Yoshika Colwell・The Varnon Spring  『This Weather(E.P)』

 

Label: Blue Flowers Music

Release: 2024年12月6日



Review  エクペリメンタルポップのもう一つの可能性 

 

ロンドンをベースに活動するYoshika Colwell(ヨシカ・コールウェル)の新作『This Weather』はThe Vernon Spring(ヴァーノン・スプリング)が参加していることからも分かる通り、ピアノやエレクトロニクスを含めたコラージュ・サウンドが最大の魅力である。単発のシングルの延長線上にある全4曲というコンパクトな構成でありながら、センス抜群のポップソングを聴くことが出来る。

 

ヨシカ・コールウェルは、イギリスの伝統的なフォークサウンドから影響を受けており、同時にジョニ・ミッチェルに対するリスペクトを捧げている。例えば、ミッチェルの1971年の名作『Blue』のようなコンテンポラリーフォークの風味を今作に求めるのはお角違いと言える。しかしながら1970年代の西海岸の象徴的な音楽性、ジャズシーンでも高い評価を受けた名歌手の影響をコールウェルのボーカルに見出したとしても、それは気のせいではない(と思う)。


それに加えて、ポスト・クラシカルともエレクトロニックとも異なるヴァーノン・スプリングの制作への参加は、このささやかなミニアルバムにコラージュサウンドの妙味を与えている。Bon Iver以降の編集的なポップスであるが、その基底には北欧のフォークトロニカからのフィードバックも捉えられるに違いあるまい。また、感の鋭いリスナーはLaura  Marling(ローラ・マーリング)のソングライティング、最新作『Patterns In Repeat』との共通点も発見するかもしれない。


EPの収録曲に顕著なのは、エレクトロニカとフォークトロニカのハイブリッドであるフォークトロニカをポップネスとして落とし込むという点である。オープニングを飾る「No Ideology」を聴くと分かる通り、グロッケンシュピール等のオーケストラの打楽器をサンプリング的に配し、ジャズ的な遊び心のあるピアノの短い録音をいくつも重ね合わせ、コラージュサウンドを組み上げていく。聴いているだけで心が和みそうなサウンドの融和は、コンテンポラリーフォークを吸収したヨシカ・コールウェルのボーカルと巧みに折り合っている。現代的な「ポップスの抽象化」(旋律や和音、そして全般的な楽曲の構成の側面に共通している)という観点を踏まえ、自然味に溢れ、和らいだポピュラーワールドが構築されていく。そして、ピアノの演奏の複数の録音やグロッケンシュピールの音色が、アンビバレント(抽象的)なボーカルと重なりあうとき、曲のイントロからは想像だにしないような神秘的なサウンドが生み出される。ここには構築美というべきか、音を丹念に積み上げることによって、アンビエント風のポップスが完成していく。この曲は近年の実験的なポップスの一つの完成形でもあるだろう。



ヴァーノン・スプリングのエレクトロニカ風のサウンドは次の曲に力強く反映されている。「Give Me Something」は前の曲に比べると、ダンサンブルなビートが強調されている。つまり、チャーチズのようなサウンドとIDMを融合させたポピュラー・ミュージックである。この曲ではイギリスのフォーク・ミュージックからの影響を基にして、エレクトロニカとしてのコラージュ・サウンドに挑んでいる。Rolandなどの機材から抽出したような分厚いビートが表面的なフォークサウンドと鋭い対比を描きながら、一曲目と同じように、グロッケンシュピール、ボーカルの断片が所狭しと曲の中を動き回るという、かなり遊び心に富んだサウンドを楽しめる。また、サウンドには民族音楽からのフィードバックもあり、電子機器で出力されるタブラの癒やしに満ちた音色がアンビバレントなサウンドからぼんやり立ち上ってくる。色彩的なサウンドというのは語弊があるかもしれないが、多彩なジャンルを内包させたサウンドは新鮮味にあふれている。ボーカルも魅力的であり、主張性を控えた和らいだ印象を付与している。

 

「Your Mother’s Birthday」はローラ・マーリングとの共通点が見いだせる。クラシックを基にしたピアノ、そしてエレクトロニカを踏襲したシンセ、そしてボーカルが見事に融合し、上品さにあふれる美しい音像が組み上げられていく。結局のところ、この曲を聞くかぎり、2020年代の音楽においては、北欧のエレクトロニカもポスト・クラシカルも旧来のフォークやポップスと影響を互いに及ぼしながら、新しいポップスの形として組み込まれつつあるのを実感せざるを得ない。こういったサウンドは、今後、主流のポピュラーの重要な基盤を担う可能性もありそうだ。そして楽曲は、旋律の側面においても、構成的な側面においても、緩やかな波を描きながら、曲の後半では、ドラマティックな瞬間を迎え、そしてアウトロにかけてクールダウンしていく。この曲には、即効性や瞬間性とは異なるオルトポップの醍醐味が提示されている。

 

EPのクローズも個性的なサウンドを楽しめる。この曲は、EDMとネオソウルのハイブリッドサウンドをイントロで強調した後、意外な展開を辿る。エレクトリック・ピアノを背景の伴奏として、ドラマティックなポピュラーミュージックへ転変していく。一曲目と同じように、最初のモチーフは長い時間を反映しているかのように少しずつ形を変え、植物がすくすくと葉を伸ばし成長していくように、ダイナミックでドラマティックな変遷を辿る。いわば最初のモチーフから曲が成長したり、膨らんでいくようなイメージがある。つまり、制作者のイマジネーションによって、民族音楽の打楽器をボーカルの背景に配し、エキゾチックなサウンドを強調させるのである。最終的には種にすぎないモチーフが花開くような神秘的な瞬間は圧巻と言える。


エクスペリメンタルポップは、近年においては、電子音楽やメタルのような音楽を吸収し、次世代のサウンドへ成長していったが、いまだクロスオーバーの余地が残されていることに意外性を覚える。もしかすると、クラシック/民族音楽/ジャズというのが今後の重要なファクターとなりそうだ。

 

 

82/100

 

 

 Album Of The Year 2024  



 

Vol.1  音楽のクロスオーバーの多彩化 それぞれの年代からの影響

 

2024年も終わりに近づいてきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今年の素晴らしいアルバムが数多く発売されました。本サイトではオルタネイトなアルバムリストを年度末にご紹介しています。


2024年の音楽を聴いていて顕著だったのが、音楽のクロスオーバー、ハイブリッド化に拍車が掛かったという点でした。現在、かけ離れた地域の音楽を聴くことがたやすくなり、音楽に多彩なジャンルを盛り込むことが一般的になりつつある。そういった中、より鮮明となる点があるとすれば、シンガーソングライター、バンドの音楽的な背景が顕在化しつつあるということでしょう。人々が従来よりも多くの音楽を吸収する中、その人しか持ち得ないスペシャリティが浮かび上がってくる時、その音楽が最も輝かしい印象を放ち、聞き手を魅了するわけなのです。

 

もうひとつ印象深い点は、ミュージシャンが影響を受けたと思われる音楽の年代がかなり幅広くなったことでしょう。2010年代の直近の商業音楽を基本にしているものもあれば、60、70年代のクラシカルな音楽を参考に、それらを現代的な質感のある音楽へと昇華したのもある。さらに、未来を行く音楽もあれば、過去に戻る懐古的な音楽もある。いよいよ音楽文化は幅広さを増し、限定的な答えを出すことが困難になりつつある。こういった状況下において、輝かしい印象のある音楽は、各人が流行に左右されず、好きなものを徹底して追求した作品でした。

 

今回、50のセレクションを3つの記事に分割して公開します。いつもはリリース順に掲載しますが、今回はベストアルバムが上半期に集中しているため、分散的にアルバムをご紹介しています。大まかな選出の方向性といたしましては、30プラス20という感じでチョイスしています。ぜひ下記のベスト・アルバムのリストを参考にしながら、お楽しみいただけると幸いです。

 


 

1. Neilah Hunter  『Lovegaze』 


Label: Fat Possum

Release: 2024年1月12日



ロサンゼルスをベースに活動するマルチ奏者/ボーカリスト、Neilah Hunter(ネイラ・ハンター)。二作のEPのリリースに続いて、デビューアルバム『Lovegaze』をFat Possumからリリースしました。

 

多彩な才能を持つネイラ・ハンターの音楽的なキャリアは、教会の聖歌隊で歌い、ドラム、ギターを演奏し、その後、カルフォルニア芸術大学でギターを専攻したことから始まっています。さらに、ヴォーカルパフォーマンスを学んだ後、ハープのレッスンを受けました。本作は、イギリスのドーヴァー海峡に近い港湾都市に移り住み、借り受けたケルト・ハープを使用して制作を開始しました。その後、作曲にのめり込むようになりました。

 

マルチ奏者としての演奏力はもちろん、ボーカリストとしても抜群の才覚を感じてもらえるはずです。デビューアルバムは、録音場所の気風が色濃く反映されており、 ネオソウルやトリップ・ホップのテイストが全編に漂います。さらに、ミステリアスで妖艶な雰囲気が作品全体を取り巻いている。そのイメージをボーカルやハープの演奏が上手く引き立てています。

 

ネイラ・ハンターは、このアルバムについて次のように回想しています。 「Lovegazeを書いている間、私は人類が愛するものを破壊する性質について考えていた。古代の遺跡や、かつてはシェルターだったけれど、今はもうない建造物について考えていた。廃墟の中にも美しさがある」

 



Best Track 「Finding Mirrors」




2.Torres 『What An Enormous Room』


Label: Merge

Release: 2024年1月26日


マッケンジー・スコットは、現在、祖父の姓にちなんで”TORRES”としてレコーディングとパフォーマンスを行う。ジョージア州メーコンで育ち、現在はニューヨークのイースト・ヴィレッジ在住。

 

Merge Recordsから発売された『What an huge room』は、2022年9月と10月にノースカロライナ州ダーラムのスタジアム・ハイツ・サウンドでレコーディングされました。エンジニアはライアン・ピケット、プロデュースはマッケンジー・スコットとサラ・ジャッフェ、ミックスはイギリスのブリストルでTJ・アレン、マスタリングはニューヨークのヘバ・カドリーが担当しています。


元はロックギタリストとして活動していたトーレスだったが、この6作目において、ポピュラーシンガーへの転身を果たしています。AOR等の80年代のポップスから現代的なSt.Vincentの系譜に属するシンセ・ポップの系譜を的確に捉え、さらにボーカルとスポークンワードを融合しています。もちろん、従来のギタリストとしての演奏も組み込まれているのは周知の通り。最近、トーレスはジュリアン・ベイカーと一緒にテレビ出演し、共同でシングルを発表しました。

 

 

Best Track 「Jerk Into Joy」

 

 

 3. IDLES  『TANGK』-  Album of The Year




Label: Partisan 

Release: 2024年2月16日

 

ブリストルのポストパンクバンド、IDLESは英国内のロックシーンのトップに上り詰めようとしています。すでに今作で2025年度のグラミー賞にノミネートされています。音楽は日に日に進化している中で、アイルドルズは最も刺激的なアプローチを図っています。これはグラストンベリー・フェスティバル等の出演でお馴染みのアイドルズ。しかし、たしかに彼らのサウンドは、ダンスミュージック、ディスコサウンド、ドラムンベース等を吸収させ、進化し続けています。

