロッパ以外の大陸にも進出する計画があることがプレス・ノートに記されていた。


NMEは、オアシスが2025年の再結成ツアーで演奏する都市を独占的に明らかにした。オアシスは先月、待望の再結成を初めて発表し、さらにイギリスとアイルランドで長いライブを行った。彼らはこれがヨーロッパでの唯一のライヴになると明言したが、来年はいかなるフェスティバルにも出演しないものの、世界各地でのヘッドライン・ツアーは計画されていることを誓った。


さて、公式の発表は来週辺りと見られているが、ツアーに近い情報筋がNMEに明らかにしたところによると、Live '25ツアーにおいて、リアムとノエル・ギャラガーはアメリカ、南米、アジア、オーストラリアに向かうという。


全都市のリストは以下からご覧ください。(国名及び都市名 掲載順はNMEのリストに準拠)


・カナダ、トロント       

・米シカゴ

・米ニュージャージー州イースト・ラザフォード  

・米ボストン

・米ロサンゼルス     

・メキシコ、メキシコシティ

・韓国、ソウル

・日本、東京

・オーストラリア、メルボルン

・オーストラリア、シドニー

・ブラジル、サンパウロ  

・チリ、サンティアゴ   

・アルゼンチン、ブエノスアイレス



◾️

オアシスが再結成 2025年にヒートンパーク、ウェンブリースタジアムでの4公演を予定


 トム・ヨークは、依然として清新な気風を失わない稀有なアーティストである。クリスティン・ジョーンズ、スティーヴン・ホゲットが、レディオヘッドの2003年のアルバム『Hail To The Thief』によってシェイクスピアの言葉を照らし出す新しいバージョンのハムレットを共同制作した。


 この作品は、ヨークによって再制作され、ミュージシャンと俳優のキャストによってライブで上演され、2025年4月27日から5月18日までマンチェスターのファクトリー・インターナショナルの画期的な新拠点であるアヴィヴァ・スタジオで上演された後、2025年6月4日から28日までストラットフォード・アポン・エイヴォンのロイヤル・シェイクスピア・シアターで上演される。


 トム・ヨークは報道声明の中で述べている。「これは興味深く、気の遠くなるような挑戦です。Hail to The Thief』の原曲をライブ・パフォーマンス用にアレンジし、舞台上の俳優と一緒に、永遠に語り継がれるこの物語を語る。一方が他方に対してゴーストする」




 レディオヘッドのフロントマン、トム・ヨークと著名な演出家、スティーブン・ホゲットとクリスティン・ジョーンズが、レディオヘッドの2003年の有名なアルバム『Hail To The Thief』に取り憑かれたシェイクスピアの『ハムレット』を熱狂的に翻案するために制作に参加している。


オリヴィエ賞を受賞したスティーブン・ホゲットは、フランティック・アセンブリーの創設メンバーで、振付家としては『The Curious Incident of the Dog in the Nighttime』や『Black Watch』などがある。


 トニー賞とオリヴィエ賞を受賞したクリスティン・ジョーンズは、シアター・フォーワンのクリエーター兼芸術監督であり、ニューヨークの没入型ナイトクラブ体験『Queen of the Night』のディレクターでもある。振付家兼デザイナーとして、『ハリー・ポッターと呪いの子』、『アメリカン・イディオット』、『Let the Right One In』などで共演している。

 

©︎Luis Vidal


ロンドンを拠点に活動するプロデューサーでシンガー・ソングライターのLiza Lo(リザ・ロー)が、4thシングル「Gipsy Hill」を発表した。「A Messenger」、「Confiarme」「What I Used To Do」に続く作品。限定7インチも同時に発売された。アーティストサイトとライブ会場で現在販売中。


リザ・ローは、基本的にはアコースティックギターを中心とするポピュラーなフォークソングを制作している。時々、スペイン語の歌詞が登場したり、ネオソウルの要素が登場したりというように、一つの枠組みの中で自由で大らかな表現性を提示している。歌詞については、現代の多くのSSWと同様、個人的な人生や恋愛に関する思いを交えつつ、切ないナンバーを制作している。

 

UKポピュラーの新星、リザ・ローの5年に及ぶサウス・ロンドンでの暮らしにインスパイアされたという「Gipsy Hill」は、故郷のように感じていた場所からのゆっくりとした別離の感覚に焦点を当てている。アコースティック・ギターと優しいストリングス・アレンジが哀愁を漂わせる。


