昨年5月にビルボード・ライヴ東京にて初来日公演を実施したヴィレッジ・オブ・ザ・サンが、本日『Village Of The Sun, Live In Tokyo』と題された新しいライヴEPをサプライズ・リリースした。早耳のリスナーはぜひチェックしよう。


英国の伝説的デュオ、ベースメント・ジャックスでの活動でも知られるサイモン・ラトクリフによる注目のジャズ/ダンス・クロスオーバー・ユニット、ヴィレッジ・オブ・ザ・サン。


英国ジャズ・シーン新世代の旗手でサックス奏者ビンカー・ゴールディングとドラマーのモーゼス・ボイドがサイモンとタッグを組み、即興で作るインストゥルメンタル・ミュージックに対する情熱から誕生した同プロジェクトは、それぞれが持つ感受性を武器に、ダンサブルで独特の雰囲気を持った作品作りを心がけている。


2022年11月には待望のファースト・アルバム『ファースト・ライト』をリリースし、音楽の新境地を開いた彼ら。今回リリースされたEPは、ビルボード・ライヴでの公演の中から3曲のファン人気曲、「Ted」「Village Of The Sun」「The Spanish Master」を収録。


来日公演を振り返ってメンバーのサイモンは、次のように話している。「エレガントなビルボード東京でのライヴはとても楽しかったよ。オーディエンスはとても僕たちを歓迎してくれたから、すごくエキサイティングだった。東京にはジャズに対する深い知識と愛情があるよね」


13分におよぶライヴ・バージョンの「The Spanish Master」は、サイモンの流れるようなシンセサイザーがモーゼスの熱のこもった複雑なドラム・ライン上で踊り、ビンカーの表現力豊かなサックスがどんどん入り混じってきて、ドラム・ソロへと展開していく。このパフォーマンスは、ライヴのエネルギーを完璧に凝縮したもので、メンバー全員がアドレナリン全開の最高の状態であることがわかる。




【リリース情報】



アーティスト名: Village of the Sun (ヴィレッジ・オブ・ザ・サン)

タイトル名: First Light (ファースト・ライト)

レーベル: Gearbox Records

品番:GB1580CDOBI (CD) / GB1580OBI (LP)


<トラックリスト>

1. Cesca

2. First Light

3. Village Of The Sun

4. The Spanish Master

5. Tigris

6. Ted


※アルバム『First Light』配信リンク:

https://orcd.co/firstlight


Credits: 

All tracks written by Simon Ratcliffe, Binker Golding and Moses Boyd

Apart from ‘Ted' - written by Ted Moses, Simon Ratcliffe, Binker Golding and Moses Boyd

Binker Golding: tenor saxophone

Moses Boyd: drums

Produced and mixed by Simon Ratcliffe and all other instrumentation by Simon Ratcliffe

 


Village of the Sun:

 

イギリスのダンス・ユニット、ベースメント・ジャックスの活動でも知られるサイモン・ラトクリフと、サックス奏者ビンカー・ゴールディングとドラマーのモーゼス・ボイドによって結成されたプロジェクト。

 

即興で作るインストゥルメンタル・ミュージックに対する情熱から誕生した同プロジェクトでは、それぞれが持つ感受性を武器に、ダンサブルで独特の雰囲気を持った作品作りを心がけている。2020年1月、デビュー・シングル「Village Of The Sun」を、4月にはセカンド・シングル「Ted」を配信リリース。

 

その後、2022年9月に2年半ぶりとなる新曲「Tigris」をリリース。10月には更なる新曲「The Spanish Master」を、そして11月にはファースト・アルバム『ファースト・ライト』を発売。2023年5月、ビルボードライブ東京にて初来日公演を実施。2024年10月、同公演からのライヴ音源を収録したデジタルEP『Village Of The Sun, Live in Tokyo』を配信リリース。

 

©︎Arepo

 

本日、受賞歴もある作曲家で、シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)のピアニストとしても知られる即興演奏家のエリオット・ガルビン(Elliot Galvin)が、本日ニューシングル「From Beneath」を発表した。(ストリーミングはこちら)


エリオット・ガルビンは、英国ジャズ界のスーパーグループ、ダイナソーのメンバーで、これまで4枚のソロ・アルバムでDownbeat 誌やJazzwise誌の”アルバム・オブ・ザ・イヤー”に輝いたほか、マーキュリー賞にもノミネート経験をもつ。

 

また、シャバカ・ハッチングス、エマ=ジーン・サックレイ、ノーマ・ウィンストン、マリウス・ネセット、マーク・ロックハートらとのコラボレーションなど、英国ジャズ界の先駆者として長年活躍している。


他にも、マーク・サンダースや現在のレーベルメイトであるビンカー・ゴールディングらとレコードをリリースし、ボーダレスな即興演奏家としても高い評価を得ている。


彼の最新ソロ・アルバムは、全曲即興のピアノ・アルバムで、Guardian誌の「アルバム・オブ・ザ・マンス」とBBCミュージックの「アルバム・オブ・ザ・イヤー」に選出。また、シンフォニエッタから委嘱された作曲家でもあり、ターナー・コンテンポラリー・ギャラリーなどで作品を展示するオーディオ・アーティストでもある。


