ノエル・ギャラガーがオアシスの1995年のヒット曲の新バージョンを制作した。「アンビエント・ミックス」されたこの6時間に及ぶ演奏は、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーで開催されるゾーイ・ロウの肖像画展の一環として演奏される予定です。ギャラガーの肖像画も展示されるという。


ノエル・ギャラガーの写真はゾエ・ロウ(Zoe Law)が撮影し、彼女の人生やキャリアに影響を与えた99人のポートレートとともに11月29日から展示されます。また、2025年3月2日の展示終了後は、ギャラリーのパーマネントコレクションの一部となる。ギャラガーが「Champagne Supernova」の作曲に使用した1967年製のエピフォン・ギターを持っているシーンを撮影されたオーランド・ブルーム、キム・キャトラル、シエナ・ミラーなどのポートレートも展示される。


「写真を撮られるのが正直嫌いな不機嫌な男の肖像画が、後世の人々の驚嘆のために永久に展示されるということは、とても特別なことだ。感謝したい」


「伝説的なノエル・ギャラガーを描いた私の肖像画がナショナル・ポートレート・ギャラリーに収蔵されたことは、この上ない名誉であり、すべての肖像写真家やアーティストが夢見る永遠の遺産です」

 


ピッチフォーク・ミュージック・フェスティバルは、およそ20年にわたり世界で最も評価の高い音楽フェスティバルのひとつとして開催され、地元の人々に親しまれてきました。今回、主催者側が2025年度のシカゴでのフラッグシップ・イベント(根幹イベント)の開催を見送ることを発表しました。


「音楽フェスティバルの状況が急速に進化し続ける中、私たちは2025年にシカゴでピッチフォーク・ミュージック・フェスティバルを開催しないという難しい決断を下しました」と主催者は声明に記した上で、こう続けています。


「この決断は決して軽いものではありませんでした。19年間、ピッチフォーク・ミュージック・フェスティバルは、音楽、アート、コミュニティの祭典であり、思い出が作られ、声が増幅され、音楽への愛を共有することで私たち全員がひとつになれる空間でした。このフェスティバルは、Pitchfork編集部のテイストに沿ったものでありながら、常に共同作業であり、シカゴのアートシーンの重要な柱として独自の人生を歩んできました。20年近くにわたりフェスティバルの本拠地となってくれたシカゴ市、忘れられないパフォーマンスでステージを飾ってくれたアーティストたち、そして毎年比類ないエネルギーをもたらしてくれたファンの皆さんに深く感謝しています。アット・プルートをはじめとする、献身的で創造性豊かなフェスティバル・チームの皆さん、そしてフェスティバルを真にユニークな体験にしてくれた、より広範なコミュニティの皆さんのスピリットとサポートに感謝いたします。そして、フェスティバルを創設し、インスピレーションを与えてくれたマイク・リードにも感謝いたします」


「ですが、ピッチフォークは、2025年以降もイベントをプロデュースしていきます。私たちは、音楽、文化、コミュニティが一体となる空間を創造し続けることを楽しみにしています」



 

©Barbora Krizova


ロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Joni(ジョニ)はKeeled Scalesとの契約を発表し、シングル「Avalanches」をリリースした。下記をチェックしてほしい。


ジョニは、プロデューサーのルーク・シタル・シンのロサンゼルスのスタジオで新曲を完成させた。「Avalanches、は愛と失恋の二面性について歌った曲です。そして、もう一方がなければ、一方を手に入れることはできない。そして、すべての痛み、恐怖、爽快感、リスクにもかかわらず、私はもう一度、何度も何度もそれを行うだろう...」と彼女は声明を発表した。

 

ジョニは潜水艦乗りの娘で、幼少期はアメリカ、ヨーロッパ、アジアを転々とした。しかし、特に最近のある年、彼女は著しく孤独だった。同じようなロサンゼルスに幻滅を感じた彼女は、移り変わる季節と新しいインスピレーションを求めてロンドンに移り住んだ。秋には、10年来の恋人であり、バンド仲間であり、最も親しい音楽仲間との関係が破壊的に終わった。その冬、彼女は30歳になった。異国で失恋した彼女の人生は、つながりのない馴染みのないものに感じられた。しかし、何かが彼女にここに留まれと言った。そして春の訪れとともに、悲しみの庭から新しい歌が育ち始めた。


ジョニは、ローラ・ヴィアーズ、アクアラング、ダン・クロール、オールド・シー・ブリゲードといったアーティストとツアーを行ってきた。RIAA認定のプラチナ・レコードを持ち、Netflixの『Never Have I Ever』のような映画やテレビ番組にも出演している。

 

ジョニのソングライティングの中心は、地震による失恋、大きな喪失のトラウマ、そしてその余波から得られる痛烈な教訓である。曲は暗さと明るさの間をたゆたう。スパークルホース、ザ・ストロークス、ジョン・ブリオンといったインディー・ロックからの影響は、彼女の切ないヴォーカルとクライロ、ビーバドビー、フィーストのようなポップ・センスによって、女性的な軽快さを生み出している。


「Avalanches」

 

 ©︎Sonia Abbas


ブライトン在住のスコットランド/タイ人のシンガーソングライター、Helen Ganya(ヘレン・ガニャ)はニューアルバム『Share Your Care』を発表しました。Bella Unionから2月7日に発売される。(プレオーダーはこちら)ヘレンはアルバムの発表と合わせてタイトル曲をリリースした。


ヘレンはこの曲についてこう振り返る。「私は日記帳を手にして、タイで過ごした子供時代の思い出をひとつひとつ書いた。彼女や祖父、叔母やいとこたちと一緒に過ごしたこと、全部。思い出のスナップショットを書き留めたの」


ガニャは以前はDog in the Snowという名義で2015年から音楽をリリースしている。これまで彼女が発表してきたレコードでは、ダークで芸術的なロックやオフキルターなサウンドに傾倒し、サンデー・タイムズ、アンカット、クラッシュ、ラウド・アンド・クワイエットなどから賞賛を得た。しかし、『シェア・ユア・ケア』は、ガニャの過去の音世界をベースに、タイの伝統的な楽器を散りばめ、豪華で光り輝く、サイケ調の情感溢れる作品に仕上げた新時代の作品です。


タイトルトラックは、ガーニャが最初に取り組んだ曲の1つで、彼女自身のスタイルとタイのサウンドを融合させています。


お祝いの歌は、母親、叔母、亡き祖母など、家族の年配の女性を追いかけて祖父の墓を訪れ、供物を持って行った彼女の記憶に基づいている(Am Pichaが監督したビデオは、同様のストーリーラインを備えている)。


「彼らを再び見つけるためにトレイルを下るのは、かなり魔法のような旅のように感じました」と彼女は言います。


「それはあなたの祖先を称え、まだ彼らがそこにいると感じる感覚を得ようとしているだけです。あなたの悲しみを分かち合い、あなたのケアを分かち合い、それらを忘れず、彼らに食べ物と水を持って来る」一般的に、彼女の最後のアルバムのテーマに続いて、それはガーニャの哲学のもう一つのリマインダーとなる。


「現代社会での私たちの生き方は非常に個人主義的であり、非常に孤独であると思います」と彼女は考えます。「私にとって、コミュニティと集団的責任は社会にいるための最良の方法です」


「Share Your Care」

 Andrea Belfi & Jules Reidy 『dessus oben alto up』


Label: Marionette

Release: 2024年11月8日

 

Review

 

Andrea Belfi(アンドレア・ベルフィ)とJules Reidy(ジュール・レイディ)による初のコラボレーション・レコーディング『dessus oben alto up』は実験音楽の一つの未来を提示している。

 

レイディとベルフィは、オーストラリアとイタリアという異なる出身地でありながら、ともに長年ベルリンに住んでいて、そのアプローチには多くの共通点がある。19世紀の機械工場を改装したベルリンの芸術施設「Callie's」のサウンド・スタジオに滞在していた2人(マルコ・アヌッリがデスクを担当した)は、ギターとエレクトロニクスのきらめく靄の中を美しく録音されたベルフィのドラムのパーカッシヴな透明感が通り抜ける、4つの広がりのある作品を完成させた。

 

『dessus oben alto up』は、新しい音楽の息吹を感じさせる作品である。ミニアルバムは実験音楽を中心に展開され、アンドレア・ベルフィのジャズ・ドラム等で頻繁に使用されるブラシ・ドラムとコラボレーターであるジュールズ・レイディの変則的なチューニングを施したギター(12弦ギターが使用されることもあるという)に電子的な音響加工が施されて、異質なサウンドが組み上がる。彼らの音楽は、フロイドの『The Dark Side Of The Moon』、あるいはHolger Czukay(ホルガー・シューカイ)のように神妙でありながら、そしてアヴァンジャズやエスニック、エレクトロニック等を行き来する。全体的な枠組みとしてはジャズドラムを中心とする作品のように聴こえるかもしれないが、エレクトロニックの要素が前衛的な要素をもたらす。


最近の音楽は、ドラムにせよ、ギターにせよ、付属的に導入される弦楽器やエレクトロニクスにせよ、音楽の構造自体が省略化されてしまうことが非常に多い。そのせいで音楽自体に深みがなくなり、深く聴くことを拒絶させるのである。それは例えば、Tiktokなどで音楽を省略的に聴く人々が増加しているから止むを得ないとしても、音楽自体を痩せ細らせる原因ともなりうる。60年代、及び、70年代のミュージシャンは、マスターやミックスで音楽をごまかすことが出来なかったため、音の細部に至るまで入念に配慮していたし、全般的な楽器等の音色や出力には必要以上にこだわっていた。要するに、自分の納得のいかない音は、一切出そうとしなかったのだ。だが、それが結果的に、デジタル・リマスター等の普及によって(技術の向上自体は歓迎すべきことだけれど)自分たちの出す音にかなり無頓着になっていったのである。ミュージシャンの中には、何をやっても一緒ではないか、と思うような方々もいるかもしれない。

 

しかし、トム・ヨークやマルタ・サローニとの共演で知られるアンドレア・ベルフィ、そして弦楽器奏者のジュールズ・レイディのコラボレーションアルバムを聴くと、そういった幻想はすぐさま吹き飛ぶ。『dessus oben alto up』は、デチューニングを施したインドのシタールのようなエキゾチックなギターが、無限に鳴り響き、それらに電子音楽のマニュピレーションが組み合わされ、ジャズドラムが加わると、強固な音楽の構造体が組み上がる。繊細なドラムプレイ、弦楽器のピッキング/タッピング、エレクトロニクスがどのように組み合わされるのかに耳を傾ければ、音楽の持つ深さはもちろん、実験音楽の本質的な魅力に気づくことだろう。そして音楽を一切簡略化することなく、セッションの組み合わせにより、誰も到達しえない境地に到達している。もちろん、音楽というフィールドの奥底にある霊妙な領域へと聞き手を誘うのである。


このミニアルバムは、ある種の変奏曲のように組み上げられ、同じような形式による実験音楽が4曲収録されている。しかし、その音楽的なボリュームの圧倒的な量に驚かされるはずだ。オープナー「dessus」は、連曲のモチーフのような役割を担い、作品全体に影響を及ぼす。しかしながら、同じような手法や作曲の形式が用いられるからと言え、全然飽きが来ないのが不思議である。しかも、歌がないのは欠点にならず、ひたすら心地よいセッションが繰り広げられ、彼らのライブセッションに、ずっと身を委ねていたいという欲求すら覚えることもある。ジャズドラムのブラシとシタールのような弦楽器は、たとえ同じような旋律の曲線を描いたとしても、また、同じようなリズムの構成を経たとしても、聞き手側の聴覚には同じ内容には聞こえない。それは彼らが上辺だけの「曲」を作ろうとせず、音楽の奥深い泉に迫ろうと試みているから。そして曲のセクションの中で、クローズのハイハットの連打やジャズ的な微細なピッキングギターによって、およそ二人だけで作り上げたとは思えない刺激的かつ壮大なライブセッションが繰り広げられる。このことは二曲目「oben」を聴くとよく分かるのではないか。

