フランツ・フェルディナンドが新曲「Night Or Day」とミュージックビデオを公開した。この曲は「Audacious」に続き、バンドの次のアルバム『The Human Fear』を予告するものだ。リアン・ホワイト監督による映像は以下より。


「人生は決して楽ではないかもしれないが、俺たちは昼も夜も全力で生きていく」とフロントマンのアレックス・カプラノスは声明で語っている。

 

「夜から昼へ。このアルバムと残りのLPをレコーディングした環境のドラマ・ノワールを捉えるために、才能溢れるリアン・ホワイトとコラボした。彼女の感性とエネルギーは、あの空間に爆発し、私たちが音楽を作った世界を垣間見せてくれた。嵐が部屋を揺らし、ブーン...スコットランドのダーク・ハートが力強く鼓動する。撮影はすべてAYRスタジオで行われた」


「この曲は、4つの壁の中で生き、呼吸する、激動的で超越的な感情の巨大さを体現している。フランツ・フェルディナンドとスコットランドのスタジオで生まれ、そこでこの美しさをレコーディングした "Night or Day "は、16mmモノクロフィルムの目に映る映像と音の力強い出会いだった。これが、我々が踊る嵐なのだ!」


フランツ・フェルディナンドの新作アルバム『The Human Fear』はDominoから1月10日にリリースされる。


「Night Or Day」





◾️FRANZ FERDINAND(フランツ・フェルディナンド)、6作目のアルバム『THE HUMAN FEAR』を発表

 『ゴシップ・ガールズ』のオープニングトラックにも選ばれたR&Bシンガー、ホープ・タラのフルアルバムがついに完成

 

 

ウェストロンドンを拠点に活動するR&B界の新星、Hope Tala(ホープ・タラ)のニューアルバム『Hope Written』がついに完成した。本作は、2025年2月28日に発売日がマークされている。日本国内では、国内流通盤、及び、二枚組の輸入盤がPMR Recordsより発売される。アーティストのコメント、及び、リリース情報と合わせて下記よりチェックしてみよう。

 

精神的な葛藤、失恋と新しい愛や友情、祖先や人間性への疑問と自己開示や内省を織り交ぜたという今作はストリングスに満ちたオープニング曲”Growing Pains”から始まる。2019年に彼女の名前を世界的に押し上げた名曲” Lovestained”の時代を想起させる癒しのソウルサウンド。バンドのエネルギーに満ちた遊び心溢れる” Bad Love God”、 ボサノヴァ調のプロダクションにのせて甘く歌い上げることでメロディが滲み出る”Jumping the Gun”。LAとロンドンを拠点に楽曲を制作することでそれぞれの土地から影響を受けたグルーヴがそれぞれの楽曲に漂っている。



「大好きな音楽を聴いていて一番強く感じるのは、その音楽が自分の行きたい場所、住みたい場所だということ。常夏で警察も刑務所もなく教育費もタダというユートピアにしたい」-ホープ・タラ

 

 「Jumping The Gun」

 

 

 

Hope Tala 『Handwritten』



アーティスト : Hope Tala (ホープ・タラ)
タイトル : Hope Handwritten (ホープ・ハンドリトゥン)
レーベル : PMR Records
発売日 : 2025年2月28日

<国内流通盤CD>
品番 : AMIP-0371
価格 : 2,500円(税抜)
バーコード : 4532813343716

<輸入盤2枚組LP>
品番 : PMR223LP
卸値 : 4140円(税抜)
バーコード : 617308087314

 

 


シガー・ロスのヨンシー、ジェフ・バックリィ、ライのマイク・ミロシュなどのような聴くものを魅了するファルセット・ヴォイスをもつ期待のイギリス人シンガー・ソングライター、トム・アダムス。クラシック音楽とエレクトロニック・ミュージック、ふたつのバックグラウンドを配合した親密かつソウルフルな音楽を奏でる若き才能による輝かしいデビュー・アルバム。


10代のころからいくつかのインストのポスト・ロック・プロジェクトを主導し、映画音楽も手がけてきた彼におおきなターニング・ポイントが訪れたのは2014年の夏のことでした。現在の拠点であるベルリンにはじめて旅行で訪れたその夜。たまたま観にいったピアニスト、ニルス・フラームのライヴ。

 

そこでニルスは観客に演奏するように促し、そしてステージにあがったのは短パンにTシャツ姿の旅行客のトムでした。その印象深い歌声にオーディエンスは驚嘆し、思わずニルス自身も連弾で参加するという魔法のような瞬間...。

 

その後、すぐさまニルス・フラームのマネージャーによってレーベルを紹介され、それをきっかけにデビューが決まったというまさにシンデレラ・ストーリー。なお、そのときに演奏したのがこのデビュー・アルバムのラスト・トラック「Time」です。(奇跡の映像はYouTubeで確認することができます)



2016年にEP『Voyages By Starlight』でデビュー。それから1年、ついにリリースされたのが本作『Silence』は、ある1日の午後の時間のみをつかい、ライヴ・レコーディングでつくられました。ア・ウィングド・ヴィクトリー・フォー・ザ・サルンやパフューム・ジーニアスなどのライヴのオープニング・アクトで力をつけた、ヴォーカルとソロ・ピアノを中心にさまざまなノイズやエフェクトのレイヤーによるライヴのフィーリングを持ち込んだ全8曲。

 

胸締め付けるほどの哀愁と心地よい高揚感に包まれる先行シングル「Come On, Dreamer」や「Sparks」、前述の「Time」など切ない名曲が立ち並びます。繊細なメランコリアをまとった浮遊感漂う流麗なポスト・クラシカル的アプローチのプロダクションとその天賦の歌声は、まるで人気ピアニスト、ニルス・フラームが世にも美しいファルセット・ヴォイスを手に入れたかのよう。トム・アダムスが歌う静寂の歌に包まれるとき、例えようのない美しい風景が目前に広がることでしょう。


