3月12日、東京のプログレッシブロックバンド、PSP Socialのライブ音源『PSP Social live#3』がリリースされる。2023年の10月に難波ベアーズで開催された「天国注射の秋」よりNAGARERUのライブ音源と12月に開催されたJohn Tremendous主催の即興演奏会よりBa.Vo.アバラの即興演奏を収録。


NAGARERUの音源のミックスはHazuki Chigusaが担当。PSP Socialは4月末に4thアルバム「Second Communication」のリリースも予定している。


『PSP Social live#3』/ PSP Social


2024年3/12 配信限定リリース

【Track List】

1.NAGARERU(live ver.)

2.improvisation ”WAVE”


配信リンク:


https://big-up.style/SwVspELGes


ビリー・アイリッシュと弟のフィニアス・オコンネルは、日曜日の夜に開催された第96回アカデミー賞で、バービーの「What Was I Made For?」を披露した。ストリングス・オーケストラがふたりのパフォーマンスに参加した。


「What Was I Made For?'」は、マーク・ロンソンとアンドリュー・ワイアットが作詞作曲した。


ライアン・ゴズリングが演奏したバービーの楽曲「I'm Just Ken」、ジョン・バティステとダン・ウィルソンによる「American Symphony」の「It Never Went Away」、スコット・ジョージによる「Killers of the Flower Moon」の「Wahzhazhe (A Song for My People)」、ダイアン・ウォーレンが作詞作曲した「Flamin' Hot」の「The Fire Inside」を抑え、オリジナル楽曲賞に輝いた。


「オッペンハイマー』で最優秀作曲賞を受賞したルートヴィヒ・ヨーランソンは、アカデミー賞3部門ノミネート中2度目の受賞となった。


彼は、『アメリカン・フィクション』のローラ・カープマン、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』のジョン・ウィリアムズ、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のロビー・ロバートソン、『プア・シングス』のジャースキン・フェンドリックスとともにノミネートされていた。


先月、アイリッシュとフィニアスは2024年のグラミー賞で「What Was I Made For?」を披露した。新作アルバムの発表の噂が流れているが、現在のところは公式なアナウンスは行われていない。


 

John Adams


ジョン・クーリッジ・アダムス(John Coolidge Adams)は1947年生まれの米国の現代音楽家。1971年にハーバード大学でレオン・キルヒナーに学んだ後、カルフォルニアに移り、サンフランシスコ音楽院で教鞭と指揮者として活躍、以後、サンフランシスコ交響楽団の現代音楽部門の音楽顧問に就任する。1979年から1985年まで楽団の常勤作曲家に選出される。

 

その間、アダムスは『Harmonium(ハーモニウム)』、『Harmonielehre(和声学)』を始めとする代表的なスコアを残し、作曲家として有名になる。以後、ニュー・アルビオン、ECMといったレーベルに録音を提供し、ノンサッチ・レコードと契約する。1999年には『John Adams Ear Box』を発売した。


ジョン・アダムスの作風はミリマリストに位置づけられる。当初は、グラスやライヒ、ライリーの系譜に属すると見なされていたが、コンポジションの構成の中にオリヴィエ・メシアンやラヴェルに象徴される色彩的な和声法を取り入れることで知られる。


その作風は、新ロマン主義に属するという見方もあり、また、ミニマルの未来派であるポストミニマルに属するという解釈もある。彼の作風では調性が重視されることが多く、ジャズからの影響も指摘されている。

 

管弦楽『Fearful Symmetries」ではストラヴィンスキー、オネゲル、ビックバンドのスウィングの技法が取り入れられている。また、ライヒのようなコラージュの手法が採られることもある。

 

チャールズ・アイヴズに捧げられた『My Father Knew Charles Ives』でもコラージュの手法を選んでいる。1985年の歌劇『Nixon In China(中国のニクソン)』の晩餐会の場面を管弦楽にアレンジした『The Chairman Dances(ザ・チェアマン・ダンス)」は管弦楽の中では再演される機会が多い。

 

ジョン・アダムスの作曲家としての主な功績としては、2002年のアメリカ同時多発テロを題材に選んだ『On The Transmission of Souls』が名高い。この作品でアダムスはピリッツァー賞を受賞した。ロリン・マゼール指揮による初演は2005年度のグラミー賞の3部門を獲得した。



Phrygian Gates / China Gates  (1977)

 


 

ジョン・アダムスのピアノ・スコアの中で特異なイデアが取り入れられている作品がある。『Phyrygian Gate and China Gates』であり、二台のためのピアノ協奏曲で、マック・マクレイの委託作品で、サラ・ケイヒルのために書かれた。

 

この曲は1977年3月17日に、サンフランシスコのヘルマン・ホールで、ピアニスト、マック・マクレイにより初演された。和声法的にはラヴェル、メシアンの近代フランス和声の系譜に属している。

 

この2曲には画期的な作曲概念が取り入れられている。「Gates- 門」は、なんの予告もなしにモードが切り替わることを意味している。つまり、現実の中に別次元への門が開かれ、それがミルフィール構造のように移り変わっていく。


コンポジションの中に反復構造の意図が込められているのは事実だが、音階構造の移行がゼクエンツ進行の形を介して段階的に変化していく点に、この組曲の一番の面白さが求められる。つまり、ライリー、ライヒの作品とは少し異なり、ドイツのハンス・オッテ(Hans Otte)のポスト・ミニマルの系譜にあるコンポジションと言える。さて、ジョン・アダムスは、このピアノの組曲に関してどのように考えているのだろうか。


 



 

「Phrygian Gates(フリギアの門)」とその小さなコンパニオン作品である「China Gates(中国の門)」は作曲家としての私のキャリアの中で重要な時期の産物でした。

 

この作品は、1977−78年に新しい言語での最初の一貫した生命として登場したという事実のおかげで、私の「Opus One」となる可能性を秘めている。1970年代のいくつかの作品、アメリカンスタンダード、グラウンディング、いくつかのテープによる作曲は振り返ってみると独創的であるように見えますが、まだ自分自身の考えをまとめる手段を探している最中でした。


「Phrygian Gates」 はミニマリストの手段の強い影響を示していて、それは確かに反復的な構造の基づいています。しかし、アメリカのミニマリストにとどまらず、ハワード・スケンプトン、クリストファー・ホッブズ、ジョン・ホワイトのようにあまり知られていない英語圏の実践者は、この作品を制作する上で私の念頭に置かれていた。


1970年代はそもそも、ポスト・シェーンベルクの美学の過程がセリエリズムの原則にそれほど希望を見出さない作曲家によって新しい挑戦が始まった時代でした。これはまた、言い換えれば、新しい音楽における巨大なイデオロギーとの対立の時代だったのです。私はその頃、ジョン・ケージの方法に同様に暗い未来を見出していたが、それは合理主義と形式主義の原則に立脚しすぎているように私には思えたのです。


例えば、『易経』を参考にして作曲法を決定することは、『トーン・ロー』を参照して作曲することとそれほど違いがあるとは思えなかった。ミニマリズムというのは、確かに縮小された、ときには素朴なスタイルなのですが、私にこの束縛から抜け出す道を与えてくれたのです。調性、脈動、大きな建築構造の組み合わせは、当時の私にとって非常に有望であるように思えたのです。 

 

 

 「Phrygian Gates」

 


『Phrygian Gates』は、私がミニマリズムのこうした可能性にどのようにアプローチしたかを明確な形で示している。

 

また、逆説的ではあるが、私が当初からこのスタイルに内在する単純さを複雑化し、豊かにする方法を模索していたという事実も明らかにしている。よく言われる、”ミニマリズムに飽きたミニマリスト”という言葉は、別の作家が言ったものだが、あながち的外れではないでしょう。


『Phrygian Gates』は、調のサイクルの半分を22分かけて巡るもので、「平均律クラヴィーア曲集」のように段階的に転調するのではなく、5度の輪で転調していく。


リディアンモードとフリジアンモード(注: 2つとも教会旋法の方式)の矩形波が変調する構造になっている。曲が進むにつれて、リディアンに費やされる時間は徐々に短くなり、フリギアに費やされる時間は長くなる。

 

そのため、一番最初のAのリディアンの部分は曲の中で最も長く、その後、Aのフリジアンの非常に短いパッセージが続く。次のペア(Eのリディアンとフリジアン)では、リディアンの部分が少し短くなり、フリジアンの部分がそれに比例して長くなる。そして、コーダが続き、モードが次々と急速に混ざり合う。「ゲート」とは、エレクトロニクスから借用した用語で、モードが突然、何の前触れもなく変化する瞬間である。この音楽には「モード」はあるが、「変調」はない。


私にとって『Phrygian Gates』がいまだに興味深い理由を挙げるとするなら、その形状の地形と、波紋を思わせる鍵盤のアイデアの多様さである。

 

波が滑らかで静かなときもあれば、波が押し寄せてフィギュレーションが刺さるような場合もある。ほとんどの場合、それぞれの手を波のように動かし、もう一方の手と連続的に調和するパターンとフィギュレーションを生み出すように扱う。これらの波は、常に短い「ピング音」によって明瞭に表現され、小さな道しるべとなり、内部の小さな単位をおよそ「3-3-2-4」の比率で示す。


『Phrygian Gates』は一種の巨大構造であり、相当な肉体的持久力と、長い音のアーチを持続する能力を持ったピアニストが必要とされます。一方、『China Gates』は若いピアニストのために書かれたものです。演奏者のヴィルトゥオーゾ的な技術的効果に頼ることなく、同じ原理を利用している。

 

この曲もまた、2つのモーダルな(様式的な)世界の間を揺れ動くが、それは極めて繊細に行われている。この曲は、暗さ、明るさ、そしてその間に内在する影の細部に真摯に注意を払うことを求めるような曲であると私には感じられる。-John  Adams


「China Gates」


第96回アカデミー賞が昨夜(3月10日)開催され、予想通りの結果となった。クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』は、作品賞、監督賞、主演男優賞(シリアン・マーフィ)、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr)を含む7部門を受賞し、コンペティションを席巻した。


今回もまた、大方の予想通り、ヨルゴス・ランティモスの『プア・シングス』も健闘し、エマ・ストーンは、マーティン・スコセッシ監督の『花ざかりの君たちへ』の演技でリリー・グラッドストーンが最有力候補だったにもかかわらず、(2017年の『ラ・ラ・ランド』での受賞に続き)2度目の主演女優賞まで獲得した。