 

しかし、音楽性こそ変われど、その核心となる主張に変わりはありません。2021年から暗い世に明るさと勇気をもたらしました。『Tangk』においては、普遍的な愛とはなにかを説いています。ポストパンクの鋭利的な側面を強調させた「Gift House」、「Hall & Oates」ではリスナーの魂を鼓舞したかと思えば、「POP POP POP」ではダンス・ミュージックを絡め、ギターロックの進化系を示唆しています。

 

しかし、彼らがより偉大なロックバンドとしての道を歩み始めたことは、「Grace」を聞けば明らかとなるかも。この曲のミュージックビデオではコールドプレイのMVを模している。ぜひ、伝説的なミュージックビデオのエンディングを見逃さないでくださいね。

 

 

Best Track- 「Grace」 (Music Video Of The Year)

 

 

 

 

4.Green Day 『Saviors』


Label: Reprise

Release: 2024年1月19日

 

近年、『Dookie』、『Nimrod』等のリイシューを中心に、再版が多かった印象なので、「しばらく新作は期待出来ないと思った矢先、リプライズからカルフォルニアパンクの大御所のリリースが発表されました。

 

ビリー・ジョーのカバーを中心としたソロ・アルバム『No Fun Mondays』はその限りではなかった思いますが、どうやらこのアルバムは、一部分ではフラストレーションを基に制作されたというのは、曲がりなりにも事実なのかも知れません。

 

しかし、そういった背景となる信条は、アルバムを聴くとどうでもよくなるかも知れません。グリーン・デイは、『Dookie』時代から培われたポップパンクというのは、どういうものだったのかを、本作のハイライト曲で明らかにしています。 また、全般的にはパンクロックというジャンルにこだわらず、ミュージカル的なロック、ロック・オペラのような音楽性も追求しています。

 

また、本作は、部分的にはグリーン・デイのルーツとなる80年代の西海岸のロックにも親和性があることを指摘しておきたい。少なくとも、90年代の全盛期に匹敵するアルバムとは言えないかもしれませんが、パンクバンドとしての威信は十分に示したのではないでしょうか。「Strange Days Are Here To Say」は「Basket Case」とほぼ同じコード進行で調性が異なるだけ。それでも、これほどシンプルなスリーコードで親しみやすい曲を書くパンクバンドは他の存在しない。思い出すというより、ポップパンクを次の世代へと引き継ぐようなアルバムとなっています。また、グリーン・デイらしいジョークやユニークも感じることもできるでしょう。


今年は、Sum 41、Offspringの新作も発売され、NOFXの解散もあり、パンクシーンは慌ただしい一年でした。本作の最初のレビューでも言ったように、米国のパンクシーンは一つの節目を迎えつつあるようですね。

 

 

 「Strange Days Are Here To Say」

 

 

 

5. The Smile 『Wall Of Eyes』

 



Label: XL Recordings

Release:  2024年1月26日


トム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッド、トム・スキナーによるザ・スマイルの二作目のアルバム『Wall Of Eyes』。全英チャート3位を記録。海外のメディアには一般的に好評だったというのですが、一部には辛辣な評価を与えたところも。恒例のコラボレーションとなっているロンドン・コンテンポラリーとの共同制作で、由緒あるアビーロード・スタジオで録音された作品です。


アルバム全体としては、タイトルに違わず、ジョン・スペクターの『ウォール・オブ・サウンド』を追求した作品となっています。少し凝りすぎている印象もありますが、「Friend of A Friend」、「Bending Hectic」といった名曲が揃っている。デビュー・アルバムでは、レディオヘッドの延長線上にあるプロジェクトではないかと考えていた人も多かったかもしれませんが、ザ・スマイルは、レディオ・ヘッドからどれだけ遠ざかれるのかという挑戦でもある。

 

このあたりは、前のバンドでやることは全部やったという感触が、三人のミュージシャンを次のステップへと進ませたといえるでしょう。全般的なソングライティングはヨーク/グリーンウッドが中心となっていますが、アンサンブルの鍵を握るのはサンズ・オブ・ケメットの活動なのアヴァンジャズシーンで活躍してきたドラムのトム・スキナー。彼らは、これまでの音楽体験では得られなかった未知の領域へと歩みを進み始めているのかも知れません。同じレコーディングから生み出された「Cut Out』は、ダンスミュージック寄りのXLらしいアルバムです。




Best Track- 「Friend of A Friend」

 

 

6.Adrianne Lenker 『Bright Future』

 



Label: 4AD

Release: 2024年3月22日


今年の4ADの最高傑作の一つ。ビック・シーフのボーカリストとしても知られるアドリアン・レンカーによる最新アルバム『Bright Future』はアメリカーナの純粋な響きに縁取られています。従来からソロアーティストとしてフォーク/カントリーの形式を洗練させてきたシンガー/ギタリストがこのような普遍的な音楽を制作したことは、それほど驚きではないかもしれません。


録音場所が作品に影響を与える場合がありますが、「Bright Future」は好例となるに違いありません。2022年の秋、ビック・シーフのツアースケジュールを縫い、森に隠されたダブル・インフィニティというアナログスタジオでメンバーは再会しました。その他、ハキム、デイヴィッドソン、ランスティールといったミュージシャンが共同制作に参加。この三人はそれまで面識を持たなかったという。

 

ゴスペル風のソング「Real House」、普遍的なフォーク/カントリーソング「Free Treature」など良曲に事欠きませんが、エレクトロニックとフォークの劇的な融合「Fool」にレンカーさんの良さが表れています。ミュージック・ビデオも80年代の4ADのカラーが押し出され、ほど良い雰囲気を醸し出しています。自然の魅力を忘れがちな現代人にとって、このアルバムは大きな癒やしをもたらすに違いありません。「Ruined」も素晴らしいバラード曲です。

 

 

Best Track-「Fool」

 

 

 

 7.Leyla McCalla 『Sun Without The Heat』




Label: Anti

Release:2024年4月12日

 

レイラ・マッカラは、南国の雰囲気を持つトロピカルなアルバムをAntiからリリースしました。アフロ・ビート、エチオピアン、ブラジルのトロピカル、ブルース、ジャズ等の範疇にある音楽が展開され、他にもラテン音楽のアグレッシヴなリズムを吸収し、ユニークな音楽性を確立しています。ワールド・ミュージックの多彩な魅力を体験するのに最適な作品となっています。

 

ニューヨーク出身のレイラ・マッカラは、チェロ、バンジョー、ギターの演奏者でもあり、また、マルチバイリンガルでもあるという。さらに、グラミー賞に輝いたブラック・ストリングス・バンド、Carloirina Chocolate Dropsに在籍していたこともある。


このアルバムでレイラ・マッカラは音楽的なジャーナリズムの精神を発揮している。『Sun Without The Heat』は、ダンス、演劇等を通して繰り広げられるコンパニオンアルバムです。命がけでハイチのクレヨル語のニュースを報道したあるジャーナリストの物語でもある。

 

世界各国で少数言語が増加傾向にある中で、ある地域の文化の魅力を受け継ぎ、それを何らかの形で伝えていくという行為は大いに称賛されて然るべき。ジャズ/ブルーステイストを持つ渋い曲が多いですが、オルタナティヴロックのギターをワールドミュージックと融合させた「So I'll Go」、海辺のフォークミュージックとして気持ちをやわらげる「Sun Without The Heat」、終曲を飾る「I Want To Believe」も素晴らしい。海を越えて響くような慈しみに溢れています。アルバムのアートワークもピカソのようにおしゃれ。部屋に飾っておきたいですね。

 


 「Sun Without The Heat」 -Golborne Road, London 

 

 

 

 8.Sainté 『Still Local』



Label: YSM Sound.

Release: 2024年3月29日


レスターのヒップホップアーティスト、サンテは今年三作目のアルバム『Still Local』をリリースした。UKヒップホップシーンの期待の若手シンガーである。どうやら、サンテは、Tyler The Creator、Jay-Zのヒップホップに薫陶を受けた。このアルバムでは、レスターのローカルな魅力にスポットライトを当てています。あらためて聴くと、良いアルバムで、ドラムンベースやフューチャーベースやUKドリルに触発を受けたポピュラーなヒップホップが展開されています。


アルバムではメロウなネオソウルの影響を絡めた良曲が目立つ。また、アルバムのアートワークに表れ出ているように、カーマニアとしての表情が音楽性には伺え、ドライブにも最適なヒップホップトラックが満載です。また、フューチャーベースを絡めた秀逸なトラックは、このジャンルの近未来を予見したものと言える。タイトル曲を筆頭に、サンテの地元愛に充ちたアルバム。

 

 

「Tea Like Henny」

 

 

 

9.Maggie Rogers  『Don’t Forget Me』


 


Label: Capital

Release: 2024年4月12日


 

グラミー賞にノミネート経験のあるマギー・ロジャースは最新作『Don' t Forget Me』でシンガーソングライターとしてより深みのあるポピュラーアルバムを制作していました。

 

「このアルバムの制作は、どの段階でもとても楽しかった。曲の中にそれが表れていると思う。それが、このアルバム制作を成功させるための重要な要素なんだ」「アルバムに収録されているストーリーのいくつかは私自身のもの。大学時代の思い出や、18歳、22歳、28歳(現在29歳)の頃の詳細が垣間見える。アルバムを順次書いていくうちに、ある時点でキャラクターが浮かび上がってきました」「アメリカ南部と西部をロード・トリップする女の子の姿をふと思い浮かべ始めました。若いテルマ&ルイーズのようなキャラクターで、家を出て人間関係から離れ、声を大にして処理し、友人たちや新しい街や風景の中に慰めを見出しています」

 

マジー・ロジャースはR&Bからの影響下にある渋い歌唱法で知られていますが、それをロックとポップスの中間にある親しみやすいポピュラーに置き換える。前作『Surrender』よりもロックやフォーク色が強まったのは、南部や西部のイメージを的確に表現するためでしょう。実際的にそれはアメリカン・ロックに象徴付けられる雄大な大地を彷彿とさせることがある。アルバムの収録曲「So Sick of Dreaming」、「Don't Forget Me」はアーティストの新たな代名詞的なアンセムとなりそうだ。今回のアルバムでは、R&Bやスポークンワード、そしてアメリカーナの要素が加わり、前作よりもアメリカンなテイストを漂わせる一作となっています。


 

Best Track- 「So Sick of Dreaming」

 

 

 

10. Fabiana Palladino 『Fabiana Palladino』 -Album Of The Year 


  

 

Label: Paul Institute

Release: 2024年4月25日


今年、デビューアルバムをリリースしたFabiana Palladino(ファビアーナ・パラディーノ)は、UKソウルの次世代を担うシンガーソングライターです。ジャネット・ジャクソンからクインシー・ジョーンズ、チャカ・カーンに至るまで、80年代を中心とするR&B、ディスコサウンドを巧みに吸収し、このレーベルらしいダンサンブルなトラックに仕上げる力量を備えています。

 

