Bartees Strange'
©︎Elizabeth De La Piedra


本日、Bartees  Strange(バーティーズ・ストレンジ)は、2025年2月14日にリリースされる3枚目のフルアルバム『Horror』を発表した。  2022年の『Farm To Table』に続く、彼の最も野心的で幅広いプロジェクトである。リードシングル「Sober」のミュージックビデオは下記よりご覧ください。(ストリーミングはこちら)



バーティーズ・ストレンジは恐怖の中で育った。  彼の家族は、人生の教訓を教えるために怖い話を聞かせ、幼い頃から、強くなる練習をするために怖い映画を見始めた。  世界は恐ろしい場所であり、アメリカの田舎に住む若く、クィアで、黒人の人間にとって、その恐怖は直感的なものである。  ホラー』は、そうした恐怖と向き合い、恐れられる存在に成長することを描いたアルバムだ。


ストレンジは『Horror』についてこう語っている。「ある意味、このアルバムは、自分たちの人生でも恐れを感じている人たちに手を差し伸べるために作ったんだと思う。私にとっては、愛、場所、宇宙的な不運、あるいは物心ついたときから苦しんできた破滅の予感。周りのみんなが同じように感じていることに気づけば、人生の恐怖や奇妙さを乗り越えるのは簡単だと思う。このアルバムは、私がつながろうとしているだけだ。世界の大きさを縮めようとしているんだ。身近に感じようとしているんだ」


本日、ストレンジ、ジャック・アントノフ、イヴ・ロスマン、ローレンス・ロスマンのプロデュースによるニューシングル「Sober」がリリースされた。ストレンジは、「この曲は、人間関係で何度も何度も挫折し、そのために酒を飲むことについて歌っている。  これはおそらく多くの人が共感できることだと思う。  恋をしていても、それをうまく表現できなかったり、うまくいっていると感じられなかったりする。 そして、愛がどのように機能するのか、より良い例を見たことがないため、これが常に対処するものであることを恐れている。このシングルは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの1974年のソウル・トレインでのパフォーマンスからインスピレーションを得たリカルド・ベタンコート監督のミュージック・ビデオと組み合わされている。



「Sober」



Bartees  Strange 『Horror』


Label: 4AD

Release: 2025年2月24日


Tracklist:

1. Too Much
2. Hit It Quit It
3. Sober
4. Baltimore
5. Lie 95
6. Wants, Needs
7. Lovers
8. Doomsday Buttercup
9. 17
10. Loop Defenders
11. Norf Gun
12. Backseat Banton


ストレンジは制作を視野に入れて、自宅スタジオでホラーの制作を始めた。  イヴとローレンス・ロスマン(イヴ・トゥモア、レディー・ガガ)とのセッションは、このアルバムのリズムとサウンドのバックボーンとなった。  ストレンジがジャック・アントノフと出会い、2人が急接近した後、ストレンジはアントノフのバンド、ブリーチャーズの楽曲を手がけ、アントノフは『Horror』を手がけた。


  2人は一緒にレコードを完成させ、生で曲を作り、編集し、アレンジし、恐怖を刺激するような服を着せた。  このアルバムを通して、ストレンジは、彼の子供時代のサウンドトラックのような音楽のパスティーシュの上に、次々と困難な真実を打ち明けている。  アルバムに収録された12曲の新曲には、父親が彼に聴かせたパーラメント・ファンカデリック、フリートウッド・マック、テディ・ペンダーグラス、ニール・ヤングといったジャンルを超えた音楽が、ストレンジのヒップホップ、カントリー、インディー・ロック、ハウスへの興味と融合している。


イギリスのイプスウィッチで軍人の父とオペラ歌手の母の間に生まれたバーティーズ・ストレンジは、オクラホマ州ムスタングに落ち着くまで、各地を転々とする子供時代を過ごした。  その後、ワシントンD.C.やブルックリンのハードコア・バンドで活躍する一方、バラク・オバマ政権や環境正義運動に携わる。最近では、アップルTVの『The New Look』やA24の『I Saw The TV Glow』など、人気のTVや映画のサウンドトラックで彼の音楽がフィーチャーされている。  また、カーラ・ジャクソンとレーベルメイトのアンジマイルとともにTV On The Radioの「Wolf Like Me」をカヴァーし、近日発売予定のレッド・ホット・コンピレーション『Transa』に収録される。

 

Maria Somerville

アイルランド出身の謎めいたミュージシャン、Maria Somerville(マリア・サマーヴィル: NTS Radioのレギュラー・ホスト)が、3年ぶりとなるニュー・シングル「Projections」をリリースした。


この切なくロマンチックなシューゲイザー、ドリームポップトラックは、ファズアウトしたベースとかき鳴らされるギターによって憧れに浸され、サマーヴィルの催眠術のような静謐なヴォーカルに支えられている。この別世界のような、うねるようなシングルは、彼女が2019年に自主リリースしたデビューアルバム『All My People』からの顕著な進歩である。



本日リリースされた「Projections」には、サマーヴィル、マイケル・スピアーズ、ロイシン・バークレーによるヴィジュアルが添えられている。


マリア・サマーヴィルは2つの単発ライブも発表した。2019年以来のヘッドライン公演となる彼女は、11月にダブリン(ワークマンズ、11月19日)とロンドン(チャッツ・パレス、11月27日)で公演する。



「Projections」

 

HINDS

スペイン・マドリードが誇る至高のフィメールガレージ・バンド、HINDS(ハインズ)がNEW ALBUM 『VIVA HINDS』を引っ提げ7年ぶりの来日が決定!


2010年代のスペインで、HINDSは男性中心のガレージロックシーンに革命を起こした4人組女性バンド。


2016年にリリースしたデビューアルバム『Leave Me Alone』で大きな注目を集め、続く『I Don’t Run』や『The Prettiest Curse』などで人気を拡大しました。日本には2016年に初来日、FUJI ROCK FESTIVAL '18 で圧巻のパフォーマンスを披露し、一世を風靡した。パンデミックや人員変更などの苦難を乗り越え、2024年に4枚目のアルバム『VIVA HINDS』をリリース。メランコリーとエンパワーメントを融合させた新たな音楽性を展開され、ゲストアーティストも迎えて、進化を遂げたHINDSに乞うご期待!


【オフィシャル先行予約】

受付期間:10/1(火)17:00〜10/14(月)23:59

受付URL:https://eplus.jp/hinds/



2025年4月


2025/04/22 (Tue) Yogibo HOLY MOUNTAIN


OPEN 18:00 START 19:00

スタンディング 前売り:¥7,500


ドリンク代別


お問い合わせ

SMASH WEST 06-6535-5569


TICKET INFO


東京公演


2025/04/23 (Wed) SHIBUYA CLUB QUATTRO


OPEN 18:00 START 19:00

スタンディング 前売り:¥7,500


ドリンク代別


お問い合わせ: SMASH 03-3444-6751


2010年代のスペインで、HINDSは男性中心のガレージロックシーンに革命を起こした4人組女性バンド。 2016年にリリースしたデビューアルバム『Leave Me Alone』で大きな注目を集め、続く『I Don’t Run』や『The Prettiest Curse』などで人気を拡大しました。 日本には2016年に初来日、FUJI ROCK FESTIVAL '18 で圧巻のパフォーマンスを披露し、一世を風靡した。 パンデミックや人員変更などの苦難を乗り越え、2024年に4枚目のアルバム『VIVA HINDS』をリリース。メランコリーとエンパワーメントを融合させた新たな音楽性を展開され、ゲストアーティストも迎えて、進化を遂げたHINDSに乞うご期待!

 Ezra Collective 『Dance, No One’s Watching』


 

Label: Partisan 

Release: 2024年9月27日

 

 

Review

 

ロンドンのジャズ・コレクティヴは、前作アルバムで一躍脚光を浴びるようになり、マーキュリー賞を受賞、もちろん、海外でのライブも行い、ビルボードトーキョーでも公演をおこなった。このアルバムは、彼らのスターダムに上り詰める瞬間、そして、最も輝かしい瞬間の楽しい雰囲気を彼らの得意とするジャズ、アフロソウル、そしてダンスミュージックでかたどっている。エズラ・コレクティヴの最高の魅力は、アグレッシヴな演奏力にあり、それはすでにライブ等を見れば明らかではないだろうか。巧みなドラム、金管楽器のユニゾン、そして旧来のソウルグループのような巧みなバンドアンサンブル、これらを持ち合わせている実力派のグループ。


もちろん、コルドソという演奏者の影響も見逃せない。彼がもたらすアフロソウル、あるいはファンク、ジャズ、ヒップホップの要素は、このコレクティヴの最大の長所であり、そしてイギリスの音楽は、スペシャルズの時代からずっと人種を越えたものであることを示してみせた。最近では、実は週末になると、プレミアリーグに夢中になるというコルドソであるが、この2ndアルバムで追求したのは、ジャズやソウル、ファンク、スカといった要素を取り巻くようにして繰り広げられるサーカスのように楽しいダンスミュージック。ただ、最もファースト・アルバムと厳密に異なる点は、ライブ向けの音楽であること、そして、シンプルさや単純さにポイントが置かれているということだろう。このアルバムではあえて、彼らのテクニカルな演奏の側面を抑えめにして、聞き手にビートとグルーヴをもたらし、どうやって自分たちのダンスの感覚と受けての感覚を共有させるのかという箇所に録音の重点が置かれているように思える。

 

前作に比べると、ビルボード贔屓のアルバムになったことは彼らの感謝代わりで目を瞑るしかない。しかし、このアルバムが、前作の音楽を薄めたポピュラーアルバムと考えるのは早計に過ぎるかもしれない。例えば、アルバムの冒頭の「Intro」を聴くと分かる通り、ダンスフロアのむっとした熱気を録音で伝え、そこからジャズのストーリーが始まる。スカのリズムはその前身であるカリプソのようなエキゾチックな空気感を持ち、やはりレコーディングにはブラックミュージックの雰囲気が漂っている。そして彼らは前作のアフロジャズの要素に加えて、キューバや南米の音楽性を今回付け加えている。そしてクンビアのようなアグレッシヴなリズムは音楽そのものに精細感と生きた感覚を付与している。続く「The Herald」でも、南米の情熱的なビート、そしてダンスの音楽性をベースにやはりリアルな感覚に充ちたジャズソングを作り上げていく。これは実は他のグループには出来ないエズラコレクティヴのお家芸なのである。


