イギリスのサックス奏者、シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)が、初のソロアルバム『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』の最新シングル「I'll Do Whatever You Want」を公開した。

 

ハッチングスはサンズ・オブ・ケメット/コメット・オブ・イズ・カミングのメンバーとしても知られ、近年ではソロ活動に転じている。ロンドンのジャズシーンをリードする存在である。

 

「"I'll Do Whatever You Want "は、降伏と、所有欲の掌中にある親密な空間について歌っている」とシャバカは声明で述べている。

 

シャバカの新作アルバム『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』は4月12日にImpulse!から発売される。

 


「I'll Do Whatever You Want」

 


1980年、旧西ドイツ/クロイツベルク地区から発生した当然変異体、伝説的なインダストリアルバンド、Einstürzende Neubauten(アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテン)がニューアルバム『Ramps』(apm:alien pop music)を2024年4月5日にリリースする。インダストリアル界のレジェンドは、リードシングル「Ist Ist」を公開した。原始的なインダストリアルミュージックである。

  

1980年代はじめのクロイツベルク地区は、かつてトルコ系移民が移住し、政治的にも環境的にも混沌とした地区として知られていた。アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンはまさにこの旧西ドイツ時代のジャンク、インダストリアル、そしてノイズ性を象徴するようなグループ。

 

しかし、1980年代の象徴的なノイズサウンドを始めとする、かつてのアインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンの前衛性や既存の概念への長い挑戦は、ノイズやオルタネイトな要素こそあれ、長い時を経て、比較的聞きやすいポップ、親しみやすい音楽に変わったことがわかる。

 

「このアルバムで、私はいくつかの解決策を見つけ、従来にない方法で物事を定式化した。私は、音楽を通して知識を得ることができると信じている。ずっとそうだった。私は今もその信念に従っているんだ。今まで知らなかったことを音楽の中から見出す。そして知らなかったことを歌う。それが真実だとわかる何かを。あるいは、これを一段低くするため、少なくとも意味があるものをね」   

 

Einstürzende Neubauten

 

 

 「Ist Ist」





Einstürzende Neubauten 『Ramps (apm: alien pop music)』




Tracklist:


1. Wie lange noch?

2. Ist Ist

3. Pestalozzi

4.  Es könnte sein

5. Before I Go

6. Isso Isso

7. Besser Isses

8. Everything will be fine

9. The Pit of Language

10. Planet Umbra

11. Tar & Feathers

12. Aus den Zeiten

13. Ick wees nich (Noch nich)

14. Trilobites

15. Gesundbrunnen

 

 

Tour Annoucement:

 

Einstürzende Neubauten(アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテン)はアルバムの発売を記念するツアー”alien pop music 2024”の開催を発表した。5月9日のウイーンでの公演を筆頭に、ロンドンを始め、ヨーロッパ各国をめぐり、故郷のドイツ公演を経て、10月29日にベルギーのアントワープの公演でこのツアーを終える。ヨーロッパツアーの公式フライヤーは下記の通り。

 

 


Einstürzende Neubauten:



1980年代、西ベルリンの非常事態の中で生活していたクリエイティブな若者たちの多くは、その非常事態をある種の正常さとして受け止めていた。そう、それは何でも可能に思えた時代だった。



ブリクサ・バーゲルドは、1980年4月1日にムーン・クラブで演奏しないかと誘われたとき、EINSTÜRZENDE NEUBAUTENというバンドを思いつき、ギグを引き受け、数人の友人に電話をかけた。

 

バンドの初期メンバーは、その晩たまたま時間があったミュージシャンたちだった。アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンの正式な誕生は、一般的にこのコンサートと結びつけられている。確かに、このバンドがこれほどまでに高い生産性を維持し続け、40年近く経った今でも健在であるとは、当時は誰も予想できなかっただろう。



2017年1月、ハンブルクの壮大な会場「エルプフィルハーモニー」でのダブル・コンサートを皮切りに始まった「グレイテスト・ヒッツ」ツアーは、記録的な速さでソールドアウトとなり、アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンというバンドが、約37年という最も濃密な音楽的恍惚の時を経た今もなお健在であることを示している。この刺激的なバンドの波乱に満ちた歴史の概略を記すならば、この歩みを当然視すべきではないことがわかる。



1981年11月にリリースされたデビュー・アルバム『Kollaps』で、アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンは従来のリスニング習慣に宣戦布告した。このアルバムは実際には「聴こえない」レコードであり、メインストリームのサウンドによって鈍化してしまった期待や聴き方に対して真っ向から挑戦を挑んだ。


アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンは、ドイツでは希少なバンドであり、その独自のトレンド・ミックスを通じて、国際的に本物のインパルスを発信している。

 

ダンス・シアターからビジュアル・アートまで、他の多くのバンドや芸術ジャンルに影響を与え、シュリンゲンジーフからタランティーノまで、今日に至るまで映画にも影響を与えている。メディアは当初、このバンドを奇妙な「分断都市の珍品」と嘲笑したが、瞬く間に、現在とポップカルチャーの名だたる偉人の一人として世界中にその地位を確立した。全世代に影響を与え、今日でも実験的なサウンドアートやパフォーマンスの青写真をしばしばコピーしている。



アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンは、"音楽 "という言葉を独創的かつ先鋭的に再定義することを特徴としている。例えば、日本の映画監督・飯石聰亙のような、一風変わった先駆的なコラボレーションにもしばしば参加している。

 

また、ペーター・ザデック、ハイナー・ミュラー、レアンダー・ハウスマンら著名な演出家やドラマツルグとの演劇プロジェクトを通じて、バンドは広範囲な経験を共有しており、その様子はアート・プレスによって陶酔的に記録されている。また、ドクメンタ7、パリ・ビエンナーレ、バンクーバー万博など、国際的な文化イベントにも招待されている。

 



girl in redがサブリナ・カーペンターとのコラボシングルを発表した。4月12日にリリースされるセカンドアルバム『I'M DOING IT AGAIN BABY!』の最新曲「You Need Me Now?」を下記よりチェックしてみよう。