今年は別れをモチーフにした作品がいくつかありましたが、『Fabiana Palladino』も同様です。トラック全体の完成度はもちろん、ダンサンブルなソウルに傾倒してもなお叙情性と旋律的な美しさを失わないのは素晴らしい。合わせて、80年代を中心とする編集的なサウンド、そして幅広い音域を持つ歌唱力、さらに楽曲そのものの艶気等、ソウルミュージックとして申し分ない仕上がりです。今後、UKポピュラー界の新星として着実に人気を獲得することが予想されます。


ファビアーナ・パラディーノはアルバム全体を通じて、愛、人間関係、孤独など、複雑なテーマを織り交ぜ、哀愁に充ちたポピュラーソングを完成させています。例えば、「I Can't Dream Anymore」はそのシンボルとなる楽曲となるのではないでしょうか。

 

 


Best Track- 「Give Me A Sign」

 

 

 

 

11. The Lemon Twigs 『A Dream Is All We Know』

 


 

Label: Captured Tracks

Release: 2024年4月5日


ジョーイ・ラモーンの生まれ変わりか、ジョニー・サンダースの転生か。少なくとも、60,70年代の古典的なジャングルポップやパワーポップを書かせたら、ダダリオ兄弟の右に出るミュージシャンはいないでしょう。

 

レモン・ツイッグスのロックソングは、ビーチ・ボーイズ、ルビノーズ、サイモン&ガーファンクル、ビッグ・スター(Alex Chilton)、チープ・トリックまで普遍的な魅力を網羅しています。2016年頃から着実にファンベースを拡大させてきたダダリオ兄弟は、最新アルバムでバンドセクションを重視した作風に取り組んだ。


『A Dream Is All We Know』では、従来のジャングルポップのアプローチに加え、弦楽器や管楽器のアレンジが加わり、パワーアップしています。「My Golden Year」、「How Can I Love Her」、「If You And I Are Not Wise」等、パワーポップやフォークロックの珠玉の名曲が満載。バンドは今年の始め、ジミー・ファロン司会の番組で「My Golden Years」を披露しています。ぜひ、このアルバムを聴いて、古典的なロックの魅力を味わってみてはいかがでしょう? また、バンドは年明けに”ロッキン・オン・ソニック”で来日予定です。こちらも楽しみ。

 


Best Track 「If You And I Are Not Wise」


 

 

12.Charlotte Day Wilson 『Cyan Blue』



Label: XL Recordings

Release: 2024年5月3日

 

 

見事、グラミー賞にノミネートされたカナダのシンガーソングライター、 シャーロット・デイ・ウィルソンの最新アルバム『Cyan Blue』は、今年のオルタネイトなR&Bのベスト・アルバムの一つです。すでに、日本の単独公演、朝霧JAMへの出演を果たしています。録音としてハイレベルなことは明確で、レコーディング・アカデミーも太鼓判を押す。そして、もう一つ、実際に楽器を演奏していること、さらに、素晴らしい音域を持つ歌唱力にも注目しておきたい。

 

R&Bアルバムとしては、Samphaのネオソウルを女性シンガーとして、どのように昇華するのか、ある意味では、次のソウルミュージックへの道筋を示した劇的な作品である。そして実際のライブでの演奏力もあり、注目したい歌手と言えるでしょう。哀愁に溢れたネオソウル「My Way」、ジュディ・ガーランドのカバー「Over The Rainbow」、さらに恋愛を赤裸々に歌ったと思われる「I Don't Love You」はポピュラー・ソングとして、非常に切ない雰囲気がある。

 


 Best Track-「I Don't Love You」

 

 

 

 13. Wu-Lu 『Learning To Swim On Empty』- EP of The Year




Label: Warp

Release: 2024年5月7日

 

今回のEPを聴いてわかったのは、Wu-Luはいわゆる天才型のミュージシャンであるということ。彼は少なくとも秀才型ではないようです。前作『Loggerhead』ではアグレッシヴなエレクトロニックやヒップホップを展開させたが、続く「Learning To Swim On Empty」では、マイルドな作風に転じています。しかし、ウー・ルーのアグレッシヴで前のめりなラップは、現地のLevi'sとのコラボレーションイベントでも見受けられる通り、なりを潜めたわけではありません。

 

このEPでは、メロウなR&B、ローファイホップの楽曲「Young Swimmer」で始まり、アーティストによる「人生の一時期の回想」のような繋がりを描く。音楽的には、分散的といえるかもしれません。Rohan Ayinde、Caleb Femiという無名のラッパー/詩人を制作に招聘し、クールなラップのやりとりを収録しています。シングルの延長線上にある作風で、おそらくシングルの構想が少しずつ膨らんでいき、最終的にミニアルバムになったのではないかと思われます。

 

ロンドンのカリブ・コミュニティを象徴付けるレゲエ、ラバーズロック、それから、ラップ、オルタナティヴロック、ポストクラシカルを結びつけたトラック「Daylight Song」の素晴らしさはもちろん、「Mount Ash」のインディーロックから、ソウル、アートポップに至るトリップ感も尋常ではありません。

 

きわめつけは、EPのクローズに収録されている「Crow's Nest」で、アヴァンジャズとラップを融合させ、オルタネイト・ヒップホップの未来を示唆する。この終曲では、Wu-Luの音楽がマイルス・デイヴィスとオーネット・コールマンに肉薄した瞬間を捉えることができるはずです。

 

 

 Best Track 「Daylight Song」



14.Beth Gibbons 『Lives Outgrown』

 



Label: Domino

Release:  2024年5月17日

 


今年のベスト・アルバムの選出はオルタネイトな作品を網羅した上で、一般化するということにありました。結局、そういった意義に沿った作品をベスト30の最後に挙げるとするなら、ベス・ギボンズの『Lives Outgrown』が思い浮かぶ。ポーティスヘッドのボーカリストとして知られ、ケンドリック・ラマーの作品への参加、他にも現代音楽のボーカルにも挑戦しているギボンズがどんなアルバムを制作したのかに興味津々でしたが、結果は期待以上の出来栄えであったように感じられます。今年、ベス・ギボンズはフジロックフェスティバルにも出演しました。


多様な音楽的な手法を知っているということは必ずしも強みになるとは限らず、むしろ弊害になる場合もある。音楽の本質的な何かを知ってしまうと、知らなかったときよりも制作することへの抵抗のようなものが生じるのです。ベス・ギボンズは様々な音楽を吟味した上で、最終的にはアートポップやポピュラーという形式を重視することになった。おそらく90年代には最もマニアックであったトリップ・ホップの面影はこの作品には表向きには見られません。しかし、そういったアンダーグラウンドから出発したアーティストとしての性質はたしかに感じられます。一方で、それらのマニアック性をどのように一般化するのかに重点が置かれています。

 

とっつきやすいアルバムとは言えないかもしれませんが、 「Tell Me Who You Are Today」、「Lost Changes」、「Rewind」、「Reaching Out」などにアートポップの表現性の清華のようなものが宿っています。10年ぶりのアルバムということで感激したファンも多かったのでは??

 

 

 「Lost Changes」

 

 

 

15. Mui Zyu  『nothing of something to die for』




Label: Father/ Daughter

Release: 2024年5月24日

 

香港系イギリス人のエヴァ・リューによるソロ・プロジェクト、Mui Zyuの2ndアルバムは、前作のエレクトロニクスとポップネスの融合のアプローチにさらに磨きが掛けられています。今作では、オーケストラ・ストリングスを追加し、ダイナミックなアートポップの作品に仕上がった。ソングライターとしてのメロディセンスも洗練されました。

 

『nothing of something to die for』は、アーティストが組み上げた目くるめくワンダーランドの迷宮をさまようかのよう。特筆すべきは、ファースト・アルバムからの良質なメロディセンスに、複雑なレコーディングプロセスが加わったことでしょうか。

 

制作の側面で、より強い印象をもたらしたのが、ハイライト曲「please be ok」でミックス/マスターで参加しているニューヨークのプロデューサー/シンガーの”Miss Grit”です。この曲は、メタリックなハイパーポップ風のミックスを施し、驚くべき楽曲へと変貌させた。

 

さらに、もうひとつのハイライト曲「hopeful hopeful」ではオーケストラストリングスを追加し、ドラマの主題歌のような劇的なポップソングを書き上げた。来日公演を実現させ、今最も注目すべき歌手の一人でしょう。

 


Best Track「please be ok」



16.Vince Staples 『Dark Times』



Label: Def Jam/ UMG

Release: 2024年5月24日

 

カルフォルニア/ロングビーチ出身のヴィンス・ステープルズ(Vince Staples)は、デビューアルバム『Summertime 06'』で最初の成功を手にし、閉塞しかけた状況から抜け出した。しかし、唐突な名声の獲得は彼を惑わせた。彼はギャングスタの暴力や貧困といった現実に直面したのだった。その後、彼はアルバムごとに、現実的な側面を鋭く直視し、シリアスな作風を確立し、同時に、作品ごとに別の主題を据えてきた。ラモーナ・パークをテーマにした前作に続く最新作『Dark Times』は、トレンドのラップを追求するというよりも、ブラックミュージックの原点に立ち返り、ビンテージなR&B、ファンクを洗練させた渋いアルバムです。

 

個人的な解釈としては、Dr.Dre、De La Soul、Chicを始めとするヒップホップの基本に立ち返った作品と言える。 他方、「Etoufee」等、エレクトロニックとヒップホップの融合というモダンなテイストのヒップホップも収録されています。つまり、このアルバムでは、ヒップホップの数十年の系譜を追うかのようなクロニクルに近いソングライティングの試みが行われているように思えます。本作を聴くかぎり、現在のステープルズは、ブラック・ミュージックの一貫としてのヒップホップがどのようにあるべきかを追求したという印象です。これは旧来のギャングスタというイメージからヒップホップを開放するための試みでもある。ハイライト「Black&Blue」、「Shame On Devil」は言わずもがな、「Freeman」の見事なラップに注目です。

 


Best Track 「Freeman」

 

 

17.La Luz 『News Of The World』

 


 

Label: SUB POP

Release: 2024年5月24日

 

今年、シアトルのサブ・ポップは年始から恐ろしいペースでリリースを重ねてきた。Boeckner、Amen Dunes(2作のアルバムをリリース)、Naima Bock,最も話題となったところでは、コーチェラ・フェスティバルにも出演した歌手/モデルのSuki Waterhouseが挙げられる。しかし、最も印象的なアルバムは、La Luzの『News Of The World』となるでしょう。


バンドの現メンバーの最後のアルバムとなる本作では、ボーカリストの病に纏わる人生を基に、個性的なオルタナティヴロックを完成させた。女性のみのメンバーで構成されているため、スタジオでの遠慮がいらなかったという。アルバムは、クワイアのような合唱ではじまり、ラテンのムードを漂わせるロックソングが散りばめられています。その他にもサーフロック、ラバーズロックやバーバンクサウンドの影響を絡め、女性バンドとしての理想郷を今作で構築しようとしています。懐古的なサウンドの向こうから立ちのぼる牧歌的な空気感が魅力です。

 

 

 

Best Track「News Of The World」

 

 

Vol.2はこちらからお読みください。


©Michael Schmelling


デイモン・マクマホンは、自身のプロジェクト「Amen Dunes」の活動終了を発表した。この彼は今年リリースされた『Death Jokes』から曲を削ぎ落としたリミックス・アルバム『Death Jokes II』をプロデューサーのクレイグ・シルヴェイと共にリリースする。ストリーミングは以下から。