 

私自身は、これまでアンドレア・ベルフィというドラマーを全然知らなかった。それでも、三曲目「alto」を聴くと、彼が世界屈指の技術を誇る天才的な演奏者であることが分かる。良い打楽器奏者というのは、自らの技術を十分に洗練させた後、曲に対してどのような影響を及ぼすのかを熟知している人々である。それは、ギター、ベースと同様に、曲の細かな抑揚やニュアンスの変化に際して、最適な演奏方法を知っていて、それを忠実に実践できる、ということである。つまり、アンドレア・ベルフィのような卓越した演奏者は、無自覚に音を発生させることはほとんどなく、すべての音の要素が十分に計算されて出力され、まるで頭脳と楽器が一体化しているような印象すら受ける。これは全盛期のヤング兄弟のギターにも言えることだろう。

 

アンドレア・ベルフィの場合は、ハイハットの連打の間に組み込まれるタム/スネアが、ギターの超絶的なビッキングに対して、音階的な影響を及ぼし、タブラのような演奏効果を生み出す。これは、ロックやポップスのドラムだけではなく、民族音楽を熟知しているからなし得る神業の一つ。そして、アンドレア・ベルフィのドラムは、単に技巧的な側面をひけらかすことはなく、曲の構造に対する音響効果やテンションによる音階効果を重視している。さらに、それらの組み合わせに強い影響を及ぼすのが、マニュピレートされた電子音である。これらは、NEU、CAN、ホルガー・シューカイ等が探求していた「実験音楽の結末」とも呼ぶべきであろう。

 

アルバムの終曲「up」だけは実験音楽の枠組みから遠ざかり、民族音楽のイメージが強調される。そして、インドのカシミール地方の民族音楽、ないしはパキスタンのアラブ音楽の雰囲気が強まる。これは民族楽器の専門的な演奏者として知られ、世界各地を放浪しながら、珍しい楽器を探訪する、Stephan Micusというミュージシャン(ドイツのECMの録音でよく知られている)の音楽的なアプローチに準ずるものである。しかし、ジュールズ・レイディの弦楽器の連続性、反復性は「up」に対して瞑想的な要素を及ぼしている。そして、ミニマルミュージックの魅力は、画一的な連続性や反復性にあるわけではなく、変奏や倍音の発生により、原初の反復的な曲の構成からどれだけ遠くに行けるかという、冒険心や遊び心にあることが分かる。最終的には、最初のモチーフからセッションの巧みさによって、全く印象の異なる音楽へと変貌していく。つまり、音楽によって遠い場所に連れて行くような不思議な力を備えているのである。

 

 

 

95/100


 

 



ザ・キュアーの『Songs Of A Lost World』がUKアルバム・チャートで1位を獲得した。バンドにとって16年ぶりのスタジオ・リリースとなる待望の14枚目のアルバムは、50,000枚以上のセールスを記録し、公式チャートで1位を獲得した。批評家から絶賛されたこのアルバムは、バンドがチャートのトップに返り咲いただけでなく、1992年4月の『Wish』を最後に、32年ぶりに全英チャート1位を獲得した。従来通り、チャートの集計を行ったのはオフィシャル・チャート社。


キュアーのフロントマンのロバート・スミスは、このアルバムが圧倒的に好意的に受け止められていることについて、こう語っている。「このアルバムを買ってくれた人、聴いてくれた人、愛してくれた人、長年にわたって僕らを信じてくれた人、みんな、本当にありがとう!」


『ソングス・オブ・ア・ロスト・ワールド』はUSチャートも席巻している。ビルボードのアルバム・チャート(11月16日付)33年の歴史を持つトップ・アルバム・セールス・チャートで初の1位を獲得し、ビルボード200では1992年以来最高位(4位)を記録した。また、トップ・ロック&オルタナティヴ・アルバム、トップ・ロック・アルバム、トップ・オルタナティヴ・アルバム、レコード・アルバム、インディーズ・ストア・アルバム・セールスでも1位を獲得した。


ニュー・アルバムの初週売上は、5種類のビニール盤(合計2万3,000枚を売り上げ、1991年にルミネイトが売上追跡を開始して以来、ビニール盤ではバンド最高の週となった)、スタンダードCD、CD/ブルーレイ・オーディオ・パッケージ、2種類のカセット、スタンダード・デジタル・ダウンロード、5曲のボーナス・ライヴ・トラックを収録したデラックス・デジタル・ダウンロード(バンドのウェブストア限定)により強化された。

Rafael Anton Irisarri  『FAÇADISMS 』

Label: Black Knoll Editions

Release: 2024年11月8日



Review     創造とは何を意味するのか? 



結局のところ、音楽における創造性の多寡を見極めるのに不可欠な指針となるのは、その創造性の発露となるものが、単なる模倣的な二次表現に留まらず、(制作者の)自己を超越するための重要な機会となっているのか。より端的に言えば、以前の音楽の系譜や作品をしっかり咀嚼した上で、それをオリジナリティの高い作品としているのか、ということに尽きるのではないだろうか。例えば、J.Rimasという専門的な研究家が今年発表した論文「The Concept of Creativity and its Importance For Musical Expression』(2024)において、著者は、リトアニアの作曲家のイグナス・プリエルガウスカス(Ignas Prielgausukas)の言葉を引用し、「古くから決められていることに満足する者たちは、模倣の道を歩み、創造性を放棄している」と指摘している。

 

つまり、模倣や引用に過ぎないものが、生産的な意味を持つことは稀であり、それは大量のコピー製品を製造していることを意味する。また、最低限の創造性を乗り越える上では、原初的な体験や経験等を通して培われた感受性を発露する必要があり、なおかつ、制作者の技術や知識が対象物の本質を知るために駆使されなければならず、さらにいえば、音楽的な表現が単一の自己の世界の反映だけにとどまらず、他者とのコミュニケーション、イメージの共有という意義を持つ必要がある。これらに該当しなければ、「創造未満の何か」と呼ぶよりほかない。こういった音楽とは言いがたい商品が世の中に氾濫する一因としては、音楽の大衆化により、模造品が大量に生産され、常識下に留まることや模倣を良しとする社会的な風潮が一役買っているのである。

 

おそらく、ニューヨークの実験音楽シーンを代表するプロデューサー、ラファエル・イリサリはその限りではない。このアルバムを聞けば瞭然ではないか。表向きのアウトプット方法こそ、エレクトロニックを中心とするアンビエント、要するに抽象音楽なのだが、その始まりは、ヘヴィメタルのような音楽を聴き、それらを幾つかの実験音楽のフィルターに通して、さらに自らのミックス/マスタリングの高い技術を駆使し、独自の音楽表現として昇華するのである。

 

アントン・イリサリの音楽には、ブラック・メタル、ドゥーム・メタルといった、かなりマニアックな音楽の引用を感じることがあるが、たとえギターが使用されることがあっても、独創性の高いスタイルの音楽が組み上がる。そして例えば、プロデューサーの音楽に歌詞がないからと言え、概念や言葉に乏しいというわけでもない。イリサリの音楽には、時々、資本主義に対する風刺的な暗喩や政治的な主張性が、言葉ではなく、音の流れの中に組み込まれている。一見すると、無機質な電子音楽のように感じられるかもしれないが、意外なことに、感覚的なものがしっかり組み込まれ、そして珍しいことに、琴線に触れる瞬間も含まれているのである。

 

制作はニューヨークのプロデューサーがイタリア・ツアーに行った時期に始まったという。ミラノの 「il Mito Americano」(「アメリカン・ドリーム」という意味で、英語に直訳すると「アメリカの神話」)という名の食堂の言語的な不具合(看板?)が、コンセプチュアルかつ音楽的な一連のアイデアに火をつけた。2020年の混沌の中、ブルータリズム建築の荒涼とした世界を探求し、「FAÇADISMS」というヴィジョンが作り上げられた。およそ3年の歳月をかけて作曲されたこの作品は、「煮えたぎるような電気的な落胆に満ちた後期資本主義の嘆き」であるという。そして最近のアルバムのようにディストピア的なイメージを持って始まるが、それと同時に、そのディストピアの向こうに、ぼんやりとユートピアが浮かび上がってくる瞬間がある。

 

アルバムはノイズ/ドローンを中心とする抽象的な楽曲「Broken Intensification」ではじまり、巨大な共同体や構造物が崩壊していく過程がサウンドテクスチャーによって組み上げられる。旧社会の常識や規範であると看過されていた構造全体が少しずつ崩壊していくような瞬間がサウンドスケープによって巧みに表現されている。この曲は、アーティストが2010年代にかけて追求していた、荒野に象徴付けられる旧約聖書の黙字録的な世界観の集大成でもあろう。まるで、それは例えるなら、人類が打ち立てていったバベルの塔の崩落の瞬間が刻印されているとも言える。この端的なトラックに、ジャック・アタリのような資本主義に関する暗喩が含まれていると考えるのは行き過ぎだろうが、幻想的なものと現実的なものがないまぜとなり、およそラファエル・イリサリしか作り得ないであろうフリューゲル的な世界観が打ち立てられている。

 

2010年代にはディストピアを予見させる異質な世界観を鋭いノイズ性と合わせて表現してきたアントン・イリサリであるが、近年、それらの対極に位置する天国的、祝福的な音楽性が顕現するようになった。西洋的な美学としては、「コントラスト」という概念があらゆる美術形態の基礎となったというのは、ボローニャ大学のウンベルト・エーコも指摘していたが、イリサリは、この対比性という要素を上手く活用して、西洋的な観念を作品に取り込もうとしている。また、生楽器を録音し、リサンプリングするという方法は「A Little Grace Is Abundance」に見出すことが出来る。この曲は複数の段階に分割され、前半部では、ドローン/ノイズアンビエント、一方の後半部では、ギターのリサンプリングを用いた音響系の音楽へと変化していく。さらに、ランタイムごとに少しずつ情景的な変化があり、曲の最後では、クワイアのサンプリングによってミュージック・コンクレートの技法が用いられ、祝福的な音楽性が登場する。

 

また、チェロのジュリア・ケント、ヴォーカルのエリザベス・コックスをフィーチャーした「Control Your Soul's Despite For Freedom」では、プロデューサーの重要な音楽性の一つである「混沌ーカオス」という概念が登場する。例えば、経済学者のジャック・アタリは「ノイズ」という概念について、原罪的なものや暴力的なものと定義付け、「それらに調和をもたらすために音楽が発生した」と指摘している。(また、楽譜出版、録音、ライブといった時代ごとの音楽形式の変化とともに、ノイズの概説的な意味もまた徐々に変化していったということも指摘している)


そして、この曲には、ノイズという概念の原初的な意義が表されているような気がする。それは言い表しがたいが、「世の中に混沌をもたらすノイズの現象中にある調和」という非常に難解な概念を読み解けるのだ。これは二元論を超越し、「善と悪」を始めとするキリスト教的な原理主義の観念を乗り越えるための手助けをする。(世の中には対極的な二つの考えのほかに、「中庸」という概念が存在する)そして、結果的に、一般的には醜悪な要素とされているノイズの原初的な意味が転化し、本来は醜いはずのものが美しい印象に縁取られる稀有な瞬間が刻印されている。これはアンビエントが経過的な段階を持たぬという一般的な定説を覆すものである。

 

曲の中においても時間的な経過や音楽の変化といった多彩な段階が示されるが、アルバム全体でも徐々に音楽的な印象が変化し、楽曲とアルバムの相似形を形づくる。ディストピアな印象を持つ序盤とは正反対に、後半の収録曲では、 ユートピア的な印象に縁取られていく。これは言ってみれば、地獄から煉獄、そして天国にかけての旅行のようでもあり、また、それらが概念的な表現を通じて繰り広げられていく。「The Only Thing that Belongs To Us Are Memories」は、エイフェックス・ツイン、ティム・ヘッカーのノイズ/ドローンの系譜に属しているが、一方では、最初に述べたように、ミステリアスな印象を持つアンビエントの音像の向こうから天国的なサウンドスケープが浮かび上がる。この曲では、他曲と同じように、明確な言語は出てこないが、確実に音楽が言語以上のメッセージの役割を果たし、啓示に近づいているのである。そして珍しく、この曲では感情的なシークエンスが最後に登場し、やや泣かせるものがある。