「元々、アリアナ・グランデにフィーチャリングしてほしいというセリフがあったんだけど、彼女が嫌がったから自分でやることになった。でも、それじゃクールさに欠けると思ったの」とマリーはDorkの取材に対して語っている。

 

そして、彼女はサブリナに連絡を取った。「私は『Feather』も『Nonsense』も大好きだし、『Emails I Can't Send』はとてもシックなアルバムだと思う。彼女なら私にできない何かをこの曲に与えてくれると思ったの」


サブリナはマリーに、マリーが望むことであれば、曲の中でゲップをしてもいいと言った。「私はそれがとても面白かったわ」とマリーは言う。「2人は一緒に歌詞を書き、サブリナは自分のパートをわずか4時間で書き上げた。素晴らしいエネルギーがあるのよ」


「デュエットやコラボレーションの多くは、とても計算された感じがする。フィニアスと『Serotonin』を作った時もそうだった。変な曲だけど、楽しく感じる。常に真剣でいるのではなく、変なアイデアを持つことを自分に許し、それを試してみる。真剣でありながら、それを楽しむことは可能なんだ」

 

『I'M DOING IT AGAIN BABY!』の先行シングルとして「Too Much」、タイトル曲「I'm Doing It Again」が配信されています。


ガール・イン・レッドは''フジロックフェスティバル2024''で来日公演を行います。こちらも注目です。


「You Need Me Now?」



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©︎ Rahi  Rezvani


音楽ビジネスで成功するためには、才能、タイミング、運の3つが必要だと言われる。それに加えて、注目されるためのプラスアルファが必要だ。ユップ・ベヴィン(Joep Beving)には、その4つがすべて備わっている。

ワイルドな髪に流れるようなあごひげ、身長180センチ近いオランダ人ピアニストは、まるで童話に出てくる親しみやすい巨人のようだ。しかし、彼の演奏は、控えめで、心に染み入るような、メランコリックなもので、巨人の中でも最も優しく、その繊細なメロディーは、この困難な時代に魂を癒してくれる。

「今、世界は慌ただしい。私は、基本的な人間的なレベルで人々と再びつながりたいという深い衝動を感じている。世界共通語である音楽には団結する力がある。文化の違いに関係なく、私たちは人間であることの意味を生得的に理解していると思う。私たちには、それを示す感覚がある」

ユップの音楽は、不安と恐怖に満ちた慌ただしい世界への解毒剤であり、より優しく希望に満ちた未来へのサウンドトラックである。

「かなりエモーショナルなものなんだ。私はこれを "複雑な感情のためのシンプルな音楽 "と呼んでいる。イメージを引き立てる音楽であり、観客が自分の想像力でギャップを埋められるような空間を作り出す音楽なんだ」


ユップ・ベヴィンの物語は、幸運とタイミングに恵まれたものだ。ヨープ(「ユップ」と発音)は14歳で初めてバンドを結成し、地元のジャズフェスティバルでライブデビューを果たした。彼は音楽の道か行政の道かで悩みながら学校を去った。手首の負傷によりコンセルヴァトワールでのピアノの勉強を断念し、経済学の学位取得に専念することを余儀なくされたとき、音楽の損失は公務員の利益になるものと思われた。

しかし、彼にとって音楽の魅力はあまりにも強かった。「音楽は常に私の心の中にありました」と彼は言う。相反する2つの道の妥協点にたどり着いた彼は、10年間、成功した企業でマッチングやブランド音楽の制作に携わった。「しかし、私は常に広告と愛憎関係にあった。必要のないものを売りつけるために音楽を使うのは、決して心地よいものではなかった」

余暇には、成功したオランダのニュージャズ集団、ザ・スカリーマティック・オーケストラや自称 "エレクトロソウルホップジャズ集団 "のムーディー・アレンでキーボードを演奏し、ワンマン・プロジェクトのアイ・アー・ジャイアントでエレクトロニカに手を出していた。しかし、彼自身はこんなふうに認めている。「それは自分ではなかった。自分の声を見つけられなかったんだ」




それが変わり始めたのは、広告界のアカデミー賞と呼ばれるライオンズ・フェスティバルのためにカンヌを訪れたときのことだった。「自分の音楽が聴衆に感情的な影響を与えることを目の当たりにしたのは、そのときが初めてだった」

その反響に勇気づけられたユップは、アムステルダムの自宅で親しい友人たちを招いてディナー・パーティーを開き、2009年に亡き祖母が遺したピアノで自分の曲を演奏した。「友人たちが、リビングルームの外で聴くべきだと思う音楽を私が演奏するのを聴いたのは、そのときが初めてだった。自分の楽器だけでソロ・アルバムを出すという夢を追い求める後押しになったんだ」


その1ヵ月後、親友が不慮の死を遂げたため、ユップは彼の葬儀のために追悼曲を作曲した。「彼の火葬で初めてその曲を演奏したんだ。その後、彼の永久的な記念になるようにと、みんなにレコーディングするよう勧められたんだ。彼は並外れた人でした」




その反応に触発されたユップは、さらに曲を書き、それから3ヶ月間、自分のキッチンで、ガールフレンドと2人の娘が寝ている間に演奏し、1テイクずつ録音した。こうして完成したのが、彼のデビュー・アルバム『Solipsism』である。

彼がアプローチした唯一のレコード・レーベルには断られたが、彼は1,500枚のレコードをプレスするために金を払い、アートワークはラヒ・レズヴァーニ(彼は「The Light She Brings」の素晴らしいビデオも制作した)が担当した。ジョエップは2015年3月、アムステルダムの注目のファッションデザイナー、ハンス・ウッビンクのスタジオでアルバム発売を演出し、そこで初披露した。