「これは最終巻の最終章だ」とマクマホンはプレスリリースで説明している。「さようなら、ほとんど一言も話していないけど、パーティーではいつもそう。私たちが死んだら、もっとうまくいくことを祈りましょう」


アーメン・デューンズは2006年、ニューヨーク州北部のトレーラーで8トラック・レコーダーで録音したアルバム『D.I.A.』で設立された。そこから成長し、マクマホンは過去18年間に6枚のフルアルバムと2枚のEPをリリースした。今日、彼は7作目にして最後のアルバム『Death Jokes II』をリリースする。これは、2024年5月のサブ・ポップ・デビュー作『Death Jokes』の再編集版である。

 

「Ian (Goodbye)」

 

 

NPR Musicに「異なる方向への大胆な転換」、Stereogumに「マクマホンの芸術的な才能の証」、GQに「しばしば、その素晴らしさと同じくらい困惑させられる音楽作品群」と評された『Death Jokes』は、アーメン・デューンズのこれまでの作品とは大きく異なるもので、マクマホンが幼少期から親しんできたエレクトロニック・ミュージックに没頭する野心的なアルバムだ。



デス・ジョークス』は、完成までに4年近くを要した複雑なプロジェクトで、2021年6月にロサンゼルスの有名なイースト・ウェスト・スタジオ(「ペット・サウンズ」とお化け屋敷のような「ホイットニー・ヒューストン」の部屋)で、マネー・マーク(ビースティ・ボーイズ)をキーボードに、ジム・ケルトナー(ボブ・ディラン他)とカーラ・アザー(オートラックス)をドラムに迎えて録音された別バージョンを含む、様々な反復が行われた。



このアルバムを『Death Jokes II』として再構築するにあたり、マクマホンはクレイグ・シルヴィーによる楽曲のストリップダウン・リミックスのために、すべての素材を再検討した。

 

これらの新しいミックスには、『Death Jokes』の著名な貢献者であるパノラム、クウェイク・ベース(ディーン・ブラント、MF DOOM)、クリストファー・バーグ(フィーバー・レイ)、ロビー・リーの未発表曲も含まれている。

 



Amen Dunes 『Death Jokes II』

 


Tracklist

1. Ian (Sunriser)

2. What I Want (Night Driver)

3. Exodus (Do It)

4. Rugby Child (300 Miles Per Hour)

5. Purple Land (In The Springs)

6. Mary Anne (Senigallia)

7. Italy Pop Punk

8. I Don’t Mind (Q Loop)

9. Round the World (Down South)

10. Ian (Goodbye)


Listen/ Streaming: https://music.subpop.com/amendunes_deathjokesii

 

Photo:Stéphanie Bujold

現在モロッコのタンジェに滞在し、ニューアルバムの制作に取り組んでいるAlex Henry Foster(アレックス・ヘンリー・フォスター)が、今年度3作目のリリースとなるEP『A Whispering Moment』を本日リリースします。

 

今年は、 4月に日本人アーティストとコラボレーションしたアルバム『Kimiyo』と、9月にインストゥルメンタルのみのアンビエントアルバム『A Measure Of Shape And Sounds』をリリースしており、 昨年の心臓手術によって思うように活動ができなかった時間を取り戻すかのように精力的に活動している。 


そして、今回は彼が2018年にリリースしたソロデビューアルバム『Windows in the Sky』を記念して、EP『A Whispering Moment』をリリース。

 

このEPは、楽曲「Shadows Of Our Evening Tides」が初めて形となったときから、様々なライブバージョンへと自然に開花していくまでの、その自由に進化する性質に焦点を当てたものだ。 深い感情への没入と繊細な音を示す感動的な作品「Shadows Of Our Evening Tides 」は、Alex Henry Fosterの心を解き放つ創造の世界を鮮やかに映し出すと同時に、昨今のステージに立つ最も魅力的で、情熱的で、挑発的なアーティストの一人としての彼の評判を完璧 に反映している。 


このEPについて、本人は次のように述べています。「この特別なプロジェクトは、僕の父が亡くなったあとの心の傷やその後に続いた長い悲しみのプロセスを表現した、個人的で親密な感情を含んだものであるだけ でなく、友人たちや愛する人たちが彼らの喪失や悲しみの中で、慰めを見つけるための独特な要素となり、その後、このアルバムを発見する多くの人たちによって、希望に満ちた作品として安らぎを与えるものとなったと信じてる」


「一見、または浅く解釈すると、この作品は愛の儚さや 混乱を嘆く悲しみを反映しているかのように思えるかもしれないけど、その本質は、最も暗い 時期において、平和と目的を見出すことについてなんだ」


さらに続けて、「そして、最も野心のない正直さと利己的ではない創造の解放のように、『Windows in the Sky』は、僕の音楽の旅を再定義し続け、そして、おそらく、より大事であろう、 僕の存在自体を再構築するきっかけとなってくれた」


「だから、この『A Whispering Moment』が、自分の人生をつくり、本当の意味で生きていると 感じる鮮やかな感覚を体験し、再体験できるよう、君を導いてくれることを願っている」

 

 「Shadows Of Everything Tides」

 

 

Alex Henry Foster 『A Wispering Moment』EP


Tracklist:

1. A Whispering Moment (Alternative Version, April 30, 2018) (4:48)
2. Shadows Of Our Evening Tides (Extended Version, April 13, 2019) (11:17)
3. Shadows Of Our Evening Tides (Live from the Upper Room Studio, April 28, 2020) (17:08)
4. Shadows Of Our Evening Tides (Live at Brückenfestival, August 12, 2022) (13:12)


Listen/ Stream: https://found.ee/ahf-awm

●rockin’on sonicに出演が決定したNY発のポスト・パンク・バンド、モノブロックが新曲「Take Me」リリース! 自主制作ミュージック・ビデオも公開!

Monobloc
 

ほぼ無名の新人ながら、2025年1月4日(土)・5日(日)の2日間に渡って幕張メッセにて開催されるニュー・イヤー洋楽フェスrockin’on sonicへの出演が決定したニューヨーク発のポスト・パンク・バンド、モノブロック(Monobloc)がニュー・シングル「Take Me」をリリースした。


ニューヨークのアンダーグラウンドDIYシーンから飛び出したモノブロックは、ヴォーカルのティモシー・ウォルドロンとベースのマイケル・シルバーグレードが率いる5人組バンド。2024年に入ってシングル「I'm Just Trying To Love You」「Where Is My Garden」「Irish Goodbye」と立て続けに3曲をリリース。


デビュー間もないながらも、すでにUKのオール・ポインツ・イースト・フェスティバル、フランスのロック・アン・セーヌ、メキシコのコロナ・キャピタル・フェスティバルやアイスランド・エアウェーブスに出演。そして、ロッキング・オンとクリエイティブマンがプッシュする新星として、rockin'on sonicへの出演が決定した。


フロントマンのティムは、躍進の年となった2024年最後のリリースについて次のように語っている。


「音楽的には『Take Me』はフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドの手法を模索していた頃に書かれた曲で、ただリバーブに浸るのではなく、幻想的なサウンドをうまく配置したマッシヴなサウンドなんだ。僕たちは、まだ自分達が演奏するには大きすぎるような会場のための曲を求めていた。これは僕らがバンドとして足場を固め、旅に踏み出すときのサウンドで、リスナーがモノブロックに最初に触れる曲になるといつも想像していたんだ。現実はそうではなかったかもしれないけれど、でも一部のリスナーにとっては、今でもそうなると思っているよ」


この度公開された「Take Me」の自主制作ミュージック・ビデオは、地元ニューヨークや世界各地で撮影され、国内外での気の遠くなるような12ヶ月間におよぶライヴ映像から構成されている。


「Take Me」

   


◾️お正月開催の新たな洋楽フェス、「ROCKIN’ON SONIC」にNY発のポストパンクバンド、モノブロックの出演が決定!



先日インターポール(Interpol)のブルックリン公演のサポートを終えた彼らの次なるステージはお正月の日本公演! メンバー一同、日本に来ることは長年の夢で非常に楽しみにしているとのことなので、ぜひ日本初のステージとなるrockin'on sonicをお見逃しなく!



【バイオグラフィー】

ティモシー・ウォルドロン(ヴォーカル)とマイケル・シルバーグレード、別名:モップ(ベース)が率いる、ニューヨーク発の5人組バンド。2023年にザック・ポックローズ(ドラム)、ベン・スコフィールド(ギター)、そしてニーナ・ リューダース(ギター)が加わり、正式に始動した。

 

バンドのサウンドは、1980年代のマンチェスターのインディー・レーベル、ファクトリー・レコードから影響を受けている。他にも、トニー・ウィルソン、ピーター・サヴィル、ジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダーらの名を挙げており、また、スティーヴ・ライヒが制作した『Music for 18 Musicians』はとりわけバンドのギター・パートに大きな影響を与えたという。

 

2024年1月、シングル「I’m Just Trying to Love You」を、セルフ・プロデュースしたミュージック・ビデオと共にリリースすると、瞬く間に彼らの評判は知れ渡り、イギリスやヨーロッパへのフェス出演に次々と出演。2025年1月にはrockin'on sonicへの出演も決定し、早くも初来日することが発表された。

 


「I Read Palms」は、オレゴン州ポートランドのアーティスト、イライジャ・クヌッツェンによるゴシック調のサプライズ曲。近日発売予定のアルバム『Poltergeist』からのリード・シングルである。


このトラックは、ヘヴィ・ロックの領域におけるイライジャの多才さを示す、荒涼とした怒りに満ちたショーケースだ。ダークな雰囲気のヴェールの下で、ドキドキするドラム・マシーンとマントラのようなベースがノイズのカーテンに包まれる。


アルバム『Poltergeist』は、定評あるアーティスト、イライジャ・クヌッツェンが自身のレコードレーベルMemory Colorからリリースした、ダークでゴシック、スモーキーな作品。


ダーク・アンビエントとシューゲイザーの要素を取り入れたゴシック・ロックが渦巻き、殺伐としたローファイ・ベースメント・プロダクションにチューニングされている。Joy Division、The Cure、Interpol、New Order、The Twilight Sad、Sparklehorse、The Chameleonsなどのバンドのサウンドを彷彿とさせる。ダークな20世紀初頭の神秘主義のオーラを放つPoltergeistは、暗い占い、霊写真、降霊会、片思い、苦い後悔、「アイズ・ワイド・シャット」、「シャイニング」の舞踏会のシーン、廃墟となった神社、絶望的な黒い空について語っている。


このアルバムではイライジャのヴォーカル・テクニックが全開で披露されているが、物静かで控えめなこのアーティストにとっては初めてのことだ。イライジャは2020年に「Music For Vending Machines 1」のような環境音楽のレコードでスタートを切ったが、2018年初頭にはムーディーで泥臭いポストロックのインストゥルメンタル作品を発表し、音楽の旅を始めた。彼のニューウェーブの影響は、アンビエントなリリースにも常に存在している。"Heaven Red "や "Maybe Someday "を参照。


アルバムのプロデュース、ミックス、マスタリングは、イライジャ・クヌッツェンがオレゴン州ポートランドの自宅スタジオで行っている。このプレス・キットには、"I Read Palms "のラジオ・ミックスが特別に収録されており、この曲のローファイな部分をさらに引き立てている。


イライジャのカタログは、彼の会社''Music For Public Spaces''を通じて出版されている。日本での出版は、彼のサブ・パブリッシャーであるシンコー・ミュージックLLCによって管理されている。

Fennesz  『Mosaic』



Label: P-Vine Inc.