グラミー賞、マーキュリー賞、MOBOにノミネートされたレコーディング&ミキシング・エンジニアのソニー・ジョンズ(トニー・アレン、アリ・ファルカ・トゥーレ、ローラ・ジャード)とレコーディングした最新シングル「From Beneath」には、著名なベーシスト兼ヴォーカリストのルース・ゴラーと、ポーラー・ベアのドラマーでパティ・スミス/デーモン・アルバーンのコラボレーターでもあるセバスチャン・ロックフォードが参加している。


グリッチなドラム・マシーンに支えられたうねるようなピアノ・ラインと、心を揺さぶるヴォーカルから曲は展開し、緊張が解けると、熱烈なパーカッション・ワークと、ガルビンのスタッカートなエレクトロニック・マニュピュレーションを切り刻み、飛び回るようなベースラインが始まる。

 


このシングルについてガルビンは、次のように語っています。

 

「ルースとセブを何年も尊敬してきたし、特にセブのバンド、ポーラー・ベアには大きな影響を受けてきました。この曲は、前作から5年の間に僕の音楽的な声が進化してきたことを象徴している。ロックダウンの間、そして、その後の数年間、僕は自分の音楽をリリースするのをやめ、世の中の方向性に対する不穏な感覚の高まりと僕自身の人生の変化に影響された新しいアプローチを構築していきました。その結果、人生経験に富んだダークな音の世界が生まれたんだ」


「セバスチャンの象徴的なドラミング、ルースの心に響くヴォーカル、エレクトリック・ベースの即興演奏に加え、モジュラー・シンセ、ドラム・マシン、サンプラーを取り入れ、ユニークなピアノ・インプロヴァイザーとしてのアイデンティティを保ちながら、荒涼とした美しさと重く壊れたグルーヴのトラックを作り上げました。これは親友との会話の後に書かれた1曲です」

 

 

 

 

 

Elliot Galvin Biography:

 

受賞歴のある作曲家、ピアニスト、即興演奏家。作品は主に、即興演奏の取り入れと、様々な環境と文脈における音の折衷的な並置の使用で知られている。Downbeat誌とJazzwise誌の両方で2018年の年間最優秀アルバムに選ばれ、2014年には栄誉ある"ヨーロピアン・ヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー"を受賞した。

 

これまでシャバカ・ハッチングス、ノーマ・ウィンストン、マリウス・ネセット、マーク・ロックハート、エマ・ジーン・サックレイ、マーキュリー賞ノミネート・バンドのダイナソーなどとのレコーディングや国際的なツアーを数多くこなしてきた。

 

即興演奏家としては、マーク・サンダース、ビンカー・ゴールディングとのアルバムや、パリのルイ・ヴュイトン財団でのコンサートで録音された全曲即興のソロ・ピアノ・アルバムをリリースしており、Guardian誌の"アルバム・オブ・ザ・マンス"やBBCミュージック誌の"アルバム・オブ・ザ・イヤー"に選ばれている。

 

作曲家としては、ロンドン・シンフォニエッタ、リゲティ弦楽四重奏団、アルデバーグ・フェスティバル、ジョンズ・スミス・スクエア、ロンドン・ジャズ・フェスティバルなど、一流のアンサンブルやフェスティバルから委嘱を受けている。また、オーディオ・アーティストとしても活動し、ターナー・コンテンポラリー・ギャラリーや、最近ではオックスフォード・アイデア・フェスティバル等でインスタレーションを展示している。2024年10月、Gearbox Recordsからの初リリースとなるシングル「From Beneath」を発表した。

 

©Bediah


ロミーとサンファが新曲「I'm on Your Team」でタッグを組んだ。イギリス人ミュージシャンは、共同プロデューサー兼作曲家のトーマス・バートレットとこの曲をレコーディングした。ロンドンを拠点とするアーティスト労働組合「Not/Nowhere」で撮影されたビデオも公開されている。以下からチェックしてほしい。


「この曲はラブソングだけど、歌詞は正直で真実味がある。"私たちは魔法と夢のような時間を過ごしてきたけど、今は一緒にいろいろなことを乗り越えてきた。


サンファはさらに、"チームの一員であること、お互いのために姿を見せなければならないこと、そこからさらに深いつながりを作ることができるという考え方が好きなんだ "と付け加えた。


ロミーは2023年にソロデビューアルバム『Mid Air』をリリース。サンファの最新アルバム『Lahai』も昨年リリースされた。今年初め、2人は一緒にアンドレ3000をカヴァーした。


 

©Daniel Topete


シカゴのFrikoは、デビューアルバム『Where we've been, Where we go from here』のデラックス・エディションを発表した。ATOから11月22日にリリースされ、スタジオ・アウトテイクのデモ曲、ライヴ音源、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの「When You Sleep」のカヴァー、新曲「If I Am」を含む11曲のボーナス・トラックが収録されている。試聴は以下から。


「If I Am」は、この拡大版に収録されている他の新曲とともに、2019年まで遡ることができる」とフリコは説明した。「シカゴのDIYや小さなクラブでのライヴで最初に演奏した曲のいくつかだ。レコードのために曲を書いた後、置き去りにされたようなものだったけれど、バンドとして最初に書いた曲の一部だったから、日の目を見ることができてとても嬉しく思っています」