国内盤のみ、ボーナストラックとしてEP『Voyages By Starlight』の未発表アウトテイク「Circles」と、ライナーノーツ/歌詞対訳のダウンロード・コードつき。


ザ・ブリーダーズ(元ピクシーズ)のKim Deal(キム・ディール)が、ソロデビューアルバム『Nobody Loves You More』を今週末に4ADよりリリースする。今回、彼女はそのアルバムからのシングル、タイトル曲「Nobody Loves You More」のミュージックビデオを公開した。。

 

新しいアルバムの2曲、「Are You Mine?」と 「Wish I Was」は、もともと2011年に書かれレコーディングされ、7インチに収録されていたが、『Nobody Loves You More』のために再レコーディングされた。アルバムの最終レコーディング・セッションは2022年11月、シカゴのエレクトリカル・オーディオ・スタジオで故スティーヴ・アルビニと行なわれた。


様々なセッションの中で、ブリーダーズの過去と現在のメンバー(マンド・ロペス、双子の妹ケリー・ディール、ジム・マクファーソン、ブリット・ウォルフォード)、ティーンエイジ・ファンクラブのレイモンド・マッギンレー、ザ・ラコンターズのジャック・ローレンス、サヴェージズのフェイ・ミルトンとアイセ・ハッサンなど、著名なミュージシャンたちがアルバムのレコーディングに参加した。ノーバディ・ラヴズ・ユー・モアのミックスはマルタ・サローニ、マスタリングはヘバ・カドリーが担当した。

 

 

「Nobody Loves You More」




Kim Deal Tour Dates:


11/22 - Chicago, IL @ Reckless Records (4pm)

3/1 – London, UK @ Barbican

3/10 – Boston, MA @ The Wilbur

3/13 – New York, NY @ Brooklyn Paramount

3/15 – Washington, DC @ Capitol Turnaround

3/21 - Santa Cruz, CA - Rio Theatre

3/23 – Portland, OR @ Revolution Hall

3/24 – Seattle, WA @ Neptune Theatre

3/26 – San Francisco, CA @ The Fillmore

3/27 – Los Angeles, CA @ The Belasco

3/29 - Joshua Tree, CA @ Pappy and Harriet’s

3/30 – San Diego, CA @ Observatory North Park

6/5-7 – Barcelona, ES @ Primavera Sound

6/12-14 – Porto, PT @ NOS Primavera Sound

Yazmin Lacey

イギリス/ノッティンガムのシンガー、Yazmin Lacey(ヤズミン・レイシー)がニューシングル「The Feels」で帰ってきた。AMFレコーズと契約したばかりのヤズミン・レイシーのニュー・シングル「The Feels」は、1年半ぶりのソロ・リリースとなる。(ストリーミングはこちら)


このニューシングルではデビュー・アルバムのレゲエやソウルからグルーヴィーなディスコファンクに移行している。「The Feels」は、絶えず新しい挑戦を求め、動き続けるアーティストの肖像である。ヤズミン・レイシーはこのニューシングルについて次のように説明しています。


「The Feelsという曲は、特定のメッセージを伝えるというよりも、ムードをとらえることに重点を置いている。惹かれる人といるときでも、友達と出かけているときでも、あるいは一人で考え事をしているときでも、その場の雰囲気に身を任せたいという抗いがたい衝動を表現している。この曲は、中毒性のある気楽な状態の追求を捉えているが、それが時にいかに圧倒されるかをも示唆している」

 

 

「The Feel」

 


現在、ブルックリンを拠点に活動し、沖縄にルーツを持つロサンゼルス出身のシンガーソングライター、William Alexander(ウィリアム・アレクサンダー)が11月22日にニューアルバム『Solo』をSweet Soul Recordsからリリースします。

 

『ミュージシャンズ・ミュージシャン』として高く評価されるウィリアム・アレクサンダーは、豊かなリズム感覚とロサンゼルスの進歩的なアンダーグラウンドシーンに深く根ざした経験から、これまでにAndre 3000,Connan Mockasin、Laraaji, John Carroll Kirby, Carlos Nino,Mndsgn,Nick Hakimなど、数々の著名なアーティストとのコラボレーションや録音を行ってきた。

 

今週末に発売予定である『Solo』は、そんな彼の広大な芸術的な世界を通して、内省的なベッドルームフォークの真髄を表した作品です。Jessica Prattの時代を超越した感覚、Jose Gonzalesの独特なギタープレイなどを参照しながら、独自のソウルフォークを体現した先行シングル「ANWT」に始まり、「Sunflowers」「Blue Skies」「WDWG」など彼の初期作『New York Songtapes, Chapter Ⅰ: ”The Uncut Tree"」に収録された力強くざらついたソウルサウンドのソウルサウンドの楽曲を柔らかなムードのアコースティックサウンドに移行した楽曲が続く。


2ndシングル「Ghosts」は、サンバ、ボサノヴァ、ローファイなど多様なインスピレーションを独自のソウルフォークに昇華した親密な内省的対話と切ないハーモニーで迫る珠玉の一曲です。「Mediation」「Selfness」ではアンビエント・ミュージック的な要素も加わり、リスナーを安らかな瞑想へと誘う。ラストを飾る「Time」では、繊細で表現豊かなギタープレイとともに自己と向き合うことの重要性を優しく語りかけ、リスナーをさらに内面的な探求へと誘う。その素朴でありながら、洗練された豊かなヴォーカルトーンとナイロン・ギターの流れるようなリズムは、若き日のCaetano Veloso、あるいはErasmo Carlosといった70年代のブラジル・トロピカリアの巨匠たちをありありと彷彿とさせ、リスナーの琴線に深く触れるものがある。

