©Grace Pickering

Moonchild  Sanelly(ムーンチャイルド・サネリー)は、ビヨンセやティエラ・ワック、ゴリラズ、スティーヴ・アオキなどのアーティストとコラボレートしてきた南アフリカのゲットー・ファンク・スーパースターだ。

 

本日、彼女は3枚目のスタジオ・アルバム『Full Moon』を2025年1月10日にTransgressive Recordsからリリースし、2025年のイギリスとアイルランドのヘッドライン・ツアーを行うことを発表した。

 

Full Moon』は、サネリーのユニークなサウンド、陽気なアティテュード、個性的なヴォーカル、ジャンルを超えたヒットメーカーとしての才能を披露する12曲からなるコレクションで、アルバムの最新シングルとビデオ「Do My Dance」がリリースされる。


マラウイ、イギリス、スウェーデンでレコーディングされ、ヨハン・ヒューゴ(セルフ・エスティーム、MIA、Kano)がプロデュースしたフルムーンのクラブ・レディなビートは、エレクトロニック、アフロ・パンク、エッジの効いたポップ、クワイト、ヒップホップの感性の間を揺れ動く。


「Do My Dance」で、リスナーはこのアルバムの規模と野心を知ることになる。ハイ・オクタンシーでアンセミックな「Do My Dance」は、大胆なハッピー・ハードコア・ビートに支えられた速射砲のようなヴァースと、明るく大胆なシンガロング・コーラスで、スタイルとテンポを越えて跳ね回る。

 

ネイト・トーマスが監督した「Do My Dance」のビデオは、ヨハネスブルグで撮影され、彼女の特徴であるティールカラーのムーンモップを冠にした、輝かしい美的センスに溢れたアーティストが登場する。

 

このレコードを『FULL MOON』と名付けたのは、これらの経験を生き、書くことで得た、本当に明確な感覚を伝えるためなんだ」とムーンチャイルドは語る。「『Phases』では月の満ち欠けを表現した。月が満ち欠けをするとき、月は一度に自分の一部を見せる。満月は、私全体が照らし出される。私の全自己の到着だ」

 

「FULL MOONは、私がここにたどり着くまでに経験しなければならなかったこと、感じなければならなかったすべての感情、経験したすべてのことの集大成です」ムーンチャイルドは続けた。「このプロジェクトには、最初から最後まですべてが凝縮されている。ケンカ、悲しみ、立ち直ること、手放すこと、許すこと、受け入れること。赦しには精神的、霊的な一体感があり、それはあなたを完全なものにしてくれる。だから私はここにいる。"FULL MOON "だ」

 


「Do My Dance」



Moonchild Sanelly is the South African ghetto-funk superstar who’s collaborated with artists including Beyonce and Tierra Whack, Gorillaz, Steve Aoki and more. 

 

Today, she announces her third studio album, Full Moon, out 10 January, 2025 via Transgressive Records, along with her 2025 UK and Ireland headline tour. 

 

Full Moon is a collection of 12 tracks showcasing Sanelly’s unique sonic fingerprint, joyous attitude, distinctive vocals and genre-bending hit-making prowess, including and the album’s latest single and video, “Do My Dance, out now.

Recorded in Malawi, the UK and Sweden, and produced by Johan Hugo (Self Esteem, MIA, Kano), Full Moon’s club-ready beats oscillate between electronic, afro-punk, edgy-pop, kwaito, and hip-hop sensibilities. With “Do My Dance,” listeners get a taste of the scope and ambition of the album. High octane and anthemic, “Do My Dance” bounces across styles and tempos, with rapid-fire verses underpinned by an audacious Happy hardcore beat, bursting into a bright, bold singalong chorus. The video for “Do My Dance", directed by Nate Thomas, was filmed in Johannesburg and features the artist in all her glorious aesthetic, crowned by her signature teal-coloured Moon Mop, watch HERE.

 

“I called this record ‘FULL MOON’ to convey a really clear sense that I got from living and writing these experiences,” notes Moonchild. “Phases showcased all my sides, the different phases of the moon, and this one is all those parts of me being in unison with each other. When the moon is in phases, it shows parts of itself at a time. Full Moon is me, lit up in my entirety. The arrival of my whole self. It’s the arrival.”

 

“FULL MOON is a culmination of everything that I needed to experience to get to this point, every emotion I had to feel, everything I went through,” she adds. “This project has it all, from beginning to end. The fights, the sadness, the getting back up, the letting go, the forgiveness, the acceptance. There’s a sense of mental and spiritual togetherness that comes with forgiveness and it makes you whole. So here I am, a FULL Moon.”

 


Moonchild Sanelly 『Full Moon』


Label: Transgressive 

Release: 2025年1月10日

 

Tracklist:

1. Scrambled Eggs

2. Big Booty

3. In My Kitchen

4. To Kill a Single Girl (Tequila)

5. Do My Dance

6. Falling

7. Gwara Gwara

8. Boom

9. Sweet & Savage

10. I Love People

11. Mntanami

12. I Was the Biggest Curse



*Pre-order(International): https://transgressive.lnk.to/fullmoon



UK & Europe Tour Dates 2024

31 October           Tou Scene, Stavanger, NORWAY

01 November           Molde Mundo, Molde, NORWAY

02 November           Oslo World, Oslo, NORWAY

04 November       Quasimodo, Berlin, GERMANY

05 November          DE VK, Brussels, BELGIUM

06 November       Le Hasard, Paris, FRANCE

07 November          Op Locatie, Amsterdam, NETHERLANDS

11 November       Sunflower Lounge, Birmingham, UK - SOLD OUT

12 November          Rough Trade, Bristol, UK - SOLD OUT

13 November       Colours, London, UK - SOLD OUT

 

Australia Tour Dates 2024

16 October    Tumbalong Park - SXSW Sydney, SYDNEY, AUS

18 October    The Lord Gladstone - SXSW Sydney, SYDNEY, AUS

18 October    The Lansdowne Hotel - SXSW Sydney, SYDNEY, AUS

19 October   Yah Yah’s, MELBOURNE, AUS

 

UK & Ireland Tour Dates 2025

18 March   YES (The Pink Room), MANCHESTER, UK

20 March   The Grand Social, DUBLIN, Ireland

21 March   The Wardrobe, LEEDS, UK

22 March    King Tut’s, GLASGOW, UK

24 March   Hare & Hounds, BIRMINGHAM, UK

25 March   Strange Brew, BRISTOL, UK

26 March   Heaven, LONDON, UK

©Tyler T Williams

 

アイダホを拠点に活動するプロデューサー兼作曲家、トレヴァー・パワーズのユース・ラグーンがニューシングルをリリースした。My Beautiful Girl」と名付けられたこのシングルは、5月にリリースされた「Lucy Takes a Picture」に続く。7インチとしても発売されている。(ストリーミング等はこちら


「ソングライティングは、ポータルからメッセージを受け取り、それを書き写すような感覚なんだ」とパワーズはプレスリリースで語っている。

 

「夜中の3時に目が覚めると、言葉がバットで頭蓋骨を殴られているように感じる。たいていの場合、その言葉の意味さえわからない。そんなはずはないと思う。私の仕事はただ、耳を傾け、不変であること、そしてそれを書き留めることだ。もし私がその仕事を忠実に果たさなければ、その言葉は他の誰かを見つけるだろう」


「アイダホ州西部にアイダホ・シティという幽霊に近い町がある。川で泳いだり、祈ったり、田舎で一人になるためによく行くんだ。この前行ったとき、墓地(ブーツを履いたまま死んだ炭鉱労働者が多かったことから『ブースチル』と呼ばれている)をハイキングしたんだけど、暗闇と枯れ草の中に『マイ・ビューティフル・ガール』とだけ書かれた墓石を見たんだ。名前もない。日付もない。ただ愛。この美しい少女は誰だったのだろう? ポータルが開き、私はそのメッセージを書き留めた」

 

「My Beautiful Girl」

 

Godspeed You! Black Emperor 『No Title As of 13 February 2024 28, 340 Dead』




Label: Constellation

Release: 2024年10月4日

 

Review  

 

単にバンドというよりも、アートグループといった方が最適なカナダの伝説的なポストロックバンド、Godspeed You! Black Emperor(以下、GY!BE)は、ギタリストでソングライターであるエフリム・メニュクを除いては、メンバーを固定せずに30年余り活動を続けてきた。当初の編成は弦楽器を含む9人編成だった。現在のラインナップは、二本のヴァイオリン、コントラバス、グロッケンシュピール、テープループ、16mmのフィルム撮影者を含む9人編成である。93年頃に結成され、翌年には限定33枚のカセットテープをファースト・アルバムとしてリリースした。99年にはNMEのカバーストーリーを飾り、世界的にその名を知られることに。プロジェクターをステージの背後に置き、音楽と同期させ、映像的なライブパフォーマンスを行うことでも知られている。

 

MOGWAI、Sigur Rosと並んで、ポストロックの代表格とされるGY!BEであるが、当初はハードロックバンドとして認知されていた。うろ覚えであるが、カナダかイギリスのメディアは、このバンドを当初、Led Zeppelinと比較していた。それはハードロックの中に、ストーリーテリングの要素が含まれ、また、90年代としては画期的なスポークンワードのサンプリングの映像的な試みが取り入れられる場合があったからである。分けても、Kranky(国内ではP-VINE)から発売された『Lift Your Skinny Fists Atennas to Heaven』(2000)では、アルバム全体が映画のような趣を持つコンセプチュアルな作品だった。また、演奏がない箇所が時々10分近くに及ぶという側面では、同年代のアルバムとは似て非なる革新的な内容であった。さらに、この音楽性は実際的に、ケンタッキー州ルイヴィルのRachel'sの『Handwriting』(1995)という黎明期のポストロック・アルバムに準ずるものであった。ストリング等のオーケストラ楽器は、1995年の時点でロックのアンサンブルと共存していたということだけは指摘しておくべきだろう。