 

しかし、ステレオタイプの音楽にはならず、予想を裏切るようにして曲が続く。例えば「Forever Ago Is Now」では、ポスト・ロックや音響派のアプローチを図り、Explosions In The Skyのような映画的なギターロックのコンポジションを採用している。それらがストリングスのリサンプリング等の手法を用い、ドローン・アンビエントへと昇華されている。そして音楽は、更に抽象的になり、明確な意味を持つことを放棄する。つまり、当初は概念的であったものが、そういった現実的な領域を離れて、混沌とした生命の原初的な領域へと還っていくのである。

 

もちろん、アルバムでは、地上的な概念が暗示されることもあるが、制作の一番の意図は、生命の神秘的な領域、あるいはその一端に触れるということではないだろうか。「Dispersion of Belief」、「Red Moon」ではプロデューサーらしいと言うべきか、ノイズの形式を通して、「カオス」を描出している。それは地上的な何かを表したというよりも、宇宙的なワンネス、もしくは、根源的な生命の神秘へ迫るというような意義が込められている。むしろ本作の音楽は、アンビエントというより、スピリチュアルジャズやフリージャズに近い文脈に属するように思えた。

 

 

86/100

 






2025年度のグラミー賞の部門別のノミネートアーティスト、作品が主催団体のレコーディングアカデミーによってついに明らかになった。


主要なノミネートアーティストはそれほど大きな波乱はなく、予想通りの結果となりました。ビヨンセ、ポスト・マローン、ビリー・エイリッシュ、ケンドリック・ラマー、チャーリーXCX、チャペル・ロアン、テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらがノミネートされています。


ビヨンセは、アルバム・オブ・ザ・イヤーの "Cowboy Carter"、ソング&レコード・オブ・ザ・イヤーの "Texas 'Hold Em "を含む計11部門でノミネートされ、全アーティストをリードしている。さらに、ビヨンセは、CMAから締め出された後、カントリー・ミュージック4部門すべてでノミネートを受けた。2025年グラミー賞での11ノミネートをもって、ビヨンセはキャリア通算99ノミネートとなり、夫のJAY-Zと並ぶグラミー賞史上最多タイ記録を更新した。グラミー賞史上最多の32冠を達成したビヨンセであるが、実はアルバム・オブ・ザ・イヤーはまだ受賞していません。


最新作『Hit Me Hard and Soft』で7部門にノミネートされたエイリッシュは、最初の3作が年間最優秀アルバムにノミネートされた初のアーティストとなった。また、彼女の楽曲「Birds of a Feather」は、2025年の年間最優秀楽曲賞と年間最優秀レコード賞の両方にノミネートされています。


オルタナティヴ・ミュージック、ロック、フォーク部門には、エイドリアン・レンカー、フォンテーヌD.C.、セント・ヴィンセント、ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ、ジャック・ホワイト、ブリタニー・ハワード、IDLES、ザ・ビートルズなどが候補に上がっています。ノミネートされた全アーティストをご覧ください。



Record of the Year


The Beatles – Now and Then

Beyoncé – Texas Hold ’Em

Billie Eilish – Birds of a Feather

Chappell Roan – Good Luck, Babe!

Charli XCX – 360

Kendrick Lamar – Not Like Us

Sabrina Carpenter – Espresso

Taylor Swift Featuring Post Malone – Fortnight


Album of the Year


André 3000 – New Blue Sun

Beyoncé – Cowboy Carter

Billie Eilish – Hit Me Hard and Soft

Chappell Roan – The Rise and Fall of a Midwest Princess

Charli XCX – Brat

Jacob Collier – Djesse Vol. 4

Sabrina Carpenter – Short n’ Sweet

Taylor Swift – The Tortured Poets Department


Song of the Year


Beyoncé – Texas Hold ’Em

Billie Eilish – Birds of a Feather

Chappell Roan – Good Luck, Babe!

Kendrick Lamar – Not Like Us

Lady Gaga & Bruno Mars – Die With a Smile

Sabrina Carpenter – Please Please Please

Shaboozey – A Bar Song (Tipsy)

Taylor Swift Featuring Post Malone – Fortnight


Best New Artist


Benson Boone

Doechii

Chappell Roan

Khruangbin

Raye

Sabrina Carpenter

Shaboozey

Teddy Swims


Producer of the Year, Non-Classical


Alissia

Daniel Nigro

Dernst “D’Mile” Emile II

Ian Fitchuk

Mustard


Songwriter of the Year, Non-Classical


Amy Allen

Edgar Barrera

Jessi Alexander

Jessie Jo Dillon

Raye


Best Pop Solo Performance


Beyoncé – Bodyguard

Billie Eilish – Birds of a Feather

Chappell Roan – Good Luck, Babe!

Charli XCX – Apple

Sabrina Carpenter – Espresso


Best Pop Duo/Group Performance


Ariana Grande, Brandy & Monica – The Boy Is Mine – Remix

Beyoncé Featuring Post Malone – Levii’s Jeans

Charli XCX & Billie Eilish – Guess Featuring Billie Eilish

Gracie Abrams Featuring Taylor Swift – Us.

Lady Gaga & Bruno Mars – Die With a Smile


Best Pop Vocal Album


Ariana Grande – Eternal Sunshine

Billie Eilish – Hit Me Hard and Soft

Chappell Roan – The Rise and Fall of a Midwest Princess

Sabrina Carpenter – Short n’ Sweet

Taylor Swift – The Tortured Poets Department


Best Dance/Electronic Recording


Disclosure – She’s Gone, Dance On

Four Tet – Loved

Fred Again.. & Baby Keem – Leavemealone

Justice & Tame Impala – Neverender

Kaytranada Featuring Childish Gambino – Witchy


Best Dance Pop Recording


Ariana Grande – Yes, And?

Billie Eilish – L’Amour de Ma Vie [Over Now Extended Edit]

Charli XCX – Von Dutch

Madison Beer – Make You Mine

Troye Sivan – Got Me Started


Best Dance/Electronic Music Album


Charli XCX – Brat

Four Tet – Three

Justice – Hyperdrama

Kaytranada – Timeless

Zedd – Telos


Best Remixed Recording


Charli XCX – Von Dutch A. G. Cook Remix Featuring Addison Rae

Doechii & Kaytranada Featuring JT – Alter Ego (Kaytranada Remix)

Julian Marley & Antaeus – Jah Sees Them (Amapiano Remix)

Sabrina Carpenter – Espresso (Mark Ronson x FNZ Working Late Remix)

Shaboozey & David Guetta – A Bar Song (Tipsy) (Remix)


Best Rock Performance


The Beatles – Now and Then

The Black Keys – Beautiful People (Stay High)

Green Day – The American Dream Is Killing Me

Idles – Gift Horse

Pearl Jam – Dark Matter

St. Vincent – Broken Man


Best Metal Performance


Gojira, Marina Viotti & Victor le Masne – Mea Culpa (Ah! Ça ira!)

Judas Priest – Crown of Horns

Knocked Loose Featuring Poppy – Suffocate

Metallica – Screaming Suicide

Spiritbox – Cellar Door


Best Rock Song


The Black Keys – Beautiful People (Stay High)

Green Day – Dilemma

Idles – Gift Horse

Pearl Jam – Dark Matter

St. Vincent – Broken Man


Best Rock Album


The Black Crowes – Happiness Bastards

Fontaines D.C. – Romance

Green Day – Saviors

Idles – Tangk

Jack White – No Name

Pearl Jam – Dark Matter

The Rolling Stones – Hackney Diamonds


Best Alternative Music Performance


Cage the Elephant – Neon Pill

Fontaines D.C. – Starburster

Kim Gordon – Bye Bye

Nick Cave & the Bad Seeds – Song of the Lake

St. Vincent – Flea


Best Alternative Music Album


Brittany Howard – What Now

Clairo – Charm

Kim Gordon – The Collective

Nick Cave & the Bad Seeds – Wild God

St. Vincent – All Born Screaming


Best R&B Performance


Chris Brown – Residuals

Coco Jones – Here We Go (Uh Oh)

Jhené Aiko – Guidance

Muni Long – Made for Me (Live on BET)

SZA – Saturn


Best Traditional R&B Performance


Kenyon Dixon – Can I Have This Groove

Lalah Hathaway Featuring Michael McDonald – No Lie

Lucky Daye – That’s You

Marsha Ambrosius – Wet

Muni Long – Make Me Forget


Best R&B Song


Coco Jones – Here We Go (Uh Oh)

Kehlani – After Hours

Muni Long – Ruined Me

SZA – Saturn

Tems – Burning


Best Progressive R&B Album


Avery*Sunshine – So Glad to Know You

Childish Gambino – Bando Stone and the New World

Durand Bernarr – En Route

Kehlani – Crash

NxWorries – Why Lawd?


Best R&B Album


Chris Brown – 11:11 (Deluxe)

Lalah Hathaway – Vantablack

Lucky Daye – Algorithm

Muni Long – Revenge

Usher – Coming Home


Best Rap Performance


Cardi B – Enough (Miami)

Common & Pete Rock Featuring Posdnuos – When the Sun Shines Again

Doechii – Nissan Altima

Eminem – Houdini

Future, Metro Boomin & Kendrick Lamar – Like That

Glorilla – Yeah Glo!

Kendrick Lamar – Not Like Us


Best Melodic Rap Performance


Beyoncé, Linda Martell & Shaboozey – Spaghettii

Future, Metro Boomin & The Weeknd – We Still Don’t Trust You

Jordan Adetunji Featuring Kehlani – Kehlani (Remix)

Latto – Big Mama

Rapsody Featuring Erykah Badu – 3:AM


Best Rap Song


Future, Metro Boomin & Kendrick Lamar – Like That

Glorilla – Yeah Glo!

Kendrick Lamar – Not Like Us

Rapsody & Hit-Boy – Asteroids

¥$, Kanye West, Ty Dolla $ign & Rich the Kid Featuring Playboi Carti – Carnival


Best Rap Album


Common & Pete Rock – The Auditorium Vol. 1

Doechii – Alligator Bites Never Heal

Eminem – The Death of Slim Shady (Coup de Grâce)

Future & Metro Boomin – We Don’t Trust You

J. Cole – Might Delete Later


Best Spoken Word Poetry Album


Malik Yusef – Good M.U.S.I.C. Universe Sonic Sinema Episode 1: In the Beginning Was the Word

Omari Hardwick – Concrete & Whiskey Act II Part 1: A Bourbon 30 Series

Queen Sheba – Civil Writes: The South Got Something to Say

Skillz – The Seven Number Ones

Tank and the Bangas – The Heart, the Mind, the Soul


Best Jazz Performance


The Baylor Project – Walk With Me, Lord (Sound | Spirit)

Chick Corea & Béla Fleck – Juno

Dan Pugach & Nicole Zuraitis Featuring Troy Roberts – Little Fears

Lakecia Benjamin Featuring Randy Brecker, Jeff “Tain” Watts & John Scofield – Phoenix Reimagined (Live)

Samara Joy Featuring Sullivan Fortner – Twinkle Twinkle Little Me


Best Jazz Vocal Album


Catherine Russell & Sean Mason – My Ideal

Christie Dashiell – Journey in Black

Kurt Elling & Sullivan Fortner – Wildflowers Vol. 1

Milton Nascimento & Esperanza Spalding – Milton + Esperanza

Samara Joy – A Joyful Holiday


Best Jazz Instrumental Album


Ambrose Akinmusire – Owl Song

Chick Corea & Béla Fleck – Remembrance

Kenny Barron – Beyond This Place

Lakecia Benjamin – Phoenix Reimagined (Live)

Sullivan Fortner – Solo Game


Best Large Jazz Ensemble Album


The Clayton-Hamilton Jazz Orchestra – And So It Goes

Dan Pugach – Bianca Reimagined

John Beasley Featuring Frankfurt Radio Big Band – Returning to Forever

Miguel Zenón – Golden City

Orrin Evans & The Captain Black Big Band – Walk a Mile in My Shoe


Best Latin Jazz Album


Donald Vega Featuring Lewis Nash, John Patitucci & Luisito Quintero- As I Travel

Eliane Elias – Time and Again

Hamilton de Holanda & Gonzalo Rubalcaba – Collab

Horacio ‘El Negro’ Hernandez, John Beasley & Jose Gola – El Trio: Live in Italy

Michel Camilo & Tomatito – Spain Forever Again

Zaccai Curtis – Cubop Lives!