最初のプレス盤はすぐに完売し、主に友人に売られた。曲はスポティファイで即座にヒットし、ニューヨークのチームが人気の『Peaceful Piano』プレイリストに1曲「The Light She Brings」を追加した。「人々はその曲を保存し始めたので、別の曲を追加した。そして、私のアルバム全体を気に入ってくれるようになった。やがて『Solipsism』はバイラル現象となり、もう1曲の "Sleeping Lotus "のストリーミング再生回数は3,000万回を超えた。そして、両アルバムを合わせた全曲のストリーミング再生回数は1億8000万回を超えた。

ネット上での大成功の結果、ユップはオランダのゴールデンタイムのテレビ番組に出演することになった。その翌日、彼のアルバムはワン・ダイレクションをチャートのトップから叩き落とした。「そして数日後、アデルがカムバックしたんだ」と彼は笑う。

アムステルダムの有名なコンセルトヘボウでの名誉あるソロ・リサイタルを含め、コンサート・プロモーターからショーのオファーが殺到し、別の友人が地元のバーで "夜中の2時にみんながタバコを吸いながらモスコミュールを飲んでいる中で "彼のアルバムを演奏したことから、彼のアルバムはベルリンに渡ることになった。

偶然にも、その夜ふかしのひとりがドイツ・グラモフォンの重役であるクリスチャン・バドゥラだった。ネットで連絡を取り合った後、ユップがベルリンのクリストフォリ・ピアノサロンで演奏したときに2人は出会い、世界有数のクラシック・レーベルと契約を結ぶことになった。

この新しいパートナーシップの最初の成果が『Prehension』である。『Solipsism』の自然な後継作である本作は、ヨープが彼の音楽に見出した音楽的・哲学的テーマを継承している。「私は、身の回りで起こっていることの絶対的なグロテスクさに反応しているのだ。そのような状況では、取るに足らない無力感に苛まれ、現実や周囲の人々から自分を遠ざけてしまう。私はただ、美しいと思うものを書き、多くの音符を省き、楽器を通して物語を語り、シンプルで正直で美しいもので私たちをひとつにしようとしている」


ドイツ・グラモフォンからリリースされた新曲「Pax」は前作『Hermetism』の音楽性の延長戦上にある。サティを髣髴とさせる美しいピアノ曲を書き上げた作曲家は今回もミニマリズムを基底とする摩訶不思議な世界をアコースティックピアノにより表現している。

「Pax」は色彩的な和音はサティの系譜にあるが、楽曲構成や作風はベートーヴェンの「Moonlight」を思わせる。今回のピアノのサウンドデザインも現在のポストクラシカルを踏襲し、ハンマーや鍵盤の音響を生かしながらも、その音階の連なりはダイヤモンドのごとき高貴な輝きを放ってやまない。


「Pax」


 



アパラチアとはニューヨーク州からミシシッピやアラバマ州まで、その稜線を伸ばす山岳地帯である。その地域は約二十万平方マイルを網羅している。古くは、イングランド、スコットランド/アイルランドの移民が多く住んでいて、ニューイングランドの文化性を最初期のアメリカの建国において築き上げて来た。この民族は、日本の北海道の奥地にいたアイヌ民族によく似た生活を送り、口伝の伝統性、自給自足の生活、そして民間伝承を特徴としていた。後には「アパラチアン・トレイル」という区域が設けられ、山岳登山者にも親しまれる場所となった。

 

アパラチア山脈の地域の産業は、農業の他、石炭の採掘が盛んだった。山岳地帯で冬はひときわ寒い。真冬は大雪が降る。家の中を温めるため、石炭と石油は必須であった。男性は石炭を採掘するため山の奥深くに踏み入った。彼らが日中を仕事に費やし、木造りの小屋の灯芯の油が途絶えようとする頃、山に仕事に行っていた男が石炭と埃にまみれて戻って来る。その間、女性たちは農業や紡績等の仕事を行い、家族が帰ってくるのを待っていたのは想像にかたくない。

 

アパラチアの文化を見るときにフォーク音楽という要素を欠かすことは出来ない。なぜならアパラチアは鉱業と音楽によって、その文化性を構築してきたからである。フォークとは平たく言えば、民謡のことで、その地域で親しまれる流行歌と言える。アパラチアはカントリーとブルーグラスの発祥の土地であり、もちろん、アメリカーナの出発の土地でもある。スコットランドやニューイングランドの移民は、はてない太洋の向こう、遠く離れた故郷のイギリスの望洋の念をアコースティックギターに乗せて歌ったのだろうか。アパラチアの家族の中には、必ずといっていいほど、楽器演奏者がいた。多くの鉱業や農業を営む家族は非常に貧しかった。高級なピアノを買うほどのお金はない。そこで、彼らは、スコットランドから持ってきたフィドルやバンジョー、あるいは、ダルシマーを演奏したのだった。山の枝を伐り、薪とし、それを小屋の向こうで燃やし、薪の周りに円居し、フォーク音楽を演奏した。この地域からはドリー・パートン、パッツィ・クライン、ロレッタ・リンを始めとする偉大な音楽家が輩出された。

 

こういった山岳地帯の生活の中でアパラチアン・フォークは育まれたわけだが、この音楽用語は20世紀初頭に少数の学者のグループによって名付けられた人工的なカテゴリーだった。アパラチアの民族性は音楽だけではなく、民間伝承や産業を切り離して語ることは難しい。それに加えて、民族的にもアフリカ系が住んでいた。単一主義の地域ではなく、出発からして多民族の地帯だ。しかし、この地域の音楽が、後世のフォーク/カントリーの一部を形成しているのは事実のようである。スコットランド民謡の伝承という要素がアパラチア音楽の素地の一側面を形成しているのも明確なのだ。

 

 

アパラチア音楽に求められる民俗性

 



19世紀から始まり、1920年代まで続いたアパラチア音楽に関する初期研究は、すべてアイルランド等で盛んだった「バラード」という形式、及び、他の類に属する新しい当世の流行歌や歌謡曲の再発見である「バラード・ハンティング」、「ソングキャッチ」という側面に焦点が絞られていた。ジェームス・チャイルドの「イギリスとスコットランドの人気バラード(1898)」という書籍を元に音楽研究が進んだ。実際、この本に書かれていた記述によって、アパラチアの音楽とイギリス諸島の民謡の中に歴史的なつながりを見出す契機をもたらしたのだった。