 

カナダのGY!BEに関しては、幻惑的なハードロックギターを自前の室内楽のストリングスと重ね合わせて、それらをダイナミックなロックソングとして昇華するという点で際立っていた。同時に、このバンドは、ロックミュージックの瞑想性や70年代前後の英国のハードロックバンドが持ち合わせていたサイケデリック性や幻惑的な雰囲気をギターロックを中心に構築してきた経緯がある。また、主要な音楽性と合わせて、政治的な暗喩を交えることもあり、啓示的だと言われることもあれば、旧約聖書の黙示録になぞらえられることもある。つまり、アンサンブルに関しては、Led Zeppelinに比肩するが、歌がなくインストゥルメンタル主体の構成である。


時々、語りのサンプリングが導入されることもあるが、それは飽くまで主体となる音楽のサイドストーリーに過ぎない。その分、ギターのコイルの電気信号の増幅によって暗示的な物語性を増強するというのが他にはない彼らの特性である。だからこそ、プロジェクター映像の同期が演出として生きてくる。彼らの代表作『Lift Your Skinny-』では、轟音のギターがストリングと組み合わされると、MBVのようなシューゲイズに近くなる場合もあったが、基本的なサウンドは、ハードロックやプログレッシヴロックのプリミティヴな響きにあると言えるだろう。また、ドラムに関しては、オーケストラのドラムを使用する場合が稀にあり、現代的なロックやパンクのようなタイトなドラムの録音とは対称的である。聞き方次第では、バタバタというトロットのようなヒットにも聞こえる。GY!BEのドラムは、ジャズやロックのように、リズムを強化するためではなく、ギター、ベース、ストリングスがもたらす幻想性を強める役割を司る。リズムの強化にとどまらず、曲全体に漂う幻惑を湧き立てるような演出的な効果を担うのである。

 

 

近年では、テーマやモチーフそのものが大掛かりになり過ぎて、作品として収集がつかないというケースがあった。つまり音楽自体がベクトルとして外側に放射されていることは確かだったが、それがアンサンブルとして交わる点がなく、科学的な反応を起こすまでには至らなかった。要は、多人数の編成によるアンサンブルがタイトにまとまる瞬間が稀だったのである。確かに、音楽からは長大な大河劇のようなドラマを、アンサンブルを通じて構築しようというコンセプトを感じることが出来たが、それが上滑りに終わってしまうというか、分散的な音楽に終始し、着地点を見失っていたことがあった。しかし、今作では、未来志向の音楽性でなく、それとは対象的に原始的なロック性を中心に据えたことで、強固なアンサンブルの骨組みが出来上がり、そして、音楽そのものがイントロからアウトロまでスムーズに移行していく。 このアルバムは祝福的なギターロックで始まり、アンプリフターの特性を生かしたファズサウンドが気持ちを湧き立てる。近年の暗鬱な音楽性はどこへやら、晴れやかな序曲がファンファーレのように鳴り渡る。


その後、本作は、「BABY IN A THUNDERCLOUD」で瞑想的なギターロックの領域に差し掛かる。テープループを元に、ベース、ギターの演奏を織り交ぜ、テープサチュレーションを用いた荒削りなロックソングへと移行していく。ほとんど無調に近いギターはマーチングのようなドラムと合わさり、勇壮な雰囲気を帯びる。そして音響派に位置づけられる抽象的なギター、ストリングスのトレモロによって、徐々に曲のテンションが上昇し、バンドアンサンブルのエナジーが強まっていく。近年、鳴りを潜めていたアンサンブルの一体感や音の一つひとつの運びによって次の展開を呼び覚ますような流れが構築されていくのである。最終的には、ロックソングとしての余韻をただよわせながら。かなり古い型のメロトロンでこの曲は締めくくられる。

 

 

アルバムの中で深い瞑想性を呼び覚ますのが続く「RAINDROPS CAST IN LEAD」である。 イントロのテープループが続いた後、エレクトリックギターの演奏が続くが、久しぶりに聴く正真正銘のギター・ソロである。そして、90年代から長らくそうであったように、ミニマルミュージックの構成を踏襲し、それらをLed Zeppelinの音楽性と結びつける。この曲では、同じフレーズを辛抱強く重ね、ストリングの演奏を交え、お馴染みの渦巻くようなエネルギーを徐々に上昇させていく。また、音楽には、カシミール地方の民謡のエキゾチックな要素が含まれ、UKのロックバンドと同じように瞑想的な雰囲気や、エキゾチズムを湧き起こす。それはMdou Moctorのような古典的な民謡の要素である。これが果たしてカナダのウィニペグ族の音楽であるのかについては考察の余地が残されている。また、ミニマリズムを用い、バンドのアンサンブルは最もノイジーな瞬間を迎えるが、その後すぐさま静寂に立ち返り、スポークンワードのサンプリングが導入される。この手法は最近のポピュラーでは頻繁に使用されるが、彼らが90年代に一貫して試作してきた音楽は、2020年代にふさわしいものであったことが分かる。

 

 

前曲で最も激しい瞬間を迎えた後、続く「BROKEN SPIRES AT KAPITAL」、「PALE SPECTOR TAKE PHOTGRAPHERS」は連曲のような構成となっている。実際的に啓示的で黙示録的な音楽性が目くるめく様に展開される。弦楽器のアコースティックのドローンを用い、中東の戦争を予言的に暗示している。さながら西と東の対岸にある二つの勢力が折り重なり合うように、弦楽器のドローン奏法が音を歪ませ、強い軋轢をもたらし、そして世界の不協和音を生みだす。従来、音楽による社会的な暗喩がこれほど的確であったことはない。オーケストラ・ヒット(ドラのようなパーカッション)、テープループが主体の実験音楽であるが、コントラバス(ウッドベース)の強いスタッカートが打楽器の効果を発揮する時、独特の不気味さを帯びる。彼らの実験音楽のアプローチが遂に集大成を迎えたと言うことが出来るだろう。その後、再びバンドアンサンブルに戻るが、7分35秒以降のスリリングな展開は圧巻と言えるだろう。

 

アルバムは「GREY RUBBLE」でエンディングを迎える。ギターのトレモロで始まり、お馴染みの音響派としての方向性が選ばれる。Godspeed You! Black Emperorの音楽性は一貫して明るくはないが、示唆や暗示に富み、そして茫漠とした霧の向こうにある構造物を垣間見るかのようである。しかし、その暗鬱な音楽性の果てに浮かび上がる祝祭的な音を捉えられるかどうかが、バンドの音楽を好ましく思うかの瀬戸際となる。ロックバンドとしては最高峰に位置し、並み居る平均的なバンドとは格が違う。これは、彼らが、売れるか否かによらず、実験的な音楽性や革新性を見失なわなかったことに要因が求められる。そして何より、ギターという楽器が単に曲を演奏するためのツールではないことは、このアルバムを聴くと一目瞭然ではないだろうか。ギターとは啓示をもたらすための装置で、テクニックや演奏だけに終始するわけではない。そして、一般的に考えられているよりも未知の可能性に満ちた楽器であることが分かる。

 

 


95/100







 



Cap'n Jazz(マイク・キンセラ、ティム・キンセラ、デイヴィー・フォン・ボーレンがアメリカン・フットボール、ジョーン・オブ・アーク、プロミス・リングを結成する前に結成した中西部エモ・バンドのパイオニア)が今週末、ラスベガスで開催される「ベスト・フレンズ・フォーエヴァー・フェス」で再結成する。

 


その直前に、彼らは日曜日の夜、シカゴのエンプティ・ボトルで極秘の「ウォームアップ・セット」を行った。 Cap'n Jazzの2017年以来のショーには、Shmap'n Shmazzの名曲の数々、彼らの「Take On Me」のカヴァー、Owlsのカヴァー(別のキンセラのバンド)、そしていくつかのライブデビュー曲が含まれていた。オリジナル・メンバーのフォン・ボーレンはこの再結成を欠席したようだが、マイクとティムのいとこであるネイト・キンセラが代役でギターを弾いた。またオリジナルラインナップと同様に、マイク・キンセラはドラムを演奏している。
 

キャップン・ジャズは2025年のヨーロッパ/イギリス公演にも「取り組んでいる」と報じられている。


◾️エモの名盤をピックアップ ジャンルの出発と先駆的なアーティスト

 

KIm Deal

PixiesとBreedersで有名なロックレジェンド、Kim Deal(キム・ディール)が、間もなくリリースされるソロデビューアルバム『Nobody Loves You More』から新曲「A Good Time Pushed」を本日公開した。

 

新作は4ADから11月22日にリリースされ、10年以上かけて制作された。2011年に初めてレコーディングされた曲もあり、これまでに "Coast "と "Crystal Breath "と、二作のシングルがリリースされている。


この曲はアルバムの最後の曲(ディールが制作の最後にレコーディングした曲)だが、サウンド的には「A Good Time Pushed 」は「Coast」のビーチのような、ホーンが浮き立つ空気感と、「Crystal Breath」のダークでギザギザした並置の間に存在している。この曲は故スティーヴ・アルビニがシカゴのエレクトリカル・オーディオ・スタジオでエンジニアを務めた。彼女が長年一緒に仕事をしてきた親友である。ある瞬間、ナレーターは "この世からあなたについていく "準備ができていて、次の瞬間には "あなたを突き放したい "とうずうずしている。


