この曲はアルバムの最後の曲(ディールが制作の最後にレコーディングした曲)だが、サウンド的には「A Good Time Pushed 」は「Coast」のビーチのような、ホーンが浮き立つ空気感と、「Crystal Breath」のダークでギザギザした並置の間に存在している。この曲は故スティーヴ・アルビニがシカゴのエレクトリカル・オーディオ・スタジオでエンジニアを務めた。彼女が長年一緒に仕事をしてきた親友である。ある瞬間、ナレーターは "この世からあなたについていく "準備ができていて、次の瞬間には "あなたを突き放したい "とうずうずしている。
ファジーでドライヴ感のあるギターは、ラスト・スプラッシュ時代のブリーダーズ、アンプスを彷彿とさせる。バンド・メンバーのジム・マクファーソンとディールの双子の妹ケリーがこの曲に参加していることを考えるとぴったりだ。「A Good Time Pushed」は、満足のいくほど無気力なスラッカー・ロックで、ゆったり空を漂う雲を眺めながら過ごす一日にぴったりのサウンドトラック。チャンキーで歪んだギターが、チリンチリンと鳴るシンセと天空のハーモニーでバランスを取り、キム・ディールは "私たちは楽しい時間を過ごしている "と主張し続けている。
彼らはまた、18分の曲「The Decline」で最後のショーを締めくくり、Pennywise(ペニーワイズ)のフレッチャー・ドラッヂ、Offspring(オフスプリング)のデクスター・ホランド、Circle Jerks(サークル・ジャークス)/Bad Religion(バッド・レリジョン)のグレッグ・ヘットソン、Less Tha Jake(レッス・ザン・ジェイク)のJR、Foo Fighters(フー・ファイターズ)/No Use For A Name(ノー・ユース・フォア・ア・ネーム)のクリス・シフレット、Rise Against(ライズ・アゲインスト)のメンバーなど、大量のベテラン・パンクスをステージに上げ、フレッチャーは複数のギターを叩き壊した。NOFXのメンバーとして最後のギター・クラッシュだ。
NOFXはまた、ファット・マイクがこのライヴで演奏するためだけに新曲を書き、決してレコーディングしないと公言して憚らなかった「We Did It Our Way」をステージで演奏し、さらに、グリーン・デイの 「Basket Case」のカバーの一部を演奏した後、自分たちの「The Longest Line」をプレイした。Mighty Mighty Bosstones(マイティ・マイティ・ボスストーンズ)の元メンバー、ネイト・アルバートを「180 Degrees 」に参加させたり、Minor Threat(マイナー・スレット)の 「Straight Edge」をカヴァーし、33曲のセットリストを通して様々なチャレンジが行われた。
前作『Wall Of Eyes』では収めきれなかった音楽的な実験、特に、リズムにおける実験色が強い作品だ。
その中で、スマイル作品では、お馴染みとなったロンドン・コンテンポラリー・オーケストラの美麗なストリングスのパッセージがその間にドラマティックな響きをもたらしている。表向きの印象では、『Kid A』の延長線上にあるような作風だが、よく聴くと、少しテイストが異なることに気づく。もしかすると、『The Other Side Of Wall Of Eyes』とも称するべき作品かもしれない。
「Zero Sum」では、Killing Joke、Gang Of Fourのリズムの変革を再解釈し、それらをマスロックと結びつけている。察するに、ギタリストとしてグリーンウッド(最近はピアノも演奏する)がポストロックに凝っていることは、『The Wall Of Eyes』において暗示されていた。この曲は、シリアスになりがちだった前作に音楽的なユーモアを添え、聴きやすい内容たらしめている。
「Don’ t Get Me Started」はライヴステージで最初に披露された曲だったが、現時点ではレコーディングの方が良く聞こえる。MOGWAIが最初期のポスト・ロックのアルバムでことさら強調していたテクノとロックのミクスチャーという形は、彼らのうち二人が2000年代に追求していた。それらは懐かしさがあると同時に、リズムとして洗練された印象を覚える。この曲も音楽性のユーモアを強調するという点では、「Zero Sum」と同じ系統にあるトラックと言えよう。
「6-Life In Number」は、エリック・サティの「ジムノペティ」の系譜にあるピアノの演奏で始まる。それに続くのは、ドーン・リチャードのニューオリンズ・バウンスの語りだ。ゾーンの演奏は基本的に精妙な感覚に縁取られているが、時々、アナログディレイのアンビエンスを織り交ぜ、通奏低音のような役割を持つリチャードのスポークンワードを補佐している。この曲は、従来の音楽ジャンルにはなかった形式で、「アンビエント・ヒップホップ」の誕生の瞬間と言えそうだ。ただ、これはすでにダニー・ブラウンが昨年リリースした『Quaranta』で暗示していた手法であるが......。