ミッキーマウスクラブで鍛えたライアン・ゴズリングは、ステージで『バービー』の「I'm Just Ken」を披露して輝いたが、ビリー・エイリッシュとフィニアス兄弟がグラミー賞を受賞したサウンドトラック「What Was I Made For?」、ジョナサン・グレイザーが監督した『ゾーン・オブ・インタレスト』も2部門を受賞した。日本映画界からは「ゴジラ-1.0」と「君たちはどう生きるか」が受賞。


2024年のアカデミー賞受賞者リストは以下を参照のこと。


Best Picture


American Fiction

Anatomy of a Fall

Barbie

The Holdovers

Killers of the Flower Moon

Maestro

Oppenheimer

Past Lives

Poor Things

The Zone of Interest


Best Actress


Annette Bening, NYAD

Lily Gladstone, Killers of the Flower Moon

Sandra Hüller, Anatomy of a Fall

Carey Mulligan, Maestro

Emma Stone, Poor Things


Best Actor


Bradley Cooper, Maestro

Colman Domingo, Rustin

Paul Giamatti, The Holdovers

Cillian Murphy, Oppenheimer

Jeffrey Wright, American Fiction


Best Supporting Actress


Emily Blunt, Oppenheimer

Danielle Brooks, The Color Purple

America Ferrera, Barbie

Jodie Foster, NYAD

Da'Vine Joy Randolph, The Holdovers


Best Supporting Actor


Sterling K. Brown, American Fiction

Robert De Niro, Killers of the Flower Moon

Robert Downey Jr., Oppenheimer

Ryan Gosling, Barbie

Mark Ruffalo, Poor Things


Best Director


Justine Triet, Anatomy of a Fall

Martin Scorsese, Killers of the Flower Moon

Christopher Nolan, Oppenheimer

Yorgos Lanthimos, Poor Things

Jonathan Glazer, The Zone of Interest


Best Original Screenplay


Anatomy of a Fall

The Holdovers

Maestro

May December

Past Lives


Best Adapted Screenplay


American Fiction

Barbie

Oppenheimer

Poor Things

The Zone of Interest


Best Cinematography


El Conde

Killers of the Flower Moon

Maestro

Oppenheimer

Poor Things


Best Original Score


American Fiction

Indiana Jones and the Dial of Destiny

Killers of the Flower Moon

Oppenheimer

Poor Things


Best Original Song


"The Fire Inside," Flamin' Hot

"I'm Just Ken," Barbie

"It Never Went Away," American Symphony

"Wahzhazhe (A Song for My People)," Killers of the Flower Moon

"What Was I Made For?," Barbie


Best Editing


Anatomy of a Fall

The Holdovers

Killers of the Flower Moon

Oppenheimer

Poor Things


Best Production Design


Barbie

Killers of the Flower Moon

Napoleon

Oppenheimer

Poor Things


Best Costume Design


Barbie

Killers of the Flower Moon

Napoleon

Oppenheimer

Poor Things


Best Makeup and Hairstyling


Golda

Maestro

Oppenheimer

Poor Things

Society of the Snow


Best Sound


The Creator

Maestro

Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One

Oppenheimer

The Zone of Interest


Best Visual Effects


The Creator

Godzilla Minus One

Guardians of the Galaxy Vol. 3

Mission: Impossible - Dead Reckoning Part One

Napoleon


Best International Feature


Io Capitano

Perfect Days

Society of the Snow

The Teachers' Lounge

The Zone of Interest


Best Animated Feature


The Boy and the Heron

Elemental

Nimona

Robot Dreams

Spider-Man: Across the Spider-Verse


Best Animated Short


Letter to a Pig

Ninety-Five Senses

Our Uniform

Pachyderme

War Is Over! Inspired by the Music of John & Yoko


Best Live-Action Short


The After

Invincible

Knight of Fortune

Red, White and Blue

The Wonderful Story of Henry Sugar


Best Documentary Feature


Bobi Wine: The People's President

The Eternal Memory

Four Daughters

To Kill a Tiger

20 Days in Mariupol


Best Documentary Short


The ABCs of Book Banning

The Barber of Little Rock

Island in Between

The Last Repair Shop

Nǎi Nai and Wài Pó

 


ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズがニューアルバム『Wild God』を発表し、ファースト・シングルとなるタイトル曲 を公開した。『Wild God』は8月30日にバッド・シード/プレイ・イット・アゲイン・サムからリリースされる。


ケイヴとバンドメイトのウォーレン・エリスがプロデュースし、デヴィッド・フリードマンがミックスを担当した。


ケイヴは2023年の元旦からアルバムを書き始め、フランスのプロヴァンスにあるミラヴァル・スタジオとイギリスのロンドンにあるサウンドツリー・スタジオでレコーディング・セッションが行われた。


ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズは、ケイヴ、エリス、トーマス・ワイドラー、マーティン・ケイシー、ジム・スクラヴノス、ジョージ・ヴィジェスティカの6人。このアルバムには、レディオヘッドのコリン・グリーンウッド(ベースを担当)とルイス・アルマウ(ナイロン弦ギターとアコースティック・ギター)も参加している。


「このアルバムが、私に与えたような影響をリスナーにもたらしてくれることを願っている」とケイヴはプレスリリースで語っている。


「このアルバムはスピーカーから飛び出してきて、私はそれに飲み込まれてしまう。このアルバムは複雑なレコードだが、同時に深く、楽しくもある。私たちがレコードを作るとき、決してマスタープランはない。レコードはむしろ、それを演奏した作家やミュージシャンの感情の状態を反映するものなのだ。これを聴いていると、どうだろう、私たちは幸せなんだと思えるよ」


ケイヴはこう付け加えた。 「ワイルド・ゴッド......このレコードにはふざけたところはない。ヒットしたら、ヒットする。それはあなたを持ち上げる。感動させてくれる。それが大好きなのさ」



Nick  Cave  & Bad Seeds  『Wild God』




Tracklist:


1. Song of the Lake

2. Wild God

3. Frogs

4. Joy

5. Final Rescue Attempt

6. Conversion

7. Cinnamon Horses

8. Long Dark Night

9. O Wow O Wow (How Wonderful She Is)

10. As the Waters Cover the Sea

Bleachers 『Bleachers』


 

Label: Dirty Hit

Release: 2024/03/10

 

Purchase

 



 

デビュー・アルバムのアートワークがその多くを物語っているのではないだろうか。モノトーンのフォトグラフィ、ジョージ・ルーカスの傑作『アメリカン・グラフィティ』に登場するようなクラシックカー、そして、ニュージャージー郊外にあるような家、さらには、そのクラシックカーに寄りかかり、ナイスガイの微笑みを浮かべるアントノフ。テイラー・スウィフトのプロデューサーという音楽界の成功者の栄誉から脱却し、ロックグループとして活動を始めたアントノフの意図は火を見るよりも明らかである。アントノフが志すのは、米国のポピュラー音楽の復権であり、現代的なシンセポップやソフト・ロックの継承である。そしてなにより、空白の90年代のアメリカンロックの時間を顧みるかのような音楽がこのデビューアルバムを貫く。

 

ブリーチャーズのサウンドを解題する上で、アメリカン・ロックのボスとして名高いブルース・スプリングスティーンが少し前、後悔を交えて語っていたことを思い出す必要がある。ボスは80年代に『Born In The USA』で商業的な成功を収め、アメリカンロックの象徴として音楽シーンに君臨するに至る。しかし、スプリングスティーンのファンはご存知の通り、ボスは90年代にそれほど象徴的なアルバムをリリースしなかった経緯がある。本人曰く、実は結構、録り溜めていた録音こそあったのだったが、それが結局世に出ずじまいだったというのだ。


しかし、音楽的な傾向として見ると、現在は、むしろ80年代のソフト・ロックやAOR、そして、それより前の時代のニューウェイブに依拠したサウンドの方が隆盛である。そして、アントノフのブリーチャーズは、改めて90年代以降に軽視されがちだった80年代のスタンダードで健全なアメリカンロックに焦点を絞り、それをサックスを中心とする金管楽器の華やかな編成を交えたロックで新しいシーンに一石を投ずるのである。アントノフのサウンドは、ブルース・スプリングスティーン、ビリー・ジョエルのロックソング、フィル・コリンズのソフト・ロック、ジョージ・ベンソンやダイアナ・ロスのロックにかぎりなく近いR&B/ファンクとアーティストの並々ならぬ音楽への愛着が凝縮され、それがプロデューサー的なサウンドに構築されている。


 以前、アルバム発売前にアントノフがバンドとともに米国のテレビ番組に出演した時、アントノフはヴォーカルを披露しながら、自分でボーカルループのエフェクターを楽しそうに操作していた。ボーカルの編集的なプロダクションをライブで披露するという点では、カナダのアーケイド・ファイアと同じ実験的なロックサウンドを彼は志向している。それはプロデューサーとしては世界的に活躍しながらも、ミュージシャンとして表舞台に戻ってこれたことに対する抑えきれない喜びが感じられる。アントノフはプロデューサーになる前からバンド活動を行ってきたのだから、演奏者としての原点に戻ってこれたことに歓喜を覚えているはずなのである。なぜなら彼は、過去のグラミー賞の授賞式で次のような趣旨の発言を行った。「グラミー賞の栄誉に預かるのは、人生のどこかで、すべてを投げ捨てる覚悟で頑張ってきた者に限られる」と。おそらくアントノフもそういった覚悟でプロデューサーとしての道のりを歩んできた。


 

ということで、このアルバムはプロデューサーではなく、バンドマンとしての喜びが凝縮されている。本作の冒頭を飾る「I Am Right On Time」はニューウェイブ系のサウンドに照準を絞り、ミニマルなテクノサウンドを基調にしたロックが展開される。アントノフのボーカルはサブ・ポップからもう間もなくデビューアルバムをリリースする''Boeckner''のような抑えがたい熱狂性が迸る。アントノフは意外にも、JAPAN、Joy Divisionの系譜にあるロートーンのボーカルを披露し、トラックの背景のミニマルなループをベースにしたサウンドに色彩的な変化を及ぼそうとする。サビでは、今年のグラミー賞の成功例に即し、boygeniusのゴスペルからの影響を交え、魅惑的な瞬間を呼び起こそうとする。曲全体を大きな枠組みから俯瞰する才覚は、プロデューサーの時代に培われたもので、構成的にもソングライティングの狙いが顕著なのが素晴らしい。

 

「Modern Girl」は近年の米国の懐古的な音楽シーンに倣い、 ホーンセクションをイントロに配し、ビリー・ジョエルやブルース・スプリングスティーン、ジョージ・ベンソンのようなR&Bとロックの中間にあるアプローチを図る。Dirty Hitのプレスリリースでは、結婚式のようなシチュエーションで流れる陽気なサウンドとの説明があり、そういったキャッチコピーがふさわしい。華やかなサウンドとノスタルジックなサウンドの融合は、ブリーチャーズの真骨頂となるサウンドである。そこにブライアン・アダムスを彷彿とさせるアメリカン・ロックの爽快な色合いが加えられると、軽妙なドライブ感のあるナンバーに変化する。コーラスにも力が入っており、テイラー作品とは別の硬派なアントノフのイメージがどこからともなく浮かび上がってくる。