ファジーでドライヴ感のあるギターは、ラスト・スプラッシュ時代のブリーダーズ、アンプスを彷彿とさせる。バンド・メンバーのジム・マクファーソンとディールの双子の妹ケリーがこの曲に参加していることを考えるとぴったりだ。「A Good Time Pushed」は、満足のいくほど無気力なスラッカー・ロックで、ゆったり空を漂う雲を眺めながら過ごす一日にぴったりのサウンドトラック。チャンキーで歪んだギターが、チリンチリンと鳴るシンセと天空のハーモニーでバランスを取り、キム・ディールは "私たちは楽しい時間を過ごしている "と主張し続けている。

 

 

「A Good Time Pushed」
 

NOFX   40年以上の長い歴史に幕を閉じる

NOFX

日曜日の夜(10/6)、NOFXの40年以上の長い歴史が終わりを告げた。パンクファン感涙の時。40年といえば、よちよち歩きの赤ん坊が壮年期になり、彼らを追い越し始める頃だ。しかし、彼らはバンド活動を続け、パンクファンの期待に応え、シーンを支えてきた。2022年からグループの解散が噂されてきたが、ようやくそれが現実味を帯びたのが昨年のことだった。

 

NOFXは1983年から活動し、スケートパンクシーンをリードしてきた。その中で、Fat Wreck Recordsなども運営し、パンクの後発バンドのリリースを行ってきた。もちろん、ファット・マイクは、日本のパンクシーンともフレンドシップを築き、ハイ・スタンダードとの交流を重ねてきた。その中で、両者の楽曲をカバーするというパンクロックの素晴らしさを伝えてきた。


◾️ スケート・パンク特集 「歴代のポップ・パンクの名盤」


今週日曜日のロサンゼルスのサンペドロの三日目の最終公演で、NOFXのライブは大成功を収めた。NOFXの最後のステージでは、複数のサプライズが用意されていた。フェアウェルを惜しむ彼らのために、何十年もの間バンドを支えてきた複数のパンク仲間たちがステージに現れたのだ。

 

今回の最後のライブステージには、メロディック・パンクの先駆者が数多く登場した。Minor Threatの後発であるBad Religion(バッド・レリジョン)のブレット・グレヴィッツとジェイ・ベントレーは、NOFXにもっとメロディを取り入れるようにとインスピレーションを与え、NOFXがグレヴィッツのエピタフ・レコードの初期の看板バンドのひとつとなるきっかけを作った人物であり、アンコールではバッド・レリジョンの1982年の名曲「We're Only Gonna Die」の演奏に加わった。セットリストでは、パンクロックのアレンジという側面がフィーチャーされた。


NOFXが2002年に「BYOレコード」からリリースしたスプリット・ナンバーからRancid(ランシド)の「Radio」をレゲエ調にカヴァーし、ティム・アームストロングも一緒にシンガロングした。

 

彼らはまた、18分の曲「The Decline」で最後のショーを締めくくり、Pennywise(ペニーワイズ)のフレッチャー・ドラッヂ、Offspring(オフスプリング)のデクスター・ホランド、Circle Jerks(サークル・ジャークス)/Bad Religion(バッド・レリジョン)のグレッグ・ヘットソン、Less Tha Jake(レッス・ザン・ジェイク)のJR、Foo Fighters(フー・ファイターズ)/No Use For A Name(ノー・ユース・フォア・ア・ネーム)のクリス・シフレット、Rise Against(ライズ・アゲインスト)のメンバーなど、大量のベテラン・パンクスをステージに上げ、フレッチャーは複数のギターを叩き壊した。NOFXのメンバーとして最後のギター・クラッシュだ。


NOFXはまた、ファット・マイクがこのライヴで演奏するためだけに新曲を書き、決してレコーディングしないと公言して憚らなかった「We Did It Our Way」をステージで演奏し、さらに、グリーン・デイの 「Basket Case」のカバーの一部を演奏した後、自分たちの「The Longest Line」をプレイした。Mighty Mighty Bosstones(マイティ・マイティ・ボスストーンズ)の元メンバー、ネイト・アルバートを「180 Degrees 」に参加させたり、Minor Threat(マイナー・スレット)の 「Straight Edge」をカヴァーし、33曲のセットリストを通して様々なチャレンジが行われた。



 

 


◾️NOFX、ファイナル・ツアー”40 YEARS,40 CITIES,40 SONGS PER DAY”の詳細を明らかに  

◾️NOFX、新作EP 『HALF ALBUM』を発表 リードカット「I'M A RAT」をリリース

◾️NOFX 『DOUBLE ALBUM』を12月2日にFAT WRECK CHORDSからリリース



Setlist (LA/サンペドロの最終公演)


60%

Murder The Goverment

Bob

Falling in Love

Quart The Session- Franco Un- American Mashup

Kids of The K-Hole

Leave It Alone

180 Degrees g,Nate Albert(ex. Mighty Mighty Bosstones)

Six Years On Dope

Radio(Rancid Cover) Vo.Tim Armstrong (Rancid)

Shut Up Already

NOFX

Six Pack Girls

Green Corn

Straight Edge(Minor Threat Cover)

The Cause

Perfect Goverment(Mark Curry Cover)

 

Idiots Are Taking Over

Matterville

Baket Case (Grene Day Cover Snippet)ー The Longest Line

She's Gone

I Don't Like Me Anymore

What's The Matter With Parents Today?

You're Bleeding

Reeko

The Separation of Church and Skate

EN.

Intro- Linoleum

Battles To The Ground

We're only Gonna Die (Bad Religion Cover)

Gurewitz  b.Jay Bentley (Bad Religion Cover)

Stickin' In My Eye

We Did It Our Way

The Decline (All Members)


BEST SHOT

 The Smile 『The Cutouts』

Label: XL Recordings

Release: 2024年10月4日

 

Listen/Stream 

 


Review   - The Other Side Of Wall Of Eyes -


『The Cutouts』は、レトロなシンセのフレーズで始まり、その後、オーケストラ・ストリングスとインディーロックの合致、そして、アフロ・ビートのロック側からの解釈、ファンクとマス・ロックの融合、UKロックのエキゾチックな響きのエジプト音楽のスケールにおける反映、オーケストラ音楽とポピュラーの合体を経て、ハワイアンやボサ風のくつろいだフォーク音楽で終わる。

 

前作『Wall Of Eyes』では収めきれなかった音楽的な実験、特に、リズムにおける実験色が強い作品だ。


その中で、スマイル作品では、お馴染みとなったロンドン・コンテンポラリー・オーケストラの美麗なストリングスのパッセージがその間にドラマティックな響きをもたらしている。表向きの印象では、『Kid A』の延長線上にあるような作風だが、よく聴くと、少しテイストが異なることに気づく。もしかすると、『The Other Side Of Wall Of Eyes』とも称するべき作品かもしれない。


前作では、UKチャート三位という記録を打ち立てたスマイルだが、このアルバムは前の作品の続編や続きものとして楽しむことが出来る。ただ、先鋭的な作風であった前作とは対象的に懐古的な作風でもある。テクノ・ミュージックに内包されるオーケストラとの融合の可能性を示唆したあと、「Instant Palm」では、最初期の『Pablo Honey』の作風に立ち返ったという印象だ。しかし、ストリングスのパッセージが加わることで、ゴージャスなアレンジが施されている。

 

「Zero Sum」では、Killing Joke、Gang Of Fourのリズムの変革を再解釈し、それらをマスロックと結びつけている。察するに、ギタリストとしてグリーンウッド(最近はピアノも演奏する)がポストロックに凝っていることは、『The Wall Of Eyes』において暗示されていた。この曲は、シリアスになりがちだった前作に音楽的なユーモアを添え、聴きやすい内容たらしめている。 

 

「Colours Fly」では、トム・ヨークがトム・スキナーに何を期待しているのかが端的に示されている。ロンドンジャズのアヴァンギャルドな響き、打数が多いながらもスタイリッシュにまとめ上げられたスキナーのドラムは、レディオヘッド時代からの通牒のような意味を持つエジプト音楽のスケールに、リズムという側面で特異な力学を付与する。前作では、ライブセッションに比重を置いた音楽が少なかったので、その当たりの心残りを埋め合わせるようなトラックである。


同じく、「Eyes & Mouth」では、スキナーのドラムプレイがフィーチャーされ、エズラ・コレクティヴのようなアフロ・ビート/アフロ・ジャズの原始的響きを持つリズムがサイケなテイストを持つロックに昇華される。さらにサイケに傾倒すれば、ジミ・ヘンドリックスの曲に近づくという面では、70年代の古典的なハードロックを踏襲したようなスタイルの楽曲となっている。

 

「Don’ t Get Me Started」はライヴステージで最初に披露された曲だったが、現時点ではレコーディングの方が良く聞こえる。MOGWAIが最初期のポスト・ロックのアルバムでことさら強調していたテクノとロックのミクスチャーという形は、彼らのうち二人が2000年代に追求していた。それらは懐かしさがあると同時に、リズムとして洗練された印象を覚える。この曲も音楽性のユーモアを強調するという点では、「Zero Sum」と同じ系統にあるトラックと言えよう。 


最近、スマイルはオーケストラとポピュラーの融合がどこに着地するのかを幾度となく試しているが、その断片的な経過が「Tiptoe」に示されている。これは最近の映画音楽やドラマ音楽の手法をポピュラーの領域でどのように活用できるかという前作でも示唆されていた試みである。実際的に、ドラマや映画の挿入歌のような効果を発揮し、このアルバムに変化をもたらしている。

 