 

 

「Anwt」

 




William Alexander 『Solo』



レーベル:Sweet Soul Records

発売日:2024年11月22日


Tracklist:

1.ANWT

2.In Your Hands

3.Emancipate

4.Sunflowers

5.Cycles

6.Blue Skies

7.WDWG

8.Ghosts

9.Mediation

10.Selfness

11.Time


 

配信リンク:  https://lnk.to/WXXL_Solo



William Alexander Profile:

 

沖縄にルーツを持つSSW,William Alexander(ウィリアム ・アレクサンダー)は、その広大な芸術的世界を通して、内省的なベッドルームフォークの真髄を表現する。初期の作品に見られた力強くざらついたソウルから、柔らかなムードへと移行し、リスナーを内なる探求へと誘う。

 

素朴でありながら洗練された豊かなヴォーカルトーと、ナイロン弦ギターの流れるようなリズは若き日のCaetano Veloso、Erasmo Carlosといった70年代のブラジル・トロピカリアの巨匠たちを彷彿とさせる。

 

彼の楽曲は自己実現や様々な形の愛をテーマに、観察と目に映らぬ神秘的な概念との境界を往来する。現代のファストファッションや自己顕示が主流となる風潮の中で、逃避ではなく、むしろ音楽や自分自身、そして、心の奥深くにひそむ魂の叫びに向き合う勇気ある選択である。

 


カナダのシューゲイズデュオ、Bodywash(ボディーウォッシュ)がWham!のクリスマスの定番ソングをカバーした。


モントリオールのデュオは、「Last Christmas」にアレンジを加え、憧れという甘美な装いを、ファジーなギターとメランコリックなヴォーカルという文字通りのものに変えた。一足早くクリスマス気分に浸ってみよう。


「この新しい解釈は、ジョージ・マイケルのソングライティングにおける心の痛みを前景化している」とボディウォッシュはプレスリリースで述べている。


「ホリデーは、クリスマス気分を盛り上げるためのものであると同時に、内省や切ない後悔(家族のドラマは言うまでもない)の時期でもある。一年で最も素晴らしい時期は、時に最も孤独な時期でもあるんだ」


"ラスト・クリスマス "は、3月の "ノー・リペア "に続き、ボディウォッシュが今年リリースした2枚のシングルのうちの1枚。彼らはまた、昨年の『I Held the Shape While I Could』を引っさげてツアーを行った。


「Last Christmas」-Wham! Cover

Meat Puppets 『Out My Way』

Label: Self Release

Release: 2024年11月15日 (オリジナルは1986年にSSTからリリース)

 

Review 

 

アリゾナの伝説的なサイケロックバンド、Meat Puppetsは1980年代にデビューし、当初はカオティック・ハードコアバンドとしてミュージック・シーンに登場した。しかし、オルタナティヴロックの隠れた名盤『Ⅱ』では、サイケロックやアメリカーナ、メキシカーナを組み合わせた独創的なロックバンドへと転身を果たした。Nirvanaのカート・コバーンがこよなく彼らの楽曲を愛したのは周知の通りで、MTV Unpuggedでは実際にメンバーと一緒に、「Lake Of Fire」を演奏した。このアンプラグド・ライブの映像は、Youtubeなどでも視聴出来る。

 

その後、バンドは驚くべきことに、メジャーレーベルと契約し、「Backwater」等の代表曲を持つようになった。90年代にはインディーズバンドの多くがメジャーとライセンス契約を交わし、オルタナティヴロックそのものがメジャー化していったが、ミート・パペッツもその流れに乗ったのである。ということで、1990年代は商業的なハードロックソングを中心に制作したバンドだったが、 その後はリリースがまばらになり、2010年に『Lollipop』を発表した後、ライブ・アルバムこそ発表していたが、新作アルバムからはしばらく遠ざかっていた印象を受ける。

 


今作は1986年のバンドの駆け出しの頃のアルバムの再発となる。 そして長年、最初期のアルバムを聴いていて不思議なエキゾチズムを感じていたのだったが、ハードロックの性質を押し出した『Out My Way』でミート・パペッツの本質的な魅力が明らかになったような気がした。それは名声や野望といった表面的な鎧のようなものが剥がれ落ち、その正体があらわになったとも言える。彼らの制作するロックソングはお世辞にも時流に乗っているとは言い難いかもしれないが、このアルバムには普遍的なロックソングの魅力が満載であり、また、カッティングギターを元にしたギターロックにサイケデリックなテイストが添えられている。実際的には、アルバムのいくつかの収録曲には、アリゾナのバンドのロックに対する愛情が滲んでいるのである。

 

最初期にはカントリーとパンクを融合させ、独創的なソングライティングを行っていたが、今作でもそれらのカントリーの要素が含まれている。「Not Swimming Ground」では、ロカビリー風のギターの運びにカントリーの歌を乗せている。当初は雑多的な音楽性で知られていたバンドであるが、むしろ普遍的なアメリカン・ロックに近づいたという印象を受けた。また、先述した通り、野心的な思いは薄れ、シンプルに楽しもうという姿勢が軽快なロックソングにはうかがえる。実際的に、ロックの醍醐味といっては大げさになるが、その魅力の一端に触れることができるはず。また、最初期のMPのようなロカビリーに触発されたパンキッシュなナンバー「Mountain Lion」を聴くと、「これぞアメリカのロック!」と唸りたくなる。また、カート・コバーンが彼らのボーカルのスタイルに影響を受けたのは明らかである。ピッチのよれたヴォーカル、そして、くるくるとモードを変更させるロカビリースタイルのギター、またそれを補うリズム・セクションなど、バンドアンサンブルの純粋な魅力に満ち溢れている。録音の完成度とはまったく指針の異なり、好きな音楽を徹底した追求するという姿勢が素晴らしい。