そしてジャズバンドとしてのセッションの面白さや楽しさを追求したような曲も見出される。「Palm Wine」はファンクバンドとしての性質が強く、ブラック・ミュージックの70年代のコアな魅力を再訪している。もちろん、ジャズの要素がそれらの音楽性にスタイリッシュな感覚を添えているのは言うまでもない。

 

また、今回のアルバムでは、アグレッシヴな側面のみならず、しっとりとしたメロウさが組み込まれている。「cloakroom link up」こそジャズバンドとしての進化を証だて、オーケストラストリングスの導入等、彼らが新しいステップへ歩みを進めたのが分かる。序盤で最も注目すべきは、UKのレゲエ・シーンの新星、Yazmin Lacey(ヤズミン・レイシー」が参加した「God Gave Me Feet For The Dancing」である。この曲では、「ダンスー踊り」という行為が神様から与えられたことに彼らが感謝し、そして、それらを彼らが得意とするアフロジャズによって報恩しようとする。自分たちに与えられた最善の能力を駆使して、感謝を伝えることほど素晴らしいものはない。実質的なタイトル曲は、エズラ・コレクティヴらしさが満載で、それはダンスの楽しさを、ドラム、ベース、ホーンを中心に全身全霊を使って表現しようとしているのである。

 

「Ajala」「The Traveller」「in the dance」、「N29」は連曲となっていて、彼らがクラシック音楽の知識を兼ね備えていることを象徴付けている。この曲では、アフロジャズというよりも、クンビアのような南米音楽をベースにし、自由闊達で流動的なセッションを繰り広げる。ライブ・バンドとしての凄さが体感出来、それらを艷やかなホーンセクションで縁取ってみせている。バンドアンサンブルとしては、ファンクのノリを意識し、演奏のブレイクの決めの部分、音が消える瞬間やシンコペーションの強調等、豊富な音楽知識を活かし、グルーヴの持つ楽しさやリズムの革新性を探求している。連曲である「The Traveller」は同じモチーフを用いて、バンドの演奏においてリミックスのような技法を披露している。アグレッシヴな感覚を持つ前曲と同じ主題を用いながら、エレクトロニクス、ファンクのリズム、そしてレゲエやスカのリズムを総動員して、ダンスミュージックの未来を彼らは自分たちの演奏を通して見通そうとする。


続く「in the dance」は流麗なオーケストラストリングスを主体として、ストーリー性のある音楽に取り組んでいる。バイオリン(ビオラ)、チェロのパッセージは美麗な対旋律を描き、オーケストラジャズとも呼ぶべき、ガーシュウィンの作風をモダンに置き換えたかのようである。「N29」はドラムとベースのファンクのリズムを中心として、Pファンクに近いリズムを作り上げる。ブーツィーコリンズのようなしぶといベースに迫力味があり、ドラムと合わせてこの曲をリードしていく。彼らは演奏を続けるなかで、最も心地よい瞬間、そして最も踊れる瞬間の金脈を探し当て、それらのグルーヴをかなり奥深い領域まで掘り下げていこうとするのである。これはエズラ・コレクティヴの作曲が、あらかじめ楽譜ですべて決まっているわけではなく、インプロヴァイゼーションに近いものではないかと推測させるものがある。そしてそれは実際的に音楽の持つ自由な雰囲気、そしてもちろん開放的な音を呼び覚ます力を持ち合わせている。



ボーカルを主体にしたポピュラージャズというのは前作でも一つの重要なテーマだったが、今作でもそれは引き継がれている。オリヴィア・ディーンが参加したもう一つのタイトル曲「No One's Watching Me」では、ソウルやR&Bに傾倒し、彼らがバックバンドのような役割を果たす。オリヴィア・ディーンのメロウで真夜中の雰囲気を持つ艷やかなボーカルにも注目だが、エレクトリック・ピアノ(ローズ・ピアノ)、エネルギッシュなトロンボーン、トランペット、そして、それと入れ替わるようにして加わるディーンのボーカル、これらは時代こそ違えど、ビックバンドの現代版のような趣を持ち、カウント・ベイシーのように巧みだ。音楽的には南米音楽の色合いが強く、キューバ、カリブ海周辺の熱情的な音楽の気風が反映されている。一曲の間奏曲を挟み、「Hear Me Cry」ではサンバのリズムを用い、ドラムのロールを中心にどのような即興的な演奏が行えるのかを実験している。それは背後の掛け声の録音と合わせて一つの流れを形作り、最終的にはキューバン・ジャズのようなエキゾチックな音楽へと繋がっていく。同じく、異なる地域のリズムや音楽のミックスというのが、アルバムのもうひとつの副題であるらしく、これはエズラ・コレクティブの今後の重要なテーマともなるだろう。「Shaking Body」ではスカやレゲエ、そしてサンバのリズムを組み合わせ、独特なビートを作り上げている。これらは旧時代のフリージャズのリズムの革新性の探求の時代を思わせ、それらを現代のバンドとして取り組もうというのである。しかしこの曲もまたポピュラー性にポイントが置かれている。アルバムの最もエキサイティングな瞬間は続く「Expensive」で到来する。エズラ・コレクティヴは実際に何かを体験してみることの大切さを音楽によって純粋に伝えようとしている。



アルバムの終盤に差し掛かると、かなり渋めの曲が出てくる。「Street Is Calling」はクラッシュに因んだものなのか、レゲエやスカの音楽がストリートのものであることを体現している。もちろん、それらの70年代の音楽をベースにして、ヒップホップの要素を付け加えている。スカ・ラップ/レゲエ・ラップとも呼ぶべきこの音楽は、たしかに英国の音楽を俯瞰してみないと作り得ないもので、古典的なものと現代的なものを組み合わせ、新しい表現性を生み出そうという狙いも読み取ることが出来る。本作のなかでは最もブラックミュージックのテイストが漂う。最後の間奏曲を挟んだあと、このアルバムは驚くほどリスニングの印象を一変させる。つまり、アルバムの最初の地点とゴールは音楽的にかなり距離が離れていることに思い至るのだ。

 

「Why I Smile」は本作の冒頭の収録曲と同じく、ジャジーな雰囲気のナンバーであるが、その一方でニュアンスは少し異なる。古典的なジャズやソウルの演奏を元にした序盤とは異なり、アンサンブル自体は、エレクトロジャズ/ニュージャズ、つまり北欧のジャズに近づく。この点に、エズラコレクティヴの狙いが読み取ることが出来る。それは、古典的なものから現代的なものまでを渉猟するという意図である。これはまるで、時代もなく、地図もない、無限のジャズのフィールドを歩くような個性的なアルバムということが分かる。そしてまた、ライブの空気感をかたどった曲もある。「Have Patience」は、ブルーノートのライブのような雰囲気が漂い、テーブル席の向こうにエズラ・コレクティヴのライブを眺めるかのようである。そしてアルバムのクローズではさらに渋く、深みのあるジャズの領域に差し掛かる。この曲のイントロは、ジャレットのライブのような雰囲気を持ち、ホーンセクションのアンビエントに近いシークエンスにより、うっとりとした甘美さが最高潮に達する。この曲はアグレッシヴな側面を特徴としていた前作にはなかったもので、エズラ・コレクティヴの新しい代名詞とも言えるだろう。

 

『Dance, No One’s Watching』は人目を気にせず純粋に楽しむことの素晴らしさを伝え、そしてジャズの新しい表現を追求しようとし、さらには、ストーリー的な意味合いを持っている。この3つの点において革新的な趣向がある。前作より深い領域に差し掛かったのは事実だろう。現時点では、南米的な哀愁がエズラ・コレクティヴの音楽の最大の持ち味ではないかと思われる。すべて傑作にする必要はないのだけれども、今後も凄いアルバムが出てきそうな予感がする。

 

 

 

88/100 

 

 

 

Best New Track- 「Everybody」




 

柴田聡子


10月23日にリリース予定の柴田聡子のリミックスアルバム「My Favorite Things」から、「素直 (My Favorite Things Ver.)」が先行配信。下記より配信リンクを確認してみてください。


柴田聡子「素直 (My Favorite Things Ver.)」

DDCB-12123_1 | 2024.10.02 Release

Released by AWDR/LR2

【配信リンク】:  https://ssm.lnk.to/Selfish 


作詞・作曲:柴田聡子 Lyrics & Music by Satoko Shibata

プロデュース、アレンジ:柴田聡子、岡田拓郎 Produced & Arranged by Satoko Shibata & Takuro Okada

演奏:柴田聡子 ボーカル、ガット・ギター、ピアノ All Instruments by Satoko Shibata Vocals, Classical Guitar, Piano

レコーディング・エンジニア:岡田拓郎、柴田聡子 Recording Engineer: Takuro Okada & Satoko Shibata

レコーディング・サポート:葛西敏彦、谷口雄 Recording Support: Toshihiko Kasai & Yu Taniguchi

レコーディング・スタジオ:IDEAL MUSIC FABRIK Recorded at IDEAL MUSIC FABRIK

ミキシング・エンジニア:岡田拓郎 Mixing Engineer: Takuro Okada

ミキシング・スタジオ:OKD Sound Studio Mixed at OKD Sound Studio

マスタリング・エンジニア:Dave Cooley (Elysian Masters, LA) Mastering Engineer: Dave Cooley (Elysian Masters, LA)

写真:守本勝英 Photograph: Katsuhide Morimoto

ヘア&メイク:村上四季枝 Hair & Make: Shikie Murakami

アートディレクション、デザイン:坂脇慶 Art Direction, Design: Kei Sakawaki



ソロ・アーティスト、柴田聡子にフォーカスした「Your Favorite Things」の新ヴァージョン「My Favorite Things」のリリースが決定。

共同プロデュースは、岡田拓郎。


柴田聡子「My Favorite Things」

DDCB-12123 | 2024.10.23 Release | 3,000 Yen+Tax

Released by AWDR/LR2


【PRE-ORDER】: https://ssm.lnk.to/MyFavoriteThings


01. Movie Light (My Favorite Things Ver.)

02. Synergy (My Favorite Things Ver.)

03. 目の下 / All My Feelings are My Own (My Favorite Things Ver.)

04. うつむき / Look Down (My Favorite Things Ver.)

05. 白い椅子 / Sitting (My Favorite Things Ver.)