Friko 『Where we’ve been, Where we go from here  (Expanded Edition)

 

Label: ATO

Release: 2024年11月22日

 

Tracklist:


1. Where We’ve Been

2. Crimson to Chrome

3. Crashing Through

4. For Ella

5. Chemical

6. Statues

7. Until I’m With You Again

8. Get Numb To It!

9. Cardinal

10. I Could

11. If I Am

12. Love You Lightly

13. Pride Trials

14. Sliip Away

15. Where We’ve Been (Live In Chicago at Metro 3/1/24)

16. Statues (Live In Chicago at Metro 3/1/24)

17. Cardinal (Live In Chicago at Metro 3/1/24)

18. Get Numb To It! (Demo Version)

19. Repeat Yourself (Demo Version)

20. When You Sleep

 

Pre-order : https://atorecords-ffm.com/wwbexpanded

 

 

 

 

■Friko 

 

シカゴのインディー・ロックの系譜に欠かせない存在であるフリコは、歌を集団のカタルシスへと変える。ロラパルーザ、フジロック、ロイエル・オーティスとのアメリカ・ツアーなど、世界中のステージでエネルギッシュなライブを披露してきたフリコは、「Where we've been, Where we go from here」のエクスパンデッド・エディションのリリースを準備している。この新バージョンは、未発表トラック、デモ、ライブ録音、カヴァーを通して、バンドの音楽的DNAにある音の複雑さと原始的なロックをさらに探求している。



「フリコは、彼ら独自のトーンを打ち出している。このアルバムの高揚した感情を支えるソングライティングの才能で、Frikoは彼らの影響の総和をはるかに超えるデビュー作を成功させた。」-Consequence



先日、ニューアルバム『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』をリリースしたばかりのイギリスのマルチ奏者でプロデューサー、ウィル・ドーリーのソロ・プロジェクト、スキンシェイプ(Skinshape)。そんな彼が、本日アルバムの収録曲『Lady Sun (Feat. Hollie Cook)/It's About Time』の7インチ・レコードを発売した。ニューアルバムと合わせて下記よりチェックしてみよう。


アルバムからのセカンド・シングルとして当初から話題を呼んでいた「Lady Sun (Feat. Hollie Cook)/It's About Time」は、父親はセックス・ピストルズのドラマーのポール・クック、母親はカルチャー・クラブ&ボーイ・ジョージのバック・ヴォーカルとして活動していた歌手のジェニというサラブレッドであるホリー・クック(Hollie Cook)をフィーチャーした1曲。ホリー自身もラヴァーズ・ロックの女王として知られ、そのかすれたソウルフルなヴォーカルが特徴的だ。なお、B面には、アルバムからの最新シングル「It’s About Time」が収録されている。


クルアンビン、エル・ミシェルズ・アフェアー、テーム・インパラ、エズラ・コレクティヴといったサイケ/フォーク/インディ/ファンク好きに突き刺さること間違いなしのニュー・アルバム『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』。

 

日本からの購入も可能となっているので、ぜひこの機会に7インチと併せてゲットしてほしい。

 

 

 




Skinshape 「Lady Sun Feat. Hollie Cook」- New Single


詳細: https://skinshape.bandcamp.com/album/another-side-of-skinshape



『Another Side Of Skinshape』 New Album



アーティスト名:Skinshape(スキンシェイプ)

タイトル:Another Side Of Skinshape(アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ)

発売日:発売中!

レーベル: Lewis Recordings


トラックリスト

1. Stornoway

2. Mulatu Of Ethiopia

3. Can You Play Me A Song?

4. Lady Sun (feat. Hollie Cook)

5. It’s About Time

6. How Can It Be?

7. Ananda

8. Road

9. Massako

10. There’s Only Hope


アルバム配信中!

https://orcd.co/0db0e46



【バイオグラフィー】

ロンドンのインディ・シーンを拠点に活動するマルチ・プロデューサー、ウィル・ドーリーによるソロ・プロジェクト。2012年結成のロンドンのアート・ロック・バンド、パレスの元ベーシストとしても知られている。

 

これまで、ソウル、ファンク、サイケ、ソフト・ロック、ヒップホップ、アフロビートといった様々なサウンドをキャリアで築いてきた彼は、身近にある楽器はドラム以外、ほぼ全て(ギター、ベース、キーボード、パーカッション、シタール、フルート、そしてヴォーカル)自らが手がけるという、まさにマルチ・プレイヤー。

 

2012年に4曲入りセルフ・タイトルEPでデビューし、2014年には同名のアルバムをリリース。そして、これまでにスキンシェイプとして8枚のアルバムを発表している。2014年にはロンドンのインディー・バンド、パレスにベーシストとして参加し、2015年の『チェイス・ザ・ライト』、2016年の『ソー・ロング・フォーエヴァー』といった2枚のアルバムの制作に携わっている。その後、スキンシェイプの活動に専念するために同バンドを脱退。2024年9月に9作目のアルバムとなる『アナザー・サイド・オブ・スキンシェイプ』をリリース。その後は、UK/USツアーが決定している。

 