 

アパラチア音楽の最初期の評価は、モチーフの価値観や興味よりも、作家の個別の価値観や興味に基軸が置かれていた。例えば、1928年に米国議会図書館にフォーク・ソングアーカイブを設立したロバート・ウィンスロー・ゴードン氏は、イギリスの歌との直接的な関係によって定義付けられるアパラチアのフォーク音楽こそが「純正なもの」であり、「本物」であるとしている。ロバート・ゴードン氏は、「アパラチアを、アフリカ系アメリカ人やユダヤ系アメリカ人に代わるアメリカ人」として指摘した上で、次のように言及している。


「個人的には、私達の本当のアメリカ人のフォークを復活させ、知らせるためのプロジェクト全体が今日率先して行うべき価値のあることだと信じています。真のアメリカニズムの見方ーー、それはまさに私達の過去、開拓者、アメリカの作った人々の魂そのものです。現代のブロードウェイ、ジャズだけではないのです」ロバート氏の言葉には、現代性を見た上で、「過去の民族性が、現在にどのような形で反映されているのか」を最も重視すべきということが痛感出来る。

 

ただ、音楽専門家の意見とは異なる民俗学の研究者の視点が入ったとき、アパラチア音楽の研究は別の意義を与えられることになった。英国の伝統に関する視点は必ずしも絶対的なものではなかったのだ。ション・ローマックスとアラン・ ローマックスを筆頭にする民族学者、活動家の一派は、アパラチアの住民の民族性を調査するため、1930年代から40年代にかけて、時事的な曲や流行歌を蒐集した。このとき、必ずしもニューイングランド系の移民のみでこの音楽が演奏されるわけではなく、非白人のアパラチア人が演奏していたものもあったことが明るみに出るようになった。

 

稀少な事例であるが、ジェームズ・ムーニーによる「チェロキーの神話」、アフリカ系アメリカ人の鉄道バラード「ジョン・ヘンリー」の物語を明らかにした1920年のルイ・チャペルの未発表曲等が発見されると、必ずしもアパラチア音楽が白人のために限定された音楽とは言い難くなった。つまり、この点は20世紀前後のブルースの原点にあるプランテーションソングや鉄道員の歌と連動して、これらのアパラチア音楽が形成されていったことを伺わせるのである。

 

 

Dulcimerという謎の多い楽器


さらにアパラチア地帯には、スコットランド/アイルランド系の移民だけが生活していたわけではないことが歴史的な研究で明らかになっている。

 

他にもドイツ系、フランス系ユグノー、東ヨーロッパ人等多様な民族がこの山岳地帯に定住している。他にも20世紀初頭、アフリカ系アメリカ人がアパラチアの人工の約12パーセントを占めていたとの調査もある。さらにこれらのグループは、密接な関係を持ち、孤立していたわけではなかったことが判明している。アパラチア音楽のアイコンとなっている楽器「マウンテン・ダルシマー」は、ドイツのシャイトルトの系譜に当たる楽器と言われている。この点から、スコットランド人に留まらず、ドイツ人もヨーロッパ固有の楽器をこのアパラチア地域にもたらしたことを意味している。

 

さらに、ダルシマーという楽器は、フォルテ・ピアノの音響の元になったもので、フィレンツェのメディチ家が楽器製作者の”バルトメオ・クリストフォリ”に制作させた。クリストフォリはダルシマーをヒントに、いくつかの段階を経て、ピアノという楽器を製作した。ダルシマーは、アメリカーナの楽器のスティールギターの元祖であるとともに、驚くべきことに、イスラム圏の「ウード」にも似ており、日本の和楽器の「琵琶」にも良く似ている。つまり、この楽器はヨーロッパにとどまらず、イスラム、アジアとも何らかの関連性があることも推測される。

 

ブルーグラスやカントリーでお馴染みの楽器、バンジョーやマンドリン、ストリングスバンドが取り入れられたのはかなり早い時期で、1840年代であった。この時代にはミンストレル・ショーと呼ばれる演芸が行われ、アパラチア音楽が一般的に普及していく契機を作った。ジョーン・ベッカーは、「バラードや伝統的なゴスペルのような賛美歌だけではなく、登山家はその時代、伝統的なアングロサクソンの歌をうたっていた」と述べている。「もちろん、バラードや伝統的な歌にとどまらず、現代的な話題を題材にした新しいバラードも楽しんでいたのです。彼らは郵送で購入したギター、バンジョー、マンドリンと並べて手作りのフィドルも演奏していた」

 

20世紀の初頭、アパラチア音楽とは何を意味していたのか。1927年の夏、ラルフ・ピアという人物がビクター・レコードのためにブリストル(テネシーとバージニアの間にある)で行ったこの音楽のアーカイブ録音が存在する。録音の演奏者と曲のレパートリーを決定する上で、ラルフ・ピアは実際の演奏者に現代的な曲を避けるように指示している。しかし、なかなか実際に演奏出来るミュージシャンが見つからず、アパラチア音楽の録音は暗礁に乗り上げかけた。

 

しかし、そこには明るい兆しもあった。テネブ・ランブラーズは当時、ジミー・ロジャースというミシシッピの若手歌手を加入させたばかりで、レコーディング前に「自分たちが持っている曲よりも古く、田舎風の曲を探さなければいけない」と言われていた。バンドは解散してしまったものの、ロジャースは初のレコーディングを行い、カントリー・ミュージックの最初のスターとなった。

 

その時代と並んで、ゴスペルスタイルの歌をうたうカーター・ファミリー・プロテスト、同じくゴスペルシンガー、ブラインド・アルフレッド・リード、さらに、ホーリネス教会の牧師であったアーネスト・フィリップス、BFシェルトン、フィドル奏者でセッションにアフリカ系アメリカ人として最初に参加したエル・ワトソンなどが、そのサークルに加わることになる。上記の演奏家や歌手は、フォーク音楽の出発が、紡績の糸から組み上げられていることを示した。