06. Kizaki Lake (My Favorite Things Ver.)

07. Side Step (My Favorite Things Ver.)

08. Reebok (My Favorite Things Ver.)

09. 素直 / Selfish (My Favorite Things Ver.)

10. Your Favorite Things (My Favorite Things Ver.)



【柴田 聡子 SATOKO SHIBATA】


シンガー・ソングライター/詩人。北海道札幌市出身。武蔵野美術大学卒業、東京藝術大学大学院修了。

2010年、大学時代の恩師の一言をきっかけに活動を始める。

2012年、三沢洋紀プロデュース多重録音による1stアルバム『しばたさとこ島』でアルバムデビュー。以来、演劇の祭典、フェスティバル/トーキョー13では1時間に及ぶ独白のような作品『たのもしいむすめ』を発表するなど、歌うことを中心に活動の幅を広げ、2022年、6枚目のオリジナルアルバム『ぼちぼち銀河』をリリース。

2016年には第一詩集『さばーく』を上梓。同年、第5回エルスール財団新人賞<現代詩部門>を受賞。詩やエッセイ、絵本の物語などの寄稿も多数。2023年、足掛け7年にわたる文芸誌『文學界』での連載をまとめたエッセイ集『きれぎれのダイアリー』を上梓。雑誌『ユリイカ』での特集も決定するなど、詩人としても注目を集めている。

自身の作品発表以外にも、楽曲提供、映画やドラマへの出演、ミュージックビデオの撮影・編集を含めた完全単独制作など、その表現は形態を選ばない。

2024年2月28日、最新アルバム『Your Favorite Things』をリリースした。

 Kate Bollinger 『Songs of A Thousand Frames of Mind』


 

Label: Ghostly International

Release: 2024年9月27日

 

 

Review

 

ヴァージニアのシンガー、ケイト・ボリンジャーのソングライティングは、基本的に前作のEPの頃からそれほど大きな変更はなく、最初のフルレングスに受け継がれている。フレンチポップやイエイエのおしゃれさ、そして、夢見るような感覚を織り交ぜた軽快なポップスで、そのソングライティングの文脈の中には、懐かしのチェンバーポップやバロックポップが含まれている。口当たりが良いポップスで聴きやすく、実力派のシンガーであることは疑いがない。

 

ケイト・ボリンジャーは、作曲を行う際に音楽がもたらすイメージを大切にしているという。つまり、音楽が映画のようにイメージとして流れれば理想的というわけである。個人的には、ボリンジャーの音楽が呼び覚ますのは、映像のイメージというよりも、映画のサウンドトラックに近いものがあり、音楽に付随してストーリーのようなものが組み上がっていくという感じである。


おそらく歌手が理想とするのは、「Nouvelle Vague」のようなフランス・パリの最盛期の映画作品のサウンドトラックである。つまり、映像のストーリーの本筋を補強するような役割を持つのがボリンジャーの曲ともいえ、その点で、このデビューアルバムはある程度成功したと言えるのではないか。また、デビュー・アーティストとしては、平均以上のものを体現させている。そして新奇なポップスとは正反対に、懐古的なポップスという側面では、Clairoのような歌手に代表される現代の米国のポピュラーのトレンドの波に上手く乗っていると言えるだろう。つまり、流れに逆らわないで、身を任せているのが、このアーティストの音楽を魅力的にしているのだ。


同じ系譜に属するSSWとして、Dominoに所属するMelody's  Echo Chamber(メロディーズ・エコー・チャンバー)がいる。いずれの歌手もフレンチポップやチェンバーポップの影響下にあるポピュラーを披露するという点で共通しているが、ケイト・ボリンジャーの場合は、先鋭的な側面は控え目で、アーティスト自身が影響を受けたというニューヨークのマルゴ・ガリヤンのジャズ/オーケストラとポピュラー音楽の融合という命題を次世代に受け継ぐ歌手である。


ケイト・ボリンジャーの作曲は、60、70年代の古典的なポップスの文脈に則っているが、シンガーの魅力はそれだけにとどまらない。オルタナティブ・ロックやアメリカーナといった現代的な米国のポップスの潮流を捉え、親しみやすいポップソングに昇華している。例えば、ラナ・デル・レイが、2024年のグラミー賞の頃に「カントリーのような音楽が今後の主流になる」と発言していたが、それは一側面では的を射ている。ただ、もうひとつの主流がクレイロの最新アルバムを見ても分かる通り、「チェンバー・ポップ/バロック・ポップ」ではないだろうか。これは、10年くらい、マニアックなパワーポップバンドが、冗談交じりにこれらのジャンルをなぞらえることがあったが、どうやら主流のポピュラー音楽の一部となりそうな予感がする。



◾️バロックポップ/チェンバーポップの系譜  ビートルズからメロディーズ・エコーズ・チェンバーまで  



オープニングを飾る「What's About A La La La」は、ピアノのイントロからノスタルジアたっぷりのチェンバーポップ/バロックポップが展開される。この曲はビートルズのリバイバル、もしくはフレンチ・ポップのリバイバルともいえ、ボリンジャーがイエイエのフォロワーであることを伺わせる。アコースティック/エレクトリックを組み合わせた軽快なインディーロックのバックバンドの演奏の助力を得て、ときには懐かしいハープシコードの音色を交え、普遍的なポピュラー音楽の形を示している。アウトロの古いラジオから聞こえてくるようなMCもなんだか茶目っ気たっぷり。


そうかと思えば、続く「To Your Own Devices」は一転して、南国のリゾート地の波の上を漂うような心地よく癒やしに充ちたアメリカーナ/ヨットロックに変遷する。声はウィスパーボイスに近く、包み込むような温かさがある。ヴェルベット・アンダーグラウンドの「Sunday Morning」のような懐古的なフレーズを織り交ぜて、懐かしい米国のポップスを巧みに体現させる。


続く2曲は軽快なフォークソングやネオアコースティックとして楽しめる。映像的な側面では、のどかな草原の光景を脳裏に呼び覚ます。


「Amy Day Now」はアコースティックギターで始まり、フレンチポップの影響を織り交ぜながら、フォーク・ミュージックの理想的な形を探求している。さらに「God Interlude」ではニール・ヤングの系譜にある古典的なフォークソングを継承している。こういった若手シンガーが父親以上の年代??の音楽家を手本にしているのに驚く。しかし、この点にも、現代的な米国のポップスの潮流が力強く反映されている。さらに正統派のポップスに属する曲もある。


「Lonely」は、ジョエルやオサリバンのピアノバラードを受け継いだ落ち着いた一曲で、どことなく切なげなピアノのイントロから見事な歌唱をボリンジャーは披露する。ハイトーンの声は出てこないが、ミドルトーンをベースに無理のない音域でしんみりした感覚を素朴に歌い上げる。こういった細やかな音楽を志すスタンスは、一定の共感やカタルシスを呼び起こすに違いない。

 

最近の女性シンガーソングライターは、明るい曲調にとどまらず、陰のある曲を制作するケースが多い。それはまた、日常的な思いを包み隠さずストレートに表そうというのである。「Running」は、アルバムの序盤の朝昼の光景から夕暮れの時刻に移り変わる印象があり、往年の名シンガーほどではないけれど、切ない感覚を巧みに表現している。アコースティックギターの簡素なアルペジオに合わさる憂いのあるボーカルは、スロウコアのような雰囲気を帯びる。


この点には、Ethel Cain(エセル・ケイン)の作曲性と共通点が見つかるかもしれない。そういった明るい側面だけではなく、陰のある音楽性が、アルバム全体に美麗なコントラストを形作り、絶妙な陰影を作り出す。ポピュラーの表現性はもちろん、ポジティヴな側面だけで終始するわけではなく、とは対象的に憂いや悲しみのような感覚を鋭く表する場合もある。そういった曲の起伏を設けた後、やはり夢想的な雰囲気を持つアメリカーナをベースにした曲が続く。


「In A Smile」は、ヨットロックの夢想的な感覚を交え、さながらビーチパラソルの下がった夕暮れの浜辺に寝転がり、海の上にゆらめく帆船をぼんやり眺めるようなロマンチックな雰囲気がある。シンセがボーカルとユニゾンを描いたり、ギターが背景の雰囲気付けをしたり、ピアノが和声を強調したりというように、作曲の側面でも新人のシンガーらしからぬ円熟味が感じられる。


前曲の雰囲気を受け継いだ「Postcard From a Cloud」は、インディーポップというよりインディーロックに傾倒している。背後のバンドの演奏は、CCR、The Byrdsのような渋さがあるが、ボリンジャーのボーカルはSylvie Vartan(シルヴィ・バルタン)のように華麗。跳ねるようなリズムはブレイクビーツの役割を持ち、親しみやすいボーカルのメロディーにグルーヴをもたらしている。

 

 

デビューアルバムとは思えぬほどの完成度を持つことは明白である。三作目の作品のような経験値を持っている。しかし、これは、既存のEPを聴いていたリスナーにとっては想定の範囲と思われるが、ボリンジャーはプラスアルファをもたらしている。「I See It Now」は、心地良いポップスから泣かせるポップスへと作曲性を変化させている。シンプルなバラードタイプの曲であるが、普遍的なものから独自の音楽性を汲み出そうという苦心の形跡が見出される。


実際的に、同曲は、アルバムの中のハイライトになるかもしれない。この曲で、ボリンジャーは優しさや温かさといったポップスを制作する上で最も不可欠な要素を見事に体現させている。同音進行や四拍子といったバロックポップの核心を受け継いだ上で、多角的な構成要素を設けている。ここには、表向きからは見えづらい歌手の(意外な??)インテリジェンスを見て取れるはず。全体的には、数学的な要素を持った拍の配分で構成されていることに注目したい。


本作にはラナ・デル・レイのようなポピュラーの要素も含まれ、それは小悪魔的なコケティッシュなボーカルという形をとって現れる。そしてボリンジャーの場合も、それらのキュートなイメージが計算づくなのか、それとも天然であるのか分からない点に魅力があり、それらがセンチメンタルな感覚やエバーグリーンな感覚を持つポップスに昇華される。「Sweet Devil」では、メロトロンの音色が押し出され、レトロな感覚が鮮やかに浮かび上がる。そういった古いものに対する親しみは、アートワークと合致し、音楽を上手い具合にかたどっている。


このアルバムは、ボリンジャーのソロ作であると同時に、バックバンドの作品でもあるのかも知れない。本作が聴き応えのあるものに仕上がったのは、バンドメンバーの多大な貢献があったからではないだろうか。