Ezra Furman(エズラ・ファーマン)は、ベラ・ユニオンが誇る良質なシンガーの一人である。今回、ファーマンは、アレックス・ウォルトンとのニューシングル「Tie Me to the Train Tracks 」、そして、そのB面曲である「Beat Me Up 」を同時に発表した。両曲の試聴は以下から。


エズラ・ファーマンはプレスリリースで次のように語っている。

 

「この曲は、ボストンのロックスベリーにある彼女の古い家で、慢性的に病んでいたある日の午後、神経症的な情熱の爆発で作ってみたんだ。愛の鎖が僕らを死に物狂いで掴んでいて、すべてが溢れ出てきたような気がしていた。そしてB面('Beat Me Up')もある。私が作り上げたこのミニチュアのマゾヒスティックな断片から、彼女は素晴らしい全曲を作り上げた。彼女がどうやってそれをやっているのかわからないが、彼女と一緒にやれることを幸運に思っている」


アレックス・ウォルトンはこう付け加えた。 「エズラと一緒に仕事ができただけでなく、彼女が僕の家に来てくれて、一緒に曲を書いたり、レコーディングをしたり、タバコとノートを手にポーチに入ったりし、すべての文脈を理解しようとした。私たちは、削ぎ落とされ、騒々しく、過酷でありながら、繊細で美しく、か弱いものを作りたかった。それは達成できたと思う」


ファーマンは次のように補足している。 「私たちが受け継いできたポピュラー音楽の精神的なパワーと可能性を理解し、音楽の新たな表現を生み出すための実践的なマジックを実行できる人にほとんど会ったことがない。アレックス・ウォルトンはその数少ない一人。彼女は私の人生を変えたロックの女神だ」



「Tie Me To The Train Tracks」
 

 

「Beat Me Up」

 

 

©Dana Trippe


シカゴのシンガー・ソングライターでマルチ・インストゥルメンタリストのヘイリー・フォアによるインディーポッププロジェクト、Circuit des Yeuxが、「GOD DICK」という身も蓋もないタイトルのニューシングルをリリースした。

 

このシングルは、Circuit des Yeuxの前作『-io』と、来年Matadorからリリースされるその続編の間の "音的な繋ぎ "とされている。

 

「汗臭く、指数関数的で、不協和音で、成長し、シンフォニックで、容赦がない。この曲は、深い欲求に煽られた変化の状態を具現化するための努力として書いた。音的にも(そして視覚的にも)、巨大な何かが小さすぎる皮膚の中に隠れているような、ある種の愛のバンシーが磁器の皮膚から髪の毛一本ずつ破裂し、最後には内なる野獣が完全に姿を現すような、そんなイメージで書いた」


「GOD DICK」



プリマヴェーラ・サウンド・バルセロナがParc del Fòrumで6月4日から8日まで開催される。本日出演者が発表された。


チャーリー XCX、チャペルローン、LCD サウンドシステム、サブリナ・カーペンター、FKA ツイッグス、フォンテインズ D.C.、ターンスタイル、TV On The Radio、ビーチ・ハウス、クレイロ、MJ レンダーマン、ジーザス・リザード, ANOHNI and the Johnsons, ビーバドゥービー, ウェット・レッグ, デンゼル・カリー, Jamie xx, フローティングポインツ (live), カリブー,マグダレナ・ベイ, キム・ディールなどが出演する。


ハインズ、ケリー・リー・オーウェンズ、スピリチュアライズド(1995年の『Pure Phase』を演奏)、スタージル・シンプソン、ワクサハッチー、ロウのアラン・スパーホーク、アイドルズ、セイラム、ステレオラブ、スクイッド、キャット・パワー(ディランを演奏)、チャット・パイル、グージュ・アウェイ、ハイ・ヴィス、デストロイヤー、フッカーズ、ジュリー・バーン、ロス・カンペシーノス!,ディス・イズ・ローレライ、ブラック・カントリー・ニュー・ロード、カリ・マローン、カサンドラ・ジェンキンス他多数。日本からはYOBSOBIが出演する。


フェスティバルのファン・セールは現在受付中で、一般発売は10月29日より開始される。




 Aaron Parks(アーロン・パークス)   Litte Big Ⅲ


Label: Blue Note/UMG

Release: 2024年10月18日

 

 

 

Review

 

 

ニューヨークのジャズ・ピアニスト、Aaron Parks(アーロン・パークス)は、ECM(ドイツ)のリリースなどで有名な音楽家。今回、彼は13年振りに名門ブルーノートに復帰している。『Little Big Ⅲ』は、2018年の『Little Big』、2020年の『Ⅱ』に続く連作の三作目で、三部作の完成と見ても良いだろう。今作は彼の代表作『Arborescence』と並び、代表作と見ても違和感がない。軽快なシャッフルのドラムとアーロン・パークスの静謐な印象を持つピアノが合致した快作。


アーロン・パークスのピアノの演奏は旋律とリズムの双方の側面において絶妙な均衡を併せ持ち、今作にかぎってはバンドアンサンブル(カルテット)の醍醐味を強調している。エレクトリックジャズをバンドとして追求したように感じられた。例えば、オープニング「Flyways」はピアノとドラムを中心に組み上げられるが、軽快さと心地よさのバランスが絶妙だ。パークスのLyle Mays(ライル・メイズ)を彷彿とさせるフュージョンジャズに依拠したピアノのスケール進行がエレクトリック・ギター、エレクトロニックの系譜にあるシンセサイザー、しなやかなドラムと組み合わされ、聞いて楽しく、ビートに体を委ねられる素晴らしい一曲が登場する。ギター、ピアノの組み合わせについては、ロック的な響きが込められているように感じられた。