ニューシングル「Gipsy Hill」はアウトロのあとに余韻がある切ないバラードソングだ。オーケストラストリングスに支えられながら段階的に上昇していく旋律とスケールがソングライターの沸き立つようなエモーションを象徴している。同楽曲について、リザは次のように語っている。


「この5年間で、私は真の親友との友情から両親の結婚、そして私自身のロマンチックな恋まで、ここで変化した親密な関係の多くを失ったわ。この曲は、幼い頃の台所から、親友の家のベランダ、そしてこの変化を学ぶために対処した後の私の偏狭なコミュニケーションまでを描写した、深い悲しみに満ちた曲なの。胸が張り裂けそうになるけれど、愛とは人生において本当にすべてであり、だからこそ心に響くのだと思う。親友を突然脳障害によってで失い、これまでとは違う生き方を学ばなければならなくなった人々のための歌、それが『Gipsy Hill』なのよ」

 

10月からはUKのインストア・ツアーに出るというリザ。彼女のBandcampおよびライヴ会場限定で購入可能な7インチも本日リリースとなっているので、気になる人はぜひチェックしてみてほしい。

 


Liza Lo 「Gipsy Hill」- New Single



配信リンク:https://bfan.link/gipsy-hill


 

A. Gipsy Hill 03:54


Liza Lo: vocals


Sean Rogan: acoustic guitar, electric guitar and piano Maarten Cima: electric guitar
Tom Blunt: drums


Freek Mulder: bass guitar


Ben Trigg: cello and string arrangement


Written by Liza Lo and Melle Boddaert



B. What I Used To Do 03:04


Liza Lo: vocals


Sean Rogan: electric guitar and backing vocals


Maarten Cima: electric guitar


Tom Blunt: drums


Freek Mulder: bass guitar


Wouter Vingerhoed: synths and acoustic guitar


Hebe Vrijhof: piano


Written by Liza Lo, Hebe Vrijhof and Wouter Vingerhoed



Produced by Liza Lo and Jon Kelly


What I Used To Do co-production by Wouter Vingerhoed


Recorded at Studio 13 in West London


Mixed by Jon Kelly


Mastered by
Caspar Sutton-Jones at Gearbox Records


Photographed by Luis Vidal

 


【Liza Lo】

 

スペインとオランダで育ち、現在はロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、プロデューサー、ミュージシャン。

 

親密で詩的な独自の音楽世界を創り出す彼女は、ドーター、マロ、ビリー・マーティンなどからインスピレーションを受け、生々しいヴォーカルと誠実なソングライティングで聴く者を内省と静寂の世界へと誘う。


最新EP『flourish』は、Spotifyの「New Music Friday UK」、「NL」、「BE」にセレクトされ、「the most beautiful songs in the world」プレイリストでも紹介された。

 

今年5月にGaerbox Recordsと契約。「A Messenger」「Confiarme」「What I Used To Do」「Gipsy Hill」の4曲のデジタルシングルをリリース。現在、西ロンドンの「スタジオ13」で、ジョン・ケリー(ポール・マッカートニー、ケイト・ブッシュ)とバンドと共にアルバムの制作に取り組んでいる。

 

 

「Confiarme」- Live


Interpol


Interpol(インターポール)のセカンドアルバム『Antics』は今週金曜日(9/27)で20周年を迎える。これを記念し、20周年エディションが発売される。

 

Interpolのメンバーはイギリス出身だが、ニューヨーク大学在学中に結成された。いわば、イギリスとアメリカの気風が混在する、どのシーンにも属さないバンドだ。

 

インターポールは、アークティック・モンキーズとほとんど同時期に登場したが、ゴシックパンク的な音楽性は、2000年代当時にデビューしたロックバンドの中でもかなり異彩を放っていた。いわばインターポールの存在は、20年後のポストパンクの流行を先取りするものだった。

 

デビューから20数年を経てリマスターされたオリジナルアルバムに加え、『Antics』拡張版には、2005年9月22日にメキシコ・シティの「パラシオ・デ・ロス・デポルテス」で行われたインターポールのライヴ音源が収録される。LP3枚組には、30ページのフォトブックも付属する。パラシオ・デ・ロス・デポルテスでのライヴから「Slow Hands」を演奏する様子は以下から。