その他、「The Slip」では、アナログ時代のレゲエ/ダブをロックと結びつけている。続く「No Words」では『The Light For Attraction』と同じように、鋭利なポストパンクの側面を強調させ、ミニマル・ミュージックのリズムを活用し、ハードなロックサウンドに取り組んでいる。クローズ「Body Language」は、ボサノヴァ/ハワイアン等の音楽性を吸収したダンスミュージックのようだが、トム・ヨークの手に掛かるや否や、それらのリズムやビートが歪み、カクカクとしたリズムに変化するのが面白い。これは2000年代から不変であり、他のミュージシャンには出せない独自のテイストだ。それはまた、8ビットのレトロゲームの作画のようなものなのだ。

 

 

 

76/100

 


Best Track 「Instant Psalm」




 【J-POP TRENDS】 9月の邦楽のシングルをピックアップ


 

9月に発売されたシングル情報をご紹介するコーナーです。2024年も後半にさしかかるにあたって、総括をしますと、現在の邦楽は、依然としてスタンダードなポップスが主流という印象です。

 

さらに、ポピュラーというぼんやりとした枠組みの中で多彩な音楽がひしめいているという印象を覚えています。また、その反面、アヴァンギャルドなものやオルタネイトな音楽の波は極めて限定的にとどめられているようです。社会と音楽は連動せざるをおえず、無関連ではありえないということ。そしてまた、日本国内の情勢を考え合わせますと、「ほっと息をつけるような安心感のある音楽を聞きたい」というのが、聞き手側の主な需要であるという気がしています。社会的な不安を和らげるような音楽が今後の邦楽のトレンドになっていくかも知れませんね。



1. 柴田聡子 「素直 My Favorite Things Ver.」(Best New Track -J-POP)

 

柴田聡子さんは、10月23日に最新アルバムのリミックス・アルバム『My Favorite Things』のリリースを予定しています。最新アルバムのハイライト曲である「素直」のリミックスバージョンが発売されました。

 

原曲はトロピカル調のトラックで、オルガンの裏拍を生かしたレゲエやスカのリズムが特徴でしたが、リミックス・バージョンでは、柴田さんのアコースティックの弾き語りが押し出された切ないフォークナンバーに生まれ変わっています。曲の持つメロディーの魅力が上手く引き出されたリミックスシングルで、途中に登場するハミングを生かした甘美的なコーラスに注目です。

 

 

 

 

配信リンク:https://ssm.lnk.to/Selfish

 

 

 

 

2.  北里彰久(Akihisa Kitasato) 「Oblivision」

 


北里彰久は作曲家/シンガー/マルチ奏者です。ブラジル音楽、ブルース、ソウルから影響を受け、新鮮味のあるJ-POPを提供しています。先月リリースされたニューシングル「Oblivision」は、セルフプロデュースの作品で、ボーカル、ギター、ベース、キーボードを北里本人が担当しています。ドラム、パーカッションにはサポートメンバーとして旧知の光永渉が参加。レコーディング、ミックスは内田直之が手がけ、シンプルながらも力強い楽曲の音像に色を添えています。

 

 ”Oblivision- 忘却”のタイトルが彷彿とさせる、モノクロ映画のような儚く幽玄なイメージを、どこか朴訥としたぬくもりとともに絶妙なアレンジで描きだしています。フォーク、ソウルを中心にぼんやりとした感覚を美麗な感覚で縁取ったシングル。秋の夜長に聴くのに最適なナンバーでしょう。

 

 

 


配信リンク:https://ssm.lnk.to/Oblivion

 

 

 

3.yomm 「本で読んだだけ」

 



韓国のシンガーソングライター、yommは10月16日に新作EPのリリースを控えています。5thシングル「本で読んだだけ」は”キセル”の辻村豪文が作詞作曲を手掛けた話題作。基本的には、キセルの系譜にあるフォークサウンドですが、今回の新曲ではベースラインを聴くとわかるように、ジャズのアレンジが施されています。今回のシングルでは、yommは軽快なポップスの楽曲の歌唱法とは対象的にマイルドで、アンニュイな感覚を持つボーカルを披露しています。

 

 

 

 

 

 配信リンク: https://yomm.lnk.to/Hondeyondadake

 

 

 

 

4.  Qnel 「サマーエンドロール feat. 」

 



 Qnelは高橋健介のソロ・プロジェクト。 LUCKY TAPESのアルバム『BITTER!』に収録された楽曲「脚本」のトラックメイク及び、「NO AID」のリミックスを手がけたことをきっかけにQnelとしての活動を本格化。 2022年4月にデビュー曲「Hikiai」をリリース。

 

ニューシングル「サマーエンドロール」は細野晴臣さんの「ハネムーン」の夏バージョンと言えそう。日本の昭和のフォークミュージックに軸足を起きながらも、モダンなJ-POPのテイストを付け加えています。この曲を聴いて、ひと夏の思い出にじっくり浸ってみてはいかがでしょうか。






配信リンク:https://www.youtube.com/watch?v=-QonXQAjBrg

 

 

 

 

5. Naive Superβ 「On Cloud 9」- Best New Tracks(J-POP)



 

シンセ/キーボード奏者として活動するYushi Ibukiによるホームメイド・シンセポップ・プロジェクト。ダンサンブルなナンバーからノスタルジア溢れる邦楽まで幅広いアウトプットが魅力です。


「On Cloud 9」はドラゴンボールのエンディング・テーマのようなイントロで始まり、シティ・ポップへと移行していく。アメリカのヨット・ロックにも近いまったりとしたシングル。テクノのビートの打ち込みも聞き所ですが、90年代のエイベックス・サウンドの系譜にある女性ボーカルにも注目です。


 

 

 


配信リンク: https://ssm.lnk.to/OnCloud9

 


前回の記事はこちら:  【J-POP TRENDS】 8月のJ-POPの注目作をピックアップ

Dawn Richard & Spencer Zahn 
 

ドーン・リチャードは、ルイジアナ・クレオール文化、ニューオーリンズ・バウンス、サザン・スワッグを要素として扱い、ハウス、フットワーク、R&Bなどを織り交ぜることができる。彼女が言うように、"私はジャンルである"。


ダニティ・ケインの創設メンバーとして、また後にディディのダーティ・マネーに参加したドーンは、商業ポップ・ミュージックの内と外を探求することができた。ソロ・アーティストとして、彼女はセルフ・リリースを選んだ。批評家から絶賛された5枚のフル・アルバムの中で、ドーンは業界の規範に屈服したり屈曲したりしないというメッセージを明確にしてきた。


「プロデューサーとしてもアーティストとしても、女性が評価されることはない。今こそ、エレクトロニック・ミュージックだけでなく、あらゆるジャンルで彼女たちの才能を認めるべき時だ。私は、南部出身の若い黒人女性が、音楽的にも、視覚的にも、芸術的にも、なりたい自分になれるように努める」


マルチ・インストゥルメンタリスト、スペンサー・ザーンの音楽は、オープンであることが特徴だ。広々とした音の風景は、彼のクリエイティブ・コミュニティからの貢献が豊かである。マサチューセッツ生まれのザーンは、12歳でベースを弾き始めた。2000年代半ばにニューヨークに移住してからは、ツアー・ミュージシャンとして活動し、ジャンルを超えてさまざまなアーティストとライブを行なってきた。ザーンのソロ・アーティストとしてのキャリアは、その後、志を同じくするギタリスト、デイヴ・ハリントンと共演を始めた2015年と同時期に始まった。



2022年に発表された『Pigments』に続くこのデュオのセカンド・アルバムは、共通のコラボレーション精神、純粋な音楽的好奇心、ジャンルの慣習から逃れようとするコスモポリタンな熱意を浮き彫りにしている。「Diets 」では、デュオの率直で告白的なリリシズムが発揮されている。リチャードは、有害な人間関係や習慣を断ち切ることを減量に例えて、カロリー摂取を控えるように、偽物の友人を捨てる、と歌う。  


『クワイエット・イン・ア・ワールド・フル・オブ・ノイズ』の制作は、2023年にニューヨーク北部で始まった。別れたばかりのザーンはピアノの前に座り、作曲とレコーディングに没頭した。「私はピアノで、不気味で広々としたピアノ曲を書いた」彼は、標準のピッチではなく、部屋に合わせて型破りに調律されたピアノを使用した。この奇妙な調律の不気味なインストゥルメンタル・レコーディングは、当初アルバムにするつもりはなかったという。半年後、彼はその録音を聴き直してリチャードに送り、彼はすぐに次のアルバムの可能性に気づいた。


『クワイエット・イン・ア・ワールド・フル・オブ・ノイズ』でリチャードは、トラウマ的な喪失体験がもたらす感情的な衝撃を歌詞とヴォーカル・パフォーマンスに反映させた。このアルバムの制作について、リチャーズは次のように語っている。

 

「スタジオに入って、これを書き留めたわけではないんだけど、パージして、その後は何も変えなかった。正直言って、今までで一番大変だった。私たち家族はセラピーに対して歪んだ見方をしている。だからこの瞬間は、世間とその瞬間を共有するという、厳しい開放の瞬間だった。でもまた、なぜかスペンサーと仕事をすると、他の誰ともしないような弱さに触れることができるんだ。そして私は臆することなく挑戦しようと思う」 


『クワイエット・イン・ア・ワールド・フル・オブ・ノイズ』は、プログレッシヴでアヴァンギャルドなR&Bを構成する定義を完全に書き換えることで、親密で、魂を剥き出しにし、スペクタルで、そして驚くべき作品に仕上がっている。


ドーン・リチャードのニューアルバムに関する声明は以下の通り。


ーー私は音楽を通して、いろいろな方法で自分自身を探求することができました。それが当たり前だとは思っていない。たとえそれが馴染みのないものであったとしても、あるいはあなたが私に求めていたものとは全く違うものであったとしても、リスクを冒して音楽的に私についてきてくれたすべての人に感謝したい。