Release: 2024年12月4日


Review


『Mosaic』は2000年代はじめに発表された『Venice』のサウンドと地続きにある。今年、『Venice』は20周年を迎えるにあたって、リマスターを施したアニヴァーサリー・バージョンも発売されている。1990年代に彗星のごとくウィーンのテクノシーンに登場したFenneszは、ギタリストとして知られるほか、プロデューサー、作曲家として幅広い分野で活躍してきました。その中には坂本龍一とのコラボレーションアルバム『Cendre』を筆頭に、この10年間、 Fennesz(フェネス)はミュージシャン、映画制作者、ダンサーと共同制作を行ってきた。デヴィッド・シルヴィアン、キース・ロウ、スパークルホースのマーク・リンカス、マイク・パットン、多くのミュージシャンとレコーディングやパフォーマンスを行っている。また、ピーター・レーバーグ、ジム・オルークとともに即興トリオ、フェン・オーバーグとしても活動している。

 

フェネスの音楽的なアプローチに関しては、基本的にノイズ、アンビエントの中間に位置づけられる。また、その中には稀に、一般的なリスナーには聞き慣れないアフリカ等の民族音楽の要素が含まれることもある。しかし、結局、今世紀初めには上記のジャンルが(おそらく)確立されていなかったため、前衛音楽の枠組みの中で解釈されることは避けられなかった。ときにはアウトサイダー的なテクノとして聴かれる場合もあったかもしれない。だが、『Venice』の20周年盤でも言及した通り、テクノ全般のイディオムがフェネスの音楽にようやく追いついて来た。おそらく90年代や00年代にフェネスの音楽を理解した人はかなり少なかったはず。しかし、時代が変わり、今やフェネスの音楽はアウトサイダー・テクノではなく、むしろ主流派の領域に属し始めている。これはテクノや全般的な電子音楽を中心にクロスオーバー化やハイブリッド化が進んだことにより、フェネスの音楽はむしろ時代にマッチするようになった。

 

『Venice』の20周年記念盤のレビューでも言及した通り、このアルバムでは20年後の音楽が予見的に登場していた。それは”ドローン”という新しい音楽形式、それから、他の数々のジャンルを吸収したハイブリッドの末裔としてのテクノ等、 2000年代にグリッチが登場し、それらが新しい音楽として先見の明がある聞き手に支持されていた時代から見ると、たとえリアルタイムの体験者ではないとしても、心なしか感慨深いものがある。しかしながら、待望の新作アルバム、そして解釈に仕方によっては『Venice』の続編とも言える『Mosaic』は、あらためてこのプロデューサーの音楽がどのようなものであったのかを把握するのに最適である。彼の音楽が最先端に属していて、2020年代のミュージックシーンに馴染む内容であることが分かる。

 

本作は、2019年に発表された『Agora』からすでに始まっていたというルーチンワークから生じたという。「今回はゼロからのスタートで、すぐにはコンセプトもなく、厳しい作業ルーティンがあった。朝早く起きて昼過ぎまで仕事をし、休憩を挟んで、また夕方まで仕事をする。最初は、ただアイデアを集め、実験し、即興で演奏した。それから作曲、ミキシング、修正。''モザイク "というタイトルは、ピクセルのように一瞬で画像を作り上げる以前の、古代の画像作成技法を反映した」というのがフェネスのコメントとなっている。そして、アルバムの強度を持つノイズ、アンビエント、民族音楽の融合は、深遠なテクノのイディオムを顕現させる。

 

少なくとも、本作は一度聴いただけで、その全容を把握するのは至難の業である。五分から九分に及ぶ収録曲の音楽の情報量は極めて多い。アルバムの冒頭を飾る「Heliconia」は大まかに二部構成から成立している。ガラス玉のようなパーカッションがイントロに登場し、その後、ギターによるドローンが曲の構成や印象を決定付ける。微細な音の配置は、ポストロック的なマクロコスモスを描き、音像が際限なく広がっていき、宇宙的な壮大さを帯びる。この点に、坂本龍一の遺作『12』との共通項も見出される。


そして、2001年の『Endless Summer』の時代から培われたシンフォニックなテクスチャーが立ち上る。この間、一筋の光のように伸びていくシンセも登場し、4分以降にはダイナミックなハイライトを迎える。


以降は曲風が一変し、ノイズからサイレンスへ変遷していく。すると、精妙なノイズが登場し、民族音楽的なパーカッションが配され、曲全体は霊妙な雰囲気を帯びる。そして、後半部では、民族音楽とテクノを融合させ、その後、ギターのミュートを用いたアルペジオ等が登場し、曲の構成の背景を形作るシンセによるシークエンスは、Loscilの『Umbre』のような荘厳な雰囲気を帯びる。ギターの演奏だけでなにかを物語るかのように、曲はアウトロのフェードアウトに向かっていく。

 

フェネスは音楽制作者としてノイズミュージックの他にも音響派のギタリストとしての表情を併せ持つ。二曲目「Love And The Framed Insects」では2023年に発表されたアルバム『Senzatempo』、『Hotel Paral.lel』の両作品の作風を融合させ、叙情的なギターアンビエントと苛烈なノイズを交互に出現させる。


さらにフェネスはノイズと叙情的なシークエンスを丹念に融合させ、音楽の持つ静謐で美麗な瞬間を作り出す。いわばアルバムのジャケットに描かれるような情景的な美しさが音楽的なモチーフとして登場し、主体性を持つに至る。主体性を持つというのは、音楽が主人公となり、それらが発展したり、敷衍したり、奥行きを増していったりと、多彩な側面を見せるということ。これらは音楽の持つ多次元的な性質を反映させている。それらをフェネスは最終的な編集作業を通してコンダクターさながらに指揮するのである。ノイズも登場するものの、この曲の全般的な魅力はむしろ感覚的な美しさに込められている。これは調和と不調和の融合をかいして、制作者の美学のようなものが鏡のように映し出される。

 

経済学者であるジャック・アタリも指摘するように、ノイズというのは社会学として見た上では、不調和を意味する。しかし、一方で、実際的にホワイトノイズやピンクノイズ等、音の発生学として多彩なノイズがこの世に存在するように、これらの雑音が必ずしも不快な印象を与えるとはかぎらないということは、次の収録曲「Personare」を聴けば瞭然なのではないかと思う。


例えば、この曲では坂本龍一とのコラボアルバム『Cendre』で用いた精妙なノイズを駆使し、「不調和の中にある調和」を示唆している。実際的に、多くの人々は、単一の物事の裏側にある別の側面を度外視することが多いが、この世の現象や出来事の大半は、こういった二面性や多面的な要素から成立している。この曲では、そういった現象学としての普遍性がしたたかに織り交ぜられている。同時に、ノイズという本来は不快であるはずの音響的な現象中に、それとは対極に位置する快適な要素ーー心地よさーーを見出すことも、それほどむずかしくない。


実際的にこの曲はノイズを不自然に除去した音楽よりも、不思議と音に身を預けていたいと思わせる快適な要素が偏在している。なぜ、一般的には心地良くないと言われている音響に心地よさを覚えるのかといえば、それは、自然界を見ても分かるように、雑音性というのは必ずどこかに生じ、自然の摂理に適っているためである。これはフェネスのノイズ制作の清華とも言える。

 

続く「A Man Outside」でもノイズの要素は維持され、パーカッシヴな音響効果を用いた環境音楽の形式が取り入れられている。そして、この曲でも序盤は前曲の作風を受け継いで、ノイズの精妙な感覚、次いで、ノイズの中にある快適さという側面が強調されているが、二分後半からは曲調がガラリと変化し、ダークなドローン風の実験的なテクスチャーが登場する。まるで情景的な変化が、ノイズや持続的な通奏低音を起点に移ろい変わっていくような不可思議な感覚を覚える。曲の序盤における天国的な雰囲気は少しずつ変化していき、メタリックで金属的な響きを帯び、冥界的なアンビエント/ドローンに変遷していくプロセスは圧巻というよりほかなし。これほどまで変幻自在にサウンド・デザインのように音の印象を鋭く変化させる制作者は他に思いつかない。曲の後半でも曲の雰囲気が変わり、序盤の精妙な雰囲気が立ち戻ってくる。

 

「Patterning Heart」は、現在のアンビエントシーンの流れに沿うような楽曲と言えるかもしれない。抽象的なドローン風のテクスチャーが通奏定音のように横向きに伸びていき、極大の音像を形成してゆく。大掛かりな起伏は用意されていないけれど、曲の中盤ではサイレンスが強調される瞬間があり、『Venice』に見いだせるギターノイズが取り入れられている。アルバムのクローズでもフェネスらしさが満載で、濃密な音楽世界が繰り広げられる。モーフィングを基に制作された「Goniorizon」では音の波形の変化に焦点が絞られている。


2000年代の制作者が二十年後の音楽を予見したように、音楽の未来性を読み取ることも可能かもしれない。本作には音楽の持つ楽しさはもちろん、未知の芸術的な表現性への期待感が込められているように思えた。

 

 

 

90/100 

 



「Heliconia」

■ベルリンから彗星の如く現れたジャズ・コレクティヴ、モーゼズ・ユーフィー・トリオ。待望のデビュー作『MYT』が日本先行リリース。



北ヨーロッパ特有の洗練された空気、流れるような優美なメロディーと人力ドラムンベース、熱狂と静謐さを携えた記念すべきフルアルバムが初上陸。

 

濃密なシンセと躍動するリズムが絡み合う「グリーン・ライト」では、ロンドンの人気ラッパーENNYをフィーチャー、同郷のサックス奏者ヴァンヤ・スラヴィンと共演するジャズ・パンクな「ディープ」での白熱の即興演奏も要注目。

 

2025年のジャズ・シーンの台風の目になること必至の大型新人の登場だ。全オリジナル13曲収録。日本限定CD盤で発売予定。

 

 

 

Moses Yoofee Trio「MYT」 [モーゼズ・ユーフィー・トリオ/エムワイティー]



発売日 : 2025年1月24日
   レーベル : 森の響(インパートメント)
フォーマット : 国内盤CD
品番 : MHIP-3794
店頭価格 : 3,080円(税込)/2,800円(税抜)
バーコード : 4532813837949 


*ライナーノーツ収録(落合真理)
*日本のみCDリリース + 先行販売(LPと配信は2/7発売)

 

■プロフィール : モーゼズ・ユーフィー・トリオ

 
ベルリン拠点のピアニスト/プロデューサーのモーゼズ・ユーフィー、ベーシストのロマン・クロベ=バランガ、ドラマーのノア・フュルブリンガー擁する気鋭トリオ。「エモーションズ、モーメンツ、バンガーズ」を掲げ、2020年に結成。ヒップホップからアフロビーツ、アートロックを自在に取り込んだ圧巻のライヴパフォーマンスには定評があり、2024年度ドイツ・ジャズ・プライズではライヴ・アクト・オブ・ザ・イヤーを受賞。