インターポールは今年、12月3日、4日のニューヨークのブルックリン・スティールでの2夜を含む、ヨーロッパ、イギリス、アメリカで『Antics』をフルで演奏する。そろそろ単独来日公演を期待したい。

 


「Slow Hands」
 

 

 

 


Interpol 『ANTICS』

1. Next Exit

2. Evil

3. Narc

4. Take You on a Cruise

5. Slow Hands

6. Not Even Jail

7. Public Pervert

8. C’mere

9. Length of Love

10. A Time to Be Small

11. Direction (Digital-only, not included in 3xLP box)



INTERPOL LIVE @ PALACIO DE LOS DEPORTES 2005 

 

1. Next Exit

2. Say Hello to the Angels

3. Narc

4. A Time to Be Small

5. Slow Hands

6. Public Pervert

7. Not Even Jail

8. Leif Erikson

9. Evil

10. Obstacle 1

11. Take You on a Cruise

12. PDA

13. NYC

14. Stella Was a Diver and She Was Always Down

15. Roland

 


 『The Antics: 20th Anniversary Edition』は、アルバム、30ページのフォトブック、そして2005年に行われたインターポールの伝説的なPalacio de los Deportesコンサートの完全録音を収録した3xLPボックス・セット。ボックスの予約は本日より開始され、11月14日に締め切られる。配送は2025年初頭を予定している。



 2004年にリリースされた『アンティクス』は、彼らの世代で最も影響力のあるバンドのひとつとしてのインターポールの地位を確固たるものにした。このアルバムのダークでアトモスフェリックなサウンドスケープとフロントマン、ポール・バンクスの特徴的なヴォーカルは、「Slow Hands」、「Evil」、「C'mere」といった象徴的な楽曲を生み出し、「Antics」は世界中のファンの共感を呼び続け、モダン・クラシックとしての地位を確固たるものにしている。


 ニューヨークで結成されたインターポールは、ポスト・パンク、シューゲイザー、ダーク・ウェーブの影響を独自にブレンドし、瞬く間に頭角を現した。デビュー・アルバム『ターン・オン・ザ・ブライト・ライツ』は批評的にも商業的にも大成功を収め、オルタナティヴ・ミュージックにおける一大勢力としての地位を確立した。2022年7月にリリースされた『The Other Side of Make-Believe』を含む7枚のスタジオ・アルバムをリリースし、高い評価を得ている。


ロンドンのシンガーソングライター、Matilda Mann(マチルダ・マン)がデビューアルバム『Roxwell』の詳細を発表した。本作は来年2月28日にリリースされる。


マティルダ・マンは、誰かを追いかけたり、追いかけられたりするタイプであるが、この数年、個人的な恋愛に纏わるいくつかの疑問をソングライティングの中で解き明そうと試みてきた。ニューシングルのテーマも同様である。マティルダ・マンは次のように説明している。「"Say It Back "とは、こんなに誰かを愛しているのに、できるかぎりのことをしているのに、なぜ彼らはまだあなたを愛し返してくれないのだろ」という、もどかしい混乱のことについて」

 

「片思いが一番傷つくのは、"追いかける "という感覚があって、それが決して報われないからなの。あなたは相手のタイプではないのでしょうか? 頭が悪い? クールなだけ? 相手のためならクレイジーなこともしてしまうほど、考えすぎてしまう」


「これは正真正銘のデビュー・アルバム。どの曲も自分の一部のように感じられ、ついに発売されることになり、本当に感動しています。様々なタイプの愛、成長し過去を振り返る経験、誰かに全力を尽くせない葛藤、過去に囚われること、変えられないものを受け入れることを探求しています」

 

ニューシングルはベッドルームポップをベースにした聴きやすいポップソング。 同じような悶々とした思いを抱えるリスナーの琴線に触れるものがあるに違いない。

 


「Say It Back」

 

 

Matilda Mann 『Roxwell』

 

Label:7476

Release: 2025年2月28日

 

*収録曲は未公開

 

 

彼女の日記に鉛筆で書き留められた歌詞から、キッチンのスピーカーでデモを演奏するまで、このアルバムはマチルダ・マンの生き生きとした姿を描いている。ロクスウェルは、長年にわたって彼女を支え続け、大人へのほろ苦い移行の紆余曲折を見てきた。このデビュー・アルバムは、親密な描写であり、無数の愛の形をとらえている。曲目はその主題と同じように様々だが、マチルダ・マンの古典的な歌詞がすべてを結びつけている。