 

「Locked Down」は、パークスの主要な作風とは異なり、シリアスな響きが強調されているように思える。この曲では、ドラムの演奏が主体となり、ピアノは補佐的な役割を果たしている。ドラムのタム、スネア等のエフェクトもクロスオーバ・ジャズの性質を印象付ける。そして都会的な地下のムードを漂わせるゆったりとしたイントロから、中盤にかけて瞑想的なセッションへと移行していく。特に、2分20秒付近からパークスの見事な即興的な演奏に注目したい。またジャズのコンポジションの基本形を踏襲し、エレクトロニックの文脈が曲の最後に登場するが、パークスは華麗なグリッサンドを披露し、前衛的なエレクトロとドラムの演奏に応えている。

 

三曲目に収録されている「Heart Stories」はアーロン・パークスらしいジャズ・ピアノを中心とした曲で、彼の代名詞的なナンバーと言えるかもしれない。この曲でも、ライル・メイズの70年代の作品のようなフュージョン性が重視されている。ライブセッションとして繰り広げられる心地よいリズム、心地よい''間''を楽しむことが出来る。表情付けやアンビエント的な効果を持つドラムのプレイと組み合わされるパークスの演奏は、落ち着いていて、ほのかな上品さに溢れている。曲の序盤では、ピアノからギター・ソロが始まるが、音楽的な心地よさはもちろん、無限なる領域に導かれるかのようである。特に、二分半頃からフュージョンジャズのギター・ソロは瞑想的な空気感を漂わせる。基本的に、この曲ではブラシは使用されないが、リバーブなどのエフェクトでダイナミクスを抑えつつ、スネアの響きに空間的な音響処理を施している。4分付近からはピアノソロが再登場し、以前のギターとの対話を試みるかのよう。また、作曲の側面から言及すると、「複数の楽器によるモチーフの対比」と解釈出来るかもしれない。曲の最後ではブルーノートのジャズライブで聞けるような寛いだセッションを録音している。

 

「Sports」は、エレクトリック・ベースで始まり、ライブのような精細感に溢れている。イントロではファンクの要素を押し出している。しかし、その後に入るドラムが見事で、断片的にアフロ・ビート等のアフリカの民族音楽のリズムを活かし、スムースなジャズセッションに移行していく。ピアノの旋法に関しても、アフリカ、地中海等の音楽のスケールを使用し、エキゾな雰囲気を醸成する。分けても、ピアノとギターがユニゾンを描く瞬間が秀逸で、ジャズの楽しさが見事に体現されている。この曲は、演奏者の息遣い等を演奏に挟み、痛快なイメージで進行していく。更に、曲の中盤では、ギターソロが入り、ロック/プログレジャズのような要素が強まる。以後、カリブの舞踏音楽「クンビア」のような民族的なリズムを活かし、闊達なジャズを作り上げる。4分頃からはベース・ソロが始まり、三つの音域での自由な即興が披露される。この曲でも、それぞれの楽器の持つ音響性や特性を生かしたジャズの形式を発見出来る。ロンドンのジャズバンド、エズラ・コレクティヴをよりスマートに洗練させたような一曲。

 

「Little Beginnings」は規則的な和音をアコースティックピアノで演奏し、それをモチーフにして曲を展開させる。イントロのミニマリズムの構成を基にして、このアルバムのアンサブルの三つの楽器、ギター、ベース、ドラムの演奏が複雑に折り重なるようにして、淡いグルーヴを組み上げていく。しかし、それらのリズムの土台や礎石のような役割を担うのが、アーロン・パークスのピアノである。この曲の中盤からはフュージョン・ジャズの領域に入り込み、それぞれの楽器の演奏の役割を変化させながら、絶妙な音のウェイブを描いている。曲の後半ではローズ・ピアノの華麗なソロが入り、イントロの画一的な音楽要素は多彩的な印象へと一変する。アウトロでのローズ・ピアノの刺激的なソロは、このプレイヤーの意外な側面を示唆している。

 

また、今作にはニューヨーク・ジャズとしての要素も含まれているが、同時にロンドンのアヴァンジャズに触発された曲も収録されている。この辺りのプログレッシヴ・ジャズの要素がリスニングに強いアクセントをもたらす。「The Machines Says No」は、繊細かつ叙情性のあるギター・ソロで始まり、落ち着いたバラードかと思わせておいて、意外な変遷を繰り広げる。その後、Kassa Overallのような刺激的で多角的なリズムの要素を用い、絶妙な対比性を生み出す。旋律の要素は叙情的であるが、相対するリズムは、未知の可能性に満ちあふれている。この曲もまた従来のアーロン・パークスの作曲性を覆すような前衛的なジャズのアプローチである。