Best Alternative Jazz Album


Arooj Aftab – Night Reign

André 3000 – New Blue Sun

Keyon Harrold – Foreverland

Meshell Ndegeocello – No More Water: The Gospel of James Baldwin

Robert Glasper – Code Derivation


Best Traditional Pop Vocal Album


Aaron Lazar – Impossible Dream

Cyrille Aimée – À Fleur de Peau

Gregory Porter – Christmas Wish

Lake Street Dive – Good Together

Norah Jones – Visions


Best Contemporary Instrumental Album


Béla Fleck – Rhapsody in Blue

Bill Frisell – Orchestras (Live)

Julian Lage – Speak to Me

Mark Guiliana – Mark

Taylor Eigsti – Plot Armor


Best Musical Theater Album


Hell’s Kitchen

Merrily We Roll Along

The Notebook

The Outsiders

Suffs

The Wiz


Best Country Solo Performance


Beyoncé – 16 Carriages

Chris Stapleton – It Takes a Woman

Jelly Roll – I Am Not Okay

Kacey Musgraves – The Architect

Shaboozey – A Bar Song (Tipsy)


Best Country Duo/Group Performance


Beyoncé & Miley Cyrus – II Most Wanted

Brothers Osborne – Break Mine

Dan + Shay – Bigger Houses

Kelsea Ballerini & Noah Kahan – Cowboys Cry Too

Post Malone Featuring Morgan Wallen – I Had Some Help


Best Country Song


Beyoncé – Texas Hold ’Em

Jelly Roll – I Am Not Okay

Kacey Musgraves – The Architect

Post Malone Featuring Morgan Wallen – I Had Some Help

Shaboozey – A Bar Song (Tipsy)


Best Country Album


Beyoncé – Cowboy Carter

Chris Stapleton – Higher

Kacey Musgraves – Deeper Well

Lainey Wilson – Whirlwind

Post Malone – F-1 Trillion


Best American Roots Performance


The Fabulous Thunderbirds Featuring Bonnie Raitt, Keb’ Mo’, Taj Mahal & Mick Fleetwood – Nothing in Rambling

Rhiannon Giddens – The Ballad of Sally Anne

Shemekia Copeland – Blame It on Eve

Sierra Ferrell – Lighthouse


Best Americana Performance


Beyoncé – Ya Ya

Gillian Welch & David Rawlings – Empty Trainload of Sky

Madi Diaz & Kacey Musgraves – Don’t Do Me Good

Madison Cunningham – Subtitles

Sarah Jarosz – Runaway Train

Sierra Ferrell – American Dreaming


Best American Roots Song


Aoife O’Donovan – All My Friends

Iron & Wine & Fiona Apple – All in Good Time

Mark Knopfler – Ahead of the Game

Shemekia Copeland – Blame It on Eve

Sierra Ferrell – American Dreaming


Best Americana Album


Charley Crockett – $10 Cowboy

Maggie Rose – No One Gets Out Alive

Sarah Jarosz – Polaroid Lovers

Sierra Ferrell – Trail of Flowers

T Bone Burnett – The Other Side

Waxahatchee – Tigers Blood


Best Bluegrass Album


Billy Strings – Live Vol. 1

Bronwyn Keith-Hynes – I Built a World

Dan Tyminski – Dan Tyminski: Live From the Ryman

The Del McCoury Band – Songs of Love and Life

Sister Sadie – No Fear

Tony Trischka – Earl Jam


Best Traditional Blues Album


Cedric Burnside – Hill Country Love

The Fabulous Thunderbirds – Struck Down

Little Feat – Sam’s Place

Sue Foley – One Guitar Woman

Taj Mahal – Swingin’: Live at the Church in Tulsa


Best Contemporary Blues Album


Antonio Vergara – The Fury

Joe Bonamassa – Blues Deluxe Vol. 2

Ruthie Foster – Mileage

Shemekia Copeland – Blame It on Eve

Steve Cropper & The Midnight Hour – Friendlytown


Best Folk Album


Adrianne Lenker – Bright Future

American Patchwork Quartet – American Patchwork Quartet

Aoife O’Donovan – All My Friends

Gillian Welch & David Rawlings – Woodland

Madi Diaz – Weird Faith


Best Regional Roots Music Album


Big Chief Monk Featuring J’wan Boudreaux – Live at the 2024 New Orleans Jazz & Heritage Festival

Kalani Pe’a – Kuini

New Breed Brass Band Featuring Trombone Shorty – Live at the 2024 New Orleans Jazz & Heritage Festival

The Rumble – Stories From the Battlefield

Sean Ardoin & Kreole Rock and Soul – 25 Back to My Roots


Best Gospel Performance/Song


Doe – Holy Hands

Melvin Crispell III – Yesterday

Ricky Dillard – Hold On (Live)

Tasha Cobbs Leonard, Erica Campbell & Israel Houghton Featuring Jonathan McReynolds & Jekalyn Carr – One Hallelujah

Yolanda Adams – Church Doors


Best Contemporary Christian Music Performance/Song


Bethel Music, Jenn Johnson Featuring CeCe Winans – Holy Forever (Live)

CeCe Winans – That’s My King

Elevation Worship Featuring Brandon Lake, Chris Brown & Chandler Moore – Praise

Honor & Glory & Disciple – Firm Foundation (He Won’t)

Jwlkrs Worship & Maverick City Music Featuring Chandler Moore – In the Name of Jesus

Maverick City Music, Naomi Raine & Chandler Moore Featuring Tasha Cobbs Leonard – In the Room


Best Gospel Album


CeCe Winans – More Than This

Karen Clark Sheard – Still Karen

Kirk Franklin – Father’s Day

Melvin Crispell III – Covered Vol. 1

Ricky Dillard – Choirmaster II (Live)


Best Contemporary Christian Music Album


Brandon Lake – Coat of Many Colors

Doe – Heart of a Human

Elevation Worship – When Wind Meets Fire

Forrest Frank – Child of God

Maverick City Music, Chandler Moore & Naomi Raine – The Maverick Way Complete


Best Roots Gospel Album


Authentic Unlimited – The Gospel Sessions, Vol. 2

Cory Henry – Church

The Harlem Gospel Travelers – Rhapsody

Mark D. Conklin – The Gospel According to Mark

The Nelons – Loving You


Best Latin Pop Album


Anitta – Funk Generation

Kali Uchis – Orquídeas

Kany García – García

Luis Fonsi – El Viaje

Shakira – Las Mujeres Ya No Lloran


Best Música Urbana Album


Bad Bunny – Nadie Sabe Lo Que Va a Pasar Mañana

Feid – Ferxxocalipsis

J Balvin – Rayo

Residente – Las Letras Ya No Importan

Young Miko – Att.


Best Latin Rock or Alternative Album


Cimafunk – Pa’ Tu Cuerpa

El David Aguilar – Compita del Destino

Mon Laferte – Autopoiética

Nathy Peluso – Grasa

Rawayana – ¿Quién Trae las Cornetas?


Best Música Mexicana Album (Including Tejano)


Carín León – Boca Chueca, Vol. 1

Chiquis – Diamantes

Jessi Uribe – De Lejitos

Peso Pluma – Éxodo


Best Tropical Latin Album


Juan Luis Guerra 4.40 – Radio Güira

Kiki Valera – Vacilón Santiaguero

Marc Anthony – Muevense

Sheila E. – Bailar

Tony Succar & Mimy Succar – Alma, Corazón y Salsa (Live at Gran Teatro Nacional)


Best Global Music Performance


Angélique Kidjo & Soweto Gospel Choir – Sunlight to My Soul

Arooj Aftab – Raat Ki Rani

Jacob Collier Featuring Anoushka Shankar & Varijashree Venugopal – A Rock Somewhere

Masa Takumi Featuring Ron Korb, Noshir Mody & Dale Edward Chung – Kashira

Rocky Dawuni – Rise

Sheila E. Featuring Gloria Estefan & Mimy Succar – Bemba Colorá


Best African Music Performance


Asake & Wizkid – MMS

Burna Boy – Higher

Chris Brown Featuring Davido & Lojay – Sensational

Tems – Love Me JeJe

Yemi Alade – Tomorrow


Best Global Music Album


Antonio Rey – Historias de un Flamenco

Ciro Hurtado – Paisajes

Matt B & Royal Philharmonic Orchestra – Alkebulan II

Rema – Heis

Tems – Born in the Wild


Best Reggae Album


Collie Buddz – Take It Easy

Shenseea – Never Gets Late Here

Various Artists – Bob Marley: One Love – Music Inspired By the Film (Deluxe)

Vybz Kartel – Party With Me

The Wailers – Evolution


Best New Age, Ambient, or Chant Album


Anoushka Shankar – Chapter II: How Dark It Is Before Dawn

Chris Redding – Visions of Sounds De Luxe

Radhika Vekaria – Warriors of Light

Ricky Kej – Break of Dawn

Ryuichi Sakamoto – Opus

Wouter Kellerman, Éru Matsumoto & Chandrika Tandon – Triveni


Best Children’s Music Album


Divinity Roxx & Divi Roxx Kids – World Wide Playdate

John Legend – My Favorite Dream

Lucky Diaz and the Family Jam Band – ¡Brillo, Brillo!