・モーゼズ・ユーフィー・ヴェスター(ピアノ/キーボード)


2013年にわずか14歳でターゲスシュピーゲル紙に「若き天才ジャズアーティスト」と絶賛される。その才能はとどまることを知らず、ロマンと共にレゲエ界のスター、ペーター・フォックスの大規模ツアーにも参加。



・ロマン・クロベ=バランガ(ベース)


モーゼズとはベルリンのジャズ・インスティテュートで出会い、以来コンビを組んで活動を展開する。緻密で揺るぎない演奏力を武器に、バンドの複雑かつ普遍性を兼ね備えたサウンドを支える。

・ノア・フュルブリンガー(ドラム)

 
アメリカの人気ラッパーキャスパー、スウェーデンの名ベーシストのペッター・エルド、ドイツのコメディアン/俳優/ミュージシャンのテディ・テクレブランらと共演し、確かな評価を築き上げる新鋭ドラマー。




坂本龍一とのコラボレーションで知られるアルヴァ・ノトが新作アルバム『Xerrox』のリリースを発表した。『Xerrox Vol.5』は12月6日にNOTONからリリースされ、国内流通盤も同時発売となる。(ストリーミングは11月29日)


2007年にスタートしたアルヴァ・ノトことカールステン・ニコライの「Xerrox」(ゼロックス)シリーズ。もともとのコンセプトはオリジナルよりも記憶に残る映像や音響の「コピー(複製)」を作ることを目的としていた。シリーズ名は、米国のゼロックス社が1960年に商品化した電子写真複写機の商標名から始まり、現在ではコピー機やコピーのことを意味する「xerox」に由来しているが、名前だけではなく「コピー(複製)」という根本的なコンセプトにも影響を与えている。2005~2006年の最初のレコーディングから約20年に渡り、シリーズ5枚のアルバムは、アーティストの進化する視点とコンセプチュアルなアプローチに寄り添ってきた。

 

当初は荒々しさとホワイトノイズの中に解答を求めるコンセプチャルなフォーカスを特徴としていたが、後の作品では、音響的な粒子に重点を移しながら、”溶解”というテーマに取り組んでいる。コピーのプロセスは、現在ではソフトウェアの操作によって目に見えるものではなくなっているが、その代わりに、アーティストが作曲中にメロディや音響のイメージを描写し、操作し、コピーし、新しいパターンに変換することで展開される。


ニコライはこの進化を、ホメロスの叙事詩「オデッセイア」やネモ船長が登場するジュール・べルヌの物語との共通点を示しながら、構築、探求、解答を包含する旅と表現している。

 

また、このアルバムの完結は、アーティストにとっての区切りの意味を持っている。ニコライは「始まりと終わりの両方を縁取るトラックのサイクル全体を作ることを目指した」と説明する。「旅のモチーフは続くが、今回は無限への旅に出るというコンセプチュアルな目的を通して、物語は溶解に至る。Dissolution(ドイツ語で"Auflösung")という言葉は素晴らしいコンセプトで、謎を解明するという意味もあるし、錠剤が水に完全に溶けるという意味もある。ここで、私は意図的に溶解する過程を描写している」

 

Vol.5を制作するにあたり、ニコライは作曲プロセスを進化させ、サンプルを排除し、オリジナルのメロディーを採用した。「このアルバムの完成には、おそらく最も時間がかかった。最初にメロディーのスケッチを描き、それが作品の基礎となった。これらのレコーディングはすべてゼロから制作したものだ。これらのスケッチをもとに、コピー、マニピュレーション、再形成のプロセスを構築した」


近年、映画や大規模なアンサンブルを手がけた経験から、ニコライの作曲へのアプローチは、クラシックの楽器法の影響が大きくなっていることを反映している。「このアコースティックなクラシック楽器との共同作業の経験は、Xerrox Vol.5の作曲プロセスにも生かされている。一部の楽器は、オーケストラへの移植を念頭に置いて設計されている。」

 

“Xerrox Vol.5”の音には、非常に深い溶解の雰囲気がある。ニコライは「私は当初、強く感情的なメロディーの側面には興味がなかった 」と話している。「でも、その断片が中心的な役割を果たしていることに気づいた」 この変化は、メランコリーと別れのほろ苦さに彩られた感情的な体験が反映されている。このシリーズを敬愛していた坂本龍一が亡くなったことでアルバムの感情的な響きはさらに深まった。「”Xerrox Vol.5”は別れに大きく関係している。20年近く育ててきたシリーズそのものとの別れだけでなく、親しかった人たちとの別れもたくさんあった。これらの人々のことは、音楽の中で認識できると思う。とても感情的で個人的なアルバムだ」

 

リスナーは音楽に視覚的な側面を期待できるが、ニコライは意図的に解釈の余地を残している。「特定の物語を指示するのではなく、音楽が個人的な経験やイメージを呼び起こすことを好む」と彼は言う。その結果、優しさと内省を誘う重層的なリスニング体験が生み出されている。


*記事掲載時、発売日を12月8日としていましたが、ただしくは12月6日となります。訂正致します。


Alva Noto 『Xerrox Vol.5』


発売日: 2024年12月8日(金)

アーティスト:Alva Noto(アルヴァ・ノト)

タイトル:Xerrox Vol.5(ゼロックス・ヴォリュームファイブ)

フォーマット: 国内流通盤CD

レーベル:NOTON

ジャンル: ELECTRONIC

流通 : p*dis / Inpartmaint Inc


Tracklist:

1. Xerrox Topia

2. Xerrox Sans Nom I

3. Xerrox Sans Nom II

4. Xerrox Ascent I

5. Xerrox Ascent II

6. Xerrox Sans Repit

7. Xerrox Nausicaa

8. Xerrox Xenonym

9. Xerrox Ada

10. Xerrox Arc

11. Xerrox Kryogen

12. Xerrox Isotope

Weekly Music Feature : Hollie Kenniff

 

カナダ系アメリカ人のアンビエント・ポップ・アーティスト、Hollie Kenniff(ホリー・ケニフ)の4作目となる『For Forever』は、濃密なメロディの茂みに覆われ、聴く者を常にハラハラドキドキさせながら、クレッシェンドという満足のいく結末へと辛抱強く導いていく。エレクトロニックとアコースティックのサウンドウェーブにまたがる『For Forever』は、何マイルにも及ぶ果てしない至福の時間を提供し、ホリー・ケニフのこれまでで最も満足のいく作品となりました。


Nettwerk Music Groupからのデビューとなるケニフの最新アルバムは、昨年リリースされたエモーショナルなタイトル『We All Have Places That We Miss』に続く作品です。夫のキース・ケニフ(ヘリオス、ゴールドムンドとしてもレコーディングを行っている)とエレクトロニック・ポップのユニット、ミント・ジュレップで活動して以来、15年以上にわたって着実に歩んできたキャリアの中で、またひとつ印象的な宝石になり得る。心揺さぶる美しさを持つこのアルバムは、この特別なアーティストがこれからさらに大きなピークを迎えることを予感させます。


ニューアルバムのタイトル・トラック「For Forever」には特に注目です。彼女の息子のピアノをフィーチャーした、瑞々しく没入感のあるアンビエント・リスニング・エクスペリエンスである。アルバムは共同体の集積であり、他方シングルは家族というパズルの模範的なピースとなるでしょう。


「人々は信憑性に惹かれるものだと思う。誇大広告に頼ったり、すぐに廃れたり忘れ去られるような特定の流行を追いかけたりせず、音楽自身に語らせるようにしています」と彼女は語っています。


『For Forever』 2021年まで遡る過去数年間に書かれ、レコーディングされた音源で構成されていて、その最も幽玄な瞬間でさえも人間味溢れる抒情的なサウンドを聴かせてくれる。シガー・ロスのインストゥルメンタル作品や、ウィル・ヴィーゼンフェルドのGeoticプロジェクトのファジーなドリームスケープとは異なり、11曲のいずれも小さな黙示録のように聴こえるはずです。


ホリー・ケニフは『For Forever』の制作について次のように述べています。「私はほとんど毎日のように音楽制作に取り組んでいて、それは私の人生において非常に重要な部分なんです。私はいつも、人間の感情と自然界を作品のテーマにしています」




 『For Forever』 Nettwerk Music Group (85/100)

 

当初、ホリー・ケニフはソロ活動を始めた頃、シューゲイザーとドリームポップの中間域にある音楽を制作し、インディーズミュージックのファンの注目を集めていました。2019年には最初のアルバム『The Gathering Dawn』を発表し、注目作を発表しています。基本的には演奏者としてギタリストですが、制作者の作り出す神秘的なアンビエンスは、およそギターだけで作り出されたとは信じがたい。ようやくというべきか、満を持してというべきか、ホリー・ケニフはカナダのネットワークから最初のフルアルバムをリリースします。実際的な音楽性や世界観などが着実に磨き上げられ、夢想的かつ美麗なアンビエントアルバムが登場しました。


音楽性に関しては、2021年のシングル集「Under The Lonquat Tree」の延長線に位置づけられます。アンビエントというのはどうしてもアウトプットされる音楽が画一的になりがちな側面があるものの、ホリー・ケニフのソングライティングは叙情的な感性と季節感のあるサウンドスケープが特徴的。また、雪解けの季節を思わせるような雰囲気、清涼感のある音楽性が主体となっています。今回の4thアルバムを語る上で不可欠なのは、従来培われたギターやシンセを中心とするアンビエントテクスチャー、曲全体に表情付けを施すピアノでしょう。これらがほどよく合致することにより、ホリー・ケニフの作風はひとまず過渡期を迎えています。


ホリー・ケニフが説明する通り、本作の音楽は、誇大性、扇動性、ないしは脚色性とは対極に位置し、名誉心や虚栄心といった感覚とは相反する素朴な価値観が提示されています。それは全般的に言えば、芸術やリベラルアーツの原初的な意義を復権させるための試みでもある。多くの場合、音楽は、商業的な観点から制作され、実際的に経済効果をもたらした作品が評価されることは自然ですが、他方、音楽の楽しみはそれだけにとどまりません。このアルバムは、音楽を楽しむ上で、一般的な観点とは異なるもう一つの楽しさを教唆してくれるはずです。ある意味ではそれが限定的な影響力しか持たないとしても、アーティストが数年間、ほとんど毎日のように制作に取り組むかたわら、「永遠なるもの」を探求した結末とも言えるかもしれません。そして、それはたぶん察するに商業的な成功や名誉ではなかったのでしょう。結果として、音楽の持つ純粋な側面が引き出され、澄明な輝きを持つアンビエントが生み出されました。

 