 

ニューウェイブからの影響は、続く「Jesus Is Dead」に反映されている。ドライブ感のあるシンセがループサウンドの形を取ってトラック全体に敷き詰められ、 ぼやくように歌うアントノフのボーカルには現代社会に対する風刺が込められている。ただ、それほど過激なサウンドになることはなく、The1975のようなダンサンブルなロックの範疇に収められている。バッキングギターとベースの土台の中で、シンセのシークエンスの抜き差しを行いつつ、曲そのものにメリハリをもたらす。このあたりにも名プロデューサーとしてのセンスが余すところなく発揮される。

 

続く「Me Before You」は、ドン・ヘンリーのAORサウンドを織り交ぜた、バラードともチルウェイブとも付かない淡いエモーションが独特な雰囲気を生み出す。現代的なポピュラーバラードではありながら、その中に微妙な和音のポイントをシンセとバンドアンサンブルの中に作り出し、繊細な感覚を作り出そうとしている。また80年代のソフトロックをベースにしつつも、アルト/テナーサックスの編集的なプロダクションをディレイとリバーブを交えて、曲の中盤にコラージュのように織り交ながら、実験的なポップの方向性を探ろうとする。しかし、アントノフのプロダクションの技術は曲の雰囲気を壊すほどではない。ムードやアトモスフィアを活かすために使用される。アンサンブルの個性を尊重するという点では、ジョン・コングルトンの考えに近い。このあたりにも、良質なプロデューサーとしてのセンスが発揮されている。

 

先行シングルとして公開された「Alma Mater」は、解釈次第ではテイラー・スティフト的なトラックと言える。ただもちろん、テイラーのボーカルは登場せず、そのことがイントロで暗示的に留められているに過ぎない。イントロのあと、雰囲気は一変し、渋さと深みを兼ね備えたR&B風のポップスへと変遷を辿る。ボーカルのミックス/マスターにアントノフのこだわりがあり、音の位相と音像の視点からボーカルテクスチャーをどのように配置するのか、設計的な側面に力が注がれている。実際に、それらの緻密なプロダクションの成果は淡いエモーションを生み出す。そして色彩的な音楽性も発揮され、それらはダブルのサックスの対旋律的な効果によりもたらされる。曲の後半では確かにレセプションのような華やかな空気感が作り出される。

 

 「Tiny Moves」はジョージ・ベンソンを彷彿とさせるアーバンコンテンポラリー/ブラックコンテンポラリーを下地に古典的なゴスペル風のゴージャスなコーラスをセンスよく融合させる。この曲は本作の中でもハイライトを形作り、アートワークのクラシックカーや、アメリカの黄金期、そしてナイスガイなイメージを音楽的に巧みに織り交ぜる。リスナーはアメリカン・グラフィティの時代のサウンドトラックのようなノスタルジックな感覚に憧れすら覚えるだろう。


「Isimo」は映画好きとしてのアントノフの嗜好性が反映され、実際にシネマティックなポップが構築されている。ブリーチャーズが表現しようとするもの、それは現代の米国のポップシーンの系譜に位置し、アメリカのロマンス、そして黄金期の時代の夢想的な感覚である。それらは実際に夢があり、気持ちを沸き立たせるものがある。そしてここでも80年代のマライア・キャリー、ホイットニー・ヒューストンのようなダイナミックなポピュラー・ソングをバンドアンサンブルとして再解釈し、あらためてMTVの最盛期の音楽の普遍性を追求しようとしている。

 

アルバムは後半部に差し掛かると、いきなり、クラシックな音楽からモダンな音楽へとヴァージョンアップするのが特に心惹かれる点である。#8「Woke Up Today」はバンジョーのようなアコースティックギターの演奏を生かしたフォークソングだ。 この曲で、ブリーチャーズはやはりアパラチアフォークや教会音楽のゴスペルといったアメリカの文化性の源泉に迫り、 ニューイングランドの気風を音楽的な側面から探求する。ゴスペル風のコーラスにこだわりがあり、それが吟遊詩人的なアパラチア・フォークの要素で包み込まれる。草原の上に座りこみ、アコースティックを奏でるような開放感、ブルースの源流をなすプランテーション・ソングを高らかにアントノフは歌う。それは19~20世紀初頭の鉄道員のワークソングのような一体感のある雰囲気を生み出す。続く「Self Respect」でもミニマル・ミュージック/テクノを下地にし、パルス状のシンセをベースに、USAの文化の原点に敬意を表す。そして、敬意と愛、そして慈愛に根ざした感覚は、ゴスペルの先にある「New Gospel」という現代的な音楽を作り出す契機となる。

 

ジミ・ヘンドリックスの名曲に因んだ「Hey Joe」ではアコースティック・ブルースの要素が現れる。アントノフとブリーチャーズはジョン・リー・フッカーやロバート・ジョンスンよりもさらに奥深いブルースソングに迫り、それを現代的に変化させ、聞きやすいように昇華させる。それらの音楽的な礎石の上に、アントノフは現代的な語りのスポークンワードを対比させる。ロックやブルースへのアントノフやバンドの愛着が凝縮されているが、それは決して時代錯誤とはならず、徹底して新しい音楽や未来の音楽に彼らは視線を向け、それを生み出そうとする。



アルバムの残りの4曲はジョン・バティステのような現代の象徴的なR&B、オートチューンをかけたシーランのようなポピュラーソングが付属的に収録されている。アルバムを聴いてくれたリスナーへのねぎらいとも取れるが、その中にも次なるサウンドへの足がかりとなる要素も見いだせる。


例えば、「Call Me AfterMidnight」はクインシー・ジョーンズのアーバン・コンテンポラリーを受け継ぎ、そのサウンドをAOR/ソフト・ロックの文脈から解釈している。その他にも、「We' Gonna Know Each Other Forever」は友情ソングともいえ、それは映画のクライマックスを彩るエンディングのようなダイナミックなスケールを持つポピュラーバラードの手法が選ばれている。

 

「Ordinary Heaven」でもアルバムの冒頭と同様にゴスペル風のコーラスワークを交えてポピュラーソングの理想形を作り出そうと試みる。クローズ「The Waiter」はオートチューンのボーカルを駆使し、2010年代のシーランのポピュラー性を回顧しようとしている。思っていた以上に聴きごたえがある。


『Bleachers』の序盤には、アントノフとバンドの才覚の煌めきも見えるが、アルバムの終盤が冗長なのがちょっとだけ難点で、既存のサウンドの繰り返しになり、反復が変化の呼び水になっていないことがこのアルバムの唯一の懸念事項といえるかもしれない。ただ、デビュー作して考えると、注目すべき良質なポップナンバーが複数収録されている。本作をじっくり聴いてみると、アントノフ率いるブリーチャーズが何を志すのかありありと伝わってくるはずである。

 

 

 

Best Track- 「Tiny Moves」

 




82/100




Bleachers:




明るくソウルフルなテクニカラーに彩られた「Bleachers」では、バンドのサウンドに豊かな深みがある。このアルバムは、フロントマンのアントノフが、現代生活の奇妙な感覚的矛盾や、文化における自分の立場、そして自分が大切にしているものについて、ニュージャージーならではの視点で表現したものだ。


サウンド的には、悲しく、楽しく、ハイウェイをドライブしたり、泣いたり、結婚式で踊ったりするための音楽だ。クレイジーな時代にあっても、大切なものは忘れないという、その心強さと具体的な感情に触れることができる。


2014年にデビュー・アルバム「Strange Desire」をリリースしたバンドは、3枚のスタジオ・アルバムで熱狂的な支持を集め、印象的なライヴ・ショーと感染力のある仲間意識で有名になった。前作「Take the Sadness Out of Saturday Night」では、アントノフの没入感のあるソングライティングと、Variety誌が証言するように「個人的なストーリーを、より大きなポップ・アンセムに超大型化する」生来のスキルが披露され、バンドは新たな高みへと到達した。


ブリーチャーズでも、ソングライター、プロデューサーとしても、2021年にBBCから「ポップ・ミュージックを再定義した」と評価されたアントノフは、テイラー・スウィフト、ラナ・デル・レイ、ザ・1975、ダイアナ・ロス、ローデ、セント・ヴィンセント、フローレンス+ザ・マシーン、ケヴィン・アブストラクト等とコラボレートしてきた。



ブルックリンを拠点に活動する23歳のシンガーソングライター兼ギタリスト、Mei Semones(メイ・セモーネス)がニューシングル「Tegami(てがみ)」をリリースした。ジャズ、ボサノヴァを中心にワールドミュージックとインディーポップを融合させた個性的なソングライティングが光る。

 

アーティストはバークリー音楽院で学んだ後、ニューヨークに移住。ギターに関してはプロフェッショナルな演奏技術と学識を持つ。インディペンデント・レーベル、Bayonetの新星である。

 

4月5日にBayonetからリリース予定のEP『Kabutomushi(かぶとむし)』ではアーティストのルーツを辿り、日本語の歌詞に挑戦している。この曲のライブ・ヴァージョンを下記をチェックしてほしい。


「Tegami」は、ボサノヴァ・スタイルの変拍子を初めて試した曲です。この曲はラブソングなんです。わたしのパートナーは手紙を書くのが好きなんだけど、わたしは返事を書くのが苦手なのです。だから代わりに、この曲を書いてみました。だから『手紙』という意味の『テガミ』という曲名になった。この曲では、スタイルの幅広さが際立っていると思うし、複雑なラインやテクスチャーを多用した、より野心的なストリングス・アレンジのひとつです」



「Tegami(てがみ)」‐ Live Version

 寺田創一(Soichi Terada) 『Apes In The Net』


 

Label: Far Eat Recording

Release: 2024/ 03/08

 


Review

 

 

日本のハウスシーンの先駆者、寺田創一。『Apes In The Net』はプレイステーション用ゲーム『Ape Escape』(サルゲッチュ)のサウンドトラックからの6曲を集めたコンピレーションである。


ドラムンベースやブレイクコア、もしくはアシッド・ハウスを思わせるエレクトロが凝縮されている。寺田さんはゲーム音楽で知られるサウンドクリエイターではあるものの、実際の作品を聴くと、スクエアプッシャーに匹敵するほど本格派のプロデューサーで、熟練の卓越した技術を感じる。