その他にも、時代不明の懐かしきハードロックが展開され、Grand Funk Railroad、ZZ Top、Bad Companyの系譜にある渋いロックソングが満載である。しかし、それらの古典的なハードロックの楽曲も、Meat Puppetsの手にかかると、魔法が掛けられたようにサイケのテイストを漂わせる。「I Just Want to Make Love With You」はタイトルがMuddy Watersのようでぎょっとさせるが、耳をつんざくようなUSハードロックの原初的な魅力を体験することができる。その後に続く「On The Move」では同じようにノスタルジックなロックソングを楽しめる。

 

続く「Burn The Honky Tonky Down」では奥深いフォーク・ソングのルーツに迫っている。曲を聴いていると、アラバマやミシシッピが歌詞の中に登場しそうな雰囲気だ。三拍子の軽快なリズムに合わせて、ホンキートンクやフォークソングを通じて南部のルーツに迫っている。その後は米国南部のロックであるサザンロックの性質が強まる。ジョニー・ウィンターやオールマン・ブラザーズ・バンドといった南部の素晴らしい音楽を継承し、軽快なロックソングとして昇華している。


実験的なロックのアプローチも取り入れられている。「Backwards Drums」は、ミニマル・ミュージックの要素を取り入れ、アリゾナの民俗学的な音楽の要素を取り入れ、新鮮なロックミュージックに仕上げている。「Everything Is Green」ではインストバンドのバンドの一面が表される。この曲では、スタジオミュージシャン顔負けの楽しげなライブセッションが繰り広げられている。小さなスタジオでラフなジャムを録音したかのような即興的なインストゥルメンタル。しかし、作り込まれた高水準のクオリティーを誇るロックソングよりも魅力的だ。クローズ「Other Kinds of Love #2」ではアリゾナの幻想的な雰囲気をローファイなロックとして収めている。




68/100

 

 

©︎Mac Scott


イギリス/ニューカッスルのシンガーソングライター、サム・フェンダーがニューアルバム『People Watching』のリリースを発表した。2月21日にポリドール・レコードからリリースされる。同時にフェンダーはアルバムからのタイトル・トラックを配信した。このイギリス人ロッカーは、ウォー・オン・ドラッグスのアダム・グランデュシエルと新曲を共同プロデュースした。

 

11月7日付けのインスタグラムの公式アカウントの投稿で、このシングルの裏話についてフェンダーは次のように語っている。『People Watching』は、僕にとって代理母のような存在で、昨年11月に亡くなった人のことを歌っています。私は最期、彼女の側にいて、彼女の隣の椅子で眠った。この曲は、その場所と家への往復で、私の頭の中をよぎっていたことを歌っている」


「彼女は僕にステージに上がる自信を与えてくれた人だし、いつも『なんで受賞スピーチで名前を出さないんだ』って言われていた。でも今は、曲(とアルバム)全体が彼女につながっている。彼女が今どこにいようと、『そろそろ坊や』と言って見下ろしていることを願っています」


『People Watching』は2021年の『Seventeen Going Under』に続く作品となる。フェンダーはグランデュシエルとともに、恒例のコラボレーター、ディーン・トンプソン、ジョー・アトキンソン、プロデューサーのマーカス・ドラヴスと一緒に新作アルバムの制作に取り組んだ。

 

 

「People Watching」 - Best New Tracks

 

 

 

Sam Fender 『People Watching』

Label: Polydor

Release: 2025年2月21日 


Tracklist:


1. People Watching

2. Nostalgia’s Lie

3. Chin Up

4. Wild Long Lie

5. Arm’s Length

6. Crumbling Empire

7. Little Bit Closer

8. Rein Me In

9. TV Dinner

10. Something Heavy

11. Remember My Name

Weekly Music Feature : Anat Moshkovski



アナト・モシュコフスキはイスラエル/テルアビブ在住のミュージシャン。6歳からピアノ、11歳からクラリネットを始め、後にヴォーカリストとなる。近年は、ヨニ・レヒテル、ウジ・ナヴォン、ヌリット・ヒルシュらと歌い、「ヘーゼルナッツ 」と共に世界ツアーを行っている。2017年にデビューEP『Happy as a Dog』をリリース。セカンドEP『Loud & Clear』は2019年リリースしている。


彼女のディスコグラフィーには、二作のEPとフランスのシングルの三部作が含まれている。その中には、Yoni Rechterの有名な曲「The Prettiest Girl In Kindergarten」の人気のある魅惑的な新バージョンがある。


アナトはマルチバイリンガルで、英語、フランス語、ヘブライ語をシームレスに切り替える。彼女の音楽は、イスラエルとフランスの尊敬されるラジオ局や雑誌から支持されています。彼女はまた、シュロミ・シャバンやウジ・ナボンなど著名なアーティストともコラボレーションしています。アナトは11月15日にニューアルバム『Anat』をリリースし、彼女の音楽の旅に別のエキサイティングな章を追加する。


モシュコフスキーの有名作としては2021年の「La Petite Fille la Plus Jolie du Monde(世界で一番かわいい女の子」がある。この曲はシンガーソングライターのコンポジションを理解する上で不可欠である。フランスのメディアによると、この曲はイスラエル音楽の有名曲であるらしく、回顧展と合わせて公開された。すべては、音楽家ノエミー・ダハンがアナト・モシュコフスキーとシュージンのために翻訳した、イスラエル音楽で最も有名な曲のひとつから始まった。