 

 

アパラチア音楽の本質とは何か




アパラチア民族が山岳での農業、紡績、あるいは鉱業を営む傍ら、これらの音楽にどのような意義を与えていたのか。あるいは意義を与えられたのか。それは少なくとも、生活に密着した音楽的な表現を生み出すことであり、また、日頃の生活に潤いを与えるために音楽を歌ったことは、19世紀の綿花を生産するプランテーション農場で黒人の女性たちが歌った「プランテーション・ソング」、鉄道員によるワイルドな気風を持つ労働歌である「レイルロード・ソング」と同様である。そして、アパラチア音楽の場合は、単一の民族ではなく多民族で構成され、複数の楽器、フィドル、ダルシマーといったヨーロッパ、イギリス諸島の固有の楽器が持ち込まれ、独自の進化ーーアパラチアン・フォークーーというスタイルが生み出されることになった。これらの基礎を作り上げた中には、アフリカ系アメリカ人もいたことは付記しておくべきか。

 

また、著名な研究家であるウィリアム・フォスターは、アパラチア音楽の本質について次のように述べている。「アパラチア音楽が”アメリカ文化の特徴的で信頼すべき変種である”という意見は、依然として少数派の意見であると考える人がいるかもしれません。しかし、それは音楽が重要でなくなったからではなく、時代が進むごとに音楽用語として廃れつつあったからなのです。少なくとも、アパラチア地方の音楽は単一のものではなく、20世紀の音楽の創造におけるもうひとつの多角的な側面を示しています」 

 

「少なくとも、ブルース、ジャズ、ブルーグラス、ホンキートンク、カントリー、ゴスペル、ポップスにアパラチア音楽の影響は顕著に反映されています。これらの音楽のスタイルは、それ以外の地域の固有の音楽と同じように、アパラチアの文化性を担っている。アパラチアの音楽はアメリカの物語とよく似ています」とフォスター氏は語る。「アメリカでは、ミュージシャンはカテゴリーや系統の純度をあまり気にすることはありません。彼らはそれ以前の音楽を新しい翻案の素材として見なし、自らに適したスタイルや形式を熱心に掘り下げて来たのです」



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Olivia Rodrigoが2ndアルバム『GUTS』のデラックス・エディション『GUTS(spilled)』をリリースした。リリースに伴い、トラック「Obsessed」の新しいミュージックビデオが公開された。


今週初めにシカゴのステージで初めて発表された『GUTS (spilled)』には、新曲 「So American 」に加え、『GUTS』のヴァイナル盤のシークレット・トラック、「Obsessed」、「Girl I've Always Been」、「Scared of My Guitar」、「Strange」が収録されている。 アルバムのストリーミングは以下から。


「Obsessed」の新しいミュージックビデオでは「Miss Right Now」と書かれたたすきをかけたロドリゴが、元恋人のためのアワード・ショーで、現在交際している元恋人たちと対面する。以下のビデオをご覧ください。


他のロドリゴのニュースでは、彼女はまだ8月まで続く "GUTS World Tour "の真っ最中であり、その道中、彼女のリプロダクティブ・ライツ・イニシアチブである''Fund 4 Good''を支援している。次いで直近のツアーでは、コンドームとプランBを含む無料の避妊キットを配布している。



「Obsessed」

 

 

 

 Streaming:

 


ペンシルバニアのハードコアバンド、ワン・ステップ・クローザー(One Step Closer)は、ニュー・シングル「Giant's Despair」とビデオを公開しました。このシングルは、先日リリースされた「Leap Years」に続く。ウィルクス・バレ出身のハードコア・バンド、ワン・ステップ・クローザーの次作「All You Embrace」の先行シングルです。以下よりチェックしてみてください。


昨年の『Songs for the Willow EP』に続く『All You Embrace』は、5月17日にRun for Coverからリリースされる。


「Giant's Despair」

Weekly Music Feature   
 
 Adrianne Lenker  


 

エイドリアン・レンカー(アドリアーヌ)はビックシーフの活動と併行するようにして、2014年頃からソロ活動を行ってきた。当時は、4ADではなくSaddle Creekに所属し、バークリー音楽院の同窓で音楽的な盟友とも言えるバンドのバック・ミークとの共同リリースを行ってきた経緯がある。当時はマニアックなリリースが多く、ソングライティングの特徴としては、ドリーム・ポップに近い夢想的な感覚があった。近年、ビックシーフの活動が軌道に乗るにつれ、ニューヨークのモダンなフォークバンドのギタリスト/ボーカリストとしてのイメージが定着したのだった。近年では、日本のコアな音楽ファンで、ビックシーフの名を知らぬ人はほとんどいない。

 

昨年、盟友であるバック・ミークがアメリカーナ/フォークの快作をリリースしているが、少し遅れてエイドリアンも新作アルバムのリリースにこぎ着けることになった。しかし、アーティストが指摘している通り、これは本質的にビックシーフの延長線上、ないしはサイドラインにある活動に位置するわけで、バンドの停滞を意味するものではない、ということは事実なのである。またビックシーフに戻れば、前作とは一味異なる音楽が制作されることが期待出来るはず。

 

NYTの特集記事でも説明していた通り、アーティストは基本的に制作時に、携帯電話やデジタルデバイスから明確に距離を置いている。また、レンカーが振り返る通り、「このアルバムの制作に参加したミュージシャンにもほとんど携帯電話をいじっている人は見当たらなかった」という。つまり、音楽制作から気を散じさせるものが良いアルバムを作るための弊害や障壁となり得ることは、本作を聴くと瞭然である。当然のことながら、SNSでエゴサーチをしていても良い結果が出ることは少ない。これはケンドリック・ラマーが最新作でも話していたことでもある。

 