 

APHEX TWINのデビュー作やSQUAREPUSHERの実質的なデビュー作『Feed Me Weird Things』の系譜にあり、デトロイトハウスの直系に位置する。近年のブレイクビーツやドラムンベースに親しんでいるリスナーにはリズムがシンプル過ぎるように感じられるかもしれない。


しかし、その簡素さゆえに、寺田のダンスミュージックは本格派の雰囲気を醸し出す。それに加え、寺田は、SF的なアナログシンセやMIDIのアウトプットの手法を知り尽くしている。ゲーム音楽で培われた熟練のプロデューサーによる思慮に富んだビートメイクは、ゲームセンターのビートマニアのはるか上を行き、エレクトロの真髄ともいうべき硬質なグルーブ感を生み出す。

 

「Spectors Factory」では4つ打ちのデトロイトハウスに焦点を絞りつつも、ブレイクコアのようなマニアックなクラブ・ミュージックの性質が反映されている。この曲は日本のゲーム音楽がオーケストラとともにダンスミュージックを中心として発展してきたということを思い返させてくれる。


原始的なハウスのビートのシークエンスを執拗に繰り返しながら、そこにちょっとした脚色、つまり、コナミの名作ゲーム『グラディウス』のようなスペーシーな色合いを加えている。性急なビートが矢継ぎ早にボクシングのジャブのように繰り出されるが、アシッド・ハウスを吸い込んだ奇妙な高揚感がリスナーを惑乱と幻惑の奥底へと誘う。


基本的なシークエンスにローエンドのベースライン、ゲームサウンドのチップ・チューンのマテリアルが宝石のように散りばめられ、まるでビートそのものが宙を舞うような高揚感を生み出す。ハウスをベースにしながらも電気グルーブのレイヴ・ミュージックのような恍惚とした感覚を生み出すのだ。

 

「Coaster」は原始的なドラムンベースを下地に置いたトラックで、SQUAREPUSHERが得意とするアウトプットに近いニュアンスも見いだせる。ベースラインはドラムンベース寄りだと思うが、ハイエンドに導入されるゲームのSEのような効果音は、初期のSQUAREPUSHERに近いニュアンスである。時々、その中に細分化され、圧縮されたビートが付属的に導入されると、楽曲はにわかにドラムンベースからドリルンベースに近づいていく。これらはベースやリズムの徹底した細分化が行われた90年代のテクノを復習するような内容となっている。クラブミュージックの実制作者にとっても参考になるのではないか。トラックの中盤ではスリリングな展開が訪れ、聞き苦しくない程度にノイズやグリッチの要素が付け加えられる。シンプルなドラムンベースではあるものの、複雑化したこの最近のジャンルを見るにつけ、新鮮なものが感じられる。


「Spectors」はAPHEX TWINの「Come To Daddy」の時代のテクノの系譜にあり、それほど過激なアプローチはないにせよ、先鋭的な要素が感じられる。ビートに対するメロディーは「グラディウス」やインベーダーゲームの系譜にあり、癒やしの感覚が漂う。8ビットで音楽を出力していた時代のチップチューンやアナログのテクノの懐かしさをどこかに留めている。曲の中盤でブンブン唸るベースラインは迫力があり、寺田サウンドのオリジナリティーが刻印されている。曲の終盤では、ゲームセンターで聞こえるプリクラのSE的な効果がファンシーな雰囲気を醸し出す。これらはゲームのサウンドクリエイターとしての手腕が凝縮されている。

 

『サルゲッチュ』のゲームは1999年にソニーから発売されたが、続く「Haunted House」を聴くと、いかにこのサウンドトラックが時代の最先端を行くものであったのかがわかる。


このトラックでは、アシッド・ハウスの手法を選んでいるが、ゲームの射幸性と熱狂性を表すとともに、長時間のゲームプレイに耐えうるように、音楽のなかに落ち着きと静けさが織り交ぜられている。また、ここには、サウンドデザイナーとしての寺田の手腕が遺憾なく発揮されている。どのシークエンスをどこに配置するのかという設計者としての直感が満載なのである。


リズムやビートは90年代のUKテクノの系譜にあり、シークエンスの中に、細分化され圧縮されたリズムが導入される。とにかく理論的なアウトプットの手段を選ぼうとも情感を失わないのが凄い。リードシンセやシークエンスを散りばめ、ミステリアスな感覚を生み出す。このトラックは今聴いても新しいエレクトロなのだ。

 

寺田創一はハウスやドラムンベースの基本的なスタイルを選んでいるが、「Mount Amazing」ではエキセントリックでトリッピーな技法が発揮される。寺田は得意とするドライブ感のあるビートを下地に、ピッチベンドを駆使し、トーンのうねりを生み出したり、清涼感のあるピアノのフレーズを散りばめ、安らいだ感覚を生み出す。


BPM、ビートやリズムは性急なのに、奇妙な落ち着きを作り出すプロデューサーとしての手腕は見事としか言いようがない。とりわけ、ピッチベンドの使用はシークエンスだけではなく、ベースラインにも導入され、これが全体的なウェイブのうねりを作り出し、所々に聞き手を飽きさせないような工夫が凝らされている。

 

EPの最後に収録されている「Time Station」 は、シュミレーションのような趣を持つトラックだ。これは、ゲームの効果音がアクション、バトル、ロールプレイングの動きのある側面とは異なる「システムのエディット」という要素があったことに拠る。この曲の中で、寺田はバトルやロールプレイング的なアグレッシヴな要素とは別の安らいだ感覚を電子音楽で示唆している。

 

少なくとも、90年代と00年代の日本の全般的なゲーム音楽は、オーケストラ、映画音楽、ダンスミュージックはもちろん、ロック、メタル、民族音楽など、あらゆる音楽の要素を網羅していた。恐るべきことに、グレゴリオ、古楽、さらには、日本の古典的な民謡に至るまで、驚くべき情報量を誇っていたのだった。EP『Apes In The Net』は、ダンス・ミュージックとしても一級品なのは事実だが、日本のゲームカルチャーの変遷のようなものが示されているのがとても素敵である



 

 

85/100


 


ノルウェーのインディーポップシーンを牽引するGirl In Red(ガール・イン・レッド)が、来たるアルバム『I'm Doing It Again Baby!』からタイトル曲をドロップした。


「マリー・ウルヴェンはプレスリリースの中で、「この曲は私が今まで作った曲の中で一番楽しい曲です。「というのも、この曲を書くのは実はとても大変だった。本当はこの曲は、世界の頂点にいる気分のサウンドトラックになるはずだったのに、無理矢理サッピーでトライ・ハードな意味のある歌詞を書こうとしたんだ」


『I'M DOING IT AGAIN BABY!』の先行シングルとして「Too Much」、タイトル曲「I'm Doing It Again」が配信されています。アーティストは''フジロックフェスティバル2024''で来日公演を行います。


 

 

「Doing It Again Baby」

 

©Scarlett Casciello


Chvrches(チャーチズ)のボーカリスト、Lauren Mayberry(ローレン・メイベリー)はソロアーティストとして最近活動している。アーティストは、新曲「Change Shapes」を発表した。チャーチズの直系にあるファンシーなシンセ・ポップだ。

 

この曲は、2023年のソロ曲「Are You Awake?'」と「Shame」に続く作品。メイベリー、マット・コマ、クレオ・ティゲ、エヴァン・ブレアによって書かれ、コマがプロデュースした。以下からチェックしてほしい。


メイベリーは声明の中で次のように説明している。


「私は一般大衆に向けてパフォーマンスをしているように感じるが、同時に、内面的な体験の中の人物を演じているようにも感じる。私が望むクリエイティブな仕事をさせてもらえるように、人々を満足させるにはどうしたらいいのだろう?」


「バンドにまつわる物語の多くが "フェミニスト "であるため、私は時々、かなり偽善的で偽善的だと感じる。物事を機能させるために、これだけの仕事をしたように感じるけど、そうやって自分を適応させると、自分の望みを叶えるために、自分を操っているように見られるんだ」



「Change Shapes」

Homeshake




カナダ/トロントを拠点に活動するミュージシャン、ピーター・サガーによる長年のソロ・プロジェクト、HOMESHAKEが思い出を綴ったローファイアルバム『Wallet』をリリースする。


2023年の大半をトロントにあるピーターの自宅スタジオで作曲、レコーディングされた『CD WALLET』は、彼の故郷エドモントンを舞台にしたアルバム。成長期の思い出や、そこから数年後に戻ってきた時の感覚に触れている。


ピーターは、このアルバムが「若い頃の自分を印象づけるために、ヘヴィでストレートなインディーロック・スタイルで制作された」と説明する。ノスタルジアの感情や、過去を振り返るときに自分自身を見出す罠に取り組んでいる。


『CD WALLET』はまた、ピーターの初期のギター音楽への憧れを強調しているという。「目を覚ましてよ、おばあちゃん......、どうして、ちょっとお化粧しないの?」、そう家族に呼びかけた後、ピーターはシステム・オブ・ア・ダウンの「Chop Suey! 」を聴いて、口をポカンと開けたまま、『ギター・ワールド』誌の "Chop Suey!"のタブ譜を開いてみた。虫眼鏡で細かい字を読んでから、完全に唖然として仰向けになり、ギターは思ったより低いチューニングができることを知った。ドロップC。彼が今日まで使っているチューニングだ。これがアーティストとアルバムの誕生の始まりだ。


『CD WALLET』はHOMESHAKEの6枚目のフルアルバムで、ジョシュ・ボナティがマスタリングを担当した。2019年の『Helium』の "Early "は、2020年にHBOの『How To with John Wilson』の第5エピソードで取り上げられた。


2021年の『Under The Weather』に続き、HOMESHAKEは北米、ヨーロッパ、アジアで大規模なツアーを行った。


2022年、全6巻、126トラックのインストゥルメンタル・ミックステープ『Pareidolia Catalog』をリリースし、ブレイン・デッドとのコラボレーション・カセット・ボックスセットとTシャツを付属した。


同年、HOMESHAKEは、2017年のJoey Bada$$との "Love Is Only a Feeling "以来のコラボレーションのひとつであるEyedressの "Spaghetti "を共作、フィーチャリングしている。2024年にはさらなる新曲のリリースが予定されているほか、ライブバンドのメンバーであるグレッグ・ネイピア、マーク・ゲッツ、ブラッド・ルーグヘッドとの北米ヘッドラインツアーも発表される予定だ。



Homeshake 『CD Wallet』


 

マック・デマルコのバンドメイトとして活動していたピーター・サガーによるプロジェクトは、90年代のスロウコアバンド、CodeineとRed House Painterの再来と言って良い。上記バンドはオーバーグラウンドに押し上げられたグランジへの対抗勢力として台頭し、USインディーに大きな意義を与え続けている。