叙情的な観察から繊細で癒し系のポップな賛辞まで、『世界で一番可愛い女の子』は目、体、手といった五感のすべてを通して感覚を伝えた。宙吊りのジェスチャー、救いの空に向かって振り上げられる指、鏡の向こう側に座る生き物を見つめる虹彩、創造的で人間的な系譜が進行しているのを目撃するよう誘う、濡れた肌や冷たい肌、ぴったりした服やゆったりした服の感触が、私たちの想像力を引き継ぐスケッチを誘発する。展示とサウンドトラックは、日々学び直すべき普遍的なメッセージを伝えている。すべてのドローイング、すべての楽譜、すべての彫刻の背後には、自伝の本質的な部分、イニシアティブと具体性の不滅の存在がある。その根源は、アナトとシュージンの新しく敬虔なパフォーマンスと、献身と時間を通してこの忘れがたい深い感動的な作品に自分の存在を捧げてくれたすべての人々の惜しみない参加によって育まれている。

 

新しいアルバムは、7つのシンプルで美しいビネットにより構成されている。このアルバムは、モシュコフスキーいわく「言葉ではなく、激しい感情の流れ」であり、パリの映画のサウンドトラックとそれほど縁遠いものではない。

 

『Anat』は大胆にもアーティスト名を冠するアーティストにとっての記念碑的な作品である。ヌーベルヴァーグ(Nouvelle Vague)のモノクロ映画から、『Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain,(邦題:アメリ)』のようなポスト・ヌーベルヴォーグに至るまでの新旧の映画音楽を変幻自在に横断し、新しいシネマ・ポップの流れを形作る。これはアナト・モシュコフスキーの音楽が、シルヴィ・バルタンやブリジット・フォンテーヌまでのフレンチ・ポップやアートポップの流れを汲むことを示唆する。これらの音楽に変化を及ぼすのが、ゲンスブールのバロックポップからの影響、英語、フランス語を曲ごとに使い分ける巧みな歌唱、そしてラテン・ジャズからのフィードバック。このアルバムは、イスラエルの新しいポップスの台頭を表すと同時に、米国の著名なソングライターと並んで、2020年代のシネマ・ポップの時代を予感させる。

 

 

 

『Anat』 Nana Disc  (86/100)


 


アーティスティックな音楽表現はすでに2021年の時点で完成されていた。ボサ・ノヴァやイエイエをベースにした作曲、ピアノ、クラリネットの演奏で培われた音感の良さは、旧来の商業音楽を組み替える契機となり、普遍的な音楽表現を構築するための躍如ともなった。結果的に、アナト・モシュコフスキーがこのアルバムで全般的にヒントにしたのは、奇異なことに、現代的なアメリカのシンガーソングライターが取り組んでいる「リバイバル運動」であるようだ。

 

それはアメリカの商業音楽の場合、映画のワンカットで流れる演出的な挿入歌やサウンドトラック等がポピュラーの音楽の一つの枠組みとなっている。イスラエルのシンガーソングライター、アナト・モシュコフスキーもこの事例に倣い、ヌーヴェル・ヴァーグのモノクロの映画で流れていたファッショナブルな音楽を彼女自身のポピュラー・ソングに取り入れている。そもそも、フレンチ・ポップとも称される「イエイエ」のムーブメントは、前時代のフランスのクラシック音楽の流れを汲んでおり、オーケストラとポップネスの融合というのが重要な主題でもあった。それにジャズの要素を加え、独自のポピュラー音楽という形に昇華していたのだった。

 

『Anat』はクラシック音楽やワールドミュージックからの影響を基に、親しみやすく、聴きごたえのあるポピュラー・ソングによって構成されている。このアルバムは基本的に、バンド構成で録音され、ドラム、ギター、ストリングス、管楽器、エレクトロニクス等を取り入れている。

 

オープナー「Jamie」は、アコースティックギターの多重録音で始まり、シンプルかつ美しい調和を作り上げた後、60年代の古典的なバロックポップの影響下にある温和な音楽性を展開させている。一見して、簡素な旋律やスケールを描くように聴こえるが、複数の楽器のアンサンブルを通じて、ビートルズに近い美麗なポップスが作り上げられる。基本的な音楽性にオルタネイトな影響を与えているのが、彼女がよく聴くという”Mild High Club”のようなネオサイケロックバンドからのフィードバックである。これはメインストリームの音楽に、ノスタルジアとディレッタンティズムを添える。歌唱法についても囁くような語りのニュアンスからスキャット、明確なボーカルに至るまで、幅広い形式が繰り広げられる。何より、バロックポップ/チェンバーポップの規則的なビートに乗せられる穏やかな旋律進行は、うっとりさせるものがある。 

 

 

 

アナト・モシュコフスキーの音楽は、ビートルズやセルジュ・ゲンスブールといった60年代、70年代の音楽のフィードバックをありありと感じさせる。「If We Fail」ではボサ・ノヴァのリズムをシンセとドラムでユニゾンで刻みながら心地よいビートを作り上げ、そしてラテン音楽とジャズの融合をポピュラーの文脈と結びつける。それほど音の要素は多くはないものの、核心を捉えたグルーヴがモシュコフスキーの温かい印象を持つボサ風のボーカルと上手く合致している。

 

リズムやセクションの合間に導入されるクラリネット/オーボエの音色がアフロ・ジャズ/ラテン・ジャズ風のしなやかな旋律性を付与し、色彩的な印象を添える。更に、シンセのトロピカルやラヴァーズロック風のアレンジ、そして部分的にアートポップの範疇にあるボーカルのリサンプリングなどを配して、それほど派手ではないものの良質なポップソングを作り上げている。この曲では、ポピュラーの基本的な要素であるスケール(コード)と旋律、そしてリズムという3つの構成要素をバランスよく見定め、心地よく安らげるような音楽を作り上げている。

 