人々はいつも、「なぜ、まだやっているのか?」と尋ねる。それは癒しの芸術以外の何ものでもない。音楽は私を救ってくれた。そして、今もそうあり続けている。


このプロジェクトは私に不可欠なものだった。癒しでもあった。この世界では、多くの雑音があなたを取り囲んでいる。多くの事象があなたを様々な方向に引っ張っていく。自分の静寂を見つけることが大切よ。セルフケアのためのスペース……。静寂は、あなたをひとつにまとめてくれるの。


だから、私の音楽の旅の間、プレイを押し続けてくれた人たちのために、スペンサー・ザーンと私にとってそうであったように、この曲があなたを癒してくれることを心から願っています。ーー


 

 

 Dawn Richard & Spencer Zahn 『Quiet In a World Full of Noise』 - Merge Records

 

2024年のMergeの最高傑作の登場と言えそうだ。ヴォーカリストとして多彩な表現力を持つニューオリンズのドーン・リチャード、そして、ニューヨークのマルチインストゥルメンタリスト、最近はポスト・クラシカルの作品『Status Ⅰ&Ⅱ』を発表したスペンサー・ザーンの異なる才能が結びつき、硬質でゴージャスなレコーディングが誕生した。また、このアルバムは、コラボレーションのお手本であり、多くのプロミュージシャンが模範とすべき指針となるだろう。 


今回のデュオとしての制作における両者の役割は明確である。スペンサー・ザーンは、部屋ごとに調律の異なるピアノを情感たっぷりに演奏し、そして、ドーン・リチャードは、Nick Hakimの系譜にあるネオソウル、ニューオリンズの原初的なラップであるバウンス、そして時にはスポークンワード、トラディショナル、ポピュラー、ジャズといった多角的なジャンルのヴォーカルを通して、ピアノの演奏に多彩なスペシャリティを与える。冷静さと感情の抑制を兼ね備えた語りから、それとは対象的なソウルの情感溢れる歌まで広汎な歌唱法を駆使し、作品全体に動きと変容をもたらす。スペンサー・ザーンのピアノは一貫して明徹で、澄明な輝きを放つが、その演奏を出発点として、リチャードの多彩なヴォーカルがこの作品を佳作から傑作に近い領域まで引き上げている。最後の仕上げとなるのは、高水準のマージレコードの録音である。このアルバムの音質は、洗練された現代建築を見るかのような威厳に満ちている。

 

リードシングルのプレスリリースで、スペンサー・ザーンは「皆、何かに圧倒されすぎなのではないか?」と現代的なポピュラー音楽に苦言を呈していましたが、その通りかもしれない。 音楽は、怪物でもなければ怖い存在でもない、本来は単純明快で素晴らしいものなのだから。実際的に、それらを過度に難しくしたり、モンスター化しているのは制作者自身ではないだろうか。そして、最近よく感じるのが制作者の多くが最早何をやりたいのかも不分明になっているケースが散見されるということである。まだ、それが若気の至りであれば良いのだが、少なくとも経験豊富で良識のある音楽家がするべきことではないだろう。経験のある音楽家はむしろ、後進となる音楽家の模範的な存在であるのが理想的である。そして、良い音楽を作る際に最も重要視すべきなのは、音質でもなければ、録音の手法でもない。そして、人を驚かせるようなやり方を廃し、それとは対象的に、歌の歌唱、作曲の妙、演奏の巧みさ、歌詞の美しさといった音楽の初歩的な手段で本質を語り、音楽の素晴らしさをストレートに伝えるように努めるべきである。そもそも、こういった初歩や基礎を軽視する人が多いのに辟易とすることがある。というのも、この基本を蔑ろにしつづけると、いつしか音楽は驚くべき無味乾燥な娯楽に堕落していかざるを得ないからだ。そして、音楽自体の本質を歪めるような効果を施すのではなく、本質の特性を押し出したり、また、一般的にわかりづらい魅力を引き出すのがレコーディングの妙でもある。その点において、複雑なサウンドエフェクトが施される場合も稀にあるが、このアルバムは、おそらくノンエフェクトで聴いたとしても、良いアルバムに聞こえるに違いない。それは、すでに録音現場に入る段階で、両者の音楽的な構想がしっかりと固まっており、それを忠実に実践しているに過ぎないからである。オズボーンが言うように、構想がしっかりと固めて、何をしたいのかを吟味してから、最終的にレコーディングスタジオに入るべきである。また、人間的な価値観が定まらぬうちに、多くのことを試しすぎるのも実は結構危険なのだ。

 

また、音楽の作法の他に、「表現性」というもう一つの欠かさざる要素も看過出来ない。この点において、ドーン・リチャードは「南部のシンガー」という特性を上手く活かしているのではないか。リチャードの歌に原初的なジャズやブルースの影響が含まれているか、もしくはアーティスト自身がそれらの音楽からの直接的な影響を受けているかどうかは定かではない。しかし、南部は南北戦争後から長期間、人種差別が根強かった地域であり、女性であれば、なおさらであろう。そういった地域に住むミュージシャンが、「南部出身の若い黒人女性が、音楽的にも、視覚的にも、芸術的にも、なりたい自分になれるようにしたい」と抜本的な地位向上を求めること、ないしは、本来の地位の獲得を主張することは、歴史的に見てもとても意義深いように思われる。しかし、そういった出発点は、優遇されたというよりも、不遇であったという思いをバネにして、それらのマイナスのエネルギーをプラスの方向に変換していこうという良心に求められるのである。さらに、個人と社会という二つの関係性において、「より良い権利を獲得しよう」と努めるのは、基本的人権の範疇にある称賛すべき行為である。およそ、すべての人間は幸福になる権利があり、もし、不遇な立場に置かれていると感じるなら、遠慮会釈なく、そのことを対外的に主張せねばならない。それが善良な社会を形成する市民の最低限の責務でもある。もちろん、それが単なる政治的な主張性に終始せず、「音楽の素晴らしさ」という一つの入り口を通して、多くの人々にそのことが伝われば、より理想的かもしれない。

 

ドーン・リチャードはソウルシンガーとしても傑出していて、とくに歌の持つ多彩な表現力を巧緻に駆使している。歌は、言葉になることもあるし、交流の手段、伝達の手段、感情表現、楽器にもなりえる。また、打楽器のようにビートやリズムを刻むこともできる。言葉を使うか否かによらず、考えの及ばないほどの未知の可能性を持っている。そして、リチャードは主張性を負の概念ではなく、正の概念に変換しようとしている。正の概念とは、端的に言えば、己が持ちうる能力や個性を駆使して、それらを社会的に還元しようという意味である。また、それは、一元的な役割に終始することはなく、他者と同じ性質になることもほとんどない。それぞれが違う役割と使命を持っていて、きわめて多彩なのである。そして、それは必ずしも、社会において平均的な能力を発揮するということではないのである。ドーン・リチャードのヴォーカルは、批判や譴責、あるいは内的なストレスの発散にあるわけではなく、それらの感覚を噛み締め、言葉の持つ意味を考えた上で、建設的な表現としてアウトプットする。もちろん、これは、歌手がパーフェクトな人間であると断定付けるものではない。しかしながら、それでも、現代社会ではあまりに言葉が粗雑に扱われることが多いのは事実だろう。それはつまり、自分の中で、なぜ、そういった感情が生じたのか、また、なぜ、そのような考えが沸き起こったのか、吟味する機会が少ないのである。つまり、自分の考えに一歩距離を置いて考えられず、すぐさま何かに過敏に反応してしまう。五分も経てば、もしかしたら、それは思い違いであったかもしれない、そういった吟味することがなく、何かに飛びつく。そんなことを続ければ、その人の人格はどうなっていくのか。そして、その吟味や解釈の時間を作り、建設的な意見を示すことが良識者としての規範であり、それが時間と共に人間的な気品や威厳、何より、その人の人間的な魅力を形作っていく。リチャードの歌は、罪を世に問うのではなく、より建設的な考えを啓蒙するための基礎やきっかけを作ろうとしているに過ぎない。そして、彼女の歌から感じられるのは、「善良な人間として生きるための道筋を作ろう」という意志なのである。

 

従来のデュオの役割ーーピアノの伴奏と歌ーーという関係性について言及するのであれば、一般的には「伴奏」と「歌」という二つの独立した演奏者の性質を反映するものであったが、このアルバムではその限りではない。基本的には、オーケストラの歌曲のように、伴奏と主旋律という関係性は維持されるが、時々、その役割を流動的に変化させる点に注目しておきたい。例えば、スペンサー・ザーンが、時には伴奏から主旋律に役割を移し替えたり、全体的なテクスチャの表情付けをしたかと思えば、それとは対象的に、ドーン・リチャードがスキャットのような技法を駆使し、テクスチャの表情付けをし、ザーンのピアノの演奏の雰囲気を強化したりする。これが作品全体の音楽に流動性を及ぼし、音楽を軟化させ、表現力の多彩さをもたらしている。


つまり、基本的には、リチャードの歌が主役で、ザーンもまたそれを明確に認めていると思うが、両者ともにスタンスを固定せず、それどころか自分の演奏や音楽の立脚点に固執しない。これが音楽に奥行きを与え、聴いていて飽きさせず、長く聴けるような深みを与えている。そして音楽を紡ぐことに関しても、両者には同水準の自負心があり、そのことを誇りに思っているはずだ。それが実際の音楽にも乗り移り、迫力味を付与している。両者の演奏や作曲における観念はピタリと合致し、音楽的な考えを上手く共有していることも、このアルバムを良質にしている要因でもあるのではないか。もちろん、それは独善的な考えではなく、他者に対する敬意を絶えず欠かさぬことが、アルバムの音楽に強固なイメージや結束力をもたらしたことは事実であろう。

 