 

 

 

84/100




Best Track-「I See It Now」

 

 

◆ Kate Bollingerのデビューアルバム『Songs of A Thousand Frames of Mind』はGhostly Internationalから発売中。ストリーミングはこちらから。

Roger Eno 『The Skies: Rarities』 

 


Label: Deutsche Grammophon

Release: 2024年9月27日

 

 

Review

 

 

ロキシー・ミュージックのメンバーであり、その後、名プロデューサー、そして、アンビエントの先駆的な活動、あるいは環境音楽の制作等、近年では、インスタレーション展など多岐にわたる分野で活躍するブライアン・イーノと、その弟であるロジャー・イーノは、ギリシャ/アクロポリスでのライブを共に行ったりというように、単なる肉親以上の強いきずなで結ばれているのかもしれない。しかしながら、両者の経歴はまったく異なる。いわば、ベルリン三部作などボウイのプロデューサーとしての表情を持つブライアンとは異なり、ロジャー・イーノは華々しさとは無縁の一般的な人生を歩んできた。肉屋で勤務した給料を基にアップライトピアノを購入し、それで演奏を始めた。おそらく、音楽を始めたのは一般的な人々よりもおそかったはずだ。

 

 

ロジャー・イーノという作曲家は、とても不思議な人物である。いわば、それほど専門のミュージシャンとしては華々しい経歴を持つわけではないにもかかわらず、それに近い活躍をしてきた音楽家のような風格がある。それはもしかすると、いついかなる時代も、兄弟の音楽に耳を澄ませてきたからなのかもしれないし、また、その他にも多様な音楽を聴いてきたからなのかもしれない。少なくとも『Rarites』は、無類の音楽ファンとしての姿、そして音楽者としての姿、この2つを持ち合わせる作品である。このアルバムには、ベルリン・スコアリングの協力のもと制作されたオーケストラのための楽曲、クワイアを元にした重厚な声楽作品、それから、Harold Budd(ハロルド・バッド)やPeter Broderick(ピーター・ブロデリック)の主要な作品を彷彿とさせるピアノの細やかな小品が収録されている。そして、このアルバムのリスニングを行う上で、音楽そのものの純粋な楽しみのほかに、もうひとつ見過ごせない箇所や、素通り出来ない点があるのにお気づきだろうか?


それは、これらの作品は、基本的には即興演奏により制作されたこと、そして今一つは、その後の「クリア」という作曲家の考えを経て制作され、余計な付加物や夾雑物を削ぎ落とすというプロセスである。近年の音楽で問題視すべきは、選択肢があまりに増えすぎたせいで、猫も杓子も音をゴテゴテにし、派手にし、脚色しすぎるということだろう。それらの変奏的な作法やプロデュース的な脚色は、確かに現代のレコーディングの醍醐味でもあるのだが、物事を核心を覆い隠したり、本質を曇らせたり、濁らせたりすることに繋がる。それらが昂ずると、いわば音楽は濁った水になり、さらには薄汚い不純物だらけになる。例えば、川や海にたくさんのゴミがプカプカ浮かんでいるのを見て、「美しい」と言う人はいるだろうか? ジャンルを問わず、多彩な脚色を施すことは避けられぬが、少なくとも、本質を暈したりするのは得策とは言えまい。また、それらを覆い隠したりするのもまた言語道断と言うべきだろう。プロデュースや編曲は、本質を強調するためにあり、本質をすげ替えたりはできないのだ。

 

 

ロジャー・イーノは、一般的な音楽家であるにとどまらず、「純粋な表現者」であると言える。それは、彼の音楽が単なる未然の時代の復権や模倣に終わらず、制作者としての概念を音楽に浸透させているから。それは思考形態としての塑像が音楽を通じて作り上げられるかのようであり、見方を変えれば、音楽全体がそれらの概念形態の象徴となる役割を持つのである。こう言うと、大げさになるが、少なくとも、それがモダン・クラシカルとして聴きやすい形に昇華されているのは事実だろう。現代的なクラシックの一つの潮流である「ポスト・クラシカル」の流れを汲み、アンビエントや電子音楽と結びつけるという意味では、坂本龍一のピアノ作品に近いニュアンスがある。もちろん、これらのポスト・クラシカルの作風の普及に率先して取り組む演奏家の多くは、古典音楽を博物的なアーカイヴに収めるのを忌避し、現代的な枠組みの範疇にある一般的な音楽として普及させようと試みる。要約するに、彼らは古典音楽が「現代の音楽」ということを明示するのである。換言すれば、坂本龍一の遺作『12』のレビューで書いたように、「ポピュラーのためのクラシック」に位置付けられるかも知れない。これは実は、一般的にフォーマルなイメージがあるクラシック音楽は、時代の流れの中で、王族の権威付けや教会組織のための音楽から、一般大衆のための音楽へと変遷してきた経緯があるわけなのだ。そのことをあらためて踏まえると、ポピュラーのためのクラシック音楽が台頭したのは、自然の摂理と言えるかも知れない。今やクラシックは、一部の権力者のためだけの音楽ではなくなったのである。


「Breaking The Surface」は、サミュエル・バーバーの作風を思わせる重厚なストリングスのレガートで始まるが、その後には、映画音楽の演出的なスコアや、それとは対極にある室内楽のための四重奏のような変遷を辿っていく。ストリングスは、感情的な流れを象徴付け、悲しみや喜び、その中間にある複雑な感情性を、現代的な演奏効果を用いて表現している。まるでそれは、音楽的な一つの枠組みの中で繰り広げられる多彩性のようであり、それらが絵の具のようにスムーズに描かれる。表面的にはバーバーのように近代的な音響性が強調されるが、一方、その内側に鳴り渡る音楽は、JSバッハの室内楽やアントニオ・ヴィヴァルディのイタリアン・バロックである。この曲は、近年、ギリシア/アクロポリスの公演等の演劇的な音楽の演奏の系譜に属する。


「Patterned Ground」は重厚なクワイアを用いた楽曲で、楽曲の表面的なモチーフは、聴き方によってはブライアン・イーノのアルバム『FOEVEREVERNOMORE』の作風に近い。しかし、同時に独自の音楽的な表現が見出せる。メディエーションやドローン風の通奏低音を強調する声楽、対旋律を描く低音部のストリングスの対比的な構造性が瞑想的な雰囲気を帯びる。この曲は、アンビエントをクラシック側から見たようなもので、電子音楽の未来が予兆されている。

 

ロジャー・イーノの音楽者としての作風は、現時点では、オーケストラとピアノという2つの側面に焦点が絞られているようだ。重厚で荘厳な雰囲気を帯びる最初の2曲でアルバムのイメージを決定付けたあと、 アメリカの伝説的な実験音楽家ハロルド・バッドの系譜にあるピアノ曲を展開させる。そして、現代的なポスト・クラシカルの系譜にある作曲技法を用い、反復的な音楽構造を作り上げる。しかし、「Through The Blue」は、平板なミニマリズムに陥ることなく、一連の流れのような構成を兼ね備えている。それは水の流れのように澄みわたり、聞き手の気持ちを和ませる。全体的な主旋律と伴奏となる和音の運行の中には、バッハの平均律クラヴィーアのプレリュードの要素が含まれている。しかし、それらは飽くまで、簡素化、及び、省略化された音楽として提示される。ここに、音を増やすのではなく、「音を減らす」という作曲家の考えがはっきりと反映されている。それは、気忙しさではなく、開放的なイメージを呼び起こすのである。

 

続く「Above and Below」は同様に、ブライアン・イーノとハロルド・バッドのアンビエント・シリーズの影響下にあるピアノ曲。しかし、おそらく制作者は、音楽の構造性ではなく、音楽の中にある概念的な核心を受け継ごうとしている。 アンビエントの核心は、単なる癒やしにあるのではなくて、松尾芭蕉の俳句のように、気づきや知覚、自己の実存と宇宙の存在の対比や合一にこそ内在する。つまり、抽象的なシークエンスの中に、一点の閃きのような音が導入されると、それまでの静寂に気づくという意味である。例えば、「サイレンス」を説明する際に、現代音楽家のジョン・ケージは、モーツァルトの楽曲に準えたことがあった。それは表向きの概念とは異なり、「内側の静けさ」に気づき、それはいかなる場合も不動であることを意味する。それはまた、哲学的にいえば、自己の本質に気づくということでもある。この点を踏まえて、ロジャー・イーノさんは、サイレンスという概念に迫ろうとしている。この曲に接すると、いかに自分たちが日頃、異質なほどの雑音や騒音の中で暮らしていることが分かるかもしれない。また、「本物の静けさ」とは外側にあるのではなく、心の内側にしか存在しえない。まるでそのことを弁別するかのように、制作者は内面的な静寂と癒やしを見事なまでに呼び起こすのである。

 

ピアノの演奏に関しては、フランツ・リストのような華やかな技巧が出てくることはない。しかしながら、ピアノ音楽の系譜を再確認し、それらを現代的な音楽としてどんな風に解釈するかという試作が行われていることに注目したい。 「Now And Then」は、ビートルズの新曲と同じタイトルだが、その曲風は全く異なる。フォーレの『シシリエンヌ』のような導入部のアルペジオから、表現力豊かな主旋律が導き出され、ドイツ・ロマン派と近代フランス和声の響きを取り入れ、スタイリッシュなピアノ曲を作り上げる。この曲はまた、ピアノ曲のポピュラー性という側面に焦点が当てられ、初歩的な練習曲のような演奏の簡素な技術性の範疇から逸れることはない。


分けても、ピアノ曲として強く推薦したいのが、続く「Changing Light」である。ピーター・ブロデリックの作風に近いものがあるが、二声の旋律を基に休符を取り入れて、瞑想的な感覚を生み出す。この音楽の主役は、音の間にある休符、つまり「間」であり、空間性が補佐的な役割を持つモチーフと、その間に入る低音部と組み合わされて、シンプルな進行を持つ主旋律が音楽の持つ雰囲気を強調づける。そして音の減退音を維持し、ペダルで強調させ、余韻や余白という側面を演奏を通じて強調している。これらの音の減退の過程が美麗なハーモニーを生み出す。内的な世界と宇宙の持つ極大の世界が一つに結びつくような感じで、広やかで神秘的な響きがある。この曲を聞く限りでは、必ずしも現代のピアノ曲に超絶的な技巧は必要ではないことが分かる。