「Bright Future」は落ち着きがあり、喧噪からかなり遠いところで音楽が鳴り響いている、そしてアーティストや参加ミュージシャンの感覚は研ぎ澄まされており、精妙な感覚に縁取られている。戦後間もない頃のフォーク・ミュージックからコンテンポラリー、そして70年代のポップス、さらにはモダンクラシカルの範疇にあるピアノ曲まで広汎な音楽性をレンカーは踏襲している。例外的にエレクトロニカの方向性を選んだ曲もあるが、古典的なものから現代的なものまでを網羅しているだけでなく、それらをどこまでシンプルに磨き上げられるかという意図が込められている。なおかつそれは自伝的なモンタージュの技法でソングライティングが行われる。

 

レンカーは自宅を博物館のように変え、友人をそこに招いた。ダンボールで恐竜を作り、彼女の妹とメールでのメッセージをやりとりするためのメールボックスを作った。レンカーは、本当の家をつくろうとしたのだろうか。少なくとも、そういったファンタジックな世界観はこのアルバムのどこかで通奏低音のように響いている。「Real House」というものがなんなのか具体的にレンカーは知らないという。それでも彼女はそれがなんなのかをなんとなく分かっているのだ。

 

ニック・ハキムが演奏するアンティーク風のピアノの演奏に合わせ、ゴスペルの系譜にあるバラードをレンカーは歌う。そしてレンカーは、「わたしは、星が涼しい風で、夜の顔に涙のように輝く黒い空間の快活さにハミングをする子ども」と実際にうたいながらトム・ウェイツのファースト・アルバムのバラードのような孤独(独立した精神を孤独といい、かけ離れたことを孤独とは呼ばない)と連帯(独立した複数の精神が合一することを言う)の合間にある淡い感情を歌う。

 

アルバムの冒頭はどことなく夢想的な雰囲気に充ちている。しかし、それは確かに2014年頃の夢想的な雰囲気に基軸を置きつつも、その質感やアウトプットされるものはまったく違うものであることがわかる。地に足がついていて、そしてその地盤をしっかり踏みしめ、そしてその中に夢想的な感覚を織り交ぜる。”下を見ながら上を見る”、そんな表現が当てはまるほど、敬虔な音楽に対する思い、そして、みずからの生活に対する親しみや充実が感じられるのである。その後、アルバムはカントリーの古典へと繋がり、ハンク・ウィリアムズの時代へと立ち返る。2曲目「Sadness A Gift」はカントリー/フォーク歌手の望郷の思いを歌うという原点のスタイルを忠実になぞらえ、それを現代的な感性によって紡いでいる。ジョセフィン・ランスティーンのバイオリンの音色はケルティック民謡で使用されるフィドルのような開放的な響きを生み出し、この音楽の持つ原初的な爽快感や開けたイメージをはっきりと呼び起こす力がある。

 

 

「Fool」



 


先行シングル「Fool」はアルバムのプロデューサーが話していた通り、「音が喜びにあふれている」素晴らしいナンバーである。北欧のmumのエレクトロニカフォークトロニカの幻想性とミニマリズムのフォーク、そして電子音楽のマテリアルを組み合わせ、レンカーのバンドプロジェクト、ビックシーフに近い音楽性を追求している。レンカーは叙事詩とはいいがたいものの、アルバムの中に、「自伝的なモンタージュが表現されている」と言う。それはもしかすると、現在の自分から見た子供の頃の庭での遊びなのかもしれない。また、もしかすると、自然の中に、ユニークな小屋のようなものを作ったり、木の枝を持って自然の中を探索したり、その向こうに広がる無限の空や、その下にある雲を追いかけていた時代のことなのかもしれない。子供時代への回想、もしくは幻想は、本作の音楽の重要な起点となり、それらが現在のアーティストが持つフォークのコンセプトにより、面白いように遊びのある音楽的な空間を作り出す。


「No Machine」を聴いていると、NYTの記事のアーティストが木にぶら下がる姿が目の裏に浮かんでくる。フィンガーピックを用いた、しなやかで流れるようにスムーズなアルペジオのアコースティックギターの演奏を元にした古典的なフォーク音楽のアプローチを選んでいる。ギターはレンカーとマット・デイヴィッドソンの二人が演奏している。この曲の音楽には、サウンドスケープを呼び覚ますイメージの換気力がある。昨年、ジェス・ウィリアムソン(Jess Willamson)が指摘していた通り、フォーク/カントリーの原初的な音楽がトニカ、Ⅳ、Ⅴしか使用されないという基礎的なスケールを踏襲し、それらを草原の上を流れる風のような快活な音楽へと昇華させる。同じように、アルバム発売前に配信された「Free Treasure」では、古典的なフォーク音楽が続くが、ここでは、感覚的なルーツを辿ろうとしている。それはレンカーが幼い時代に母と遊んでいた時代の郷愁であり、普遍的な愛情という温かみのある感覚に支えられている。それは何も特別なものではなかったかもしれない。ちょっとした仕草、太陽の逆光を受けての母親の微笑み、そういった記憶のどこかにある慈しみがこの音楽に描写されている。

 

アルバムの中盤では、実験的な音楽の試みが取り入れられている。「Vampire Empire」はビックシーフの曲としてもリリースされているが、タップダンスのユニークなリズムと取り入れ、よりプリミティブな質感を持つアコースティックギターと掛け合わせ、ダンスのためのフォーク/カントリーを演出する。それは寂れたスペースに、にぎやかなマーチング・バンドがやってきて演奏するようなエンターテインメント性がある。この曲でレンカーはジョニー・キャッシュのようなワイルドなボーカルのスタイルを継承し、それらを軽快なムードとステップを持つフォーク音楽へと昇華させている。アナログ風の録音の音響効果を用い、ときにアンセミックなフレーズを織り交ぜる。アコースティックギターとボーカルの合間に取り入れられるジョセフィン・ランスティーンのバイオリンは、「Sadness As A Gift」と同じようにフィドルの織りなすセルティック民謡のような効果を及ぼす。これは原初的なアパラチアンフォーク等が英国やスコットランド/アイルランド圏からの移民によってもたらされたものであることを思い起こさせる。

 