その後、アルバムの音楽性は、序盤のフュージョンジャズの形式に回帰している。「ジャズのソナタ形式」といえば語弊があるが、つまり、中盤の刺激的なアヴァンジャズの要素がフュージョンと組み合わされている。「Willamia」は、フォーク/カントリーとジャズとの交差性というメセニーが最初期に掲げていた主題を発見することが出来る。実際的にジャズの大らかな一面を体感するのに最適だろう。「Delusion」は、閃きのあるピアノ・ソロで始まり、スネアやタムが心地よい響きに縁取られている。音楽的な形式とは異なるライブセッションの要素を重視した聞き応え十分の一曲。アルバムは続く「Ashe」で終了する。そして、この最後の曲では、アーロン・パークスらしい落ち着いたピアノの演奏を楽しめる。ポピュラーとジャズの中間にあるこのバラード曲には、ジャレットのライブのように、パークスの唸り声を聞き取る事もできよう。

 

アーロン・パークスの13年ぶりのブルーノートへの復帰作『Little Big Ⅲ』では、ジャズという単一の領域にとらわれぬ、自由で幅広い音楽性を楽しむことが出来る。2024年の良作のひとつ。

 

 

 

86/100

 

 

 

「Ashe」

 

©Tatjana Rüegsegger


ロンドンを拠点に活動するシンガーソングライター、Sophie Jamieson(ソフィー・ジェイミーソン)が儚くも美しい、そして力強さに満ち溢れたインディーフォークソング「Camera」を発表した。このナンバーは、彼女のセカンドアルバム『I still want to share』の第2弾シングル。ジェイミーソンとマレナ・ザヴァラの共同監督によるビデオ付き。以下でチェックしてほしい。


「この曲は、失恋したときに書いた。抱かれたくないのにすべてを抱こうとしていたときに書いたの」とジェイミーソンは声明で説明している。落ち着いていて瞑想的なインディーフォークソング。アコースティックギターに加えて、チェロ、ヴァイオリン、ヴィオラが取り入れられ、ドラマティックな印象を強調する。ジェイミーソンは短い物語を紡ぐかのように、この曲を丹念に歌い上げている。繊細なボーカルであるものの、そこには奇妙な力強さが感じられる。

 

「私は、このニューシングルで断片の周りに輪郭を描くことができ、それらをフレームに収まるようにしたかった。私の中の何かが、ぼやけたままにしておけば平穏が得られるとわかっていた。この曲は、私が受け入れることのできる愛よりも、もっとシンプルで、もっと重層的で、もっとつかみどころのない愛を定義しようとしたときの憧れであり、身もだえするような思い」


Sofie Jamiesonによる『I still want to share』は1月17日にベラ・ユニオンからリリースされる。

 

 

「Camera」

 

Maribou State

Maibou State(クリス・デイヴィッズとリアム・アイヴォリーからなるデュオ)はニンジャ・チューンの新しい看板プロジェクトでもある。彼らのエレクトロ・ポップは力強いイメージを放ち、軽快なダンスミュージックでオーディエンスを魅了する。

 

スーダン出身のオランダ人シンガーソングライター、ガイダーをフィーチャーしたニューシングル 「Bloom」は、彼らの次作アルバム『Hallucinating Love』の収録曲である。ヴォーカリストのホリー・ウォーカーをフィーチャーしたシングル "Otherside "に続く二作目のシングルだ。

 

チルウェイブ風のナンバーで、電子音楽という領域で展開されるライブセッションのようでもある。ボーカルのサンプリングを活かし、ダブステップ/フューチャーステップ風の変則的なリズムを生み出す。ギターなどアコースティック楽器のリサンプリングが導入されているのに注目したい。


現在、マリブ・ステートは、ライブアクトとして英国内で絶大な人気を博しているという。最初の2公演がわずか数時間でソールド・アウト。圧倒的な需要に応えるため、バンドは2025年2月16日(日)、ロンドンのアレクサンドラ・パレスでの3年連続となる公演の開催を発表した。

 


「Bloom」

 


Sharon Van Etten & The Attachment Theory

 

Sharon Van Etten(シャロン・ヴァン・エッテン)はロックからポップスまでくまなく歌いこなす米国の実力派シンガー。エンジェル・オルセンとのデュエット等はほんの一例に過ぎない。今年、ニュージャージーからトンネルを通り、ニューヨークに出勤していた時代の思い出を明らかにした。当初、シンガーソングライターはバンドと一緒に音楽活動を行っていた。この最新作は考えようによっては、原点回帰のような意義深いアルバムとなるかもしれない。しかし、同時に今ままでになかったチャレンジもある。それがロンドンでのレコーディングである。


『Sharon Van Etten & The Attachment Theory』は、ホルヘ・バルビ(ドラム、マシン)、デヴラ・ホフ(ベース、ヴォーカル)、ティーニー・リーバーソン(シンセ、ピアノ、ギター、ヴォーカル)の3人組。彼らはヴァン・エッテンのソロ作品のバックを務めたことはあるが、シンガー・ソングライター/ギタリストである彼女が、バンドとの完全なコラボレーションでアルバムを書き、レコーディングしたのは今回が初めてである。


「生まれて初めて、バンドに "ジャムっていい?"って尋ねたんだ。私の口から出たことのない言葉だ!でも、私たちが出すすべての音が好きだった。どうなるんだろうという好奇心があった。1時間で2曲書いて、結局、それが "I Can't Imagine "と "Southern Life"という形になった」