 

それ以降も、サステインや休符を強調するピアノ曲が続いている。「Time Will Tell」でも同じように、減退音に焦点が置かれ、繊細な音の響きが強調される。曲風としては、坂本龍一に非常に近いものがある。何か外側から突くと、壊れそうに繊細なのだが、その内側に非常に強いエネルギーを持つ。こういった感覚的なピアノ曲が、シンプルな構成、即興演奏で展開される。 Hot Chipのジョー・ゴダードとの共同クレジットである「Into The Silence」は、まさしく、アルバムの重要な根幹となる一曲だろう。


現在、ゴダードはバンドのほかにも、プロデュースやリミックス等を中心に活躍目覚ましいが、彼の参加は現代的な電子音楽の要素をもたらしている。空のように澄明で艶やかなイーノさんのピアノ演奏に、ジョン・ゴダードは果たしてどのようなエレクトロの効果を付与したのだろうか。ぜひ、実際の作品を聴いて確かめてみていただきたいと思う。少なくとも、ロジャー・イーノは古典的な音楽をよくよく吟味した上で、それらに現代的なエッセンスを付与しようとしている。ジョー&ロジャー……。両者の息の取れたコンビネーションは本当に素晴らしい。もしかすると、ハロルド&ブライアンという伝説的なコラボレーションの次世代のシンボルとなるかもしれない。



 

86/100

 

 

  

「Changing Light」





オーストリアのインディーロックバンド、Middle Kidsに注目したい。2024年6月に、待望のアルバム『Faith Crisis Pt 1』のリリース後、全国ツアーを開催した。ミドル・キッズはダイナミックで感情に訴えかけるパフォーマンスで知られている。リード・ヴォーカルとギターのハンナ・ジョイ、ベースとヴォーカルのティム・フィッツ、ドラムのハリー・デイからなるトリオ。6月7日、彼らはソールドアウトとなったエンモア・シアター(Enmore Theatre)の公演で観客を前に演奏した。


「Ppetition」とアンセム「Dramamine」でオープニングで、Middle Kidsは、新しいレコードのほとんどとすべてのファンのお気に入りとヒット曲をカバーするセットリストを披露し、観客に歌わせた。


ボーカルのハンナ・ジョイは、群衆を見ながら嬉しそうに叫んだ。「お会いできてとてもうれしい、なんてことだ!!」2019年から全国ツアーでセットリストとパフォーマンスを洗練させてきたミドル・キッズは、「Your Love」、「R U 4 Me?」、「Mistake」、「Salt Eyes」、「Bad Neighbors」を演奏した後、ニューアルバムの曲目に戻った。彼らは曲間にジョークを言うことはせず、陶酔感を感じられるショーを提供することに専念した。「Highlands」の伝染性のあるフックで、フェスの雰囲気をもたらす直前、ストリップバックされた「All In My head」はリアルな感情がショーを美しく壊すようなセットだった。


バンドが「Edge of Town」を演奏しはじめたとき、彼らは紙吹雪でステージ演出を盛り上げる準備が整っていた。会場のオーディエンスがクレッシェンドの瞬間がライブの終了を意味することを心配する中、ハンナはオーディエンスに「5曲残っている」と伝え、彼らは高いエネルギーを維持した。「Bootleg Firecracker」、「Stacking Chairs」、「Cellophane (Brain)」、「Never Start」、「Bend」でセットを締めくくり、金曜の夜を一緒に過ごしてくれた観客に感謝をした。


ミドル・キッズが国内で愛される理由を掴むためには、レコードを聴くよりも、実際のライブパフォーマンスを見るのが最適だ。ジャングリーなインディーロックとハンナ・ジョイの高らかなヴォーカルが融合したサウンドは、オーストラリア国内のロックファンを魅了しつづけている。

 

彼らのアルバム「Today We're The Greatest」が2021年の「ARIAアワード」で最優秀ロック・アルバムを受賞したのも頷ける。ジミー・キンメル・ライブ、ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルバート、ザ・レイト・レイト・ショー・ウィズ・ジェイムス・コーデンへの出演は記憶に新しい。ミドル・キッズには、リスナーを魅了し、ファンを深く結びつけている。

 

今週末、シドニー公演の模様を収録した『triple j Live at the Wireless – Enmore Theatre, Sydney 2024』が発売された。ミドル・キッズの最初のライブアルバムで、メンバーもお気に入り。オーストラリアのインディーロックの素晴らしさを再確認する、またとないチャンスが到来した。

 

 

「Blessings」ー最新アルバム『Faith Crisis PT.I』に収録 (Lucky Numberから発売)

 

 




ノースカロライナを拠点に活動するシンガーソングライター/ギタリストであるMJ レンダーマンがが、先週末に放送された米国の深夜番組『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』でTVデビューを果たした。レンダーマンはニューアルバム『Manning Fireworks』から「Wristwatch」を披露した。アメリカーナを基調とする安らいだフォーク・ロック。


MJ レンダーマンのニューアルバム『Manning Fireworks』は、2022年に発表した『Boat Songs』に続く作品で、今月初めにAntiからリリースされた。3月、レンダーマンはコルベールに出演したワクサハッチーと共に、彼らのコラボレーション曲「Right Back to It」を披露しています。

 


「Wristwatch」


◆ MOULD  Bristol up-and-comer explains about making debut EP   -ブリストルの新進気鋭  デビューEPの制作について語る-

 



2023年、イギリス・ブリストルからフレッシュなパンクバンドがインディペンデント・レーベル''Nice Swan''から登場した。Stiff Little Fingersのような荒削りなリフ、エンジン全開で疾走するような爽快感、現代的なポストパンク/マスロックの複雑なリズム、さらには、Green Dayのようなメロディアスな要素を兼ね備えたバンドだ。まだ洗練されていないものの、今後の活躍がとても楽しみな3人組だ。


MOULD(モールド)は、ジェームズ、ジョー、ケインの3人で構成され、以前はそれぞれ別のバンドに在籍していたという。Mouldは最初の出発点であると共に現時点の彼らの''結果''でもあるのかもしれない。昨年末、デビューシングル「Birdsong」をリリースし、瞬く間に注目株の仲間入りを果たした。現在、メンバーのうちひとりはロンドンに、そして残りの2人はブリストルにいる。


バンドはシングル「Cable」、「Glow」の発表後、デビューEP『MOULD』をリリースした。ハードコアパンクやオルトロック、エモなど、彼らの音楽にはパンクに対する普遍的な愛が凝縮されている。


EPのリリース後、イギリスの気鋭のメディア、DORKでは特集が組まれたほか、続いて、彼らの楽曲はBBC 6 Musicでオンエアされた。コアな音楽ファンの興味を惹きつけることに成功している。


今回、彼らにコンタクトを取ったのは、今後どういったバンドになるかわからないところに期待し、現代のどのバンドにも似て非なるオリジナル性の高いサウンドに魅力されたからである。


フランス・パリでのライブを目前に、最も注目すべきパンクトリオの近況やデビューEPの制作について、メンバーにお話を簡単に伺いました。Q&Aのエピソードは下記よりお読み下さい。



ーー最近、あなた方は活動拠点をブリストルからロンドンに移したそうですね。最近の生活はいかがでしょうか?


Mould:  うん。ジェームズは、今ロンドンに住んでいて、ジョーと僕(ケイン)はブリストルにいる。今のところギグが目白押しでなかなか忙しくてね。とにかくEPをリリースできてとても満足しているよ。

 


ーー2023年末に 「Birdsong」でデビューし、今年8月に記念すべきデビューEP 『Mould』をリリースしました。このEPであなたがたが最も表現したかったことは何ですか?  また、どのようなサウンドを目指しましたか?


うーん。実は、特に特定の「サウンド」を追求したわけではなかったんだ。『Mould』に至るまで、実は僕たちは一緒に数々のバンドをやってきたのだから、それがようやくひとつの結果になったという感じかもしれない。僕たちは3人とも同じ音楽に影響を受けていて、音楽的な影響はかなり多岐にわたっている。それを共有しようとした感じなんだ。「注意力の足りない人向け」というキャッチフレーズをどこかで見た覚えがあるんだけど、まさしくそれが僕らの正体でもあるのさ。

 


ーーデビューEP『MOULD』のレコーディングはどうでしたか? 印象的な瞬間はありましたか??


Mould : EPのレコーディングは本当に楽しかった。ハイライトは、ロンドンのスタジオでハッリ・チェンバースと『Glow』をレコーディングしたことかな。EPの最後に収録されていて、4曲の中で一番気に入っている。ハリーとのレコーディングは最高だった!! 大きな屋上で演奏できたし、角を曲がったところにあるカフェでは巨大なオムレツが食べられたしね。理想的だったよ!!


ーーMOULDの曲作りの秘密をこっそり教えてもらえますか? 曲作りがどのように始まり、洗練されていくのか、そのプロセスについて知りたいです。


Mould: うーん、本当に曲によって変わるからなんとも言いがたい。僕(ジョー)がアイデアを持ってリハーサルに持ち込んで、それを一緒に曲にしていくこともある。

 

または、完成間近の曲を持ち込んで、皆で仕上げをしていくこともある。例えば、『Cables』は私が書いて、かなり完成された状態で持ち込んだ曲だし、『Glow』はケインのベースラインから始まった曲で、フル・ソングになるまで一緒に作業したんだ。


だから、曲作りには特定のやり方はなくて、何が上手くいくかをじっくり見ていくだけなんだ。僕たちはとてもラッキーなことに、一緒に部屋で音楽を演奏したりすることが大好きなんだ。リハーサルではたいてい、新しいアイデアのボイスノートが詰まった携帯電話を何台も持って出てくるよ。

 


ーーデビューEPを聴くと、現時点のMOULDのサウンドは、パンクからオルタナティヴロックまで、すべてを網羅しているように感じられました。普段皆さんはどんな音楽を聴いているのか教えていただけますか?


そうだね。パンク系(パンク、ハードコア、ポストパンク、ポストハードコア、マスロック、ポップパンクなど)が多いけど、結構何でも聴くよ。今はヒップホップとブラジリアンソウルを聴くことが多いかなあ。

 


ーーさて、デビューEP『MOULD』のリリース後、あなたたちはイギリスのメディアで取り上げられるなど、少なからず注目を集めるようになりましたね。将来、どんなバンドになりたいか、今後のビジョンはありますか?