 

内省的なサウンドとコントラストを描く激情性の兼ね合いがスロウコアの醍醐味であったが、サガーは、90年代のスロウコアの憂愁と黄昏のすべてを受け継いでいる。また奇しくも、ロックの文脈としては、カレッジ・ロックの系譜にあるアルバムである。そこにデマルコのローファイとユニークなシンセのマテリアルを散りばめ、オリジナリティー溢れる作品へと仕上げた。

 

Homeshakeのサウンドはホームレコーディングに近いアナログな方式が採用され、そこにはカセットテープの音楽への親しみがあるように感じられる。そこに唯一無二のオリジナリティーを付け加えるのが、「ドロップC」のギターのチューニングである。例えば、ジミー・イート・ワールドの代表曲「Middle」で知られているようにドロップDのチューニングが90年代以降のロックシーンを風靡し、開放弦を作り、ギターサウンドに核心とヘヴィネスをもたらした。

 

ホーム・シェイクのプロジェクト名を冠して活動を行うピーター・サガーの場合は、システム・オブ・ア・ダウンに触発され、六弦のDをさらに一音下げにし、相対的に他のキーも下げる。弦はきつくチューニングすると高い音が出、ゆるくすると低い音になるが、彼のギターサウンドはゆるくなった弦のトーンの不安定さにその魅力が込められている。Homeshakeのギターサウンドは基本的にはマック・デマルコの最初期のローファイ性、それから近年のこのジャンルの象徴的なアーティスト群、コナン・モカシン、マイルド・ハイ・クラブ、アリエル・ピンク、そしてオスカーラングのデビュー当時のサイケ性を網羅している。しかし、上記の複数のアーティストのほとんどがR&Bを吸収しているのに対して、ピーター・サガーにはR&B色はほとんどない。純粋なオルトロック、カレッジロックのシフトが敷かれている。そして彼はクロスオーバーが起きる以前のオルタナティブロックへと照準を絞っている。ただ、その中には、同年代に発生したヒップホップのサンプリング的な編集方法があるのを見るかぎりでは、Dr.Dreに象徴されるオールドスクールのヒップホップの気風も反映されている。この点では、リーズのFar Caspianのようなローファイサウンドが全面的に敷き詰められているということが出来る。

 

しかし、ホームシェイクの場合は、フィル・ライノットに象徴されるアイルランド的な哀愁はほとんどない。むしろシアトルのアバディーンの80年代のサウンドを思わせるような他では求めがたいスノビズムがある。アンダーグランドに潜っているが、それは奇妙な反骨精神によって彩られる。表向きにアウトプットされる音楽はそのかぎりではないが、パンクの香りが漂うのである。このアルバムは、現在のアーティストが古き時代の自己を探訪するという意味が込められており、ピーター・サガーは、日記にも書かれず、あるいは写真にも見いだせなかった、もしくは誰の目にも止まらなかったかもしれない若い頃の自分をインディーロックサウンドを介して探し出し、それらのメランコリアの核心へと全9曲を通じて迫っていこうとするのである。



 

アルバム「CD Wallet」はシンプルに言えば、デジタルな音楽への徹底した対抗でもある。チューニングが狂ったようにしか聞こえないギターラインの執拗な反復と手作りのドラムキットを叩き、それをそのままアナログのラジオカセットに録音したようなローファイなサウンドがオープニング「Frayed」に聞き取れる。サガーは、デマルコを彷彿とさせるドリーミーなボーカルでギターラインを縁取る。アルバムの最初では、スノビズムやワイアードにしか思えないのだが、当初のアナログのデチューンのイメージはその音が何度も反復されると、不快なイメージとは正反対の心地よさが膨らんでいき、奇妙な説得力を持つようになる。その後、多重録音によりヘヴィネスを増したギターロックサウンドへ段階的に変遷を辿っていくと、Codeineのような激情系のノイズサウンドへ移行する。イントロでは驚くほど頼りなさげなサウンドは、一気に強力なヘヴィロックに変身する。かと思えば、そのヘヴィネスは永続せず、すぐさまサイレンスな展開へ踵を返す。アウトロのアップストロークのアルペジオは、Led Zeppelinの「Rain Song」のアウトロのような淡いエモーション、つまり奇妙な切なさの余韻をとどめているのである。 

 

「Frayed」

 

無機質なマシンビートで始まる二曲目の「Letting Go」も同じように、カレッジロックやナードロックの系譜にある。MTRの4トラックで作ったようなドラムのビートの安っぽさはビンテージな感覚を生み出す。夢遊的なボーカルは、ニルヴァーナのデモのような荒削りさがあり、Robyn Hitchcock(ロビン・ヒッチコック)やCleaners From The Venus(クリーナーズ・フロム・ザ・ヴィーナス)のカセットロックやカルト的なロックを思い起こさせるものがある。これらの要素を含めた曲は、スノビズムの範疇を出ないように思えるのだが、そのボーカルのラインとギター、そして、チープなマシンビートに聴覚を凝らすと、Benefitsのように催眠的な効果を発揮し、奇妙な説得力があるように思えてくる。ボーカルは明らかにマック・デマルコの系譜にあり、まったりとしており、そして彼の2014年のアルバム『Salad Days』の精細感を甦らせるのである。


「Smoke」でもヒップホップのリズムトラックの性質を受け継ぎ、スロウコア/サッドコアの系譜にある刺激的なロックソングを展開させる。他の楽器のパートの音域を相殺させるように中音域を限界まで押し上げたギターサウンドは相当過激であり、表向きのプロダクションとは正反対の印象を形作る。その上で、ホームシェイクは、カセットロックやローファイの真髄を知り尽くしたかのように、心地よいフレーズを丹念に組み上げていく。緻密な音作りに関しては、Far Caspian(ファー・カスピアン)、Connan Mockasin(コナン・モカシン)と同等かそれ以上である。そして、チューニングのずれたギターを積み重ね、同じようにピッチのずれたボーカルを乗せ、独特な音域のズレを発生させ、それらのエラーを次第に増強させていくのである。これらはデジタル主体のレコーディングに対する新しい考えを授けてくれる可能性がある。

 

同じようにホームシェイクは、アナログで発生するノイズを環境音のように解釈して、イントロではかすかにアンプリフィターから発生するノイズを見逃さずに録音に留めている。そのアンビエンスをイントロとして、鈍重かつ暗鬱な印象に彩られるスロウコアのヘヴィネスが展開される。オープナーと同様にシンプルなギターコードの反復の弾き語りのような形でこの曲は続いていき、レトロなシンセ、そしてその合間にヒップホップ的なドラムがしなるように鳴り響き、やがて最初のイントロの静謐な印象はシューゲイザーの轟音性にかき消される。そして過去の憂愁と内省的な感覚を抽象ではありながら鋭く捉え、リリックを紡いでいく。これらは現代的なローファイの先を行き、カニエ・ウェストの最初期のヒップホップと現代のローファイを繋げるような役割を果たしている。また言い換えれば、この曲のアプローチは、ローファイというジャンルが、ヒップホップとロックの中間に位置することを証し立てているのである。


本作の中盤の収録曲は、誰もが持つティーンネイジャーの外交的な活発さの裏側に隠された奇妙なノスタルジアとメランコリアの両方の時代へ舞い戻らせる喚起力がある。「Basement」でも基本的なソングライティングに大きな変更はない。リバーブやディレイを徹底して削ぎ落とした乾いたザラザラとした質感のあるギターを通じて、静謐さと激情の狭間を絶え間なく揺れ動くのである。やはりホームシェイクのボーカルは、十代の自己を癒やすかのように歌われ、それらの奇妙な傷つきやすさと内的な痛み、そして、それらの自己を包み込むようなセンチメンタルなボーカルが、どこまでも無限に続いていく。しかし、やがて、それらの夢想性と無限性は、Dinasour Jr.のJ Mascisのようなトレモロのギターの下降によってあっけなく破られる。

 

 

「CD Wallet」

 

 

アルバムのタイトル曲「CD Wallet」は、エリオット・スミスやスパークル・ハウスといった象徴的なインディーロックシンガーの死せる魂を現在に甦らせるかのようである。 スロウコアとサッドコアの悲しみと憂鬱を現代に復刻し、それはCodeineのようなエモーショナルな激情性に続いている。そしてディストーションサウンドが立ち上がった時、イントロやメロでの繊細なボーカルやそれとは対象的な力強さを帯びる。イントロでは繊細なインディーロックソングがにわかにハードコアのような苛烈な印象に変わる。これらの極端な抑揚の変化、気分の上昇と下降は、ティーンネイジャーの感受性の豊かさをリアルに捉え、内的な傷つきやすさを刻印している。ピーター・サガーは、平凡なアーティストであれば入り込むことをためらうような精神的な内郭へと一歩ずつ迫っていき、その内郭の最も奥深くにいる自己の魂を救い出すのである。

 

束の間の激情性を見せるが、その後、暗鬱なインディーロックソングが続き、アーティストは感情の奥処へと降りていく。「Penciled In」は、繊細なアルペジオ・ギターを中心としたポスト・ロック的なアプローチであるが、ピーター・サガーのボーカルには、マンチェスターのCarolineの賛美歌からの影響に近い聖なる感情をつかみ取ることが出来る。世間一般に蔓延する粗雑なエネルギーと対峙するかのように、それらの清廉な感覚を宿したボーカル、ヒップホップに近いドラムビート、どこまでも下降していくように感じられる傷つきやすいギターが多彩なタペストリーを作り出す。その上を舞うかのように、ピッチをずらしたボーカル、サイケデリックなシンセが混沌を作り出す。同じように「Mirror」でも、フィルターをかけたギターのアルペジオを中心とし、カレッジロックやスロウコアの黄昏と憂鬱をアーティストは探求している。

 

 

 アルバムのクローズを飾る「Listerine」は9分を超えるスロウコア/サッドコアの大作で、ロックの名作でもある。少なくとも、オルタナティヴ・ロックというジャンルの最高傑作の1つであることは疑いがない。内的な痛みを柔しく撫でるかのような繊細さ、対極的なチューブアンプから放たれるギターノイズ、これらは、ジミ・ヘンドリックスやジミー・ペイジ、あるいは、『ホワイト・アルバム』の時代のザ・ビートルズのギターのような調和的な響きを生み出す。

 