映画/演劇の場面の中で演出的な効果で用いられるようなポピュラー音楽の手法は、続く「Lightnings」に見いだせる。アコースティックギター、バイオリン/ヴィオラのピチカートで穏やかな和音を作り、クラリネット等の管楽器、弦楽器のスタッカート、レガートを対旋律的に交えながら、ピクチャレスクなイメージを持つ美麗な音楽を構築していく。アナト・モシュコフスキーは、それらの背景となるオーケストラの演奏に仄かな哀愁を添えている。また、水の流れのように澱みのない弦楽器のトレモロ/レガートのハーモニクスが、アウトロにおいて美しいシークエンスを作り上げる。簡素なバレエのムーブメントに近い一曲で、中盤から終盤にかけて、息を飲むような美しい瞬間が用意されている。この曲は、イゴール・ストラヴィンスキーのバレエ曲『Pulcinella (プルチネルラ)』のポピュラー・バージョンとも言えるかもしれない。

 

アルバムは冒頭だけ聴くと、一般的なポピュラーアルバムに聴こえるかもしれない。しかし、本当に面白いのは、中盤から終盤にかけての収録曲であり、セルジュ・ゲンスブールのようなアートポップ性とオルトロックが融合する箇所にある。


「Teddy Bears」は、レディオヘッドの『OK Computer』のエレクトロニックを融合させた近未来のオルタナティブロックやトリップ・ホップなどのヒップホップとエレクトロニックの融合をベースにし、モシュコフスキーは自身の淡々としたボーカルを通じて、唯一無二のワンダーランドを作り上げる。特に、クラシック音楽の作曲技法であるゼクエンス進行(同じ音形を別の調に組み替えること)を用い、巧みなソングライティングを披露し、調性を徐々に展開させながら(長調を単調に組み替えることもある)、楽曲の印象をかわるがわる変化させていく。これは特に、幼少期から培われた音感の良さとクラシック音楽の構成からの影響が色濃く滲み出ている。

 

続く「On a Tout Fait」はアコースティックギターの繊細なアルペジオの弾き語りで、聴きやすいバラード曲を提供している。具体的にイスラエルでどういった曲が流行っているのかは不明ではあるものの、フォーク・ソングをベースにしたこの曲では、ファンタジックなイメージを基にして、現代的なフォークソングを組み上げ、コーラスワークを通じて、音楽的な奥行きを表現している。終盤では、アートポップの要素が強まり、そしてフレンチ・ポップの要素と結び付けられる。「Obscure Clarte」では、エレクトロニックピアノの演奏とストリングスをかけあわせ、オルタナティヴの側面を強調している。セルジュ・ゲンスブールの系譜にある一曲である。

 

アルバムのクローズ「Encore」は、鳥の声のサンプリングで始まり、その後、ベス・ギボンズの系譜にあるアートポップ・ソングに直結している。しかし、明確にポスト・ギボンズかといえばそうとも言い難く、依然としてフレンチポップ、イエイエからの影響が色濃いように思える。更にクライマックスでは、シネマティック・ポップの主題のような音楽性が示唆されている。スパニッシュのフラメンコ・ギターとオーケストラ・ストリングスの融合が、フランスの商業音楽はもちろん、スペイン音楽の気風を醸し出し、哀感と共に情熱的な音楽性を演出している。

 




Anat Moshkovskiによるニューアルバム『Anat』は本日、Nana Discより発売。アルバムのストリーミングはこちら

 

 

「Encore」



*記事掲載時にアーティスト名の表記に誤りがございました。訂正とお詫び申し上げます。

 

Saint Etienne(セイント・エティエンヌ)が12月12日にヘブンリー・レコーディングスからリリースする12枚目のアルバム『The Night』を発表した。

 

バンドは1990年に結成され、サラ・クラックネル、ボブ・スタンリー、ビート・ウィッグスからなる。バンド名はフランスのサッカークラブ、ASサンテティエンヌに由来する。



日本では、1993年にNOKKOのアルバム『CALL ME NIGHTLIFE』『I Will Catch U.』に楽曲を提供している。NOKKOとのレコーディングではロンドンにある自宅スタジオに招いており、これは当時界隈で増えてきていたベッドルーム・レコーディングという手法だが、その点で先をいっていたアーティストだったとNOKKOがインタビューで振り返っている。

 

2021年に発表された『Great I've Been Trying to Tell You』は、YouTubeにアップされている90年代の曲をスロー再生して作られたリミナル・ミュージックからヒントを得ているが、『The Night』は夜明け前の静謐な世界をイメージしている。サラ・クラックネル、ボブ・スタンリー、ピート・ウィッグスは、2024年前半に作曲家兼プロデューサーのオーガスティン・ブスフィールドとこのアルバムを制作した。


「ブラッドフォードにあるガスのスタジオで、カーペットの上に寝転がって、コーヒーのマグカップを片手に、歌詞のシートやタイトルのアイデアを半分ずつ出しながら、そんなことをするのは数年ぶりだった。「前作のメロウでスペイシーなムードを引き継ぎたかったし、おそらくそれをさらに倍増させたかった。

歌、ムード、話し言葉の断片が、雨が降りしきる外を漂ったり消えたりする。暗闇の中で、あるいは目を閉じて聴きたいレコードだ。Half Light』は、夜の果て、木々の枝の間からちらつく太陽の最後の光、自然との交感、そしてそこにないかもしれないものを見ることについて歌っている。


「私たちは、起きているときと眠っているときの間にある状態を見つけようとしていたんだ」とボブは言う。「夢の空間には、半分忘れてしまったような考えや、テレビの台詞の断片、地名、通り、行ったこともないサッカー場などが漂ってくる。そのような状態にあるときは、音や半分覆い隠された記憶に対してとても受容的に感じる。レインノイズはその中を通り抜ける。夜中の2時に眠れないような頭の中のものを優しく洗い流してくれるように設計されている。『ザ・ナイト』のサウンドは実に立体的だと思う。その多くは、ギターを弾き、素晴らしいプロデュースをしてくれたガス・バスフィールドのおかげだ。彼のスタジオでレコーディングしたことで、とても明るく広々とした空間が生まれ、それがこの作品を形作っている。私たち3人はそれぞれの曲を持ち寄ったけど、まず音符を交換することなく、叙情的な曲はお互いに調和していた」