これまでのエイドリアン・レンカーの楽曲は、基本的にはアメリカーナの範疇にあるものがほとんどだったが、今回のアルバムではモダンクラシカルの楽曲「Evol」が重要なポイントを形成している。ニック・ハキムのピアノの演奏はアルバムの中盤に、陰影や黄昏の瞬間を生み出し、それと呼応するように、レンカーはセンチメンタルなボーカルを披露する。 この曲はアルバムにバリエーションを及ぼし、カントリー/フォークとは別のクラシックの要素をもたらす。この曲が中盤の終わりに収録されていることが、終盤に向けての重要な導入部ともなっている。

 

その後、奥深いカントリー/フォークの世界を提示される。「Candleframe」はアーティストの繊細な感覚とロマンチシズムが小屋の中でゆらめく灯心の影のようにちらつき、親しみやすく落ち着いたディランやミッチェルのようなコンテンポラリーフォークの系譜にあるナンバーとして昇華されている。アコースティックギターの艷やかな響きとピアノの断片的なフレーズに合わせて、フォークバラードの理想的なスタイルを作り出している。その後、「Already Lost」では、バンジョーの演奏を取り入れ、ソロ作ではありながら、輪唱の部分を設けて、バンドアンサンブルのような響きを生み出している。やはりここでも素朴な感覚や自然味が重視されている。

 

アルバムの終盤の2曲は、 序盤から中盤にかけての音楽性を補強するような役割を担っている。「Cellphone Says」においても、心なしかアーティスト自身の回想的なモンタージュが断片的にフォーク・ミュージックの古典的なスタイルを通して描かれ、 「Donut Seam」でもゴスペルとフォークの中間にある音楽性を選び、それらを現代的なニーズに応えるような形で提示している。この2曲でも主張性はそれほど多くないものの、米国の文化の原点を探求するような意図も込められているように感じられる。それは実際的に現代的な価値観とは別の見方や考えがあることをエイドリアン・レンカーは教えてくれる。それはもちろん、癒やしの感覚に繋がる。

 

エイドリアン・レンカーは、アメリカーナの一貫であるカントリー/フォークの古典から、現代的なものに至るまで、米国の文化性や概念をあらためて俯瞰し、シンプルで親しみやすいソングライティングに昇華させる。プロフェッショナルな仕事であり、アルバム全体に斑がなく、12曲をスムーズに聴き通せる。しかし、音楽におけるリーダビリティの高さは、聴き応えという意外な局面をもたらす。『Bright Future』の中には、一度聴いただけでは分からない何かが含まれている。多分それこそがこのアルバムを何度か聞き直したいと思わせる理由なのかもしれない。

 

エイドリアン・レンカーは、ギタリスト/歌手/作詞家として、アルバムの序盤から中盤にかけて本当に素晴らしい実力を示しているが、アルバムのクローズでは、特に歌手として次なるステップに進もうとしていることがわかる。「Ruined」は、アンビエント風のイントロからNilssonの「Without You」を彷彿とさせる美しいバラードへと変遷をたどる。何より、クラシカルなタイプのバラードソングをためらいなく書けるということが、エイドリアン・レンカーの音楽家としての傑出した才能を証左している。ただ、本作だけで、そのすべてが示されたと見るのは少し早計となる。このアルバムでは次なる未知の段階への足がかりが暗示的に示されたに過ぎない。

 

 

 

94/100

 

 


「Ruined」


 

 

 

「Bright Future」



『ブライト・フューチャー』は、レンカーにとって2020年の『ソングス&インストゥルメンタルズ』以来となるアルバムで、フィリップ・ワインローブとの共同プロデュースに加え、ニック・ハキム、マット・デビッドソン、ジョセフィン・ルンステンらが参加している。


先にリリースされたシングル「Ruined」に続く「Sadness As A Gift」は、レンカーが最も親しみやすく温かみのある楽曲で、全く時代を超越しながらも、聴くたびに新鮮な驚きを与えてくれる。エイドリアンヌの生き生きとした声が、彼女の詩を高めている。ギター、ピアノ、ヴァイオリン、そしてすべての声によって完成された輪の中で彼女は歌う。"季節はあっという間に過ぎていく // この季節が続くと思っていたのに // その疑問は大きすぎたのかもしれない"


ブライト・フューチャーでは、フレーズの転回と韻の流れで知られるソングライター、エイドリアン・レンカーが、"You have my heart // I want it back. "とさらりと言う。アナログ的な正確さで記録されたこの作品は、コラボレーションの実験として始まったが、エイドリアン・レンカーのハートが未知の世界へ果敢に挑み、満タンになって戻ってきたことを証明するものとなった。


2022年の秋、ビッグ・シーフのバンド・メンバーは幸運に恵まれた。誰もが来ることができたのだ。私の大好きな人たち」である3人の音楽仲間は、多忙なツアースケジュールの合間を縫って、森に隠されたアナログ・スタジオ、ダブル・インフィニティで彼女に合流した。ハキム、デヴィッドソン、ランスティーンというミュージシャンたちは、エイドリアンヌには知られていたが、お互いに面識はなかった。

 

「結果がどうなるのか、まったく想像もつきませんでした」と彼女は振り返る。「結果は?」と彼女は言う。エイドリアンヌの音楽的リスクは、スタジオのファースト・アルバム『ブライト・フューチャー』となった。


ブライト・フューチャーの共同プロデューサー兼エンジニアのフィリップ・ワインローブがスタジオを準備した。彼はこれまでのソロアルバムでもエイドリアンのパートナーだったが、今回は新しい試みだった。エイドリアンヌはアルバムを作るつもりはなかった。その代わり、何の期待も持たずに曲を探求する。


オープンな結果であっても、フィルは最初から、最も純粋で技術的に正直なセッションを撮りたかった。結果、フィールド・レコーディングの自発的な泳ぎと思慮深いエンジニアリングの最良の資質が備わった。弦楽器の指先、ピアノのフェルトパッド、数歩下がったハーモニーなど、細部までこころゆくまで味わえる。エイドリアンヌの歌がありのままに、無防備に、そして軽やかに響く。

 

 