Lucy Kalantari & the Jazz Cats – Creciendo

Rock for Children – Solid Rock Revival


Best Comedy Album


Dave Chappelle – The Dreamer

Jim Gaffigan – The Prisoner

Nikki Glaser – Someday You’ll Die

Ricky Gervais – Armageddon

Trevor Noah – Where Was I


Best Audio Book, Narration, and Storytelling Recording


Barbra Streisand – My Name Is Barbra

Dolly Parton – Behind the Seams: My Life in Rhinestones

George Clinton – …And Your Ass Will Follow

Jimmy Carter – Last Sundays in Plains: A Centennial Celebration

Various Artists – All You Need Is Love: The Beatles in Their Own Words


Best Compilation Soundtrack for Visual Media


London Symphony Orchestra, Yannick Nézet-Séguin & Bradley Cooper – Maestro: Music by Leonard Bernstein

Various Artists – The Color Purple

Various Artists – Deadpool & Wolverine

Various Artists – Saltburn

Various Artists – Twisters: The Album


Best Score Soundtrack for Visual Media (Includes Film and Television)


Kris Bowers – The Color Purple

Hans Zimmer – Dune: Part Two

Laura Karpman – American Fiction

Nick Chuba, Atticus Ross & Leopold Ross – Shōgun

Trent Reznor & Atticus Ross – Challengers


Best Score Soundtrack for Video Games and Other Interactive Media


Bear McCreary – God of War Ragnarök: Valhalla

John Paesano – Marvel’s Spider-Man 2

Pinar Toprak – Avatar: Frontiers of Pandora

Wilbert Roget II – Star Wars Outlaws

Winifred Phillips – Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord


Best Song Written for Visual Media


Barbra Streisand – Love Will Survive (From The Tattooist of Auschwitz)

Jon Batiste – It Never Went Away (From the Netflix Documentary “American Symphony”)

Luke Combs – Ain’t No Love in Oklahoma (From Twisters: The Album)

*NSync & Justin Timberlake – Better Place (From Trolls Band Together)

Olivia Rodrigo – Can’t Catch Me Now (From The Hunger Games: The Ballad of Songbirds & Snakes)


Best Music Video


A$AP Rocky – Tailor Swif

Charli XCX – 360

Eminem – Houdini

Kendrick Lamar – Not Like Us

Taylor Swift Featuring Post Malone – Fortnight


Best Music Film


Jon Batiste – American Symphony

June Carter Cash – June

Run-DMC – Kings From Queens

Steven Van Zandt – Stevie Van Zandt: Disciple

Various Artists – The Greatest Night in Pop


Best Recording Package


The Avett Brothers – The Avett Brothers

Charli XCX – Brat

iWhoiWhoo – Pregnancy, Breakdown, and Disease

Kate Bush – Hounds of Love (Baskerville Edition)

The Muddy Basin Ramblers – Jug Band Millionaire

Post Malone – F-1 Trillion

William Clark Green – Baker Hotel


Best Boxed or Special Limited Edition Package


Alpha Wolf – Half Living Things

John Lennon – Mind Games

Kate Bush – Hounds of Love (The Boxes of Lost at Sea)

Nirvana – In Utero

Unsuk Chin & Berliner Philharmoniker – Unsuk Chin

90 Day Men – We Blame Chicago


Best Album Notes


Alice Coltrane – The Carnegie Hall Concert (Live)

Ford Dabney’s Syncopated Orchestras – After Midnight

John Culshaw – John Culshaw – The Art of the Producer – The Early Years 1948-55

King Oliver’s Creole Jazz Band & Various Artists – Centennial

Various Artists – SONtrack Original de la Película “Al Son de Beno”


Best Historical Album


King Oliver’s Creole Jazz Band & Various Artists – Centennial

Paul Robeson – Paul Robeson – Voice of Freedom: His Complete Columbia, RCA, HMV, and Victor Recordings

Pepe de Lucía & Paco de Lucía – Pepito y Paquito

Prince & the New Power Generation – Diamonds and Pearls (Super Deluxe Edition)

Rodgers & Hammerstein & Julie Andrews – The Sound of Music (Original Soundtrack Recording) (Super Deluxe Edition)


Best Engineered Album, Non-Classical


Charlotte Day Wilson – Cyan Blue

Kacey Musgraves – Deeper Well

Lucky Daye – Algorithm

Peter Gabriel – I/O

Sabrina Carpenter – Short n’ Sweet

Willow – Empathogen


Best Engineered Album, Classical


Los Angeles Philharmonic, Gustavo Dudamel & María Dueñas – Gabriela Ortiz: Revolución Diamantina

Los Angeles Philharmonic, John Adams & Los Angeles Master Chorale – John Adams: Girls of the Golden West

Pittsburgh Symphony Orchestra & Manfred Honeck – Bruckner: Symphony No. 7 – Bates: Resurrexit (Live)

Skylark Vocal Ensemble & Matthew Guard – Clear Voices in the Dark

Timo Andres, Andrew Cyr & Metropolis Ensemble – Timo Andres: The Blind Banister


Producer of the Year, Classical


Christoph Franke

Dirk Sobotka

Dmitriy Lipay

Elaine Martone

Erica Brenner

Morten Lindberg


Best Immersive Audio Album


Ensemble 96, Current Saxophone Quartet & Nina T. Karlsen – Pax

Peter Gabriel – I/O (In-Side Mix)

Ray Charles & Various Artists – Genius Loves Company

Roxy Music – Avalon

Trondheim Symphony Orchestra & Nick Davies – Henning Sommerro: Borders


Best Instrumental Composition


Akropolis Reed Quintet, Pascal Le Boeuf & Christian Euman – Strands

André 3000 – I Swear, I Really Wanted to Make a “Rap” Album but This Is Literally the Way the Wind Blew Me This Time

Chick Corea & Béla Fleck – Remembrance

Christopher Zuar Orchestra – Communion

Shelly Berg – At Last


Best Arrangement, Instrumental or A Cappella


Béla Fleck – Rhapsody in Blue(Grass)

Henry Mancini & Snarky Puppy – Baby Elephant Walk (Encore)

Jacob Collier Featuring John Legend & Tori Kelly – Bridge Over Troubled Water

Säje – Silent Night

Scott Hoying Featuring Säje & Tonality – Rose Without the Thorns


Best Arrangement, Instruments and Vocals


Cody Fry Featuring Sleeping at Last – The Sound of Silence

John Legend – Always Come Back

Säje Featuring Regina Carter – Alma

Willow – Big Feelings

The 8-Bit Big Band Featuring Jonah Nilsson & Button Masher – Last Surprise (From “Persona 5”)


Best Orchestral Performance


Buffalo Philharmonic Orchestra & JoAnn Falletta – Kodály: Háry János Suite, Nyári este & Symphony in C Major

Esa-Pekka Salonen & San Francisco Symphony – Stravinsky: The Firebird

Los Angeles Philharmonic, Gustavo Dudamel & María Dueñas – Gabriela Ortiz: Revolución Diamantina

ORF Vienna Radio Symphony Orchestra & Marin Alsop – John Adams: City Noir, Fearful Symmetries & Lola Montez Does the Spider Dance

Susanna Mälkki & Helsinki Philharmonic Orchestra – Sibelius: Karelia Suite, Rakastava & Lemminkäinen


Best Opera Recording


Los Angeles Philharmonic, John Adams & Los Angeles Master Chorale – John Adams: Girls of the Golden West

Lyric Opera of Kansas City & Gerard Schwarz – Moravec: The Shining

The Metropolitan Opera Orchestra & The Metropolitan Opera Chorus – Catán: Florencia en el Amazonas

The Metropolitan Opera Orchestra & The Metropolitan Opera Chorus – Puts: The Hours

San Francisco Symphony Chorus & San Francisco Symphony – Saariaho: Adriana Mater


Best Choral Performance


Apollo’s Fire & Jeannette Sorrell – Handel: Israel in Egypt, HWV 54

The Choir of Trinity Wall Street, Artefact Ensemble & Novus NY – Sheehan: Akathist

The Crossing, Donald Nally & Dan Schwartz – Ochre

Skylark Vocal Ensemble & Matthew Guard – Clear Voices in the Dark

True Concord Voices & Orchestra, Jeffrey Biegel & Eric Holtan – A Dream So Bright: Choral Music of Jake Runestad


Best Chamber Music/Small Ensemble Performance


Caroline Shaw & Sō Percussion – Rectangles and Circumstance

JACK Quartet – John Luther Adams: Waves & Particles

Lorelei Ensemble & Christopher Cerrone – Christopher Cerrone: Beaufort Scales

Miró Quartet – Home

Yo-Yo Ma, Leonidas Kavakos & Emanuel Ax – Beethoven for Three: Symphony No. 4 and Op. 97 “Archduke””


Best Classical Instrumental Solo


Andy Akiho – Akiho: Longing

Curtis J Stewart, James Blachly & Experiential Orchestra – Perry: Concerto for Violin and Orchestra

Mak Grgić & Ensemble Dissonance – Entourer

Seth Parker Woods – Eastman The Holy Presence of Joan d’Arc

Víkingur Ólafsson – J. S. Bach: Goldberg Variations


Best Classical Solo Vocal Album


Fotina Naumenko – Bespoke Songs

Joyce DiDonato, Il Pomo d’Oro & Maxim Emelyanychev – Wagner: Wesendonck Lieder

Karen Slack & Michelle Cann – Beyond the Years

Nicholas Phan, Farayi Malek & Palaver Strings – A Change Is Gonna Come

Will Liverman & Jonathan King – Show Me the Way


Best Classical Compendium


Amy Porter, Nikki Chooi, Buffalo Philharmonic Orchestra & JoAnn Falletta – Lukas Foss: Symphony No. 1 & Renaissance Concerto

Andy Akiho & Imani Winds – BeLonging

Danaë Xanthe Vlasse, Royal Philharmonic Orchestra & Michael Shapiro – Mythologies II

Experiential Orchestra, James Blachly & Curtis J Stewart – American Counterpoints

Los Angeles Philharmonic, Gustavo Dudamel & María Dueñas – Gabriela Ortiz: Revolución Diamantina


Best Contemporary Classical Composition


Andrea Casarrubios – Casarrubios: Seven for Solo Cello

Decoda – Coleman: Revelry

Esa-Pekka Salonen, Fleur Barron, Nicholas Phan, Christopher Purves, Axelle Fanyo & San Francisco Symphony Chorus & Orchestra – Saariaho: Adriana Mater

Eighth Blackbird – Lang: Composition as Explanation

Los Angeles Philharmonic, Gustavo Dudamel & Los Angeles Master Chorale – Ortiz: Revolución Diamantina

Weekly Music Feature: Perila

Perila


実験音楽界に新たな奇才が登場。サンクトペテルブルク生まれでベルリンを拠点に活動するサウンド&ビジュアル・アーティスト、DJ、詩人、パフォーマーのペリラがオスロのスモールタウン・スーパーサウンドからセカンド・アルバムを本日リリースした。21の個別のコンポジションからなるフォーマット別の2枚組アルバムで、内外のリズムを活用することに狙いを定めている。


メディア(媒体)という点では、『Intrinsic Rytmn- イントリンシック・リズム』は基本的にダブル・アルバムである。しかし、70年代のクラシックなコンセプチュアル・アルバムというよりは、ロイヤル・トラックスの『ツイン・インフィニティブス』やR!!!S!!!の『レイク』のような90年代のアウトサイダー・エクスペリメンタル・ダブル・アルバムに近い。長尺のサイケデリックな探求を避け、強力で凝縮された恍惚とした内省のブロックを、5秒のブレイクを挟むことで音のパレットを浄化させながら聴かせる。


その結果、リズミカルなアンビエント、スペクトラルなエレクトロニクス、そして親密なヴォーカルが、意図的な要素と偶発的な要素、環境から生成されたリズムとメロディ、抽象的なメロディと具体的な言語、そして人生の複雑さと精神的な再生の間で、とらえどころのないバランスを保っている。


冒頭から幽玄なシンセワークと、重なり合う声と重なり合う牛の鈴のフィールド・レコーディング(「Sur」)によってシーンが設定され、精神的な意味と身体的な幸福を生み出す音楽が常に押し合いへし合いしている様子をリスナーに観察させる--故ミルフォード・グレイヴスのホリスティックな芸術作品とは似て非なるものだ。


「Nia」や「Ways」のようなトラックでは、テープのヒスノイズ、小音量のうなり音、リズミカルな小声のパチパチというテクスチャーが、遠くのヴォーカルと変調する鐘の音に一定の瞑想的な土台を提供し、音世界を浸透させる。これらは、ASMRを誘発するような音響、前後するメロディー、幻覚的な雰囲気を伴っており、微妙な音の作用が大気の地平へと果てしなく広がっていく。


「Angli」、「Supa Mi」、「Fey」といった曲では、ヴォーカルのミニマリズムを削ぎ落として、エレガントなクリックやカット・パーカッションと組み合わせることで、より親密で内面的なサウンドスケープを作り出している。  具体的には、アルバムの最後の4分の1では、無防備で飾り気のないサウンド・メモのようなレコーディングの中で、内と外の緊張感が再び現れる。そこでは、足音のペースやマイクのノイズのような操作(「Darbounouse Song」)、あるいは日用品の自発的なパーカッションや遠くの歌声が、アルバムのクローズである「Ol Sun」のように、私たちが住んでいながら見過ごしがちな空間や物事の共鳴周波数を探り当てようとする。


結局のところ、この2枚のレコードは互いに対話するように考えられており、内的世界と外的世界の間で音楽的な会話をしながら一緒に演奏することができる。さらに、4つのビニールの側面の区分は、土、魂、空気、地面として、なる段階、物質、人生の質感を表している。