たくさんのアルバムを出して、ゆくゆくはジャパン・ツアーをするようなバンドになれたらいいと思っているよ! 新曲も山ほどあるし、早く次の作品をリリースしたくてウズウズしているところさ!!

 

OUTSIDE/INSIDE SESSIONS

 


MOULD 『MOULD』EP      Now On Sale!!

  



Label: NICE SWAN

Release: 2024年8月2日

 

Tracklist:

 

1.Cabel

2.The Space You Take Up

3.Bird Song

4.Glow



 

◆Episode In English

 

 In 2023, a fresh punk band from Bristol emerged from ‘’Nice Swan‘’. The band ”MOULD” combines the rough-hewn riffs of Stiff Little Fingers and the exhilaration of a engine running at full throttle, the complex rhythms of modern post-punk/math rock, and the melodic elements of Green Day. This is a three-piece with a very promising future.


MOULD may be both a starting point and the result of the moment. After releasing their debut single ‘Birdsong’ late last year, they quickly became one of the hottest names in the game. Currently, one of the members is in London and the other two in Bristol.


The band released their debut EP, 『MOULD』, after the release of the singles ‘Cable’ and ‘Glow’. Their music is filled with a universal love of punk, including hardcore punk, alt-rock and emo.


Following the EP's release, the band were featured in the UK media DORK, and their music was subsequently aired on BBC Radio 6. They have succeeded in attracting the interest of core music fans.


We contacted them this time because we had high hopes for what the band would become and were attracted by their highly original sound, which is unlike any other band of the modern era.


Ahead of their upcoming live show in France/Paris, we were able to speak briefly to the band members about the most notable Punk Trio's recent developments and the making of their debut EP.

 

Please read the Q&A episode below.




--I understand that you have recently moved your base of operations from Bristol to London. How is life these days?


Mould:  We’re actually a hybrid of Bristol and London at the moment, James is living in London whilst Joe and I (Kane) are nestled away in Bristol. 

Life is grand, we’re busy boys at the moment with plenty of gigs on the horizon, and chuffed with the EP being out in the wilderness. 

 


--You debuted late last year with the release of "Birdsong", followed by your debut EP "Mould". What did you want to express with this EP? And what kind of sound did you aim for?


Mould: We didn’t go for a ‘sound’ particularly, we’ve been in many bands together leading up to Mould, It’s very much us, playing what we like at each other. We share the same influences and they’re pretty eclectic, we love a concise punky tune.. “for the short attention spanned” I’ve seen written somewhere. That we are. 

 


--How was the recording of your debut EP? Were there any memorable moments?


Mould: We had a great time recording the EP, the highlight would probably be recording Glow with Harri Chambers at his studio in London. It was the final one we did for the EP and it's our collective favourite of the four. We had the best time recording it with Harri - was a big fun day, big rooftop for us to play on and gigantic omelettes from the caf round the corner. Ideal. 



--Can you give us a sneak peek into MOULD's songwriting secrets? I would like to know about the process of how songwriting begins and is refined.


Mould: It changes song to song really. Sometimes I'll (Joe) have an idea and will bring it to rehearsal and we'll turn it into a full song together. Sometimes I might bring in a nearly finished song and we'll just work it out together/put the finishing touches to it. For example, Cables was one I wrote and brought in pretty fully formed and Glow was one that started with Kane's bassline and we worked on it together until we had a full song. 


So no set method really, we just see what works - we're quite lucky in that being in a room together playing music, or otherwise is our favourite thing to do and we usually manage to come out of a rehearsal with a few phones full of voice notes of new ideas.

 


--From listening to the debut EP, it seems that MOULD's sound currently encompasses everything from punk to alternative rock. Can you tell us what kind of music you usually listen to?


Mould: Yeah there's a lot of punk stuff (punk, hardcore, post punk, post hardcore, math rock pop punk all that stuff etc) but we'll listen to absolutely everything. Lots of hip hop and Brazilian soul at the moment. 

 


-- After the release of your debut EP, you guys got a lot of attention, including being featured in the UK media. Do you have any vision of what kind of band you would like to become in the future?


Mould: Hopefully one that puts out lots of albums and gets to tour Japan! We've got stacks of new music on the way, can't wait to start pumping it out.

 

リバプールのソロアーティスト、def.foが、待望のコンセプト・アルバム『Music for Dinosaurs』からの初リリースとなる画期的なニューシングル「Out of This World」をリリースし、再び聴衆を魅了する。
 
 
先行シングル「Out of This World」は、私たちリスナーを宇宙の鼓動に包まれた天空の旅へと誘い、孤独への挑戦と宇宙と時間の探求の驚きを探求する。これはdef.foの旅だが、参加への誘いは誰にでも開かれている。
 
 
トリップホップのリズム、サイケデリックなビジョン、そして通り過ぎようとしても頑なに邪魔をしないしつこいベースラインが融合したこのトラックは、息をのむような脅威を感じさせながら、まばらな暗闇からゆっくりとシフトしていく。進むしかないのだ。
 
 
「Out Of This World」は、SFと身近な人間のテーマを絡めながら、def.foの特異なスタイルの本質を捉えている。ムーディーなビートに包まれ、宇宙の揺らめくサウンドスケープに浸りながら、調和のとれたエーテルのような声のコーラスの甘いフックによって、私たちは再び高揚する。

 

この曲のアトモスフェリックなプロダクションは、def.foの正直な希望の歌詞に空間と時間を与え、この「Out Of This World」は、来たるアルバム『Music for Dinosaurs』を定義するユニークなストーリーテリングを垣間見る役割を果たす。このシングルは、シーンを設定し、アルバムの包括的な物語を照らす。

 

「Out of This World」は2024年9月27日にリリースされ、def.foのアルバム「Music for Dinosaurs」からのファースト・シングルとなる。https://def.fo から予約可能。



「Out of This World」



Emerging artist def.fo is set to captivate audiences once more with the release of his groundbreaking new single, ‘Out of This World’, marking his first release from the highly anticipated concept album, ‘Music for Dinosaurs’.
 
 
‘Out of This World‘, takes us, the willing listeners, on a celestial journey up through the beating heart of the cosmos, exploring the challenges of isolation and the wide-eyed wonder of space and time exploration. This is def.fo’s journey but the invitation to join is open to one and all.
 
 
The track shifts slowly out of a sparse darkness, with an implied sense of threat under its breath and a mesmerising, addictive blend of trip-hop rhythm, psychedelic vision and the kind of insistent bassline that stubbornly refuses to move out of the way when you’re trying to get past. You have no choice but to move along.
 
 
‘Out of This World‘ captures the essence of def.fo’s singular style while intertwining science fiction with familiar human themes. Steeped in moody beats and immersed in the shimmering soundscape of the cosmos, we’re uplifted once more by the sweet hook in a chorus of harmonic ethereal voices. The song’s atmospheric production gives open space and time to def.fo’s honest lyrics of hope and in this, ‘Out Of This World’ serves as a glimpse into the unique storytelling that defines the forthcoming Music for Dinosaurs album.
 
 
This single sets the scene and lights the lights on the album’s overarching narrative: a gripping tale set in the whenever future or past, it is the story of humanity’s desperate escape from a dystopian Mars clinging to life itself and to the hope of seeking salvation upon a utopian Planet Earth.
 
 
‘Out of This World’ is released on 27th September 2024 and serves as the first single from the album ‘Music for Dinosaurs’ by def.fo, which can be pre-ordered from https://def.fo




def.fo 『Out of This World』- New Album

 
 


 
def.foは、来る2ndアルバム『Music for Dinosaurs』でリスナーを爽快な旅へと誘う。この野心的なコンセプト・アルバムは、聴衆を火星を舞台としたディストピアの悪夢へとテレポートさせる。残された時間は僅かで、生き残りをかけて息も絶え絶えの中、住民は大胆な星間探索に乗り出さなければならない。

 
『Music for Dinosaurs』は、def.foのサウンドとビジョンにおける豊かな折衷主義、ジャンルの超自然的な融合に対する生来の情熱、そして彼が確実に知られるようになってきたポジティブな歌詞のエネルギーを際立たせている。Psychedelicfolkhop(サイケデリック・フォルホップ)」と呼べば、近いかもしれない。もっといいのは、彼に加わってその一部になることだ。『ミュージック・フォー・ダイナソー』に浸れば、それを目の当たりにし、肌で感じることができるかも。


Def.fo is poised to take listeners on an exhilarating journey with his upcoming sophomore album, Music for Dinosaurs. This ambitious concept album teleports audiences up, up and away into a howling, dystopian nightmare set on Mars, where a troubled civilisation teeters on the sharpened edge of extinction. Time runs short, and in a desperate, breathless bid for survival, the inhabitants must embark on a daring interstellar quest, ultimately discovering a hope they can cling to on their bright new Eden, planet Earth.
 
Music for Dinosaurs highlights the rich eclecticism in def.fo’s sound and vision, his innate passion for the preternatural melding of genres, and the positive lyrical energy for which he’s surely becoming known. def.fo has created his own space and that’s where he exists. Call it ‘Psychedelicfolkhop’ and you’d be close. Better still, join him and be a part of it. Immerse yourself in Music for Dinosaurs so you can see it and feel it first hand.


イギリスのマルチ奏者でプロデューサー、ウィル・ドーリーのソロ・プロジェクト、スキンシェイプ。


すでに収録曲「Can You Play Me A Song」とラヴァーズ・ロックの女王として知られ、そのかすれたソウルフルなヴォーカルが特徴のホリー・クックをフィーチャーした「Lady Sun (feat. Hollie Cook)」が配信リリースされていたスキンシェイプの最新アルバム『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』だが、ついにその全貌が解禁となった。


『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』は、これまでの彼のどの作品とも似つかない内容となっている。幼少期の思い出やエチオピアのリズムからインスピレーションを得たと言う今作は、ウィルの心の最も難解な部分にアクセスしている。


アルバムの制作中、ウィルは様々なキーボードやドラム・マシーンを実験的に使用し、それらはトーマス・ブラントの素晴らしいドラミングの上に重ねられることもあった。トーマスはウィルのライヴ・バンドの一員でもあり、スキンシェイプの常識を熟知している人物。


今作についてウィル本人は、「1990年代へのオマージュのような曲もあれば、1960年代や1970年代に敬意を表した曲もある。ただし、受け取る側によってはそういった表現だと感じ取れない人もいるかもしれない。いずれにせよ、このアルバムが楽しく、一日の流れにさりげなく溶け込むことを願っているよ」と話している。


さらに、アルバムのアートワークを手掛けたのは、2020年リリースの『Umoja』同様、日本人デザイナーのKenichi Omuraである。



【リリース情報】



アーティスト名:Skinshape(スキンシェイプ)

タイトル:Another Side Of Skinshape(アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ)

発売日:発売中!