シャロン・ヴァン・エッテン&ザ・アタッチメント・セオリーは、ロンドンにあるユーリズミックスの元スタジオ、ザ・チャーチでレコーディングされ、マルタ・サローニ(ビョーク、ボン・アイヴァー、アニマル・コレクティヴ、マイカ・リーヴァイ)がプロデュースした。


「Afterlife」のビデオは、アルバムのレコーディング中、バンドがロンドンの象徴的な100クラブでアルバム収録曲かをデビューさせた映像をフィーチャーしたもので、スス・ラロッシュが監督を務めた。ゴシック/ロココ様式のミュージックビデオは古典的で豪奢なイメージに縁取られている。人間は、日々、細胞レベルで生まれ変わっているという。男性にせよ、女性にせよ、シンガーはある人生の時点で脱皮し、次なる存在へと生まれ変わる瞬間がある。シャロン・ヴァン・エッテンも、シンガーソングライターとして新しく生まれ変わろうとしているのだ。

 

 

「Afterlife」





Sharon Van Etten & The Attachment Theory


 

Label: jagujaguwar

Release: 2025年2月7日


Tracklist:


1. Live Forever

2. Afterlife

3. Idiot Box

4. Trouble

5. Indio

6. I Can’t Imagine (Why You Feel This Way)

7. Somethin’ Ain’t Right

8. Southern Life (What It Must Be Like)

9. Fading Beauty

10. I Want You Here


yeule

ロンドンのインディーポップの先導者であるyeule(イェール)は、頻繁にコラボレートしているChris Greattiと共にyeuleがプロデュースしたニューシングル「eko」を公開した。ロンドンで作曲され、ロサンゼルスでレコーディングされたこのシングルは、頻繁にコラボレートしているChris Greatti(Willow, Yves Tumor, The Dare)と共にyeuleがプロデュースした。


「eko」は、ダンサンブルなトラックで、K-POPに近いテイストがある。この曲では、執着と愛、そしてyeuleの頭の中に響く声について歌っている。この曲は、よりポップなアプローチを取り入れており、エレクトロニックなプロダクションの上で、yeuleの澄んだ明るいボーカルがトラックをリードしている。この最新作は、今後リリースされるプロジェクトの第一弾となる。


「eko」は、歪んだギターとオルタナティヴなプロダクションを取り入れた有名なアルバム『softscars』に続く作品。このアルバムでは、yeuleが長年抱えてきた感情的な傷の解剖学的構造を綿密に検証しており、従来で最も突き抜けた大胆な作品となっている。

 

softscarsの登場は、Pitchforkから2度目の「Best New Music」スタンプを獲得したほか、The FADER、The Guardian、DIY、Line of Best Fitから喝采を浴びるなど、絶大な批評家の称賛を浴びた。このアルバムは、絶賛された2022年リリースの『Glitch Princess』に続く作品で、同じくPitchforkの「Best New Music」スタンプを獲得し、圧倒的な批評家からの賞賛を浴びた。


学際的な倫理観に導かれたカメレオン的な作家であるyeuleは、クラシックの正典、ハイパーモダンのインターネット・カルチャー、アカデミックな理論、秘教的なもの、そして彼ら自身の肉欲など、様々な主題を織り交ぜ、音楽を通して世界全体とペルソナを作り上げる。また、シンガポール出身のyeuleは日本のサブカルチャーにも親しみを示している。

 

「eko」


Cindy Lee

カナダのシンガーソングライター、Cindy Lee(シンディ・リー)の『Diamond Jubilee』は、''今年最高のアルバムのひとつ''と言われている。音楽に詳しくない人が聴いてもあまりピンとこないかも知れないが、カルト的なポップ/ロックアルバムとして、そのうち伝説として語られてもおかしくない。


これまでは、アーティストのウェブサイトからダウンロードしたアルバムのWAVファイル、または、そのWAVファイルから切り刻んだファン作成のリッピングファイル)でしか聴くことができなかった。この幻の音源はすでに伝説化し、YouTubeなどでかろうじて聴くことが出来ただけだった。


このアルバムにはG&Bをはじめ各メディアからの賛辞が送られている。ピッチフォークのアンディ・クッシュさんは、アルバムに9.1/10の評価を与え、「音楽の本質的な宝庫」であり、「各々の曲は、愛すべきヒット曲の幽霊のようなカノンを持つ、ロックンロールの冥界からの霧のような伝送のようだ」と評した。


さらに、『Paste』誌のエリス・サウターさんは、シンディ・リーの「ほろ苦い大作」とした上で、「彼らがこれまでにリリースした作品の中で最も濃密であり、最も聴き応えのある作品群である!」と評している。というように、シンプルでありながら理論的なレビューをしている。


カナダの『exclaim!』は、このアルバムを「スタッフ・ピック」に選び、レビュアーのカエレン・ベルさんは、「50年代のガールズ・グループ・ポップ、60年代のみずみずしいサイケデリア、70年代のかゆいところに手が届くラジオ・ロック、90年代のローファイできらびやかなプロダクション、どこかの異世界から移植されたような選曲の系統で構築された『Diamond Jubilee』は、アーティストとしても器としても、シンディ・リーの決定的な肖像画のように感じられる」と書いている。と、国内アーティストの期待作とあって、かなり的確なレビューをしている。