この意味で、『Intrinsic Rhythm』は、外界の生態系が、日常生活の周波数やテンポの中に、メロディーやリズムの絶え間ない、そしてしばしば混沌とした源を提供していることを思い出させてくれる。内面的には、これらは意識や内臓の無形のリズムと組み合わさっている。ペリラは、受動的に知覚される音と、そこから能動的に生み出される音楽のバランスを正確に探っている。


ペリーラ自身の言葉を借りれば、「このアルバムに取り組む過程で、私自身の本質的なリズム、つまり私の中心であり拠り所であるリズムは、ゆっくりとしたものであることがわかった。スローダウンすると、すべての魅惑的な美しさに気づくことができ、音の世界を違った形でとらえることができる。私にとって、この作品を作ることは、自分が本当は何者なのか、そしてこの世界で自分がどうあり得るのかを知り、受け入れるという、まさにスピリチュアルな旅だった」


さらに、レーベルの個人的なメモは適切な洞察と考えに基づいており、謎めいたベルリンのアーティストの実像の一端を明らかにする。


「ペリラは私にとってとても特別な存在で、サウンドクラウドで彼女の最初の2、3曲を聴いたとき、とても特別な人の音楽がここにあるとすぐに理解した。彼女はとても強いヴィジョンを持っていて、私たちレーベルは何も干渉したり手助けしたりする必要はない。彼女のビジョンは完全だ」


「私にとって、このアルバムはアウトサイダー・ダブルと呼ばれるもので、90年代初期の偉大なアウトサイダー・ダブル・アルバムと同じ感触とアプローチを持っている。Royal Truxの『Twin Infinitives』、Dead Cの『Harsh 70s Reality』、R!!!Sの『Lake』など。これらのアルバムは、70年代ロックの誇大妄想の古典的な2枚組アルバムに中指を立て、2枚組アルバムの奇妙なバージョン、新しい定義を作り上げる。公平を期すなら、ミニットメン、ヒュスカー・デュー、ソニック・ユースはすべて、70年代のビッグ/エピックな恐竜と90年代のアウトサイダー・ダブル・アルバムの間に橋を架けたと言わねばならない。とにかく、『Intrinsic Rhythm』も同じような感触を持っている。長さ64分、21曲が4面に渡って収録され、それぞれの面にタイトルとテーマがある」


「彼女のアート、ボディー・ムーヴメント、自然からの影響。このアルバムは、ペリラことアレクサンドラ・ザハレンコの人間としての姿を音で擬人化したもの。私にとって、この音楽こそペリラなのだ。タルコフスキーの『鏡』の想像上のサントラのように。深く、心に染みるほど美しい」

 


『Intrinsic Rhytmn』- Smalltown Supersound (92/100)


 

オーストラリアの実験音楽作家、ローレンス・イングリッシュ(Lawrence English)が最新アルバムの発表とともにコメントとして添えた「音楽構造を建築のように解釈する」という考えは、今日日の実験音楽、あるいはアンビエントのような抽象的な音楽を解釈する上で不可欠な要素となる。アルバム全体を堅牢なビザンチン建築、あるいはモザイク模様を施したイスラム建築のように解釈することが、「フルアルバム」という不可解な形式を解き明かすのに重要になってくる。そもそも、音楽なるリベラルアーツの一貫にある媒体は、哲学や数学よりも往古から存在し、「黄金比」のような原初的な学問の理想形態を表すものであった。それが宗教や民族の儀式や祭礼のための音楽という中世の通過儀礼の段階を経たのち、現代の趣味や趣向の多様化により、「娯楽の一貫」と見なされるようになったのは時代の流れと言えるだろうが、無数の学問の中で音楽が最初に存在し、その後、哲学や数学や建築が出てきたのを考えると、結局、音楽というのがすべての学問の先頭に位置し、最も先鋭的な分野であることは自明なのである。

 

最近、最もヒップなジャンルの一つであるヒップホップは、ようやくアンビエントの尻尾をつかまえて、その背中に追いついたわけだが、アンビエントも負けじと次の段階に進みつつある。これらのデッドヒートが終わることは考えづらい。今、最もトレンドな音楽は間違いなくアンビエントで、これらが当初はダンスミュージック界隈のアーティストやプロデューサーから少しダサいとみなされていた2000年以前の傾向を考えると、時代の変化が顕著であることが窺える。その理由を挙げるとするなら、一つはホーム・レコーディングで高品質の音楽を制作することが可能になったこと。加えて、Ableton、NI、各種のソフトウェアの進化、専門的なレベルで音楽制作が可能になったことだろう。無論、以前はラップトップやPC等でアナログの音響機器の配線やMIDIを介さずに打ち込みの音楽を制作することは困難を極めたが、今やスタジオ・レコーディングのレベルの録音システムを構築することは、より一般的になったと言える。

 

ジェンダー論を比較対象に出すまでもなく、エレクトロニックプロデューサーが90年代から00年代を通して、男性を中心に発展してきたことを考えると、 2010年代後半くらいから、Anna Roxanne、Malone、Haloを中心とする女性プロデューサーが活躍するようになったのは、これもまた時代の流れを象徴付けていると言える。そして、00年代以降には、いるにはいたが、少し影の薄かった黒人のエレクトロニックプロデューサーの活躍が最近になって目立ってきたのも、新しい兆候です。特に、女性的なエレクトロニックプロデューサー/DJは、すべてレフトフィールドに属するとは言えないのだが、一般的に柔軟な考えを持っているため、本来は音楽という形式からかけ離れたような媒体(映画、文学、詩)から、音楽のヒントや種をすんなり見つけてしまう。このあたりは、例えば、ダニエル・ロパティンのようなプロデューサーにも共通しているが、白人男性の音楽として発展してきたダンスミュージックは、おそらく2025年前後で一つの分岐点を迎えるような気がしている。


例えば、1990年代からテクノシーンを牽引してきた主要なプロデューサーの一部はおそらく、このことになんとなく気がついており、制作を続けたり、あるいは中断させたりしながら、新しいシーンの流れを読んでいる最中なのではないかと思われる。そして、2020年代始めには、ドローン(* 現代音楽発祥の形式で、元はスコットランドのパグパイプが発祥。ラモンテヤングなどが有名)という吹奏楽の形式を弦楽器のディケイとダイナミクス(減退と増幅)から音楽全体を再解釈しようという潮流が出てきたことは、すでにこのサイトの購読者であれば、ご承知のことと思われる。


そして、問題は「ドローンの次はなにが出てくるのか?」という点であるが、ロシア出身のプロデューサーの新作を聞けば分かる通り、すでに新しいものが出かかっている。少なくとも、アンビエントは次なるステップに進みつつあり、複数のグループに枝分かれし始めているようだ。殊、このアルバムに関して言うのであれば、ボーカルアート、ビートルズのようなアートポップ、クラシック・ミュージック、アヴァンギャルド・ジャズの融合を発見することが出来る。これは最早、70年代のブラック・ミュージックや、90年代のロックやメタルで盛んであった「クロスオーバーの概念」が極限に至った事実を示し、水が蒸発し揮発する瞬間にもよく似ていて、何らかの臨界点を迎えつつある兆候を、はっきりとした形で暗示しているのである。



例えば、Black Midiとしてお馴染みのジョーディー・グリープさんが新しい音楽を探しているようなのだが、新しい表現というのは、苦心して出てくるわけでもないし、頭を悩ませて出てくるものではないと思われる。新しいものが出てくる瞬間というのは、異質な文化で育った人、一般的な音楽の流れから見て、異端的な背景を持つ人、また、その生活環境にある人などが従来とは異なる概念を表沙汰にするということである。つまり、これは、奇を衒って音楽をやっているということではないのである。例えば、この事例は、第二次世界大戦後の70年代、80年代の東西分裂時代のドイツにあり、トルコからの移民が多い危険地帯の地下から登場した「インダストリアル・ノイズ」という形式が当てはまる。そして、何らかの表現を規制されたり、直接的な政治的迫害を受ける市民から発生した前衛音楽の形式なども、この事例に当てはまる。つまり、ファッション、スポーツ、ないしは一般的な情報誌やファッション誌、もしくは主要メディアで紹介されるような表面的なカルチャーとは異なる領域に属する「文化の裏側」から新しい表現や形式が台頭するのである。例えば、現在、ベルリンを拠点に活動するPerilaは、実際の音楽を聴くと分かるように、前衛音楽や実験音楽に憧れているわけでもなく、ましてや奇をてらっているわけでもなく、スノビズムにかぶれているわけでもない。チャット・ベイカー、坂本龍一、アルヴァ・ノトといった、アーティストがこよなく愛する音楽が、何らかの形でアンダーグラウンドミュージックとして乗り移り、異端的な音楽が生み出されたと見るべきなのだ。これは先にも言ったように、意識して作られたものではなく、「他の人のようにやろうとしたら、異端的な音楽が出来てしまった」という感じではないかと思う。一般的な人々とは異なる文化の背景や生活形態、そして考えが複雑に絡み合って出来たと見るべきだろう。

 

それでは、このアルバムのどこが新しいのだろうか。21曲という大容量なので、ダブルアルバム(実質的にはクアドラプル)として見た上で、主要なトラックを事例にあげて説明していきたい。

 

インドネシアのガムランの打楽器のような神秘的なパーカッションで始まり、70年代の埃を被ったアナログシンセサイザーで発生させたような古典的なアンビエントのテクスチャーがその後に続く。レーベルの説明では、「70年代のプログレッシヴロックのアルバムに中指を立てる」と説明されているが、表向きに聞こえるサウンドは、Anna Roxanneのようにハイファイであるが、実際的に音楽の奥行きとして感じられるのは、ブライアン・イーノの最初期(ロキシー・ミュージックの後)のシンセ音楽のようなローファイな手法である。これは、具体的にはアウトプットの手法が現代的なものであるだけで、実際に展開される音楽は古典的なのである。

 

実際的に、シュトックハウゼンの古典的なトーン・クラスターの手法を用いながら、丹念にサウンドスケープを描いていく。そして、現代的なプロデューサーと同じように、自らのボーカルを一つのシークエンスとして解釈し、それらをアンビエントとして解釈するという手法は続く「3-Sepula Purm」に示されている。ボーカルをLaulel Haloのようにカットアップで重ね、重層的なハーモニーとして組み上げていく。そして、それは新しいゴスペルやクワイアの形として表側に現れる。更にその根本となる音楽に演出的な効果を与えるのが、 オシレーターを使用した中音域の軋むようなノイズである。当初は、神秘的なアンビエントのような印象を持つ楽曲が漸次その印象を変化させていき、いわばアヴァンギャルドとしての要素を発揮するのである。

 

 その後、このアルバムはとらえどころのない抽象的な音楽が続いている。「4-Nia」、「5−Ways」の二曲に関しては、それほど現代のアンビエントと大きな違いはない。しかし、同時にアルヴァ・ノトの精妙なテクスチャーやノイズからの影響がうかがえ、アルバムの序盤とは対象的に、ハイファイなエレクトロニックとしての印象を強める。これらは、Abletonのように、電気信号の配線を図面的に解釈する電子音楽としてアウトプットされたものではないかと推測される。そして空間や建築内にこだまする空気感という概念は、リゲティ・ジョルジュが最初に確立したもので、アンビエントの副題のような意味を持つが、続く「6-Lish」ではこの概念が示されている。例えば、サグラダファミリアのような高い尖塔を頂く教会、ないしはエジプトの王家の谷のような場所で、観光客の会話の合間を通して、風が渡る音や建築の中にある内部構造から何らかの空気の流れのようなものを聞き取ったり、何らかの神秘的な息吹やエーテルのようなものを感じたりすることはないだろうか。この曲では、そういった普段の意識では聞き取りづらい神秘的な瞬間を、電子音楽という側面から表現しようとしている。これらは「体験としての音楽」という、近年稀に見るような新しい概念が付与されていることが分かる。