それらの轟音が途絶えたあと、アンビエント風のノイズのシークエンスが立ち現れる時、鳥肌が立つような感覚がある。基本的なロックのアプローチが続いた後、唐突に現れるこれらのノイズのシークエンスは、その後に続く展開の導入部分となり、アルバムの最初と同じように、シド・バレットのようなサイケ・ロックの無限性に繋がっている。しかし、苛烈なノイズロックの中にほの見えるのは、スロウコア、サッドコア、ストーナーにしか見られない、激しい重力と奇妙な癒やしの感覚なのである。アルバムの最後の最後では、最もヘヴィな局面を迎えた後、停止や沈滞、後退、前進、上昇をたえず繰り返しながら、驚くべきエンディングを迎える。ジャンルやアウトプットの方式こそ違えど、ロックとしてはVUの『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』、ザ・ビートルズの『ホワイト・アルバム』以来の傑作ではないかと推測される。

 

 

 

 

 

96/100

 


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「Listerine」

 

©Martyna Bannister

ダブリンのインディーロックパンド、ピロウ・クイーンズ(Pillow Queens)は、4月19日発売のニューアルバム『Name Your Sorrow』の先行シングルとして、「Like a Lesson」を発表した。四人組の1990年代のカレッジ・ロックへの弛まぬ敬愛がこの曲には示されている。

 

ピロー・クイーンズは曲ごとにボーカルを入れ替え、クイアとしてのアイデンティティを真摯に探る。彼らの曲はアイリッシュ・タイムズ等に称賛を受けている。今後、上昇が予測されるインディーロックグループだ。


この新曲について、バンドは声明で次のように説明する。「ライムレンスの愛の前で安全と安らぎを見出すという概念が強調され、間違いを犯したり、自分や他の誰かの人生を台無しにしたりすることへの麻痺した恐怖と対照をなしている。誰かのためのレッスン、誰かの物語の脇役であることの気持ちを掘り下げている」


「"サウンド的には、BlurやREMからSeminsonic、New Radicals、Squeezeまで、様々なアーティストに影響を受けた。カントリー・ミュージックの影響が強いと感じた曲として始まり、私達の幅広い音楽的嗜好を参照したものに変化していった。このアルバムの中では90年代のソフト・ロックの曲なんだ」

 

「Like a Lesson」

 

©Sofie Scott


アイルランドのシンガーソングライター、Nell Mescal(ネル・メスカル)が新曲「Warm Body」を発表した。弱冠20歳のSSWであるが、ダイナミックスなポピュラーソングを書き、圧倒的な歌唱力には早くもスターの気配が漂っている。

 

この曲は、5月3日にLABレコードからリリースされるデビューEP『Can I Miss It For A Minute? 試聴は以下から。


「Warm Body」は、「過去の状況から前に進もうともがき、それが新しい人間関係を築くことにどう影響するかについて歌った曲」だとメスカルは声明で説明している。「この曲は、成長すること、そして愛する人が離れていってしまうのではないかという心配を抱えながら人間関係を築くことについて歌っている」

 

 

 「Warm Body」

©︎BLACKSOCKS


ロンドンを拠点に活動するシンガーソングライター、マルチインストゥルメンタリスト、プロデューサー、アルフィー・テンプルマン(Alfie Templeman)が、2/12 (月) にリリースされた「Eyes Wide Shut」からわずか1ヶ月足らずで早くもニューシングル「Radiosoul」をリリースする。

 

今回、BBCアーティストは、ジャズやソウルをベースに、味わい深いヒットチューンを書いている。アースウィンド&ファイアー直系のR&Bサウンドを現代的なポピュラーソングにアップデートしている。

 

SNSが人々に与える深い影響について歌われた今作は、実際にアルフィー自身がソーシャルメディアから離れ、ノイズから逃れる場所を探している時に書かれた。


サイケデリック、ソウル、インディーの要素を巧みに組み合わせ、大胆かつ斬新なアプローチでアシッドポップの方向性を示したトラックは、ミュージシャンとして目覚ましい成長を遂げるアルフィーの音楽性を十分に感じられる一曲に。


ベースのタイトなグルーヴ、空間に響くサックスの色気、ステップを踏むように鳴るエレキギターの誘惑が混ざり合う万華鏡のような《5分間のサウンドトリップ》をご堪能ください。


さらに新曲リリースに合わせて、大御所アーティストが参加する待望のセカンドアルバム『Radiosoul』のリリースも発表された。自己発見のようなアルバムであり、サウンドはこれまで以上にジャンルを気まぐれに横断し、アルフィーのリリシズムに新たな鋭さと辛辣なユーモアを光らせる一方で、前作で特徴づけた幸福感を保っている。


何が起こるかわからない予測不能な状況にワクワクする感覚とエネルギーを含んだ各楽曲は、意図的に前のものと大幅に異なり、良い意味で奇妙で素晴らしく、眩しいほどの明るさに加え爆発的な瞬間、それでいて静かで生々しい反映的な瞬間について描かれ、前作から成熟したアルフィー・テンプルマンの豊かな才能をパッケージングしたアルバムになっている。参加アーティストに関しては、リリース日までのお楽しみ!


天才的な才能を持つソングライターが真に本領を発揮した作品に乞うご期待!



アルフィー・テンプルマンのコメントは次の通り。


「''Radiosoul''はソーシャルメディアが与える深い影響と向き合った作品です。人々は自分の欠点を隠すために惜しみない努力をし、やがてそれが重荷となるというスパイラルに陥ることがある」


「私にとってこの曲は、人間らしい小さな欠点を受け入れるのを助けるもので、聴く度に大きく暖かく包み込むような存在に育てたかったのです。少しの間携帯から離れて、頭痛のような感覚を解消するのは大事なことだし、心配することはない。ただ深呼吸をして新鮮な空気を取り入れるみたいにね」



Alfie  Templeman 「Radiosoul」



アーティスト名:Alfie Templeman(アルフィー・テンプルマン)

曲名:Radiosoul(ラジオソウル)

レーベル:ASTERI ENTERTAINMENT (アステリ・エンタテインメント) 

形態:ストリーミング&ダウンロード 


配信リンク:https://asteri.lnk.to/AFRadiosoul



Alfie Templeman:


イングランド、ベッドフォードシャー出身のシンガーソングライター / マルチインストゥルメンタリスト / プロデューサー。 8歳の時にRushのライブに魅せられ、曲づくりを始める。


ドラム、ギター、キーボード、マンドリン、ハーモニカなど10個以上の楽器を独学で習得。2018年にEP『Like an Animal』でデビュー。2022年には1st フルアルバム『Mellow Moon』をリリース。


全世界でのストリーミング数は現在累計3億回を超える。UKのインディーポップ・シーンの新星としてBBCラジオ、サンデー・タイムズ、The ObserverやVOGUE UK(ヴォーグ イギリス版)などからも注目を集める。




グーグルによるリモートワークの取り締まりをめぐって昨年ストライキを起こした後、YouTube Musicのチーム全員がテック企業から解雇されたことが判明した。


テキサス州オースティン市議会では、グーグルの親会社で働く労働者を代表するアルファベット労働組合との交渉決議案が採決される予定だった。


「私たちはレイオフされたばかりで、私たちの仕事は今日で終わりです」


組合によると、YouTube Musicの従業員が2023年4月に全会一致で組合結成を決議して以来、グーグルは彼らとの交渉を拒否している。彼らはオースティンを拠点とするYouTube Musicチームが、10億ドル規模を誇るプラットフォームから時給19ドルという低賃金を受け取った。福利厚生も最低限しかないため、生活費を稼ぐため、複数の仕事を掛け持ちしている従業員もいるとTwitterで主張した。


KXANの報道によると、グーグルがYouTube Musicの従業員を雇用したプロフェッショナル・サービス会社コグニザントの声明によると、従業員たちは契約終了後に解雇された。同社は、彼らが "組織内で他の役割を模索する "ために7週間の有給休暇を受け取ると述べた。


グーグルの広報担当者はBusiness Insiderに対して、解雇の責任はグーグルではなくコグニザントにあると語った。「全社的なサプライヤーとの契約は、コグニザント社との間で合意された自然な期限で終了するのが通例です」と、テック大手は声明で述べた。


労働組合員のジャック・ベネディクトはSFGATEに語った。「具体的には報復です」。同誌はまた、全米労働関係委員会(NLRB)が1月、グーグルが労働者と交渉しないことを決定したのは "違法 "と述べたと指摘した。


解雇されたYouTube Musicの従業員はその後、GoFundMeのキャンペーンを立ち上げ、この移行期の困難な時期に支援を求めている。先月、ワーナー・ミュージック・グループとベル・メディアは、コンデナストがピッチフォークをGQに吸収することを決定した。ピッチフォークのライターと編集者が職を失った数週間後に、さらにコンデナストは従業員の9〜10%を解雇している。

 

R.E.M


・カレッジロックの原点 ジョージアの大学のラジオ局

 

カレッジロックとは1980年代にアメリカやカナダで発生したカルチャーを意味する。明確な音楽的な特徴こそ存在しないが、大学のキャンバスの中にあるラジオ局でオンエアされたロックである。

 

このジャンルは90年代のオルトロックのブームへの流れを作った。カレッジロックは、マサチューセッツ、ミネソタ、ジョージア等がカレッジロックのシーンの出発点に挙げられる。最も最初の原点を辿ると、ローリング・ストーンが指摘しているジョージア州のアテネの大学ラジオ局に求められる。これらのラジオ局では、Sonic Youth等、ニューヨークのプロトパンクバンドの楽曲もオンエアされたが、 特にミネソタのバンドを中心にそれまで脚光を浴びてこなかった地域の魅力的なバンドをプッシュする効果があった。

 

カレッジロックは、実際に大学の寮のパーティー等で学生の間で親しまれることになったが、特にコマーシャリズムや商業主義に反する音楽を紹介する傾向にあった。特にインディペンデントでの活動を行うバンドを中心にプッシュすることが多かった。これは後に、リプレイスメンツやスミス等がメジャーレーベルからリリースを行うようになると、当初のインディーズのスノビズムの意義は薄れていくことになる。特に、R.E.M、リプレイスメンツやスミスは、ヒットチャートで上位を獲得したことがあるため、インディーズバンドというにはあまりにも有名すぎるのである。


現時点から見ると、インディーズミュージックというのは一昔前に比べると、本来の意義を失っているのは事実である。というのも、90年代以前にはインディーズレーベルが米国にはほとんど存在せず、カレッジラジオの曲のオンエアがレーベルの紹介やリリースの代役を果たしていたからである。そもそも、カレッジロックでオンエアされる音楽がすべて現在のストリーミングのように、リスナーが簡単に入手出来るとも限らなかったはずである。そこで、カレッジロックは、次世代の音楽シーンの橋渡しのような役割を担った。そして、この動きに続いて、サブ・ポップがシングル・コレクション(今も現役)等を通じて、アンダーグラウンドのバンドを紹介し、のちの世代のグランジやオルトロックへと繋がっていく。

 


・カレッジロックはオルトロックの原点なのか?