「7-Moments For Stillness」は、ストリングスを編集においてデチューンしたドローンである。これは米国のローレル・ヘイローや日本のサチ・コバヤシに比する手法で、ドローンミュージックの形式が選ばれている。この曲もまた、 インタリュードやムーヴメントの役割を持ち、曲と曲のつなぎの役割を果たしている。なぜ、こういった曲を入れるのかといえば、核心を突く楽曲ばかりだと聞き手が疲弊してしまうからである。しかし、単なる間奏的な曲とも言い難いものがあり、アルバムにバリエーションを与えているのみならず、収録曲全体に何らかの働きかけをしている。その後、アルバムは終盤に差し掛かり、オープニングに見受けられるような、ペーソスに充ちたネオソウルをベースに、音楽そのものがダイナミックさと迫力味を増していく。その音響効果を担うのがシネマ・ストリングスだ。続く「8-The Dancer」では、シネマティックな音楽の性質が強まり、リチャードのヴォーカルが主役となる。それは舞台の後ろにいたはずのリチャードにスポットライトが当てられ、舞台の中央に出てくるような演出効果である。そのあと、それとは対極的な音楽表現が登場する。氷のように冷たい響きを持つザーンのアルペジオをもとに、シネマティックなポップスが構築される。「9-Breath Out」は、音楽における演劇性が確立された瞬間であり、ポピュラー音楽の範疇で展開される。また、バレエ音楽の趣向もあり、何らかの登場人物の動きの効果を音楽が体現しているかのようである。これらは単一の音楽表現に留まることなく、ネオソウル、ジャズ、オーケストラというように、多角的なジャンルを内包させながら、音楽におけるストリーテリングのような役割を果たしている。
2018年の『Kingdom of Colour』では、インド、オーストラリア、モロッコ、アメリカ、そしてそれ以外の国々を旅して得たアイデアやフィールド・レコーディングの音のコラージュを織り込んだ。テキサス出身のトリオ、Khruangbinとのコラボレーションによるリード・シングル「Feel Good」は大ヒットを記録し、アルバム自体も広く称賛された。ダンス・ミュージックのバイブル『Mixmag』は、マリブー・ステートを今年のアーティストのひとりに選出した。
2000年代半ばに一緒にDJを始めた2人は、かつてロンドンにあった伝説的なクラブにちなんで名付けられた人気シングル「Turnmills」など、作品を通してUKダンス・ミュージックの系譜に敬意を表している。続いて2019年には、HAAi、Maceo Plex、DJ Tennisらのリワークをフィーチャーした『Kingdoms In Colour Remixed』をリリース。このコンピレーションは、彼らの幅広い音楽的嗜好を証明するもので、ソウル、ディスコ、よりバンピーなハウスのグルーヴをUKジャズやネオ・クラシックとリンクさせている。
『DIA』は1月17日にDominoからリリースされる。このアルバムは、2020年のデビュー作『acts of rebellion』、DJ PythonとのコラボレーションEP『♡』に続くものだ。本日、彼女はシングル「BROKEN」とロスモースとの共同監督によるビデオを公開した。以下よりご覧ください。
The Horrors(ザ・ホラーズ)がニューアルバム『Nightlife』を発表し、そのファーストシングル "The Silence That Remains" を公開した。『Nightlife』は2025年3月21日にFictionからリリースされる。バンドにとって8年ぶりのニューアルバムとなり、ラインナップも変更されている。
ホラーズの最後のアルバムは2017年の『V』で、2021年には『Lout』と『Against the Blade』のEPをリリースしている。
バンドはプレス・ステートメントの中で、ニューシングルについて次のように語っている。「"The Silence that Remains "は、午前3時に不眠症になりながら街を歩き、僕らの足跡を辿り、過去を寝かせる。私たちの新しい章が始まり、皆さんと一緒に歩むことを楽しみにしています。ホラーズは終わらない」
The Horrors 『Nightlife』
Label: Fiction
Release: 2025年3月21日
Tracklist:
1. Ariel
2. Silent Sister
3. The Silence That Remains
4. Trial By Fire
5. The Feeling Is Gone
6. Lotus Eater
7. More Than Life
8. When the Rhythm Breaks
9. LA Runaway
The Weather Station(トロントを拠点に活動するSSW、タマラ・リンデマンのプロジェクト。メンバーはその都度入れ替わる)が7thアルバム『Humanhood』を発表した。ファーストシングル「Neon Signs」を公開した。MVはリンデマンはジャレッド・ラーブが共同監督している。