レーベル: Lewis Recordings


トラックリスト

1. Stornoway

2. Mulatu Of Ethiopia

3. Can You Play Me A Song?

4. Lady Sun (feat. Hollie Cook)

5. It’s About Time

6. How Can It Be?

7. Ananda

8. Road

9. Massako

10. There’s Only Hope


アルバム配信中!

https://orcd.co/0db0e46



【バイオグラフィー】


ロンドンのインディ・シーンを拠点に活動するマルチ・プロデューサー、ウィル・ドーリーによるソロ・プロジェクト。2012年結成のロンドンのアート・ロック・バンド、パレスの元ベーシストとしても知られている。


これまで、ソウル、ファンク、サイケ、ソフト・ロック、ヒップホップ、アフロビートといった様々なサウンドをキャリアで築いてきた彼は、身近にある楽器はドラム以外、ほぼ全て(ギター、ベース、キーボード、パーカッション、シタール、フルート、そしてヴォーカル)自らが手がけるという、まさにマルチ・プレイヤー。2012年に4曲入りセルフ・タイトルEPでデビューし、2014年には同名のアルバムをリリース。そして、これまでにスキンシェイプとして8枚のアルバムを発表している。


2014年にはロンドンのインディー・バンド、パレスにベーシストとして参加し、2015年の『チェイス・ザ・ライト』、2016年の『ソー・ロング・フォーエヴァー』といった2枚のアルバムの制作に携わっている。その後、スキンシェイプの活動に専念するために同バンドを脱退。2024年9月に9作目のアルバムとなる『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』をリリース。その後は、UK/USツアーが決定している。

 

Being Dead


テキサスの3人組、Being Dead(ビーイング・デッド)は入り口の作り方を心得ている。彼らの新譜『EELS』の最初の数秒で、「Godzilla Rises」の明るくハードなギター・ラインは映画のような即興性を呼び起こし、海底から出現した生物がキャンディでフリーキーなストップモーションで登場する。

 

ビーイング・デッドのレコードはモザイクのようであり、テクニカラーの呪文のようであり、それぞれの曲が自己完結した小さな宇宙のようである。夢のような『EELS』は、ビーイング・デッドというデュオの深層心理をさらに探っているが、最も重要なのは、2024年、テキサス州オースティンの小さな家に引きこもっているファルコン・ビッチとスムーフィー、2人の真のフリーク・ビッチによる、喜びと予期せぬ旅である。


ジョン・コングルトン(グラミー賞受賞プロデューサー)とのレコーディングのため、彼らはロサンゼルスに2週間滞在し、出発の数日前までレコードのための曲作りを行った。コングルトンは、彼らが新しいやり方を見つけ、ソングライティングの核となる部分を何層にも剥がす手助けをしてくれた。

 

ビーイング・デッドは、デュオから、ベーシストのリッキー・モット(彼を加えたトリオに成長した。「Rock n' Roll Hurts」での笑い声で、このレコードで彼はついに不滅の存在となった。


その結果、『EELS』はよりダークなレコードとなり、より悪魔的な内面を引き出した。失恋あり、興奮あり、魅惑あり、ダンスあり.....。ファルコン・ビッチとスムーフィーは、どの曲でも同じことを2度やりたがらない。「Firefighters」のガレージロックのようなディストーションから、ハンドレコーダーで録音されたデモの形で登場する「Dragons II」まで、予想外だが直感的である。そして最も大切なのは、ビーイング・デッドが唯一無二の存在であるということ。


その動物の名前(うなぎ)が示すように、【EELS】の曲は柔和で、レコードは濁った水や奇妙な夢の中をそぞろ歩くようであり、その動きは神秘的で美しく、揺らめくような光沢を映し出す。全16曲を聴いていると、新しい洞窟を発見するような、もしくは、未知の深みに飛び込むような、それと同時に、完全にオープンハートな気分になる。


アーティストのジュリア・ソボレヴァが描いたアルバムのアートワークには、奇妙な妖怪が描かれている。それは『ビーイング・デッド』を象徴するのにふさわしく、歓迎的で遊び心のあるエネルギーを発散している。たとえ何か不吉なものがその向こうに潜んでいたとしても。



Being Dead 『EELS』  知られざるアメリカ 奇妙なユーモアの救い



 

その時代錯誤なサウンドは明らかに度を超しているが、ローリング・ストーンズの最初期のような作風は魔術的な魅力を持つ。サイケ、ガレージロック、サーフロック、ヨットロック。この3人組は持ちうる音楽的な駆使し、この世で最もマニアックなサウンドに挑んでみせている。まさしく「Desert Sand」を引っ提げて登場したBeach Fossils(ビーチ・フォッシルズ)のデビュー当時のことを想起させる。


サンフランシスコと並んでサイケデリックカルチャーの要衝地であるテキサスからは、時代を問わず、奇妙なバンドが登場することがある。ビーイング・デッドは、バットホール・サーファーズのカオティック・パンクと同じように、「一体、どこからこんな音楽が出てくるのか?」と首を傾げさせる。東海岸と西海岸の文化に絶えずもみくちゃにされ、かき回され、翻弄されつづけた挙句、「これはやばい!」と思い、生き残るために突然変異をするしかなくなった……。ビーイング・デッドは、ザ・ロネッツ、ディック・デイル、ストーンズ、ソニックス、ビーチ・ボーイズ、ラモーンズ、ディーヴォ、ディッキーズ、少年ナイフ、X、これらを全部結びつけ、西海岸の70'sのフラワームーブメントやヒッピームーヴメントを復刻しようと試みる。


本作はカルト的なレコードであることは否めない。ただ、若さゆえの馬鹿騒ぎはなく、内輪向けのナードな騒ぎ方でもんもんとしており、ある意味ではリンダ・リンダズとは正反対のサウンドで、万人受けはしない音楽なのかもしれない。笑い方も「ハハハ」ではなく、「ヘヘヘ」といった照れ笑い。しかし、最初の内的なエナジーは16曲を通じて、まったく印象が変化していき、本作の最後では晴れやかな印象を持って終わる。卓越性や商業性を度外視した上で、心ゆくまで彼らが理想とする音楽を追求した結果が、このアルバムには顕著な形で表れている。

 

『EELS』のアルバムのアートワークに描かれているのは、地球外生命体のようでもあり、可愛らしい怪物のようでもある。頭上に奇妙な電飾を持ち、また、同じような不思議な生物を従え、解釈次第では、奇妙な存在感を際立たせている。しかし、これらの奇妙な化け物たちは、なぜか、オディロン・ルドンが描き出す怪物のように、不気味で恐ろしくも可愛らしい感じがある。奇異な存在なのに、なぜか温かさに満ちている。これはトリオの音楽性にも当てはまる。そして、タイトルのウナギのように、3人の曲や演奏、そしてボーカルが水の中を揺れ動く。それはまた未確認飛行物体が空を舞うようでもあり、海中をゆらめく海藻のようでもある。

 

 

これらのカルトロックは、アンダーグラウンドに潜り続けたことで生み出されたものである。彼らは深く潜りすぎたため、地上に戻ってこられるかが不透明であるが……。また、同時に、東海岸と西海岸の音楽が徹底して未来か過去に潜っていく中、もうひとつの知られざるアメリカの姿を、トリオは本作の音楽に反映させている。彼らは、バイラル・ヒットやインスタ映えから目をちょっとだけ背ける見栄や体裁とは無縁の愛すべきタイプだ。ナード・ロック、そう言えば身もふたもないかも知れないが、ある意味では、現代の多くのオルタナティヴロックバンドが忘れてしまった何かを持ちあわせている。オルタナはヒップであるのはかなり例外的であって、本来は内輪向けのためのものであることを忘れてはいけない。そういった中で、ビーイング・デッドはあらためて最初期のガレージ・パンクのような形で、ロックの魅力に迫ろうとする。もちろん、それは内輪向けの音楽の延長線上にあり、それ以外の何物でもないのだ。


そういったマニア向けの音楽に親しみやすさと近づきやすさをもたらしているのが、60、70年代のシスコのサイケや、あるいはカルフォルニアのフラワームーブメントのようなヒッピーやラブ・アンド・ピースに根ざした平和主義的な考えだ。これらは西海岸の文化への親しみを表す。これらの文化はほかでもなく、資本主義社会が先鋭的になっていく中で、金銭的な価値とは相異なる新たな発想を追求しようというのが至上命題であった。その中にある共同体やリベラル思想は飾りのようなもので、これらの文化の核心にあるわけではなかった。UCLAの学生は、ヘッセの急進的な小説「荒野のおおかみ」に触発され、組織に属さないDIYのスタンスを保ちながら、これらの新自由主義の根本を構築しようとしていたのだった。それはある意味では、資本主義社会の基本的な構造である「ピラミッドの階層」への強固な反駁を意味していた。それらは中世ヨーロッパの「コミューン」のような共同体としての役割を持っていたのだった。

 

 

 「Godzilla RIses」

 

 

 

アルバムのオープニングを飾る「Godzilla Rises」を聞くと、フラワームーブメントの平和主義の思想を想起させ、それ以降のニューエイジ思想の根幹をなすワンネス的な考えをふと呼び起こすこともある。これらは結末としては、レノン&ヨーコが世界的に提示したようなラブ・アンド・ピース思考へと直結した。これらの動向は、 しかしながら、資本家や大衆を操作する類の人々にとっては、都合が悪かった。そして最終的に、これらの独自の共同体は解体されることになる。また、アフリカでも同年代に、フェラ・クティ(エズラ・コレクティヴの祖である)は、独自の国家を建国していた。これもまたヒッピー主義と同じように「ハリボテで空想的」に過ぎなかったが、アフロソウルの先駆者は、表現自体が商業主義に絡め取られていくのを頑なに拒否し、アフリカの民族性がヨーロッパ主義に植民地化されぬように徹底して反抗していたのだった。つまり、クティは音楽を作っても、権力者に魂を売ったことは一度もなかった。