例えば、「トーンの変調」という概念を通じて、一つの実験音楽の変奏形式を組み上げるアーティストに、スウェーデンのEllen Arkbroがいる。Perilaの新作アルバムの中盤に収録曲には、例えば、ギターやベース、ドラム等の通常の演奏方法では実現しえないものが展開され、それは音の発生音の後に生ずるトーンという側面を抽出し、それらを減退させることなく、持続音として継続させる。これは、音の発生学の異質な側面を捉えている。普通であれば、音は発生した後、ピークを迎え、徐々に減退の瞬間を迎えるが、減退する直前の音を抽出し、それらを持続音として継続させる手法が取り入れられている。一般的にはドローン音楽の手法の一貫に属し、機械的な音楽に聴こえるかもしれないが、反面、これが自然の音響学から乖離しているとも考えづらい。例えば、建築内にこだまする空気の音の流れ等は、大気や空気、素粒子、原子という元素がこの世に偏在するかぎり、あるいは建築物が物理的に取り壊されないかぎり、それらの音響を永久に持続させるからである。 例えば、「8-Nim Aliev」ではトーン・クラスターにより、この手法が確立され、続く「9-Mola」は、ラスコーの洞窟を描写音楽として刻印したような不可思議なアンビエント/ドローンの手法を確立させている。そして、これらのアルバムの第一部は、実験音楽として秀逸であるにとどまらず、音楽の永遠の瞬間を捉えたかのようでもある。さらに、後者の楽曲では、ピアノのスニペットが登場し、音楽の神秘的な雰囲気を引き立てる。第一部は「Lym Riel」、「Air Two Air」にて、ひとまず終了する。前者は、ヒス・ノイズを用いた古典的なアンビエントで、Loscil、Chihei Hatakeyamaの系譜に属する作風でもある。後者は、エレクトロニック寄りの楽曲で、中音域のグリッチノイズを強調させ、それらのノイズの位相(PAN)を転移させながら、ビート、リズムを組み上げ、緻密なグルーヴを作り上げていく。

 

アルバムの一枚目では、アンビエントを中心としたエレクトロニックが展開される。続く二枚目では、ボーカルアートを中心としたエレクトロニックが繰り広げられる。 そして、第二部の方はボーカルアートを駆使したストリーテリングの音楽としての意義を持つ。クワイアやメディエーションの領域に属するものから、ビートルズがアートポップ時代に遊びの一貫として試したもの、メレディス・モンクの系譜にある現代音楽の領域に属するものまで幅広い。例えば、「Angli」では、メレディス・モンクの『Atlas』の手法を用い、洞窟のような音響効果を用い、奥行きのあるアンビエントを形作り、その中でペリラ自身がオペラ風のボーカルを披露する。しかし、明確なボーカルというわけでなく、ペリラのボーカルはモンクと同じように、器楽的なテクスチャーの一貫として解釈され、フルートや笛のようにその空間内に響き渡るのである。さらに、続く「Supa Mi」を聴くと分かる通り、ペリラの声は明確な言語の意味を持つことはきわめて少ない。 それはジャズのスキャットと同じく、言葉以上の伝達手段として確立され、例えば、ウィストリング(口笛)に近いような意味を持つ。それはオーストラリアのモリー・ルイスの口笛と同じように、スキャットやハミングそのものが言葉や会話の代わりを果たすのである。

 

果たして、言語学の範疇には属さない、これらの歌から何らかの言語性を読み取ることが出来るのだろうか。私自身はそこまでは全然出来なかったが、少なくとも、音楽の構造としては、続けて聴いていると、物語性を持ち始めて、また、その物語の端緒が音楽に合わせて広がっていったり縮んだり、物語が一人でに歩き始めるような印象を持つに違いない。この後のいくつかの収録曲「Sneando」、「Fey」、「Lip」では、メレディス・モンクのようなパフォーミング・アーツの領域に属する「演劇としてのボーカル」、そして、アンビエント・プロデューサー、Grouper(リズ・ハリス)、Ekin Fillのようなアンビエント・フォークとドリーム・ポップを結びつけた次世代のアヴァンギャルド・ミュージックという形を以って展開されていくことになる。尚且つ、それらの抽象音楽としての形式は、おとぎ話や童謡的な意味合いを帯び、もしくは古典的なギリシャ神話の音楽による復刻といった、アーティスティックな印象を携えながら繰り広げられていく。これらは、ペリラの類稀なる美的センスと、ゴシック的な概念の融合の瞬間を見出せる。無論、そういったアンダーグランドミュージックの複数の形式が組み込まれた後、野心的な試みが行われることもある。ペリラは、イタコや霊媒者のようになり、「Message」なるものを地上に降ろそうとする。これは非常に斬新で奇妙な試みである。

 

 

アルバムの全般では、洞窟や教会のような広い奥行きのあるアンビエンスを想定した録音が際立つ。一方、本作の最終盤はデモトラックのようなクローズの指向マイクを用い、近い空間の録音の音響が強調されている。

 

この後の「Darbounouse Song」、「Note On You」、「She Wonder」、終曲となる「Ol Sun」 は、基本的にはアカペラのボーカルトラックで構成される。「Darbounouse Song」は唯一、足音などのサンプリングを用いたボーカルトラックで、物語的な前衛音楽の意義を保持しているが、以降の三曲は、かなり異端的である。とりとめのない思いを日記のような形で録音したボイスメモのようでもあり、ヒップホップのミックステープのようでもある。

 

これらは、パティ・スミスやブリジット・フォンテーヌのような、ポピュラーの前衛音楽の側面を改めて見つめ直すかのようでもある。少しだけ散漫になりかけた作風だが、円環構造を用いて、全体的な構成を上手くまとめあげている。一曲目と呼応するクローズ「Ol Sun」では、鐘とパーカッションを用いた前衛音楽に再び回帰している。しかし、始まりと終わりでは、音楽そのものの印象がまったく異なることに気がつく。ガムランのように始まったこのアルバムは、クローズでは、チベットのマントラのような民族音楽に縁取られている。それらの雑多な音楽性、あるいは文化性は、このアルバムの最後になって花開き、ロシア正教のミサ等で聴くことが出来る鐘の音のサンプリングで終了する。音楽に明確な意味を求めても仕方がないかもしれない。しかし、このアルバムを聴くかぎり、新しい何かが台頭したことをひしひしと感じる。

 

 



本日、ニューカッスル/アポン・タインの5人組、ナッツ(Knats)が新曲「Tortuga (For Me Mam)」を発表。UK気鋭のモダンジャズグループとして今後の活躍に大いに期待したい。今作は、彼らにとってギアボックス・レコードからの初リリースとなる。(各種ストリーミングはこちら)


2024年はナッツにとって、ジョーディー・グリープ(ブラック・ミディ)のUKツアーでのサポートや、ソールドアウトした“ジャズリフレッシュド”のヘッドライナー、同じくソールドアウトしたジャズ・カフェでのStr4ta(ストラータ)のサポート、BBCプロムスでの演奏など、灼熱の1年となった。そんな彼らは現在R&B界のレジェンド、エディ・チャコンのバック・バンドとして英国ツアーの真っ最中。


ニューカッスル出身の2人の親友、スタン・ウッドワード(ベース)とキング・デイヴィッド=アイク・エレキ(ドラム)を中心とするナッツは、洗練されたアレンジ力で、力強いメロディ、ダンサブルなグルーヴを持つジョーディー(ニューカッスル生まれの)・ジャズを制作している。その熱狂的なエネルギーは、Spotifyのプレイリストに特集されたり、The GuardianやJazzwiseなどのメディアから賞賛されるなど、羨望の的となっている。


新曲「Tortuga (For Me Mam) 」では、シネマティックなストリングスに、彼らのダンスとエレクトロニックな感性から生まれたファンクなベースラインとブレイクビートのドラミングが組み合わされている。筋肉質なアップテンポのリズムが、鮮やかなトランペット・ワークと器用な鍵盤をフィーチャーした複雑なアレンジで踊っている。


楽曲のテーマは、ウッドワードが母親へのトリビュートとして、また全てのシングルマザーに敬意を表して書いており、非常にパーソナルな作品である。同楽曲についてバンドは、「スタンとキングは共に影響力のあるたくましい女性に育てられ、この曲にはシングルマザーの強さと犠牲に対する賞賛と感謝の気持ちが込められている 」と語っている。

 

ライブ動画のスニペットの試聴はこちら:  https://m.youtube.com/shorts/GlhKUA3WB_A


そして「Tortuga (For Me Mam) 」は、すでに今月初旬に発表された〈Beams Plus〉とロンドン発のスケートブランド〈PALACE SKATEBOARDS〉との初コラボレーション・ラインの広告に使用されており、CMではナッツが生演奏で楽曲を披露している。ナッツのトランペット、ピアノ、ストリングス、ドラム、ベースの絶妙なジャズアンサンブルに注目したい。


現在、ツアーに大忙しのナッツだが、11月17日(日)には”ロンドン・ジャズ・フェスティバル”に、ベースメント・ジャックスのサイモン・ラトクリフ率いるヴィレッジ・オブ・ザ・サンと出演することが決定している。

 

 

 「Tortuga (For Me Mam) 」

 

 


Knats Biography:

 

ニューカッスル・アポン・タイン出身の2人の生涯の親友、スタン・ウッドワード(ベース)とキング・デイヴィッド・アイク・エレキ(ドラムス)が率いるクインテットで、それぞれのルーツであるジャズ、ドラムンベース、ハウス、ゴスペルから派生したダンス・ミュージックを作っている。  

 

シーンに登場して間もない彼らは、すでにSoho Radio、BBC Newcastle、WDR3によって認知され、Spotifyの ‘All New Jazz’プレイリストに選曲された他、‘JazzFresh Finds’のカヴァーも飾っている。

 

さらに、「BBC Introducing North East」からも絶大な支持を受けている。  今月初旬に発表された〈Beams Plus〉とロンドン発のスケートブランド〈PALACE SKATEBOARDS〉との初コラボレーション・ラインの広告に楽曲「Tortuga (For Me Ma)」が使用された。

Photo Credit: Harrison Reid & Visuals Direction: Niki Zaupa


グラスゴー出身のアンビエント・デュオ、ケーヒル//コステロ(Cahill // Costello)による3年ぶりとなる待望のニューアルバム『II』が、本日レコード(数量限定)、及び、デジタル・フォーマットでリリースされた。良作なので実験音楽がお好きな方はぜひチェックしていただきたい。


クラシックの訓練を受けたエクスペリメンタルなギタリスト、ケヴィン・ダニエル・ケイヒルと、スコットランドの著名なジャズ・イノベーター、グレアム・コステロから成るこのデュオにとって今作は、CLASH、Worldwide FMのサポートを得た2021年のデビュー作『オフワールド』に続く。


ニューアルバム『II』は、エフェクトのかかったギターを基調としたアンビエントな雰囲気と絶妙なグルーヴを取り入れたドラミングが、時折、催眠術のようなテープ・ループを経由しながら織り交ざっている。

 

スコットランド王立音楽院で出会った2人は、ジャズとクラシックという異なる分野を専攻していたにもかかわらず、ミニマリズムと即興演奏への情熱を分かち合っていた。

 

ある時はグレアムのバックグラウンドであるジャズ的素養を感じさせ、またある時は、彼が幼少期に聴いて育ったインストゥルメンタル・ロック、ポスト・ロック的な激しさも感じさせる。アルバムは、デュオがデビュー作の成果をさらに発展させた、広大で野心的な作品となっている。


ニューアルバムのリリースを記念し、デュオは「JNGL」(ジャングル)と題された新曲を公開した。このトラックは、ループと熱烈なアップテンポのドラミングを駆使して、ダンス・ミュージックと表現力豊かなアンビエント調の微妙な融合を生み出している。プログレッシヴジャズを経過したドラミングとポストロック/音響系の緻密なギターワークがキラリと光る一曲となっている。