実際的には、このアルバムは「Movement」であり、曲の寄せ集めではなく、音楽の流れを体現させている。しかし、いくつかのジャンルが含まれ、それらが渾然一体として外側に表出されているのは事実だろう。例えば、そのことが一曲目「Stains」から顕著にうかがえる。この曲は独立したトラックというよりも、全体の導入部となっている。リチャードの声は、ジャズのムードを反映させて始まるが、ザーンのピアノは古典的な雰囲気に充ちている。ピアノの調律でデチューンを強調し、蠱惑的な音のテクスチャーを作り出している。歌に対するピアノは旋律的な側面を強調しているが、全体的にはアンビエントに近いニュアンスが込められている。そしてゾーンのピアノは、クラシックやジャズを織り交ぜ、ジャズからソウルへと変遷を辿っていき、リチャードのボーカルを巧みに引き立てる。それらにゴージャスな感覚を付与するのが、かすれたストリングスだ。これらの組み合わせは、明晰な音楽というより、抽象化された音楽の性質を強めるような働きをなす。いわば、このアルバムを聴き始めると、ぼんやりとした抽象的な空間が音楽の背景に浮かび上がってくるような錯覚を覚えるかもしれない。これは本作の主題となる「ノイズにまみれた世界の中にある静寂」の観念の立ち上がりの瞬間となり、厳密に言えば、「夢のような音楽」を聞き手に提供する出発点となる。これはシュールレアリズムやアンドレ・ブルトンのような原初的な抽象主義や象徴主義を音楽でかたどったかのようだ。

 

こういった手法はアンビエントで用いられる場合が多い。三次元の空間に別次元の空間が出現し、その向こうにある音楽に私達は恐るおそる手を伸ばすことになる。しかし、そのおぼろげでミステリアスな空間から聞こえてくるのは、慈しみと愛、そして柔らかさや優しさに溢れるピアノのモチーフである。続くタイトル曲で、大規模のコンサートホールのようなアンビエンスを施した空間処理の中、ザーンは沈痛に充ちたピアノの伴奏を始め、リチャードのダイナミックなボーカルを導く役割を担っている。


まるで、その期待に応えるかのように、リチャードは内的な痛みを捉えたヴォーカルをピアノに呼応させる。音楽そのものは、両者の演奏と歌を通じて繰り広げられる感情表現であり、それらはストリングスのかすれたトレモロや、ネオソウル風のコーラスによって美麗で高らかな感覚へ跳躍してゆく。いわば、最初のモチーフでは、悲哀とやるせなさが起点となっているが、これらが精妙な感覚を持つソウル・ミュージックへと上昇していくのである。アウトロのゾーンの演奏も哀感に満ち溢れ、イントロと呼応するかのように淡い余韻をもたらす。悲しみの余韻は立ち消え、それと立ち代わりに、アンビエント風のイントロが立ち上がる。すると、まるで場面が突如切り替わるように、開けた屋外や自然豊かな場所が私達の目の前に出現する。「3- Traditions」は対象的に、明るく、輝かしい光に充ちたポピュラー・ソングである。リチャードは時々、その中で、ソウルというよりも、R&Bの古典的な歌唱法を駆使しながら、本格派の歌手としての才覚を遺憾なく発揮する。それらに新鮮なニュアンスをもたらすのが、ゾーンのピアノの伴奏、そしてギター、さらにはアンビエント風のシンセ・テクスチャーである。これらは地にあった感覚を離れて、天上を歩くかのような晴れやかな気分を沸き起こらせる。

 

 

 

「4-Diet」は目の覚めるような曲で、本作の重要なハイライトの一つ。この曲は今年度のソウルミュージックの最高峰に位置するといっても差し支えないだろう。ダイエットの非日常的な話題に触れながらも、対極にある「R&Bの啓示的な本質」を呼び覚ます。ザーンの調律を変えたピアノで始まり、リチャードのヴォーカルの主旋律に対し、補佐的な対旋律を描くことがある。しかし、全般的にこの曲を強固に支えているのは、低音部の和音である。エレクトロニックのアルペジエーターを曲の途中で挿入し、これらの音楽形式に前衛性をもたらしている。シンセサイザーのアルペジエーターは、リチャードの歌の周囲を取り巻きながら、感情的な表現、及び、リリシズムに色彩的な効果を及ぼしている。両者の多彩な才覚が合致した非の打ち所がない一曲だ。

 

 

「Diet」

 

 


テープ(アナログ)ディレイで始まる「5-Stay」は、イントロの渦巻くようなサウンド効果のあと、エレクトロニカ風の曲調に続く。しかし、リチャードのヴォーカルは、ネオソウルの系譜にあり、現代的なエレクトロニックを内包させたブラックミュージックの一貫として展開される。この曲では、スペンサー・ザーンのマルチ奏者としての才覚の一部であるシンセ奏者とプロデューサー的な趣向が色濃く反映されているように思える。いわば、リチャードの本格的なソウルの歌唱に対して、ミニマル・テクノやミニマル・アンビエントのテクスチャーを音楽の背景に敷き詰めている。アルバムの中では、インタリュードーー曲と曲のつなぎ目ーーのような役割を果たしている。

 

「6-Life In Number」は、エリック・サティの「ジムノペティ」の系譜にあるピアノの演奏で始まる。それに続くのは、ドーン・リチャードのニューオリンズ・バウンスの語りだ。ゾーンの演奏は基本的に精妙な感覚に縁取られているが、時々、アナログディレイのアンビエンスを織り交ぜ、通奏低音のような役割を持つリチャードのスポークンワードを補佐している。この曲は、従来の音楽ジャンルにはなかった形式で、「アンビエント・ヒップホップ」の誕生の瞬間と言えそうだ。ただ、これはすでにダニー・ブラウンが昨年リリースした『Quaranta』で暗示していた手法であるが......。

 

  「7-Moments For Stillness」は、ストリングスを編集においてデチューンしたドローンである。これは米国のローレル・ヘイローや日本のサチ・コバヤシに比する手法で、ドローンミュージックの形式が選ばれている。この曲もまた、 インタリュードやムーヴメントの役割を持ち、曲と曲のつなぎの役割を果たしている。なぜ、こういった曲を入れるのかといえば、核心を突く楽曲ばかりだと聞き手が疲弊してしまうからである。しかし、単なる間奏的な曲とも言い難いものがあり、アルバムにバリエーションを与えているのみならず、収録曲全体に何らかの働きかけをしている。その後、アルバムは終盤に差し掛かり、オープニングに見受けられるような、ペーソスに充ちたネオソウルをベースに、音楽そのものがダイナミックさと迫力味を増していく。その音響効果を担うのがシネマ・ストリングスだ。続く「8-The Dancer」では、シネマティックな音楽の性質が強まり、リチャードのヴォーカルが主役となる。それは舞台の後ろにいたはずのリチャードにスポットライトが当てられ、舞台の中央に出てくるような演出効果である。そのあと、それとは対極的な音楽表現が登場する。氷のように冷たい響きを持つザーンのアルペジオをもとに、シネマティックなポップスが構築される。「9-Breath Out」は、音楽における演劇性が確立された瞬間であり、ポピュラー音楽の範疇で展開される。また、バレエ音楽の趣向もあり、何らかの登場人物の動きの効果を音楽が体現しているかのようである。これらは単一の音楽表現に留まることなく、ネオソウル、ジャズ、オーケストラというように、多角的なジャンルを内包させながら、音楽におけるストリーテリングのような役割を果たしている。

 

アルバムのもう一つのハイライトは続く「10-Ocean Past」に出てくる。フルレングスを制作する時に最も配慮したいのが、「ハイライトとなる前後の収録曲をどう配置するのか」という難題である。強い印象を持つ曲で、それがポピュラーとして平均的以上のものを有し、一般的な曲よりも優れている可能性があると分かっている場合には、少なくとも、その前の曲を強い印象で縁取るのは得策とはいいがたい。アルバムの収録曲は、一曲の中のクレッシェンドやデクレッシェンドのように「強弱の均衡」により成立しているため、強進行の曲と弱進行の曲がバランスよく配置されるべきである。このアルバムに関して言うと、続く「To Remove」は、弱進行に該当し、次曲の期待感を徐々に盛り上げるような重要な役割を担う。つまり、イントロダクションや導入部を設け、続くハイライトへの呼び水となり、次に何がやってくるのかという期待感を聞き手の感覚にもたらすのである。アンビエント風のシークエンスで一つの音楽の流れを形作ってから、アルバムのもう一つの本質である「Ocean Past」が続いている。前の曲の雰囲気を巧みに引き継ぐかのように、この曲は静かなイントロで始まり、その後、驚くべき変遷を辿っていく。ミステリアスな印象を持つピアノ、サクソフォンの断片的な演奏の導入、いわばアヴァンギャルドな雰囲気を漂わせながら、それらのミステリアスな感覚を縁取るリチャードのメロウなソウルフルなヴォーカル、彼らは二人三脚で、一大的なポピュラーの名品を作り上げていく。時々、トランペットのミュート、ストリングスの精妙なパッセージ、そしてボーカルやコーラスのサンプリング、多彩な録音を散りばめながら、感覚としては喜びと悲しみの中間域にある憂いのあるダークなポップスを完成させる。全体的な音楽性に関しては、その限りではないが、ゴシック・ポップのようなニュアンスに縁取られている。アルバムの中で最も傾聴すべき素晴らしい一曲である。

 

アルバムの冒頭がどのような曲であるのかを考慮しなければ良い作品を生み出すことが難しいのと同様に、アルバムの最終盤の曲も軽視出来ない。完璧な作品を作るのは難しいが、もし、中盤に、粗や欠点があろうとも、聞き手は終盤の感触が良ければ、それなりに満足感を覚えるからである。ただ、それは付け焼き刃であってはならず、聞き手に確かな手応えを感じさせねばならない。