 

もしカレッジロックが一般的に大学生や若い世代に普及していなければ、その後の90年代のオルタナやミクスチャーロックは存在しなかったはずである。なぜなら、このラジオ曲のオンエアの中にはニルヴァーナやRHCP(マザーズ・ミルク等)の最初期の音楽もオンエアされていたからである。


当時、ラジオ曲を聴いたり、学生寮のパーティー等でこれらの音楽を自然に聴いていた学生が数年後、音楽を始め、それらのムーブメントを担っていったと考えるのが妥当である。また反商業主義的な音楽の宣伝と同時に、このカレッジロックというジャンルには何らかの音楽的な共通項がある。

 

演奏が上手いとは言えないが、ザラザラとしたギター、ときにエモの原点となる音楽的な叙情性、粗野なボーカル、そして音質こそ良くないが、純粋なエネルギーがこもっているということ。これらの長所と短所を兼ね備えたロックは、当時の若者の心を奮い立たせる効果があったかもしれない。そして、演奏がベテランバンドのように上手くなかったことも、当時のティーンネイジャー等に大きな触発を与えたものと思われる。そこには専門性の欠落という瑕疵こそあれ、これだったら自分でも演奏できるかもしれない、と思わせることはかなり重要だったのである。

 

カレッジ・ロックは1980年代からおよそ数年間でそのムーブメントの役割を終える。ある意味、オルト・ロックに飲み込まれていったのである。厳密に言えば、カレッジ・ロックが終わったのは92年で、これはその代表的なバンドのR.E.Mが商業的な成功を収めはじめ、ほとんどシアトルのバンドがメインストリームに引き上げられた年代と時を同じくしている。これらの対抗勢力として、アンダーグランドでは、スロウコアやオルトフォークがミレニアムの時代に向けての醸成期間を形成する。最初のオルトフォークの立役者は間違いなくエリオット・スミスである。

 

1992年以降、カレッジ・ロックが以前のような影響力を失い、宣伝力や求心力を急速に失った要因としては、アメリカのNPRなど次世代のラジオメディアが台頭し、前の世代のカレッジ・ラジオの文化観を塗り替えたことが要因に挙げられる。90年代の後半になると、依然として大学のラジオの影響下にあるインディーズバンドは数多く台頭し、その一派は、パンクという形で、または、エモという形で、これらのUSオルトを受け継いでいく。カレッジ・ロックは、インターネットの一般普及により、デジタルカルチャーの一貫として組み込まれることになる。


その後のインターネットの普及により、2000年前後からブログメディアが誕生し、かつてのカレッジ・ラジオのような影響力を持つに至る。それらが一般的となり、デジタルに勝機があるとみるや、それを大手企業のメディアも追従するという構図が作られた。以後の時代の音楽文化の宣伝はSNSやソーシャルという形に変わるが、以降の20年間は、その延長線上にあると言っても過言ではなく、それらの基礎はすべて90年代後半から00年代初頭にかけて構築されていった。

 

 


・カレッジロックの代表的なバンドとその音楽



・R.E.M

 



 

R.E.M.(アール・イー・エム)は、カレッジ・ロックの象徴的なバンドで大きな成功を収めた。米国、ジョージア州アセンズ出身のロック・バンド。1980年結成。2011年9月21日解散。バンド名はレム睡眠時の眼球運動(Rapid Eye Movement)に由来すると言われているが、本人らは明言しておらず諸説ある。

 

アメリカのインディ・レーベルIRSよりデビュー。6枚目のアルバム『グリーン』よりワーナーへと移籍。以後、現在に至るまでオルタナティブ・ロックの代表的なバンドの一つとして活動を続けている。


高い音楽性、歌詞にこめられたメッセージ性から「世界で最も重要なロックバンド」と称されることもある。デビュー当時は4人組のバンドだったが、1997年にドラムのビル・ベリーが健康上の理由により脱退。以後はメンバーを追加することなく3人で活動している。 2007年、ロックの殿堂入りを果たした。

 

 

 


・Sonic Youth

 



写真が大学生っぽいのは置いておくが、ソニック・ユース (Sonic Youth) は1981年に結成されたニューヨーク出身のバンド。1970年代後半から活動を開始する。現代音楽家グレン・ブランカが主宰するギター・オーケストレーションのグループでサーストン・ムーアとリー・ラナルドが出会いサーストンの彼女のキムを誘いソニックユースの原型が誕生した。ごく初期の数年間、ドラムにはあまり恵まれず、実力不足で何回か交代している。

 

グループ名は元MC5のギタリスト、フレッド “ソニック” スミス(パティ・スミスの亡き夫)が好きだったのと、サーストンが好きなレゲエのアーティストに”ユース”という言葉の付いた者が多かったので思いついた名前。本人曰くあまり意味は無いらしい。バンド名を変えてアルバムを出すことも多かったことから、それほどバンド名に執着は無い様子でもある。


ジャンルとしてはノイズロック、グランジ、オルタナに分類される。サーストン・ムーアは「エレキ・ギターを聞くということはノイズを聞くこと」との持論があり、ギターノイズだけの曲、リーディング・ポエトリーのような曲、実験的な曲も多い。自分でオリジナルのコードや変則的チューニングを考えたこともある。


当初、アメリカで人気が出ず、当時ニューウェイブが全盛期だったイギリスを始めとするヨーロッパで評価された。長年インディーズ・レーベルで活動。しかしアルバム「デイドリーム・ネイション」が傑作と評されメジャーへの足がかりとなる。自分たちがメジャーシーンに移行することでオルタナ全体の過小評価を上げたいとの思いが強かった。しかし「無冠の帝王」などと揶揄されることもあり、売れることより実験性を重んじるようなところがある。


メンバーであるスティーブ・シェリーは自主レーベル、スメルズ・ライク・レコードを運営するなどアンダー・グラウンドへ目を向け有能なアーティストをオーバー・グラウンドへ紹介することもあり「ソニック・ユースがお気に入りにあげている」といった冠詞はよく目にするものである。ニルヴァーナやダイナソーJr.といったバンドもソニック・ユースに見初められたバンドである。

 

 

 

 

 

・Husker Du(-Sugar)

 



 

Hüsker Dü(ハスカー・ドゥ)は、1979年アメリカ・ミネアポリスで結成されたハードコアバンド。Germs、Black Flag,X、Misfitsと並んで、USパンク/ハードコアの最重要バンドである。のちのALL、Discendentsを始めとするカルフォルニアのパンクの一部を形成している。

 

オルタナティヴ・シーンに強い影響を与えた最重要バンドとして知られる。バンド名はスウェーデンのボード・ゲームから。81年、地元で行われたライブ音源をCD化したアルバム『ランド・スピード・レコード(Land Speed Record)』でデビュー。

 

ロサンゼルス以外の北米パンク/ハードコアを吸収し、UKテイストをミックスしたサウンドである。初期の彼らはこういったカラーが濃く、とにかく「速い・やかましい・短い」の強行突破ぶりを見せつけていた。その後、激しい演奏にとことん美しいメロディと非反逆的な歌詞を乗せるという「脱・ハードコア」スタイルにシフト・チェンジする。楽曲の数々は、爆発と沈降を繰り返しながら、オーディエンスの支持を増やしていった。

 

だが、バンドの中心人物であったボヴ・モウルド(vo&g)が、「勢いで燃え尽きてしまったバンド」と自ら語っている通り、 87年のアルバム『ウェアハウス:ソングス・アンド・ストーリーズ』を最後に(86年にメジャーに移籍したばかりだった)、彼らは活動にピリオドを打った。

 

その後、ボブ・モールドはソロを通過してシュガー(Sugar)を結成、グラント・ハート(vo&dr)もソロを経てノヴァ・モヴで活動している。ソロ転向後は、スタンダードなロックに転じ、メロディック性が強まり、モールドのソングライターとしての性質が強まった。

 

  

 



・The Replacements

 


 

リプレイスメンツはミネソタ州ミネアポリスのバンドで、ハスカー・ドゥとともに中西部の最初のミュージック・シーンの立役者である。その野生味のあるロックサウンドは現在もなお得意な煌めきを放つ。

 

当初は荒削りなハードコアパンクやガレージロックを主体としていたが、84年の『Let It Be』からスイング・ジャズやロックンロール等多彩なジャンルを織り交ぜるようになった。バンドの商業的な成功はゲフィンからリリースされた「Don’t Tell A Soul」で訪れる。


以後、フロントマンのポール・ウェスターバーグのソングライティング性を押し出すようになり、インディーフォークやカントリーなどを音楽性の中心に据えるようになった。91年の解散後、ポール・ウェスターバーグはソロアーティストとして、カントリー/フォークロックの象徴的なアーティストとして目されるようになった。

 

 

 

 

・Pixies (-Breeders,Amps)

 

旧ラインナップ

ピクシーズ(Pixies)は、1985年に結成されたアメリカ合衆国のロックバンドである。初期オルタナティブ・ロックシーンに活躍したバンドのひとつであり、乾いた轟音ギターにブラック・フランシスの絶叫ボーカルが重なったサウンドは、後のインディーズミュージシャンに影響を与えた。


バンド名は、ギターのジョーイ・サンティアゴが適当に辞書を引いたところが「pixies」だったため。このバンドの正式名称は "Pixies in Panoply"であり、略してPixiesと読んでいる。
ピクシーズに影響を受けたバンドは数多く、ニルヴァーナのカート・コバーン、U2のボノ、ウィーザー、ブラー、レディオヘッド、ストロークス、the pillows、ナンバーガールなどが挙げられる。特にカート・コバーンがピクシーズを崇拝していたのは有名な話で、ニルヴァーナの代表曲ともいえる「スメルズ・ライク・ティーンスピリット」は、カート・コバーンがピクシーズの曲("Debaser"とも"WhereIs My Mind?"とも言われる)をコピーしている時に出来た曲だといわれている。

 

ニルヴァーナやナンバーガールといったバンドの特徴でもある、AメロやBメロは静かに、そしてサビ部分で絶叫というボーカルスタイルは彼らが発祥である。1曲1曲は短く、2分もない曲も多い。




・Throwing Muses

 



Throwing Musesはニューポートのバンドで、現在のオルトロックの源流を形成している。

 