「Half Light」

 

 

Saint Etienne 『The Night』


Label: Hevenly Recordings

Release: 2024年12月12日 


Tracklist:

1. Settle In

2. Half Light

3. Through The Glass

4. Nightingale

5. Northern Counties East

6. Ellar Carr

7. When You Were Young

8. No Rush

9. Gold

10. Celestial

11. Preflyte

12. Wonderlight

13. Hear My Heart

14. Alone Together

Our Girl 『The Good Kind』


 

Label: Bella Union

Release : 2024年11月8日

 

 

Review

 

『The Good Kind』は派手さがないからといって素通りすると、ちょっともったいない作品である。最新のオルトロックバンドは、全般的に音楽のイメージの派手さがフィーチャーされることが多いが、実際的には、堅実で素朴なロック・バンドの方が長期にわたって活躍するケースがある。

 

ロンドンのOur Girl(アワー・ガール)は、爆発的なヒットこそ期待出来ないかもしれないけれど、渋く長く活躍してくれそうなバンドだ。アワー・ガールのオルトロックのスタイルは、90年代から00年代のカレッジ・ロックの系譜に属している。ソリッドさとマイルドさを兼ね備えたギター、ライブセッションの醍醐味を重視したベース、曲のイメージを掻き立てるシンプルなドラムによって構成されている。取り立てて、新しい音楽ではないかもしれない。しかし、こういった普遍的なオルトロックアルバムを聴くと、なんだかホッとしてしまうことがある。

 

 

アワー・ガールは、最初にレコーディングスタジオに入ってセッションを行った後、少し曲を作り込み過ぎたと感じたという。以降、一度曲を組み直した後、友人の自宅のレコーディングスタジオに入った。その結果、ラフだけど、親しみやすいオルトロックが作り上げられることになった。 結局、このアルバムを聴くと、オルトロックというのは、マジョリティのための音楽ではなく、マイノリティのための音楽なのかもしれない。つまり、音楽自体がマジョリティに属した瞬間、本義のようなものを見失う。バンドは、この作品で、セクシャリティ、リレーションシップ、コミュニティ、イルネスといった表向きには触れにくい主題を探求しているという。

 

それらのどれもが日常生活では解きほぐがたい難題であるため、音楽で表現する必要性がある。実際的に、バンドのメンバーがクイアネス等の副次的なテーマを織り交ぜながら、どの地点までたどり着いたかは定かではない。しかし、何かを探求しようとする姿勢が良質なロックソングとして昇華されたことは明らかである。たとえ、すべてが解き明かされなかったとしても。

 

バンドが曲を組み直したということは、レコーディングの趣向に、ライブセッションのリアルな質感を付け加えたことを示唆している。それは卓越性や完璧主義ではなく、程よく気の抜けた感じの音楽に縁取られている。アルバムでは、Guided By Voices、Throwing Musesといった90年代ごろのオルトロックのテーマ、アート・ポップやシューゲイズ風のギターの音色が顕著に表れている。

 

アルバムのオープナー「I'll Be Fine」では、心地よくセンチメンタルなアンサンブルがライヴセッションのような形で繰り広げられる。複数のギターの録音を組み合わせて、エモな響きを生み出し、ストレリングスのアレンジを添えて叙情的な響きを生み出す。音楽性は抑えめであり、派手さとは無縁であるが、良質なオルトロックソングだ。さらに、このバンドがコクトー・ツインズの音楽性を受け継いでいることは、続く「What You Made」を聴くと明らかである。彼らはJAPANやカルチャー・クラブのようなニューロマンティックの要素を受け継いでいる。それはノスタルジアをもたらすと同時に、意外にもフレッシュな印象を及ぼすこともある。

 

アワー・ガールは、比較的、現実的なテーマを探っているが、アルバムの音楽はそれとは対象的に夢想的な雰囲気に縁取られている。ギターロックによって色彩的なタペストリーを描き、それを透かして、理想的な概念に手をのばすような不思議な感覚でもある。「What Do You Love」は淡々とした曲にも思えるが、ダイナミクスの変化が瞬間的に現れることもある。ダイナミックスの変化はボーカルとギターのコントラストによって生じる。Wednesday、Ratboysといったオルトロックの気鋭の音楽性に準ずるかのように、絶妙なアンサンブルを発生させることがわる。そして、それは、まったりとした音楽性とは対象的なギターのクランチな響きに求められる。彼らの優しげな感覚を縁取った「The Good Kind」は、むしろこのバンドがロックにとどまらず、Future Islandsのようなオルトポップバンドのような潜在的な魅力を持つことを表す。

 

ギターロックとしても聴かせどころが用意されている。「Something About Me Being A Woman」は、現代的な若者としてのセクシャリティを暗示しているが、幽玄なギターのデザインのような音色によって抽象的な感覚が少しずつ広がりをましていく。ゆったりしたテンポの曲であるけれど、ドリームポップ風のアプローチは、音楽の懐深さと味わい深さを併せ持っている。特に、バンドアンサンブルを通じて最も感情性が顕著になる3分以降の曲展開に注目したいところ。中盤から終盤にかけては、BPMを意図的に落とした曲が続いている。続く「Relief」、「Unlike」は、現代的な気忙しいポップソングの渦中にあり、安らぎと癒やしを感じさせる。微細な音を敷き詰めるのではなく、休符に空間や空白を作りながら、夢想的な音楽世界を生み出す。