SpotifyやTIDALのようなストリーミングでは公開されていませんが、Bandcampで聴くことができるようになり、一般的なリスナーにも音源が解放される。シンディ・リーの『Diamond Jubilee』は、2月21日にW.25TH / Superior ViaductからトリプルヴァイナルとダブルCDのセットでリリース。



High Vis 『Guided Tour』

 

Label: Dais

Release: 2024年10月18日


Review


あまり元気がないときに聴くと、エナジーが出てくる曲がある。それは実は、明るく温和な曲ばかりとは限らず、少し憂愁に溢れたロックソングである場合が多い。憂いは憂いによって同化され、吹き飛ばせるとも言える。この点において、ロンドンのポスト・ハードコアバンド、High Visの新作アルバム『Guided Tour』は天候不順や曇りがちの日々を見事に吹き飛ばす力がある。

 

High Visは、傷んだ兄弟や未知のパンクスのためにエナジーに満ち溢れたハードコアを提供する。当初彼らは今作で聴こえるよりも遥かに無骨なハードコアソングを特徴としていたが、『Guided Tour』はややエモーショナル・ハードコアに近い作風である。詳細に指摘すると、DiscordのワシントンDCのパンク、Minor Threat、One Last Wishのような最初期のポスト・ハードコアを基底にし、そこからJoy Divisionのような静謐なポスト・パンク性を抽出する。ロンドン的な都会性とマンチェスターの古き良き港湾都市の雰囲気を併せ持っている。

 

このアルバムのハードコアソングは表面的にはパンキッシュであるが、聴き方によったら、すごくナイーヴにも思えるかもしれない。しかし、そのナイーヴな感覚が癒やしの瞬間に変化するときがある。アルバムの冒頭を飾るタイトル曲「Guided Tour」、そして最初の先行シングルとしてリリースされた「Mind's A Lie」等を聴くと、彼らが何をやろうとしているのかつかめるはずだ。そして、なぜ痛みをストレートに吐き出しつつも、それが都会の夕暮れの切なさや、何か情景的なセンチメンタルなイメージを呼び覚ますのかといえば、ボーカルが公明正大で、その声がエナジーとともに吐露される時に、心に何の曇りもないからである。これらのクリアで透徹した感覚は、歌詞や表現に何らかの遠慮や偽りがあるとなしえない。そして音楽的には、イアン・マッケイの系譜にあるストレートなボーカルに、メロディアスなギターラインが特徴的である。これがバンドのサウンドに色彩的なイメージを添えることがある。

 

 

もう一つ、High Visの主要なハードコア・パンクソングの中には、古き良きUKハードコアの影響が含まれている。それはGBH,Dischargeを筆頭とする無骨で硬派なパンクバンドである。そしてこれらの80年代のバンドがそうだったように、ヘヴィメタル寄りの重力のあるギターやベース、そしてシンプルなドラムが特徴となっている。というのも、GBH等のバンドはヘヴィ・メタルを演奏しようとしたが、演奏力が巧緻ではなかったために、ああいったドタバタのサウンドになった。 けれども、多くの実力派のギタリストが言うように、「テクニックより表現したいことがある」ということが良い演奏者になるための近道となるかもしれない。High Visの場合も同じように、英国の古典的なハードコアバンクを受け継ぎ、現代の若者として何を表現したいのか、つまり、そういった一家言のようなものをしたたかに持ち合わせている。

 

特に、このアルバムではそれらは洗練されたモダンなポスト・パンクとして昇華される場合がある。「Worth The Wait」、「Fill The Gap」では、バックバンドの演奏自体はオルタナティヴロックであるが、ボーカルだけが硬派なハードコアスタイルという複合的な音楽を探求していることが分かる。

 

歌詞に関しても一家言があり、例えば、「Mob DLA」等では脳に障害を負う兄弟のために歌っている。結局のところ、彼らのパンクサウンドは、満たされた人々ではなく、憂いを抱える人々の心を揺さぶり、それらに勇気をもたらすために存在している。もちろん、そういったマジョリティとは距離をおいたパンクソングは、いかなる時代であろうとも貴重なのだ。今作の最大の成果は、別のアーティストからトラック提供を受けた「Mind's A Lie」のようなアンセミックなパンクソングを制作したことに加えて、「Untethered」のようなポストハードコアの静謐なサウンドの側面を示したことにあるだろう。そしてポスト・ハードコアはどちらかと言えば、ハードコア・パンクにおける激しさや過激さは控えめで、きわめて静謐な印象をもたらすのである。その中には隠された知性も含まれている。


High Visのパンクロックソングは、必ずしも一般的なものとは言いがたいかもしれない。しかし、彼らが今作で示したのはUKハードコアの新機軸であり、それは先にも述べたように「別ジャンルとのクロスオーバー」に求められる。今回のアルバムでは、EDMのダンスミュージックとの融合という側面を捉えることが出来る。このアルバム全般には、内的な痛みがあり、それはむしろ誰もが持ちうることがあるからこそ、カタルシスのような癒やされる瞬間に変わる。最後にそれは清々しさに変化する。

 




78/100

 

 

 


「Deserve It」