同じ高校の同級生であり、異父姉妹でもあるクリスティン・ハーシュとタニヤ・ドネリーを中心に結成された。当初のバンド名は「Kristin Hersh and the Muses」だったという。その後ベーシストにエレイン・アダムデス、ドラマーにベッカ・ブルーメンが加入するが1983年に脱退。新ベーシストにレスリー・ランストン、新ドラマーにデヴィッド・ナルシーゾが加入した。


1984年に自主レーベルよりEP『Stand Up』をリリースしデビュー。その後バンドはアメリカのバンドとして初めて4ADと契約する。1986年にギル・ノートンプロデュースのセルフタイトルの1stアルバムをリリース。続けて1988年に2ndアルバム『ハウス・トルネード』をサイアー・レコードからリリース。1989年に3rdアルバム『Hunkpapa』を発表後、1990年にベーシストのランストンが脱退。新しくフレッド・アボンが加入し4枚目のアルバム『リアル・ラモーナ』を1991年にリリースするが、ドネリーがブリーダーズでの活動に専念するため脱退。


1992年にバンドは新ベーシストのバーナード・ジョージズを迎え5枚目のアルバム『レッド・ヘヴン』をリリース。アルバムには元ハスカー・ドゥのボブ・モールドがデュエット参加している[1]。1994年にハーシュはソロ・アルバム『Hips and Makers』を発表した。1995年発表の6枚目のアルバム『ユニヴァーシティ』の内容はプレスから賞賛されるが売れ行きは思わしくなく、その後サイアーを解雇される。

 

1996年に7枚目のアルバム『リンボー』をライコディスクよりリリース。1997年にバンドは解散し、ハーシュはソロ活動を本格化させる2003年にバンドは再結成を発表、同時期に8枚目のアルバム『スローイング・ミュージズ』をリリース。タニヤ・ドネリーもコーラスで参加した。2013年に10年ぶり9枚目のアルバム『Purgatory / Paradise』を発表した。 






・Guided By Voices

 




オハイオ州デイトン市の中学教師だったRobert Pollard率いるGuided By Voicesは、レコーディングに着手して以来大量の音楽を産み出してきた。

 

「ローファイ」というレッテルを貼られたおかげで、彼らの音楽が売上を伸ばしたことは間違いないが、彼らがほとんどの作品を安い機材で録音してきたのは、趣味の問題であると同時に予算の制約があったからだ。メジャー・レーベルと協力関係にあるインディー・レーベルから作品を発表するようになってからも、彼らは一貫してこの「ローファイ」というコンセプトにこだわっている。彼らのようなアンダーグラウンドのはぐれ者にとって、メインストリームでの成功は価値がないようだ。Pollardはつねに、現実のロックスターであるより、彼の空想のなかでロックスターであることを選んできた。

 

『Box』というそっけないタイトルの5枚組ボックス CDは、彼らの初期の作品を収録している。しかし、ほとんどの曲は、焦点が定まっていない。『King Shit And The Golden Boys』と題された付録CDは未発表作品を集めたものだが、このカルトバンドの未発表曲を聴きたいと待ち焦がれていたファンがそれほど大勢いたのだろうか。


なんらかの意味でPollardがポップの高みに達したのは、'92年の『Propeller』からである。このアルバムの数曲は、暗闇の前方に'60年代のハーモニーとパワーポップへの圧倒的な愛情が垣間見える。彼らは(と言っても、正式メンバー以外につねに何人かの酔っ払いが群がっているようだ・・・)『Vampire On Titus』をリリースすべくScat Recordsと契約した。しかし、そのように認知されただけで、Pollardは動揺した。彼は再び、AMラジオの夢の国というお得意のコンセプトで曲を作り出した。

 

それ以後Guided By Voicesがリリースした数枚のアルバムは、'60年代ポップ世界の再構築に関心がある者にとって貴重である。全米ツアーでの、Pollardと仲間たちは、歌の合間にビールを飲んでいた。ライヴが2時間に及ぶ頃には、彼らはたいてい出来あがっていて、最後にPollardが観客からリクエスト曲を募ったり、その場で曲を作ったりしていた。'96年には、Pollardと(元)メンバーのTobin Sproutがそれぞれソロアルバムを発表。'97年、Pollardは、クリーヴランド出身のロッカーCobra Verdeを新メンバーに迎え、『Mag Earwhig!』をリリースした。バンドは昨年、最新アルバム『Nowhere To Go But Up』をリリースし、変わらぬ健在ぶりをみせた。

 

 

 

 

・Superchunk

 


        

1989年にノースカロライナ州チャペル・ヒルで結成されたスーパー・チャンクは、マック・マコーガン(ギター、ヴォーカル)、ジム・ウィルバー(ギター、バッキング・ヴォーカル)、ジョン・ウースター(ドラムス、バッキング・ヴォーカル)、ローラ・バランス(ベース、バッキング・ヴォーカル)の4人組。

 

1989年に最初の7インチをリリースして以来、スーパーシャンクは、初期のパンク・ロック・ストンプ、キャリア中期の洗練された傑作、瑞々しく冒険的なカーブボールなど、さまざまなマイルストーンアルバムを発表してきた。 

 

Superchunkはピクシーズとともに90年代以降のオルタナティヴロックに強い影響を及ぼしている。また2000年代以降のメロディック・パンクバンドにも影響を及ぼしたという指摘もある。彼らの音楽の中には、現在のアメリカーナ、パンク、そしてロック、ポップに至るまですべてが凝縮されている。


 

 

・Dinosaur Jr.

 


 

 

Dinosaur Jrは1983年、マサチューセッツ州アムハーストにて、Deep Woundというハードコア・パンクバンドをやっていたJ Mascis(G/Vo)と、ハイスクールのクラスメートだったLou Barlow(B)により結成され、その後すぐに、Murph (Emmet Patrick Murphy/Dr)がメンバーに加わった。


Country Joe and The Fish、Jeffeson Airplaneの元メンバーのバンドがThe Dinosaurと名乗っており、法に抵触する可能性があったため、デビューアルバムである『Dinasour』(1985年)を発表後すぐに、バンド名を変えている(少なくとも1987年までは、Dinosaurの名前を使っていた。

 

1987年、彼らはSonic YouthからのすすめでSST Recordsと契約、彼らのベスト作とされている『Your' re Living All Over Me』をリリースした。次の年には『Bug』を発表する。イギリスで『Bug』は、Sonic YouthやBig Black、Butthole SurfersらのレーベルであったPaul SmithのBlast First Recordsからリリースされた。この時期、彼らは大音量のライブをやるバンドとして知られるようになった。

 

大きな商業的な成功はなかったものの、カルト的な熱狂を獲得していた。『Freak Scene』と『Just Like Heaven』の成功は、Sonic YouthやNirvanaと仲がよかったことも相まって、結果的にWarner Brothersとの契約に結びつくことになった。彼らの曲はギターノイズに包まれ、メロディックで構成も単純であったため、同時代のPixiesとともに、その後に登場してくるNirvanaに大きな影響を与えている。以後、『Green Mind』でようやく商業的な成功を収める。


面白いことに、ルー・バーロウとJ・マシスの音楽性はすべて1987年の「Little Funny Things」で完成されており、のちの商業的な成功はその付加物でしかないように思える。バンドの音楽は当初サイケデリックロックやフォークの融合という形で登場したが、それをよりスタンダードな音楽性へと変化させていった。


「Green Mind」の商業的な成功はその時代のグランジの影響下にあった。もちろん、「Flying Cloud」でのインディーフォークのアプローチや、「Muck」のサイケとファンク、そしてカレッジロックの融合というセンスの良さがあるとしてもである。それでも、やはり、Jマシスのギタリストとしての凄さは最初期や90年代にかけての音源にはっきりと見出すことが出来る。



                                  

 


・Built to Spill

 



                
Built to Spillはアイダホ州ボイシを拠点に活動するインディーロックバンド。キャッチーなギター・フックとフロントマンDoug Martschのユニークな歌声で有名だ。


元Treepeopleのフロントマンだったダグ・マートシュは、1992年にブレット・ネットソン、ラルフ・ユーツと共にビルト・トゥ・スピルを結成。GBVと並んで、オルタナティヴロックの源流にあるバンド。

 

当時のSpin誌のインタビューで、ダグ・マートシュは「アルバムの度にバンドのラインナップを変えるつもりだった」と語っている。


マートシュは唯一のパーマネント・メンバーだった。バンドのファースト・アルバムバンドのファースト・アルバム『アルティメット・オルタナティヴ・ウェイヴァーズ』(1993年)の後、ラインナップを変えるという考えは真実となった。ネッツォンとユッツの後任にブレットNelson(Netsonではない)とAndy Cappsに交代し、1994年の『There's Nothing Wrong With Love』をリリースした。コンピレーション・アルバム『The Normal Years、 というコンピレーション・アルバムが1996年にリリースされた。1995年のアルバム録音の合間に、バンドは ロラパルーザ・ツアーに参加。マーシュは1995年、ビルト・トゥ・スピルとワーナー・ブラザースと契約。


1997年、『Perfect From Now On』で初のメジャー・レーベルからのリリースを果たした。この時、バンドはマートシュ、ネルソン、ネットソン、スコット・プルーフで構成されていた。Perfect From Now On』は批評家からも高評価を受け、ビルト・トゥ・スピルはアメリカで最もステディなインディーロックバンドのひとつとなった。

 



・Sebadoh




Dinosaur.Jrに在籍していたルー・バーロウとエリック・ガフニーとの宅録テープ交換から生まれたバンド。ダイナソー脱退後、ルーはSebadohを中心とするソロ活動に専念するようになった。

 

安い機材でのレコーディングにこだわり、PavementやBeat Happening同様に、ロー・ファイを確立した重要なバンドと言われている。80年代前半から後半の宅録テープをリリースした後、92年からSUB POPに在籍。ルーのワンマンバンドというわけではなく、ルー以外のメンバーの曲も多い。メンバーチェンジを繰り返しながらも4枚のアルバムをリリースしている。

 

ルー・バーロウはSentridoやFolk Implosion 、ソロ名義などSebadoh以外のプロジェクトでも活動的だった。Sebadohは2000年頃に終止符が打たれ、ルーは他のプロジェクトに力を注ぐようになった。

 

2005年にはDinosaur Jrが再結成、2007年にはエリックを含むオリジナルラインナップでのSebadohでツアーをすると宣言。現在、ルーのメインバンドはDinosaur Jrのようだが、合間を縫って様々な活動を展開中らしい。

 

 

 

・上記で紹介したバンドのほか、カレッジロックの最重要バンドとして、Soul Asylum、The Smithereens、Buffalo Tomが挙げられる。他にも米国のラジオではUKロックがオンエアされており、その中にはThe La's,The Smith,The Cureといったバンドの楽曲がプッシュされていた。