 

オルト・ロック、ドリーム・ポップに依拠した音楽性が目立つ中、続く「Something Exciting」は、かなり異色の一曲だ。この曲では、ヴィンセントの最初期のシンセポップ、グリッターロックの手法を選び、スタイリッシュさとユニークさを併せ持つ楽曲に仕上げている。むしろ、基本的な上記の二つの音楽性よりも、この曲に見受けられるようなオリジナリティに大きな期待を感じる。そして、少しシリアスになりがちな作風に、ユニークなイメージをもたらしている。 

 

アルバムの終盤にもしっかり聴かせる曲があり、アワー・ガールの音楽の深さを体感できる。「I Don't Mind」のような曲は、コクトー・ツインズやスローイング・ミュージズの未来形とも言え、また、ドリーム・ポップの知られざる一面を示したとも言えるかもしれない。続く「Sisiter」は、DIIV、Real Estateの最初期に代表される2010年代のインディーロックのスタイルを受け継ぎ、ネオシューゲイズ/ポストシューゲイズの軽めのポップネスに転じる。クローズを飾る「Absences」では、AOR/ソフィスティ・ポップへと転じ、未知の領域へと差し掛かる。


 

 

80/100

 

 

 

 Best Track-「Something Exciting」

 

The Raincoats(レインコーツ)のベーシスト、Gina Birch(ジーナ・バーチ)が、オノ・ヨーコの「Listen, the Snow Is Falling」をアレンジした。2023年のデビューアルバム『I Play My Bass Loud』以来のリリースとなる。


オノ・ヨーコによって書かれ、プラスティック・オノ・バンドと共にレコーディングされたこの曲は、元々はジョン・レノンの1971年のシングル「Happy Xmas (War is Over)」のB面に収録されていました。このカバーについてバーチはこう語っています。


「2023年、テート・モダンで素晴らしいオノ・ヨーコのショーが開催されていた時、私はテート・ブリテンでギグを演奏した。それで、8月だったにもかかわらず、マリー・メレとジェニー・グリーンと私で『Listen, the Snow is Falling』を演奏した。

 

 私は、テート誌にオノ・ヨーコについて何か書くように依頼されていたし、最近、ギャラリー46で開催した「Goddesses and Inspirations(女神とインスピレーション)」展のためにオノ・ヨーコの肖像画を描いたばかりだった。 

 

 結果、私の頭の中では、彼女と特別なつながりを感じていた。この曲を選んだのは、心に残る美しい曲で、B面としてリリースされたからだ。B面が嫌いな人はあんまりいないでしょう?

 

 バンドメイトのマリー・メレは、この曲をクリスマス・シングルとしてレコーディングすることを思いついた。今までクリスマス・シングルなんて作ったことがなかったし、ふさわしいと思った。私の地下室で、3人でアイデアを出し合いながらレコーディングした。マリーがミックスし、デトロイトのサード・マン・マスタリングでウォーレン・ディフィーヴァーがマスタリングした」

 


「Listen, the Snow Is Falling」

 

©Miriam Marlene


Sasamiが次作アルバム『Blood On The Silver Screen』の新曲「Just Be Friends」を発表した。このシングルは、前作「Honeycrash」と「Slugger」に作品です。以下よりチェックしてみよう。


「"Just Be Friends "は、私の最初の2枚のアルバムのテーマ/ムードを引き継いだ、本当に成長した曲のように感じます。ファースト・アルバムのような意識の流れや感情的な作詞スタイルに戻り、スクイーズにあったカントリーの波に乗り続けた。カントリー・ソングはしばしばストーリーを語るのが好きなんだ。憧れ、余韻、孤独、欲望。この曲をライブで演奏するときは、いつも観客の中の "悲しくてムラムラしている "人に捧げたい」


Sasamiのニューアルバム『ブラッド・オン・ザ・シルヴァー・スクリーン』はドミノから3月7日に発売予定。

 

 

「Just Be Friends」




◾️リリース情報

SASAMI、ニューアルバム『BLOOD ON THE SILVER SCREEN』を発表 来年3月7日にリリース 先行シングル「SLUGGER」が配信

 

Prima Queen


ロンドンのPrima Queen(ルイーズ・マクファイルとクリスティン・マクファーデンアナウンスによるデュオ)が、デビューアルバム『The Prize』を発表しました。サブマリン・キャット・レコーズから4月25日にリリースされます。同時に彼らはリードシングル「Ugly」を発表しました。

 
「Uglyは、現実世界でお祭りのロマンスを維持しようとすることについて歌っています。この曲は、力関係が不安定なシチュエーションでの恋愛が終わり、何度も失望させられた後、自分が望んでいたようなものには決してならないと痛切に受け入れるようになった後に書かれた」 とバンドは声明で説明しています。

 
「私たちは、ついにアルバムを世に送り出すことができることに興奮しています!"と彼らは付け加えた。「私たちは長い間このアルバムに取り組んできたし、別々に、そして一緒に、私たちの成長の本当の声明のように感じている。このアルバムは、ここしばらくの間、私たちの小さな秘密だった」

「Ugly」



Prima Queen 『The Prize』

Label: Submarine Cat 

Release: 2025年4月25日


 

©David William Baum

セント・ヴィンセントは、『All Born Screaming』をスペイン語でリメイクした『Todos Nacen Gritando』からの最新シングル「El Mero Cero」を公開した。原曲よりもパンチの効いたダンスロックソングとなっている。アニー・クラークは、オリヴィア・ロドリゴやニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズとの公演を含む、2025年の新しいツアースケジュールも発表した。


スペイン語のアルバム『Todos Nacen Gritando』は今週金曜日、11月15日にリリースされる。

 


「El Mero Cero」