そういった点では、「Try」はアルバムの中では最も聴き応えのある一曲だ。同時に一回聴いただけでは分からない何かがある。これは、スペンサー・ザーンとドーン・リチャードの持つ性質、器楽奏者としての多彩さ、シンガーの文化性の多彩さ、これら二つの個性が合致し、花開いたのである。オーケストラ風の表情付けから、金管楽器のサンプリング、トラディショナルの範疇にあるリチャードの声というように、このアルバムの副次的なテーマである流動性が的確に表現されている。コラボレーションアルバムの醍醐味というのは、異なる才覚を持つミュージシャンが偶然見つけた何かをレコーディングという形で収め、それを多くの人と共有することに尽きる。


 次いで、個人的な意見を言わせていただくならば、両者の才能がかけ離れた性質であるほど、美しい音楽が出来上がる。もちろん、その場合、お互いの性質や価値観の相違をしっかりと認め合うことが必要とされる。そういった意味では、リチャード&ザーンのコラボレーションは、彼らの精神性の高さが感じられるし、また、人間的な気品も備わっているため、理想的な音楽作品を制作しえたのだろう。願わくば、世界の人々がそういった善良な存在であれば、理想的であるのだが......。結論付けると、音楽というのは、制作者の理想郷を形作るための鏡なのであり、ユートピアが夢に過ぎないからこそ、こういった理想主義的な作品を制作する必要性に駆られたとも言える。それはもちろん、本作のタイトルにあるように、世界のノイズや煩わしさから解き放つ霊妙な力が込められているわけである。

 

 

 

 

95/100

 

 

 

Best Track- 「Ocean Past」


 

Michael Kiwanuka(マイケル・キワヌカ)が新曲「The Rest of Me」をリリースし、イギリスとヨーロッパでのライブを発表した。アコースティックギターが心地よく鳴り響く、安らいだソウルミュージックだ。


「The Rest of Me」は、マイケル・キワヌカが11月15日にポリドール・レコードからリリースする新作『Small Changes』からのリリース。同アルバムには、これまでに発表されたシングル「Floating Parade」、「Lowdown (part i)」、「Lowdown (part i)」が収録されています。

 

「The Rest of Me」






Fontaines D.C.は「BBC Radio 1 Live Lounge」でラナ・デル・レイの「Say Yes to Heaven」を披露した。また、『Romance』の収録曲「Favourite」も披露した。以下でチェックしてほしい。


バンドがカヴァーを選んだことは、まったく意外なことではない。2022年当時、ヴォーカルのグリアン・チャッテンはNMEに対し、ラナ・デル・レイとなら「本当にいい曲」ができると思うと語った。「彼女の音楽は、僕が大好きな映画の時代に寄り添っているし、彼女の音楽の中にストーリーを見出すことができるような書き方をしているんだ」と称賛すること頻りだった。

 

 

 「Say Yes to Heaven」

 

 

「Favourite」

 


◾️【REVIEW】 FONTAINES D.C.  ROMANCE


オジー・オズボーンが、10月19日にクリーブランドで開催されるロックの殿堂入り式典でオールスターのトリビュートを受ける。オズボーンにとっては、2006年のブラック・サバスに続く2度目の殿堂入りとなる。


式典はDisney+でライブストリーミングされ、テレビ放映された特別番組がABCで放映され、後日Huluで視聴可能となる。


フェスティバルでは、オズボーンのソロ・キャリアを称える音楽的トリビュートも予定されている。ビリー・アイドル、ツールのメイナード・ジェイムス・キーナン、そしてカントリー・アーティストのジェリー・ロールが、このイベントでオズボーンの曲を歌う予定だ。


1987年以来、オズボーンバンドのギタリストで、グラミー賞を受賞した「I Don't Want to Change the World」を含む多くのヒット・シングルに参加し、オズボーンと共作したザック・ワイルドが、トリビュートのギタリストとして参加する。


他にもレコード・プロデューサーのアンドリュー・ワット(オズボーンの過去2枚のソロ・アルバムでギターを弾き、曲の共作を担当)もギターを弾き、パフォーマンスの音楽監督を務める。ビリー・アイドルの長年のギタリスト、スティーヴ・スティーヴンスも出演が決まっており、ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンも出演する。


トリビュートのリズム・セクションは、1996年から2003年までオズボーンのバンドのメンバーだったメタリカのベーシスト、ロバート・トルヒーヨとレッド・ホット・チリ・ペッパーズのドラマー、チャド・スミスで構成されている。 


チャド・スミスはオズボーンの最近のソロ・アルバム、2020年の『Ordinary Man』と2022年の『Patient Number 9』でドラムを叩いている。アダム・ウェイクマンは、2004年からオズボーンと仕事をしており、近年のブラック・サバスの再結成ツアーでキーボードと追加ギターを演奏した。


オズボーンは2006年以来、ソロ・アーティストとしてロックの殿堂入りを果たしている。しかし、ブラック・サバスに解雇された後、「クレイジー・トレイン」、「バーク・アット・ザ・ムーン」、「ノー・モア・ティアーズ」などの曲のおかげで、ソロ・アーティストとしてロック史上最も記念碑的なカムバックを果たしたにもかかわらず、これまで正当な評価は得られなかった。


オズボーン自身は長年、メタルのアイコンとして人気を獲得したことは事実だが、彼の音楽はメタルだけとは限らず、ポピュラーも含まれている。このことがロックアーティストとしての評価を難しくさせた。ロック・ホールは今年初めて彼をノミネートし、受賞にたる即座に信任を得た。他の殿堂入り者には、シェール、ピーター・フランプトン、メアリー・J・ブライジなどがいる。


ビリー・アイドル(彼のギタリストであるスティーヴ・スティーヴンス)、ジェリー・ロール、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミス、ヴォルフガング・ヴァン・ヘイレン、ザック・ワイルド、ツールのメイナード・ジェイムス・キーナン、メタリカのロバート・トゥルージロ、アンドリュー・ワットが出演を予定しており、ジャック・ブラックも参加している。


授賞式は10月19日にクリーブランドで行われ、Disney+でライブ配信される。その他、シェール、ア・トライブ・コールド・クエスト、デイヴ・マシューズ・バンド、メアリー・J・ブライジ、クール&ザ・ギャング、フォーリナー、ピーター・フランプトンが殿堂入りを果たす。音楽的影響力賞はアレクシス・コーナー、ジョン・メイオール、ビッグ・ママ・サーストン、音楽的卓越賞はジミー・バフェット、MC5、ディオンヌ・ワーウィック、ノーマン・ウィットフィールド、音楽業界のプロフェッショナルに贈られるアーメット・エルテガン賞はスザンヌ・ド・パスが受賞する。


今年もデュア・リパ、ジェイムス・テイラー、ドクター・ドレー、ロジャー・ダルトリー、スラッシュ、サミー・ヘイガー、メソッド・マン、バスタ・ライムス、ザ・ルーツ、デミ・ロヴァート、ケニー・チェズニー、キース・アーバン、エラ・マイ、ラッキー・デイ、マック・マクアナリーがプレゼンターとして発表されている。

 

Maribou State

Maribou State(Chris DavidsとLiam IvoryのUKデュオ)は新作『Hallucinating Love』を発表した。本作は来年1月31日にNinja Tuneからリリースされる。


2011年以来、彼らは世界のダンス・ミュージック・サーキットにおける主要プレイヤーとしての地位を確立し、ジャンルにとらわれない様々な影響を独特のオーガニックなサウンドに融合させ、ダウンテンポのエレクトロニカを新世代のために再定義した。グラストンベリーからシドニー・オペラ・ハウス、UK、EU、北米ツアーではソールドアウトを連発するなど、ライヴ・アクトとしても高い評価を得ている。


近日リリースの新作を含む3枚のアルバムで、マリブー・ステートは複雑さ、親密さ、エレクトロニックな広がりを絶妙なバランスで磨き上げてきた。彼らの広大な音世界は、UKクラブ・ミュージック、ヴィンテージ・ソウル、そして刺激的なサンプルを駆使し、完全にユニークなものを作り出している。


2015年のデビュー作『Portraits』は、2人が育ったロンドン郊外の緑豊かなハートフォードシャーにあるリアムの実家の庭の下にある小屋で書かれ、レコーディングされた。Portrait』の成功を基に、マリブー・ステートはイギリスの首都に拠点を移したが、インスピレーションを得るためにさらに遠くを探した。


2018年の『Kingdom of Colour』では、インド、オーストラリア、モロッコ、アメリカ、そしてそれ以外の国々を旅して得たアイデアやフィールド・レコーディングの音のコラージュを織り込んだ。テキサス出身のトリオ、Khruangbinとのコラボレーションによるリード・シングル「Feel Good」は大ヒットを記録し、アルバム自体も広く称賛された。ダンス・ミュージックのバイブル『Mixmag』は、マリブー・ステートを今年のアーティストのひとりに選出した。


2000年代半ばに一緒にDJを始めた2人は、かつてロンドンにあった伝説的なクラブにちなんで名付けられた人気シングル「Turnmills」など、作品を通してUKダンス・ミュージックの系譜に敬意を表している。続いて2019年には、HAAi、Maceo Plex、DJ Tennisらのリワークをフィーチャーした『Kingdoms In Colour Remixed』をリリース。このコンピレーションは、彼らの幅広い音楽的嗜好を証明するもので、ソウル、ディスコ、よりバンピーなハウスのグルーヴをUKジャズやネオ・クラシックとリンクさせている。