「JNGL」について彼らは次のように話している。

 

「この曲はアルペジオのコード進行と、キーセンターの中で対位法を重ねたループ・ソロ・ギターから生まれたんだ。ギターのループが決まったら、90年代のジャングル/ドラムンベースに通じるビート/グルーヴを探した。そしてノスタルジックなサウンドとフィーリングを出すために、クラシックな165bpmのテンポに収まるようにした。結果、クラシックなスタイルをポストモダンにアレンジし、独自のアプローチを加えた」




Cahill // Costello - JNGL (Audio Video)

 

 

 

今回のアルバムについては、こう語っている。


「『II』の作曲と制作のプロセスは、『オフワールド』と変わらない部分も多かったが、まったく違う部分もあった。最初のアイデアのほとんどは、以前と同じように即興で、その場でライヴ録音したものだ。最も大きな違いは、デュオとして、また友人として、より親密になったこと。『オフワールド』は、音楽的にも個人的にも、お互いを理解し合うための素晴らしいきっかけになったと思う。その結果、僕たち2人が信じられないほど誇りに思っているアルバムができた。『オフワールド』のセッションから”作曲プロセス”が終わることはなく、最終的にこのアルバムになるものへと、時間をかけてゆっくりと融合していったんだ」


「その結果、このアルバムにはじっくりと腰を据えて書いたり、リハーサルをしたりする時間はなかった。どこか特別な場所から生まれた音のアイデアや、決して強制されることのないアイデアの共有が行ったり来たりしていた。今、思えば、それは特別なことだった。こうして一緒に音楽を演奏するというのは、繊細なコンセプトなんだ。ある意味では、音楽と友情を称えるために、できるだけ一緒に曲を書いたり演奏したりしたいと思うものだが、同時に、新鮮で創造的なアイデアを長続きさせるため、”井戸の水を飲み干す”ようなことはせず、必要な分だけ飲むことも必要なんだ。『II』は、僕たちの継続的な発展、僕たち自身の創造的なプロセスのより良い理解、お互いの意見に耳を傾け、友人として、デュオとしてより親密になることを表現している」


Cahill // Costello 『Ⅱ』 


【アルバム情報】

アーティスト名:Cahill//Costello(ケーヒル//コステロ)

タイトル名:II(2)

発売日:発売中!

形態:2LP(140g盤)

バーコード:5060708611163

品番: GB1599


<トラックリスト>

Side-A

1. Tyrannus

2. Ae//FX

Side-B

1. Ice Beat

2. Sensenmann


Side-C

1. JNGL

2. I Have Seen The Lions On The Beaches In The Evening


Side-D

1. Lachryma

2. Sunbeat



【クレジット】

Kevin Cahill: electric guitar, effects, tape loops

Graham Costello: drums, percussion FX

All tracks composed by Kevin Cahill and Graham Costello

Recorded on location and mixed by Luigi Pasquini, Dystopia Studios, Glasgow.

Mastered and cut by Caspar Sutton-Jones at Gearbox Records



アルバム『II』レコード (数量限定)発売中!

https://store.gearboxrecords.com/products/cahill-costello-ii-cahill-costello


https://cahillcostello.bandcamp.com/album/cahill-costello-ii-2



デジタル・アルバム『II』配信中!

https://bfan.link/cahill-costello-ii



Cahill // Costello Biography:

 

スコットランドはグラスゴー出身のアンビエント・デュオで、メンバーは、ギタリストのケヴィン・ダニエル・ケーヒルとドラマーのグレアム・コステロ。

 

両者の出会いは2012年の英国王立スコットランド音楽院であった。ジャズとクラシックという異なる専攻を学んだ二人だったが、さまざまなジャンルにわたるミニマリズムと即興への相互の情熱を共有していた。この友情と共有された情熱は、最終的にケーヒル//コステロの結成に至る前に、グラハムとケヴィンがさまざまなソロ・プロジェクトで協力することにつながった。

 

彼らのプロセスは、ミニマリズムとアンビエント・ミュージックの要素を融合し、過度の複雑さとは無縁の、非常に感情的なサウンドの世界を構成している。その音楽制作は忍耐と明晰さに基づいており、リスナーの心に正直に語りかける。2021年9月、ファースト・アルバム『オフワールド』をリリース。そして、2024年11月には3年ぶりとなるニュー・アルバム『II』を発表した。

Lawrence English
©︎T Pakioufakis


Lawrence English(ローレンス・イングリッシュ)はレーベルオーナー、そして個性的なプロデューサーとしての表情を併せ持ち、Loscil、小瀬村晶といったエレクトロニックプロデューサー、作曲家との共同制作の経験を持つ。アンビエントシーンの最重要人物の一人である。

 

ローレンス・イングリッシュの待望の新作アルバム『Even the Horizon Knows Its Bounds』を発表した。1月31日に自身のレーベル”Room 40”からリリースされる。試聴は以下から。


「場所とは、進化する主観的な空間の経験です。空間は、私たちが感覚を生み出す方法によって形作られ、瞬間瞬間に創造する場所の機会を保持する。空間の建築的、物質的な特徴はある程度一定しているかもしれないが、そこに満ちている人、物、雰囲気、出会いは永遠に記憶の中に崩壊していく」


この新作アルバムを紹介しながら、アーティストはこう語っている。


「私は、音が建築に取り憑いていると考えたいのです。音の非物質性がもたらす、本当に不思議な相互作用のひとつです。それはまた、太古の昔から私たちを魅了してきたものでもある。私たちの祖先が、洞窟のような暗い聖堂の中で、驚きと安らぎを感じながら互いに呼び合っていた爽快感を想像するのは難しくありません。

 

「今日、音が空間を占める方法、いわゆる”リキッド・アーキテクチャー”は、機能性や形に支配されがちではあるが、同じように多くの驚きをもたらしている。しかし、そのような制約を越えて、音が物質世界の中でどのように作用するかは、私たちの音楽理解の根底に存在するものであり、さらに、私たちがサウンド・アートのカノンとして知っている広い教会の中にあるものなのだ。」

 

アルバムの最初のリードシングルはタイトル曲で、建築的な構造性を示唆するミュージックビデオが公開されている。まるで不動産の広告映像のようでもあるが、ローレンス・イングリッシュの楽曲からは音楽の近未来性、そして音楽の知られざる一面が暗示されているように思える。

 


「Even the Horizon Knows Its Bounds(expert Ⅱ)」


 

 

Lawrence English 『Even The Horizon Knows Its Bounds』



Label: Room 40

Release: 2025年1月31日


Tracklist:

1.ETHKIBI

2.ETHKIBII

3.ETHKIBIII

4.ETHKIBIV

5.ETHKIBV

6.ETHKIBVI

7.ETHKIBVII

8.ETHKIBVIII

9.Even The Horizon Knows Its Bounds (excerpt I)

10.Even The Horizon Knows Its Bounds (excerpt Ⅱ)

11.Even The Horizon Knows Its Bounds

 


元ネイキッド・アイとして知られるフランス系イギリス人のシンガーソングライター、Frenchie(フレンチー)はセルフタイトルのデビューアルバムの制作を発表した。

 

ジャズ・ギタリストのフェミ・テモウォ(SAULT、エイミー・ワインハウス)がプロデュースしたこのアルバムは3月28日に自主制作盤としてリリースされる。この発表を記念して、アーティストはフリーダ・トゥーレイがヴォーカルをとるトラック「Love Reservoir」を公開した。


「"Love Reservoir "は、関係の感情的な貯水池に燃料を補給し、活性化させることを求めるというテーマを叙情的に探求しており、困難を克服し、愛とつながりを育むという願望を象徴している」とフレンチーは声明で述べている。

 

「フェミと私は一緒に曲を書き、才能ある友人のフリーダ・トゥーレイにこの曲に参加してもらいたいと思った。彼女がヴォーカルを録音しに来てくれた時、この曲は全く新しいレベルに昇華された」


Frenchieには、鍵盤奏者のルーク・スミス、KOKOROKOのドラマー、アヨ・サラウ、ホーネン・フォードとフライデー・トゥーレイのバッキング・ヴォーカル、そしてアーロン・テイラー、アレックス・メイデュー、クリス・ハイソン、ジャス・カイザーが楽器とプロデュースで参加している。

 

 

「Love Reservoir」



Frenchie 『Frenchie』

Label: Frenchie

Release; 2025年3月28日


Tracklist:


1. Can I Lean On You?

2. Searching

3. Love Reservoir [feat. Frida Touray]

4. Werewolf

5. Almost There

6. Distance

7. Shower Argument

8. It’s Not Funny

9. Que Je T’aime

10. Sapphires & Butterflies

シェフィールド出身のオルタナティヴポップアーティスト、Gia Ford(ジア・フォード)が、9月にリリースしたデビューアルバム『Transparent Things』以来となる新曲「Earth Return」を携えて帰ってきた。


このシングルは、『Transparent Things』と同じセッションでレコーディングされたもので、場所、帰属、そして時の流れという概念を、優しさと深みをもって探求している。この新曲についてジアは、"自分が死ぬときに最も愛する場所にいたいという願望から生まれた "と語っている。


続けて彼女はこう説明する。「私の場合、それは祖父母が住んでいたダービーシャーのホープ・ヴァレーのあたりで、そこにいるときはいつも、すべてに安らぎを感じるの。あたかもそこで死んだら、それが正しいことで、私の魂は家族の中にいて、子供の頃の私の魂もそのあたりを走り回っているような気がするの」


「Earth Return」



ニューヨークの伝説的なシンガーの隠れた名曲を再発見しよう。今週末(11月8日)、サブ・ポップは『Like Someone I Know - ライク・サムワン・アイ・ノウ』をリリースします。マーゴ・ガリヤンの1968年の名盤『Take a Picture』にオマージュを捧げた12曲入りコンピレーション『A Celebration of Margo Guryan』。本日、サブ・ポップは発売前の最後のシングルとして、ケイト・ボリンジャーがカバーした「What Can I Give You」を公開しました。オルガンをフィーチャーした遊び心満載のバロックポップ・ソングです。(ストリーミング試聴はこちらから)

 

この12曲入りコンピレーションには、マーゴ・プライス、TOPS、クレイロ、ラヒル、ジューン・マクドゥーム、ムンヤ+カイナル、フランキー・コスモス+グッドモーニング、ケイト・ボリンジャー、パール&ザ・オイスターズ、ベドウィン+シルヴィ、バリ、エンプレス・オブといった現代アーティストによる再解釈が追加されている。『Like Someone I Know:A Celebration of Margo Guryan』のリリースは、マーゴの3回目の命日に合わせて行われる。アルバムの収益の一部は、廉価のリプロダクティブ・ヘルス・サービスの提供と提唱に寄付される。


『ライク・サムワン・アイ・ノウ』は、12組の異なるアーティストがそれぞれの旅に出ることで、ガリヤンの歌の強さを強化している。核となる部分は常に揺るぎない。McDoomは「Thoughts」の下で静寂とハーモニーを伸ばし、まるで彼女の弧を描くヴォーカルの下でダブ・プレートの上で回転しているかのよう。ラヒルは "Sun "をハルモニウムのドローンと魅惑的なパーカッシブの刻みの上で展開させ、超現実的なものに対するグリヤンの興味を掘り下げる。

 

フランキー・コスモス、及び、グッド・モーニングは、「Take a Picture」でカントリー調のシャッフルを聴かせ、絡み合ったヴォーカルが完璧なロマンチックさでリズミカルなスキップに乗る。ここ数十年の間に、ガリヤンがいかに優れていたか、好みの潮流が変わる中で彼女の曲がいかに揺るぎないものであったかが、次第に明らかになって来る。『ライク・サムワン・アイ・ノウ』は、その絶対的な証明であり、ガリヤンの作品の永続的な妥当性と輝きの証である。


「What Can I Give You」