以前から言及している通り、旧来は家父長制を基底に社会システムが構築されていたため、女性アーティストが世に出て来づらい弊害がありました。それは古い言葉になってしまいますが、女性の社会的役割が重視されていたから。結果として、その壁を打ち破ることになったのは、デジタル・ストリーミングの普及であり、制作環境にラップトップが導入されたことであり、また、自由にインターネット上で個人的な音源を公開することが可能になったことでしょう。次いで、この流れに準じ、”ベッドルーム・ポップ”という自主制作をベースに作品を発表するアーティストが登場しましたが、これが旧来のストリームを変えるような流れを呼び込みました。最終的には、Cindy Leeの『Jubilee』がその答えなのでしょう。これは最早、音楽という形態が一般的な価値を持つ商業作品という旧来の価値観を打ち破ってしまった。そして、今後は、メディアの権威付けの影響力も徐々に乏しくなっていくかもしれません。言い換えれば、音楽に対する絶対的な評価というのは、あってないようなものだということ。実は、アンビエントやエレクトロニックという先入観を度外視してみると、ホリー・ケニフもまた、これらのベッドルームポップの流れを上手く味方につけたミュージシャンだったです。

 

いずれにしましても、『For Forever』は純粋な音楽の良さや楽しみが凝縮されています。アルバムのオープニングを飾る「1-Lingers in Moments」は、アンビエントのシークエンスから始まり、ホリー・ケニフの音楽的な世界観を敷衍させる。さらにピアノ(シンセ)の演奏がそれに加わり、澄明で穏やかな音楽が無限に続いていくような気がします。パッドやボーカルをベースにしたシーケンスが組み合わされ、心地よい音の空間性が組み上げられていく。アンビエント制作の基本的な作曲性は一般的なリスナーにも共鳴するなにかがあるかもしれません。 

 

 

「Lingers in Moments」

 

 

「2-Surface」はピアノを中心とする曲で、ビートを段階的に組み上げていき、それらをループさせ、心地よい響きを作り出しています。音楽性のタイプとしては、ニルス・フラーム、ピーター・ブロデリックの系譜にあるポストクラシカル/モダンクラシックの楽曲となっていますが、これらの繊細な響きにシンセストリングスを合致させ、巧みな音像を作り上げていく。ときどき、神秘的なシークエンスが出現する瞬間があり、息を飲むような美麗な音のイメージが作り上げられる。さらに制作者自身のボーカルも登場することもありますが、これは器楽的な効果に焦点が置かれています。タイトル曲は、波形にディレイを掛け、逆再生のような効果を強調させ、抽象的な音像にピアノの演奏が加わり、ぼんやりした美しさを表現しています。何より素晴らしいのは、曲そのものが画一的なイメージを植え付けるものではなく、自由で開放的なイメージを掻き立てること。つまり、リスナーそれぞれの答えが用意されているのです。

 

しばし人工物や人間関係から離れ、偉大な自然について思いを巡らすことほど素晴らしいことはありません。そのあとも自然の雄大さや空気感を表現したような音楽性は続き、「4-Sea Sketch」では美しい海の情景へと音楽の舞台は変わる。制作者のボーカル/ギターを融合させ、同じように開けた感覚のあるアンビエントを楽しむことが出来るでしょう。シンプルなループサウンドを中心に構成されていますが、ときどき抽象的なサウンドスケープから神秘的なシークエンスがぼんやりと立ちのぼってくることもある。これらの主張性を削ぎ落としたサウンドは、ヒーリング音楽に近い領域に差し掛かる。アウトロのピアノの静かで穏やかなフェードアウトも聞き逃すことが出来ません。曲のイメージを最大限に引き出そうとしています。

 

「5-The Way Of The Wind」は意外な転遷を辿る曲で、異色のナンバーとなっています。ヒーリング効果を持つアンビエントからダンサンブルなトラックに移り変わる。シューゲイズのギターを微細に重ね合わせ、ベースラインでそれらの音像を縁取っている。また、前半部ではボーカルアートの要素が強調され、心地良いサウンドが展開されますが、イントロから続いているベースラインが強調され、バスドラムが追加されると、曲調が大きく変化し、ダウンテンポ風のトラックへと変貌を遂げる。最終的にはレイヴサウンドを通過したチルウェイブ風のサウンドへとダイナミックな展開を描く。「6-Amare」では再び、オーガニックなアンビエントに立ち返り、ボーカルの録音を元にした重厚感のあるサウンドが緻密に組み上げられていく。この曲にはキース・ケニフ(Helios)が参加していますが、『Eingya』(2006)に収録されている「Coast Off」を微かに彷彿とさせる広大なサウンドスケープが描かれています。

 

 

「7-Over Ocean Waves」ではアンビエントの持つ神秘的な性質が生かされています。精妙なシークエンスの向こうからピアノの断片的なフレーズ、そしてボーカルのサンプリングが立ち表れ、美しく開けた無限の音楽が続いていく。高ぶった気持ちを鎮め、心に治癒と落ち着きを与える。アンビエントの持つヒーリング的な要素、エンヤのような清涼感のあるボーカルが特徴です。ぜひアウトロに至るまでの音の見事な運びにじっくりと耳を傾けていただきたいです。

 

続く「8−What Carries Us」は、ポストクラシカル風の楽曲で、Library Tapesの系譜にあるサウンドにテクノの要素が付け加えられています。特に、曲の表情付けとなる電子音楽の要素は中盤から終盤に掛けて、更に深遠さを増していき、音の持つ核心的な箇所へとリスナーを惹きつける。シンセリードのループは最終的にサウンドの変革を経て、オルガンのような崇高な響きを持ち合わす。入念な曲制作が見事な形で昇華された曲で、アーティストの最高傑作の一つです。

 

以降の収録曲では、ポストロックや音響派に属するサウンドアプローチを見出すことが出来ます。例えば、「9−Esperance」はExplosions In The Sky、Sigur Ros、Mogwaiを彷彿とさせる映画的な趣を持つギターロックをダウンテンポの領域から解釈している。複数のギターの録音を重ねあわせ、夢想的で叙情的なテクスチャーを組み上げている。ゆったりしたビートと心地よいギターの兼ね合いに注目です。この曲はまたギターの持つ静かな魅力が織り交ぜられています。ギターサウンドの音量的なクライマックスを迎えたのち、静謐なピアノが通り過ぎていく。

 

アンビエントは、詳しい方であればご存知と思われますが、純粋な環境音楽の他に、チルウェイブやレイヴなどの影響をより抽象的にし、さらにそれらを洗練させたクールダウンのためのダンスミュージックの要素を備えています。


続く「10−Rest In Fight」は、そういった特徴がよく表れています。この曲ではEDMの音像を抽出し、扇動的な側面ではなく、治癒的な側面を強調している。それらの要素は、前曲のようなシューゲイズ、ポスト・ロックの音響派としての側面、そしてボーカルアートと結びつきを果たし、アンビエントの今一つの知られざる性質を提示します。闘争的な表現とは縁遠い雄大なサウンドは、この音楽の持つ慈愛的な性質を暗示している。このアルバムでは、例外的に崇高な感覚に縁取られはじめ、オーケストラ曲の持つ、壮大さへと変容していく。しかし、それらは細やかで控えめな性質を中心に構成されています。作曲的には、大きなものを避けていた制作者の表現性の清華とも称することが出来るでしょう。

 

 

ホリー・ケニフの作曲にはときどき幻想的な要素が登場しますが、特にアルバムのクローズを聴くと、この点が把握しやすいかもしれません。 「11-Far Land」は環境音楽やヒーリング音楽に近く、シンプルで技巧を衒わないピアノの演奏をベースにし、背景には同じようにボーカル録音を含めたアンビエントテクスチャーを敷き詰め、リスナーを果てしない幻惑の奥底へと誘う。「新ロマン派」といえば、大げさになるかもしれませんが、ポーランドの作曲家が探求したロマンチシズムを現代的な音楽家としてモダンなサウンドに組み替えています。このアルバムは、ドイツ的ではなく、どことなく北欧的な雰囲気が漂う。ピアノの緻密な構成力はボーカル録音と組み合わされると、独特な印象を生み出し、最終的には音楽の持つ神秘的な一面に近づく。

 

ローレンス・イングリッシュは”アンビエントを建築的に解釈することがある”と述べていますが、ホリー・ケニフの場合、現段階の最終形とは、ギリシア彫刻などに見られる塑像の美しさでもあるようです。こういった音楽的な凄さのある楽曲が出てきた事例はこれまであまりなかったように思えます。ホリー・ケニフの象徴的なアルバムが誕生したとも言えるかもしれませんね。

 

 

「Far Land」

 

 

Hollie Kenniff(ホリー・ケニフ)のニューアルバム『For Forever』は本日(11月6日)にNettwerk Music Groupから発売されました。ストリーミングはこちらから。



南アフリカが生んだニュースター、Moonchild Sanellyムーンチャイルド・サネリーがニューシングル「To Kill a Single Girl (Tequila)」を発表しました。この曲はEDMをモチーフにしたメロディアスなナンバーで、ハイパーポップのエッセンスが追加されている。(試聴はこちらから)

 

「To Kill a Single Girl (Tequila)」は、ムーンチャイルドのニュー・アルバムからの4枚目のシングルで、「アルコールで真実を語ることの危険性を歌った、メロディアスなパワーバラード」[THE TIMES]。「To Kill A Single Girl (Tequila)」はテキーラを使った別れの曲で、サネリーの言葉遊びとリリックの巧みさ、そして最もシリアスなテーマにもユーモアのセンスを発揮している。

 

ムーンチャイルドはこう語っている。「私はいつも正直だけど、自分の真実に関しては不必要なとげがあった」

 

ミュージックビデオの監督を務めたジェシー・ロスは、「このビデオのコンセプトは、ムーンチャイルドのテキーラとの愛憎関係を遊び心で表現したものだ。スノーリカムのチェストカメラを使い、彼女の紛れもない顔と髪に固定することで、酩酊感を映し出す没入的な視点を作り出し、同時にビデオのエネルギーを遊び心とポジティブなものに保つことを目指した」と述べている。


「撮影は、ホテルからタクシーで会場まで移動し、Coloursでのライブ・パフォーマンスで最高潮に達した。ビデオには歌詞を反映した台本的な要素も織り交ぜていますが、率直で予定外の瞬間もたくさんありました」

 

「ムーンチャイルドのファンとのやりとりや、彼女のチームとの楽屋でのやりとりなど、当日の生のエネルギーをリアルに感じることができる。自然発生的な瞬間をとらえるという予測不可能な性質が、エキサイティングで本物のレイヤーを映画に加え、監督として私を満足させてくれる」


Moonchild Sanelly(ムーンチャイルド・サネリー)の新作アルバム『Full Moon』は2025年1月10日にTransgressive Recordsからリリースされる。

 

 

 「To Kill a Single Girl (Tequila)」

Elliot Galvin


先日、ニューシングル「From Beneath」を発表したエリオット・ガルビンが、来年2月にニューアルバム『The Ruin(ザ・ルイン)』をリリースすることがわかった。この発表と合わせて新曲「A House, A City」が配信された。


受賞歴もある作曲家で、シャバカ・ハッチングスのピアニストとしても知られる即興演奏家のエリオット・ガルビンは、英国ジャズ界のスーパーグループ、ダイナソーのメンバーで、マーキュリー賞にもノミネート経験をもつ。


グラミー賞、マーキュリー賞、MOBOにノミネートされたレコーディング&ミキシング・エンジニア、ソニー・ジョンズ(トニー・アレン、アリ・ファルカ・トゥーレ、ローラ・ジャード)との3回のセッションでレコーディングされた今作『ザ・ルイン』は、エリオットの新たな出発点となる作品だ。「このアルバムは、ジャンルや位置づけを気にすることなく、僕に影響を与えたすべての音楽を組み合わせた、これまでで最もパーソナルな作品だ。自分という人間を最もピュアに表現したアルバムだと思う」とエリオットは話している。