マリブー・ステートのライブ・ショーは、同時に次のレベルへと進化し、必見のヘッドライナーとなった。彼らのバンドは、サード・アルバムとなる新作『Hallucinating Love』で、その真価を最大限に発揮している。個人的にも仕事的にも激動の過去数年を経て、このアルバムは希望の光となっている。ボーカリストのホリー・ウォーカーとアンドレア・トリアーナ、そして才能溢れるプロデューサーのジャック・シブリーなど、素晴らしい才能を持つミュージシャンが集結したこの待望のリリースは、コミュニティ、一体感、そして困難に打ち勝つことを祝福している。


この『Hallucinating Love』には2曲の素晴らしいシングルが収録されており、激動の時代を癒してくれる。Blackoak」は、マリブー・ステートのフォーク、壮大なストリングス、弾力性のあるファンク・ベース、耳に残るヴォーカル・フックの土俗的な融合を象徴しており、「Otherside」は長年のコラボレーターでありヴォーカリストのホリー・ウォーカーをフィーチャーしている。複雑な音のタペストリーだが、常にハートとソウルを前面に押し出している。



「Otherside」



Maribou State  『Hullucinating Love』


Label: Ninja Tune
Release: 2025年1月31日


Tracklist:

1 Blackoak 

2 Otherside 

3 II Remember 

4 All I Need 

5 Dance on the World 

6 Bloom

7 Peace Talk 

8 Passing Clouds 

9 Eko’s 

10 Rolling Stone

William Basinski『September 23rd』

 

Label: Musex International / Temporary Residence

 Release: 2024年9月27日


 

未発表曲集『September 23rd』は、何かしら鳥肌の立つような異端的なアルバムでもある。アーカイヴでありながら、実験音楽の最高峰に位置付けられる。今からおよそ42年前に録音された作品で、後に実験音楽の大家となるバシンスキーの若かりし時代の音源である。後の大家としての萌芽を見ることが出来、彼の中期の作品のほとんどが、このアルバムのコンポジションやバリエーションの技法の延長線上に位置付けられることが理解できる。バシンスキーの音楽は、基本的に一曲だけピックアップして聴いても意味がなく、続けて聞かなければ、その真価が分からないことが多い。バシンスキーの作曲は、カセットテープの録音のカットアップコラージュを中心に構成されているが、これはすでに1982年の時点で確立された技法だったことに驚く。

 

作風としては、ピアノを基にルネッサンス主義のノスタルジアを表した『Melancholia』(20003)の系譜に属する。さらに言及すれば、このアルバムの中で用いられるモチーフが登場している。ピアノのワンフレーズにエレクトロニック風のエフェクトを施し、三分から五分のセクションが40分あまり形を変えて変奏されるだけの作品(ストリーミングバージョンは80分に及ぶ)。しかし、たとえ、原始的なアンビエントのようにノンリズムで構成される作品であるとしても、無数の反復とループを繰り返すうちに、独特なアシッドハウス的な感覚が漂い始める。


彼のアンビエントの技法は、単なるエレクトロニックの演奏ではなく、音の構成自体が「雲」のようで、実際的にクロード・ドビュッシーの『Nuages』の弦楽のテクスチャーに近似している。そして、2小節ほどの短いミニマリズムの向こうからリゲティの『Atomosphere』にもよく似た奇妙なアンビエンスが立ち上ってくる。


リゲティの場合は、アウシュヴィッツの不気味さであったが、バシンスキーの場合は、孤独と甘美的なロマンスである。彼の音楽は一つの入口の扉をおもむろに開き、その果てにある無限なる世界、靄や霧に覆われた抽象的なアストラルへの道筋を描くかのようである。いつのまにか聞き手は惑乱のさなかに置かれ、音を聴いているという意識ではなく、音に浸っているというリスニングの最も深い場所、深淵へといざなわれていかざるを得ない。次いでいえば、1982年の時点でドローン音楽の現代的な技法も確立されている。「Expert 5」のアウトロを参照。

 

この世には、録音場所の空気感を吸収したアルバムというのが存在する。ライブ録音でも稀にあるが、音源自体に独特な緊張感が含まれ、スタジオや録音場所に漂う「気」、西洋風に言えば、「アトモスフィア」をかたどったものである。そして、未発表音源集『September 23rd』はこれに該当する。このアルバムの音楽に触れてみると分かるように、音源の40分の時間の中には、奇妙な「夜」の空気感が流れている。 それも、まったく人の寝静まった刻限、誰もが眠っている時間、そういった時間に人知れず、ピアノでレコーディングを行ったような雰囲気が漂う。ダンボ地区はブルックリンの高級住宅街で、中世の英国的な建築様式が目立つ地域だ。まるで彼のピアノの演奏、そしてその果てにゆらめく幻惑的なアンビエンスは時を越え、2024年の私たちのいる地点に蘇ってくるように思える。もしくはその音楽は、私達をバシンスキーがアパートメントに住んでいた1982年のブルックリンに押し戻すようなイメージの換気力がある。

 

音楽自体から何を読み取るのかはそれぞれの特権であるが、この音楽は少なくとも形而下にある意識の基底を流れている。それはダリのシュールレアリスムの一貫の表現にあると言え、物質的な時間に存在するかどうかも定かではない。多くの作曲家は、概して音楽が絶えず物質的な時間や領域に存在すると考えているが、部分的には誤謬であろう。バシンスキーの音楽は、睡眠の前の意識の内部の底、日頃、明晰な意識を持ち暮らしているときには見えない意識下の時間の底を流れていく。そして、その中で、誰も知らぬ、誰もいない時の中にある非物質的な世界を作り上げている。彼が作り出す音楽は、一般的な明晰意識に存在せず、その内側にある深層心理の領域に鳴り響く。見方を変えれば、彼は形而上にある音楽を作り上げたとも言える。


音楽自体は一つのモチーフを基に構成される変奏曲で、これもまたバシンスキーの長年の主題でもある。しかし、テープディレイや音の細かなコラージュによって、 最初の主題は驚くべき変遷を辿る。その音楽を順を追って聴いていくと、最初のテーマは、「Expert9」において全然別の音楽に変わっている。最初の構成自体を組み換え、別の音楽に変遷していく際、モチーフが刻まれたり、別のシークエンスに移動することもあるが、調性や最初のモチーフは一貫して維持されている。それは音の時間性を薄める試み、もしくは本来の禅や密教のような時間の概念「時間の流れは本来存在せず、円環を描く」という概念を音楽を通じて実践しているとも言える。「時間は未来から現在に流れる」という考えもチベットにあるように、西洋主義的な気風を残しながらも、実際の音楽には、キリスト教的な倫理とは明らかに異なる概念も読みとける。実際的に、逆再生の処理がテープディレイと合わせて組みこまれている場合があり、これがアシッド的な感覚とトリップ感覚を呼び起こし、時間を超越するような奇異な感覚を覚えさせる。言ってみれば、タイムワープするようなSF的な面白さも感じることが出来るのではないか。

 

ミニマリズムの作曲家であるジョン・アダムスさんは、かつて自身の作風を「ミニマリズムに飽きたミニマリスト」と少し自虐的に評したことがあったが、ウィリアム・バシンスキーの場合は対象的に、ミニマリズムの技法を徹底して先鋭化させている。そして、反復的な音楽というのは、得てして無機質になりがちだ。それは電子音楽に近づけば近づくほど顕著になる。しかし、ウィリアム・バシンスキーは、人間的な感覚を失わず、中世ヨーロッパ的なノスタルジアとペーソス、近代と現代をつなげる概念を元に、実験音楽の知られざる領域を開拓している。


これがなぜ可能だったかといえば、ブルックリンのダンボ地区が中世ヨーロッパ的な雰囲気を持つ一角だったからではないかと推察出来る。名プロデューサー、ジャック・アントノフが指摘するように、録音された場所が作品自体に「大きな影響を及ぼす」ことがある。これぞまさしく、1982年9月のブルックリンの空気感を反映させた世にも奇妙な作品だ。そしてもちろん、それは彼のアパートの階下の友人、ジョン・エパーソンが録音の機会(カセットデッキ)を提供しなければ、後のバシンスキーの作品、及び名作群は世に出ることはなかったかもしれない。

 

 

96/100

 








 

Lauren Mayberry

スコットランドのエレクトロ・ポップ・トリオ、CHVRCHESのシンガー、Lauren Mayberry(ローレン・メイベリー)がソロデビューアルバム『Vicious Creature』を発表し、リードシングル「Something in the Air」を公開した。

 

現時点ではアルバムの正確なリリース日は公表されていないが、アイランドから今年後半にリリースされることだけは明らかとなった。トラックリストとジャケットのアートワークも未公開。

 

「サムシング・イン・ザ・エアー』は、本当に突然できた曲なんだ。私はロンドンで、友人で共同作曲家兼プロデューサーのダン・マクドゥーガルと別の曲を仕上げていた。スタジオの共有キッチンで休憩していたら、イギリスを代表するミュージシャンが入ってきて、電気、5G、そしてそれがいかに私たちを病気にしているかについて話し始めたんだ。ダンと私はスタジオに戻る前にブロックを散歩し、それらの理論や、なぜ人々がそれを信じたがるのかを紐解いてい」


プレスリリースでは、アルバムの詳細をこう説明している。『Vicious Creature』は、ローレン・メイベリーの芸術性における驚くべき新時代であると同時に、それまでの20年間のバンド生活の集大成でもある。その曲の中で、彼女は初めて深く個人的な視点からセクシュアリティとエンパワーメントについて書いており、トリ・エイモス、フィオナ・アップル、PJ・ハーヴェイ、キャスリーン・ハンナといった彼女の青春時代のアイコンと再会し、オール・サインツ&シュガーベイブズのような90年代のイギリスのガールズ・グループの影響を受けている。


「Something in the Air」