これらのアンチテーゼや体制に対する反抗心を持った表現者がどれほどいるのだろうか。社会に順応することを示すことだけが音楽ではなく、主流派への賛同を示すために表現があるわけでもなければ、承認欲求のためだけに芸術があるわけではない。少なくとも、「お花畑思考」とエリート主義者から揶揄されながらも、1970年代の人々は、自主性を持って生きようとしていたのだったし、従属的な存在になることを是としない思考力もあったのである。そして、このアルバムは、そういった「人間としての自律性」を再び蘇らせるものである。まるでビーイング・デッドは、マーク・トウェインの名言をなぞらえるかのように、「主流派は常に間違っている」といわんばかりに、われわれの中に内在する盲信や虚妄を打ち砕こうとするのだ。


オハイオのDEVOの前衛性、それらはイギリスのニューウェイヴ、ドイツのバウハウス運動以降の前衛主義と呼応していた。これらのニューウェイブのグループは、機械産業の中で生きる人間らしさを主張し、スチームパンクやSFのようなカルチャーを飲み込み、未来志向のサウンドを制作したが、それと同時に「ロボットにはならない」と逆説的に主張していた。それらがUSのニューウェイブ、カルフォルニアのパンクの原点になった。


「Van Goes」は、その系譜に属する。WIREの『Pink Flag』(マイナー・スレットの音楽性のヒントになった)のポスト・パンクや不協和音を踏まえ、それらを西海岸の80年代のカルフォルニアのパンクサウンドのテイストを加える。さらに、彼らはそれらを古典的なガレージ・ロック、ストーナー・ロックと結びつけて、プリミティヴなロックの魅力を呼び覚ます。さらに、2010年代のニューヨークのベースメントのサーフロックやシューゲイズとかけ合わせ、現代的なサウンドに近づいてゆく。全般的には、Wet Legのようなサウンドに接近していくのだ。

 

これらの古典的なロックのスタイルは、曲ごとに自由な気風を以て少しずつ変化していき、タイトルのウナギのように、うねうねと少しずつ匍匐前進していくような感じがある。「Blanket of my Bone」では、ガレージロックとサーフロック、「Problems」では、ビートルズのようにメロトロンを使用し、 バーバンクやマージービートをリヴァイヴァルさせる。思わず「古すぎる!」と叫びたくなるような音楽ではあるけれど、聞き入らせる何かがあるのが不思議でならない。続く「Firefighters」は、Boys、Sonicsのような最初期のガレージ・サウンドを受け継ぎ、それらをニューヨークのSwell Maps、ベルファストのStiiff Little Fingersのようなパンクサウンドで縁取っている。エッジの効いたギターにYo La Tengoのようなボーカルとコーラスが合わさる。


 「Firefighters」

 

 

 

その後、Being Deadのオールドスクールのタイプの楽曲はさらに時代を遡っていくかのようだ。それにつれて感覚としての音楽もより深い場所へと潜り込んでいく。


「Dragons Ⅱ」では、バーバンク・サウンドとサイケフォーク、「Nightvision」では、ローリング・ストーンズのフラワームーブメントのロックソングという形で続いていく。しかし、これらの曲は、単に音楽性をなぞらえるにとどまらず、これらのジャンルの特徴である若者の多感さや孤独感や内的な暗さといった感覚的な何かを巧みに掴んだ上で、ジャンクなサウンドに落とし込んでいるのが秀逸である。それは、瞑想的な感覚を擁する70年代のロックの再構成のような意味を持つ一方、ウッドストックやワイト島のライヴといった原初的な音楽フェスティバルに存在したヒッピー主義や平和主義的な思想は、ロックンロールの幻惑や陶酔へと繋がる。


「Gazing at Footwear」はサイケロックやシューゲイズの系譜にある一曲で、ボーカルも4トラックで録音したような古臭さ。しかし、同時に、ビンテージな魅力があり、フリークの心をくすぐる。そしてもうひとつのガールズバンドのような雰囲気が漂う瞬間もある。「Big Bovine」はサーフロックとカルフォルニアパンクを融合させ、アルバムの中で最も心楽しい瞬間を作り出す。

 

3人の音楽は音楽のシリアスさではなく、フランクさに重点が置かれている。そしてその気安さは時々、ユーモアに変わり、音楽の持つ開放的な感覚を象徴付ける。マック・デマルコのサイケフォークの影響を反映させた「Storybook Bay」 は、インタリュードのような役割を持つが、ボーカル曲の合間にある間奏は、彼らの音楽が自宅のガレージのライブセッションの延長線上にあることを示唆している。真面目なのか、ふざけているのか見分けづらいオペラのような声も、快活な笑いというよりも、乾いたシュールな笑いを呼び起こそうという彼らの音楽の核心を担っている。つまり、深刻になりすぎないことが、彼らの音楽を魅力的にしているのだ。


セッションの延長線上にある音楽は「Ballerina」でガレージ・パンクや、Germs、Circle Jerksのようなカルフォルニアパンクのスタイルを受け継いだオレンジ・カウンティの原初的なパンクへと変化し、LAのXのようなニュアンスを付け加えている。もちろん、これらのロックソングの基底にあるのは、ダンスのためのブラックミュージックとして勃興したロックンロールである。


これらのダンスミュージックの系譜のロールに属する「Rock n' Roll Hurts」は、最終的には「テキサスの雑多性」というバンドの重要な音楽を示し、ビーチ・ボーイズのようなコーラス・グループのサウンドや、ビバップ的なニュアンスを示している。これらは、Wrens、Yo La Tengoといった2000年代のオルタナティヴロックの系譜に属する。それにパーティサウンドのようなニュアンスを添える。しかし、それはもちろんセレブレティのために用意された音楽ではない。どちらかといえば、ナード、あるいは社会的なオタクのためのパーティソングなのである。

 

音楽の表現性が強ければ、救いがあるというものではない。もちろん、扇動的であるとか、即効性があるというのも、一元的な指標に過ぎないのではないか。確かにヒップなポップスは、耳障りがよく、聴きやすく、親しみやすく、乗りやすいというように、多数の利点があることは確かだが、音楽にしても、ミュージシャンにしても、使い捨てになる恐れがあるのではないか。音楽の最大の魅力は、「一般性」にあるにとどまらず、それとは対極の「独自性」に宿る場合もある。それが一般的に知られざるものであればあるほど、何らかの副次的な意義を持ちうる。 


ポピュラーであれ、ダンスであれ、ロックであれ、そういったコアな音楽は、まず間違いなく商業音楽の基盤を支える重要で不可欠な存在でもある。Being Deadは、ジョン・コングルトンの助力を得て、オルタナティヴの核心を捉え、カルフォルニアの音楽に親しみを示し、サーフロックやパンクロックの側面を強調する。「Love Machine」は、少年ナイフの次世代のガールズパンクの象徴的なアンセムとなりえるし、「I Was A Tunnel」は、ベッドルームポップの知られざるローファイな側面を生かした夢想的なインディーフォーク、ドリーム・ポップの曲である。

 

彼らのフリーク性が最高潮に達するのが、本作のハイライト「Goodnight」となるだろうか。同曲は、サイモン&ガーファンクルのマイナー調のフォークソングをベースにし、軽妙なオルタナティヴロックを制作している。それに、楽しいテイストを付け加えることも忘れてはいない。そして、これらは、現代的な人々の心に深く共鳴する何かがあるかもしれない。もちろん、日本の人々についても同様である。それは、サイモン&ガーファンクルが生きていた時代の世相と、現代の世界情勢が重なる部分があるからである。このアルバムの最高のハイライトである「Goodnight」というフレーズには、言葉が持つ以上の強い迫力が込められている。

 


 

 

 

92/100 
 
 
 
Best Track- 「Goodnight」 

 
 
 
Being DeadのニューアルバムはBayonetから本日発売中です。ストリーミングはこちらから。

 


ワイルド・ピンク(ジョン・ロス率いるバンド)は新曲「Dulling the Horns」を公開した。10月4日にFire Talkから発売されるニューアルバム『Dulling the Horns』のタイトルトラックだ。

 

今回のアルバムで、ジョン・ロスはブルース・スプリングスティーンのようなアメリカン・ロックの音楽性を押し出しているが、このタイトル曲は、スプリングスティーンはもちろん、ライアン・アダムスのような雄大かつワイルドなロックソングのテイストが醸し出されている。


ジョン・ロスはプレスリリースでこの新曲について次のように語っている。 「この曲は1時間か2時間くらいで出来上がったんだけど、他のどの曲よりも早かった。この曲は、アルバムのために書いた最後の曲のひとつで、この曲にちなんでレコードの名前をつけるのは正しいことのように感じた。この曲は基本的に前に進むことを歌っていると思う」


ワイルド・ピンクの前回のアルバム『ILYSM』は2022年にロイヤル・マウンテンからリリースされ、2021年の『A Billion Little Lights』(同じくロイヤル・マウンテンからのリリース)に続く作品となった。


前作『ILYSM』は、ジョン・ロス自身の癌診断にインスパイアされ制作された。次回作『Dulling the Horns』は、そのトラウマの向こう側にいるロスを発見する。以前のプレスリリースで、ロスは説明している。「君はズームアウトする。でも、『Dulling The Horns』は、物事にどう対処し、前進し、創作を続けるにはどうしたらいいかを考える気持ちから生まれた」

 


「Dulling the Horns」

 


Peggy Gou

 

ドイツのプロデューサー、DJ、アーティストのPeggy Gou(ペギーグー)が、デビュー・アルバム『I Hear You』の拡張版をXLからリリースした。デビューアルバムとはいえ、すでに八年目の作品であるため、さすがのクオリティだった。本作にはオリジナル曲と合わせて、リミックスやエディットバージョンの楽曲が収録。今年、グーはフジロック・フェスティバルにも出演した。

 

『I Hear You - Bonus Tracks Edition』は、Koreless、Jex Opolis、そして彼女のシングル「(It Goes Like) Nanana」の 「Nanadub 」バージョンのリミックスに加え、彼女の個人的なお気に入りプロデューサー2人による限定リミックスを収録。


韓国人アーティスト(Gudu Recordsの卒業生)Mogwaaは「Lobster Telephone」を、アイルランド出身でベルリンを拠点に活動するプロデューサーSprayは「1+1=11」をリミックスしている。