アルバムには、著名なベーシスト兼ヴォーカリストのルース・ゴラー、ポーラー・ベアのドラマーでパティ・スミス/デーモン・アルバーンのコラボレーターでもあるセバスチャン・ロックフォード、そして長年のコラボレーターであるリゲティ弦楽四重奏団といったUK音楽シーンの錚々たるミュージシャンたちが参加している。


すでにファースト・シングル「From Beneath」が公開となっているが、本日新たな新曲「A House, A City」が配信された。同楽曲は、エリオットにとっての最初のピアノで弾いた最後の即興演奏をiPhoneで録音したものから始まり、その後、彼の家と成長期の思い出にインスパイアされた個人的で繊細なソロ曲へと発展していく。


そしてこの度、エリオットと映像作家のアレポとジェイムス・ホルコムが古いアップライトピアノに火をつけるというドラマティックなミュージック・ビデオも公開された。ビデオはアナログのボレックスカメラで撮影され、出来上がったフィルムは化学的に劣化させられ、ピアノの火がフィルムそのものを燃やしているように見える。このコンセプトは、アルバム全体に流れる廃墟と記憶の劣化(ruin)というテーマと結びついており、エリオットが新しい何かを求めて、これまでやってきたことをすべて解体するということを表している。


今回のシングル「A Horse, A City」とミュージック・ビデオについて、エリオットは次のように話している。


「子供の頃に使っていたピアノを売る直前に、座って即興演奏を録音したんだ。このピアノは祖父が亡くなった後に彼のお金で買ったもので、すごく特別な意味を持つ。アルバムの核になるとわかっていた即興曲があったんだけど、それを作るまでに5年くらいかかった。レコーディングしていたスタジオにボロボロになった古いピアノがあって、それでこの曲を録音するのが相応しいと感じたんだ。人生を生きてきたピアノには、壊れやすくて美しいものがある。音の不完全さには、この音楽の核心となる人間味がある」

 

 

 「A House, A City」



 

Elliot Galvin 『The Ruin』


【アルバム情報】

アーティスト名:Elliot Galvin(エリオット·ガルビン)

タイトル名:The Ruin(ザ・ルイン)

品番:GB4005CD (CD) / GB4005 (LP)

発売日:2025年2月発売予定

レーベル:Gearbox Records


<トラックリスト>

Side-A


1. A House, A City

2. From Beneath

3. Still Under Storms

4. Gold Bright

5. Stone Houses

Side-B


1. High And Wide

2. In Concentric Circles

3. As If By Weapons

4. Giants Corrupted

5. Fell Broadly

6. These Walls



アルバム『The Ruin』のご予約:  https://bfan.link/the-ruin

Credits:

Elliot Galvin – Piano, Synthesizers and Electronics

All Tracks

 

Ruth Goller – Bass and Voice

Tracks 2, 3, 4, 5, 7, 10

 

Sebastian Rochford – Drums

Tracks 2, 3, 4, 5, 7, 8

 

Ligeti Quartet

Freya Goldmark – Violin I

Patrick Dawkins – Violin II

Richard Jones – Viola

Val Welbanks – Cello

Tracks 3, 4, 5, 7, 9

 

Recorded at Giant Wafer Studios, Powys 

Recorded, Mixed and Co-produced by Sonny Johns

Mastered by Caspar Sutton-Jones

Co-produced by Sebastian Rochford

Produced by Elliot Galvin

 

All Music Composed by Elliot Galvin

All Music Published by Gearbox Music Publishing



Elliot Galvin:

 

受賞歴のある作曲家、ピアニスト、即興演奏家。作品は主に、即興演奏の取り入れと、様々な環境と文脈における音の折衷的な並置の使用で知られている。Downbeat誌とJazzwise誌の両方で2018年の年間最優秀アルバムに選ばれ、2014年には栄誉ある"ヨーロピアン・ヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー"を受賞した。

 

これまでシャバカ・ハッチングス、ノーマ・ウィンストン、マリウス・ネセット、マーク・ロックハート、エマ・ジーン・サックレイ、マーキュリー賞ノミネート・バンドのダイナソーなどとのレコーディングや国際的なツアーを数多くこなしてきた。

 

即興演奏家としては、マーク・サンダース、ビンカー・ゴールディングとのアルバムや、パリのルイ・ヴュイトン財団でのコンサートで録音された全曲即興のソロ・ピアノ・アルバムをリリースしており、Guardian誌の"アルバム・オブ・ザ・マンス"やBBCミュージック誌の"アルバム・オブ・ザ・イヤー"に選ばれている。

 

作曲家としては、ロンドン・シンフォニエッタ、リゲティ弦楽四重奏団、アルデバーグ・フェスティバル、ジョンズ・スミス・スクエア、ロンドン・ジャズ・フェスティバルなど、一流のアンサンブルやフェスティバルから委嘱を受けている。また、オーディオ・アーティストとしても活動し、ターナー・コンテンポラリー・ギャラリーや、最近ではオックスフォード・アイデア・フェスティバル等でインスタレーションを展示している。2024年10月、Gearbox Recordsからの初リリースとなるシングル「From Beneath」を発表。2025年2月にはアルバム『ザ・ルイン』が発売決定。

 

Photo: Nelson Espinal


Mdou Moctorがニューシングル「Takoba (Injustice Version) 」を Matadorからリリースしました。オリジナルバージョンでは、同曲はギターソロが連動する壮大なクレッシェンドへと展開していく。アレンジバージョン『Tears Of Justice』では、伝統的なパーカッションとコール・アンド・レスポンスのヴォーカルを前面に出し、親密で催眠的な楽曲に仕上がっている。(ストリーミングはこちら)


来年早々、Mdou Moctarは、アコースティック編成で全米ツアーを行い、秋にキャンセルされたカナダ公演も行う予定。詳しい日程は近日中に発表される。


このアルバムは、国家的大災害にその存在を負っている。2023年7月、ニジェール大統領がクーデターで退陣したとき、ムドゥ・モクターは米国でライブツアー中だった。

 

モクタール、アフムードゥ・マダサネ、スレイマン・イブラヒムの3人は家族のもとに帰ることができなかった。彼らはこの機会を捉え、『正義のための葬送』の続編として、自国の新しく深刻な状況を反映した作品を録音することを決めた。ツアーが終了した2日後、カルテットはエンジニアのセス・マンチェスターとともにブルックリンのバンカー・スタジオで『Tears of Injustice』のレコーディングを開始した。


彼らは『ティアーズ』のレコーディングをひとつの部屋で一緒に行うことにし、セッションはルーズでストリップダウンされ、自然発生的に行われた。1ヵ月後、バンドはニジェールに帰国することができ、その際、ベーシスト兼プロデューサーのマイキー・コルトゥンはマダサネにズーム・レコーダーを渡した。リズム・ギタリストはそれを使って、コール・アンド・レスポンスのヴォーカルをとるトゥアレグ族のグループを録音し、後に最終ミックスに加えた。


『Funeral for Justice』では、ニジェールとトゥアレグ族の窮状に対する怒りが、音楽の音量と速度に端的に表現されている。他方、『Tears Of Justice』では、曲は増幅されることなく、その重みを保っている。貧困、植民地からの搾取、政治的動乱の絶え間ない渦に巻き込まれた国の悲しみを伝える。これはトゥアレグのプロテスト・ミュージックであり、生々しく本質的な形である。

 

前作アルバムではMdou Moctorのハードロックバンドとしての姿、そして編曲バージョンである次回作は西アフリカのニジェールの民族音楽の伝承者としての姿を捉えることが出来る。



「Takoba(Injustice Version」





 

 

長崎出身の日本人シンガー・ソングライター/クリエイターのAi Kakihiraが、今年5月にリリースされた第1弾デジタルEP『IN』に続く第2弾、『MAKUNOUCHI』が全世界配信された。なお、最新EPから新曲「♡」が公開となったので、チェックしよう!


先月には、彼女自身のハイライト曲ともいえる「IBU」のMuchaMuchaMによるリミックスを発表したことが記憶に新しい。Ai Kakihiraのサウンドは、チル・ウェイヴ、ディスコ、ソウル、テクノ、グローバル・ミュージック、ドリーム・ポップなどの要素を巧みに取り入れたユニークなサイケデリック・ブレンド。彼女が生み出す繊細なヴォーカルとメロディは、濃密でありながら複雑でダイナミックなアレンジに満ちている。


「私は音楽制作において、古いものと新しいもの、自然と人為など、異質性が高い要素や対照的なものを混ぜ合わせ、なおかつポップに鳴らすことをとても大事にしています。その過程で感じる魔法のような感覚は、私を常に新たなる音楽の探求へと駆り立て、未来の音楽シーンに向けて前進する原動力となっています。新しい日本の響きを楽しんでいただけたら何よりです」と本人は話す。


さらに今作について彼女は、次のようなコメントを寄せている。「私はあなたになろうとしたり、あなたが私だと思ってしまったのかもしれない。私と世界の話だと思っていたけど、あなたと私だけの話だったのかもしれない」


そんなAi Kakihiraは来年1月に沖縄県にて開催される"Music Lane Festival Okinawa 2025"に出演することが決定している。同イベントは、主にアジア各都市から音楽関係者を招きアーティストとのマッチングを行なう目的で開催されている。沖縄とアジアの音楽ネットワーク構築、沖縄市(コザ)発の新たな音楽産業の創出などを目指す国際ショーケース・フェスティバルとなっている。今後、南日本(九州以南)地域のミュージックシーンを盛り上げる活動にも注目しましょう。


「♡」






◾️「Listen and Believe」  KEFの主催するポッドキャスト収録が11/7に開催



イギリスのオーディオメーカー、KEFの主催するトークイベント「Listen and Believe」が11/7(木)にKEF Music Gallery Tokyo(南青山)にて開催された。この日は15名ほどの観客を前に魅力的なポッドキャスト収録が行われた。(メーカーの特集記事はこちらからお読み下さい)


メインゲストにAi Kakiharaを迎え、メインMCにはイギリス人のニック・ラスコムさん、そしてサブMCには西川顕さんが登場。今回のポッドキャスト収録は、メーカーにとって8回目となり、トークセッションを中心に45分程の公開収録が行われた。Ai Kakihira さんが音楽を始めるきっかけや曲作りで意識していることについてエピソードを語った。さらに、思い入れのある曲を紹介しました。
 
 
 
 
 
現在(12/5)、この公開収録の模様は、MixcloudSpotifyApple Podcastsにて視聴可能です。
 
 
 
 
Ai Kakihara 「MAKUNOUCHI』 - New EP


 
 
 <トラックリスト>
1. INTRO
2.雨上がりのI Miss You Pt.2
3.♡
4.いつかは
5.percusshun

<商品情報>
アーティスト名: Ai Kakihira(カキヒラ・アイ)
タイトル名: MAKUNOUCHI(マクノウチ)
レーベル: Gearbox Records
 
配信リンク: https://bfan.link/makunouchi