「Fool - Live (Music Hall of Williamsburg,Brooklyn)」




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Broadcastは、イギリス人デュオの最後のアルバムとなる2枚のデモ集『Spell Blanket』と『Distant Call』を発表した。これらは今年後半にWarpからリリースされる予定。

 

5月3日にリリースされる『Spell Blanket』は、トリッシュ・キーナンとジェイムズ・カーギルが2006年から2009年にかけて、5枚目のアルバムになる予定だった幻のデモ音源を収録している。

 

9月28日発売予定の『Distant Call』には、アルバム『Haha Sound』、『Tender Buttons』、『The Future Crayon』の収録曲のデモが収録されている。


以下、『Spell Blanket』の「Follow the Light」と『Distant Call』の「Tears in the Typing Pool [Demo]」を下記よりご視聴下さい。


ブロードキャストの最後のアルバムは、フォーカス・グループとのコラボレーションで、キーナンが42歳で急逝する2年前の2009年にリリース。『Distant Call』には、キーナンの死後にカーギルが発見した初期のデモ2曲、「Come Back to Me」と「Please Call to Book」も収録されている。

 

 

「Follow The Light」



「Tears In The Typing Room」




Spell Blanket – Collected Demos 2006-2009

Tracklist:


1. The Song Before The Song Comes Out

2. March Of The Fleas

3. Greater Than Joy

4. Mother Plays Games

5. My Marble Eye

6. Roses Red

7. Hip Bone To Hip Bone

8. Running Back To Me

9. I Blink You Blink

10. Infant Girl

11. I Run In Dreams

12. Luminous Image

13. A Little Light

14. Hairpin Memories

15. My Body

16. Follow The Light

17. Tunnel View

18. Where Are You?

19. Singing Game

20. I Want To Be Fine

21. The Games You Play

22. Grey Grey Skies

23. Puzzle

24. The Clock Is On Fire

25. Petal Alphabet

26. Tell Table

27. Fatherly Veil

28. Dream Power

29. Heartbeat

30. Call Sign

31. Crone Motion

32. Sleeping Bed

33. Join In Together

34. Colour In The Numbers

35. I Am The Bridge

36. Spirit House



Distant Call – Collected Demos 2000-2006


Tracklist:

1. Tears In The Typing Pool [Demo]

2. Still Feels Like Tears [Demo]

3. Come Back To Me [Demo]

4. The Little Bell [Demo]

5. Distant Call [Demo]

6. Valerie [Demo]

7. Colour Me In [Demo]

8. Ominous Cloud [Demo]

9. Flame Left From The Sun [Demo]

10. Where Youth And Laughter Go [Demo]

11. Poem Of A Dead Song [Demo]

12. O How I Miss You [Demo]

13. Pendulum [Demo]

14. Please Call To Book [Demo]


 


ニューヨークのオルタナティヴロック/ローファイシーンで存在感を放つWild PinkがサプライズEP『Strawberry Eraser』をリリースした。

 

このEPには、バンドがファイア・トークと契約したことを記念し、最近のシングル「Air Drumming Fix You」のほか、「Unconscious Pilot」とインストゥルメンタル曲「Cielo Wheed」が収録されている。


ワイルド・ピンクの前作『ILYSM』は2022年にリリースされた。昨年、バンドのジョン・ロスは、ローラ・ウルフと組んで「Lilts」というコラボレーション・プロジェクトを立ち上げた。



ロンドンを拠点に活動するミュージシャン、様々な分野で活躍するアーティスト、ナターシャ・カーン(別名Bat For Lashes)が、5月の発売予定の6枚目のスタジオ・アルバム『The Dream Of Delphi』のセカンド・シングルとして「Letter To My Daughter」を発表した。

 

シングルは、クリエイティブ・ディレクター兼振付師のアレクサンドラ・グリーンと共同で制作され、フレディ・ライデンが監督を務めたアルバム・フィルムの第2章となるビデオも収録されている。


「このタイトルは自明の理なの。もし私が死の床にあるとしたら、デルフィに、この世界、銀河系、私たちが生きている宇宙でくつろいでいるという感覚を与えるために、こう言うだろう。デルフィが生まれる前、私はマヤ・アンジェロウの同名の本『Letter To My Daughter』に触発されて、彼女に手紙の本を書き始めた。特別な思い出と歴史的な世界の瞬間に満ちた、とても奇妙だけど魔法のような1年間を記録したものです」とカーンは説明する。


「人生という乗り物は常に続いていて、私たちは皆、ある形から別の形へと移動するエネルギーにすぎない。彼女はまた、エコー、先祖代々のライン、宇宙の螺旋の一部にすぎない。彼女は、私たち個人よりもはるかに偉大なものの一部であり、過去から来たものであり、未来から来たものなのだ」



「ナターシャが妊娠したのは、前作『ロスト・ガールズ』(2019年)がリリースされた数ヵ月後、新たな10年の始まりだった。私は、彼女がトマトの種の大きさだった頃から、デルフィに手紙を書いていた。ジョージ・フロイド殺害後の暴動やブラック・ライヴス・マター運動、パンデミックやCOVIDについてなど、世界で起きていることすべてについて、彼女が生まれてくる世界について」


カーンは、娘の名前をデルフィ・ジョセフィンと名付けたいとすぐに思った。子供の最初の名前はギリシャ神話の女性の神託にちなんでおり、2番目の名前はナターシャの母親にちなんでいる。「新しい命を宿しているのだから、私は守られているような不思議な感覚を覚えました。「何かいいことがあるんじゃないかって、希望が持てたの。また、この人に相談することもできました」


「Letter To My Daughter」

 


カナダのシューゲイザーデュオ、Softcultが新作EP『Heaven』の詳細を発表した。この発表に伴い、彼らは新曲「Spiralling Out」とビデオを公開した。

 

「この曲は、ある状況を何度も何度も反芻してしまう時のことを書いた。そのスパイラルから抜け出すには、いくらセルフトークをしても無駄だと感じることがある。すべてがコントロール不能で、世界がカーニバルの乗り物のようにぐるぐる回っているように感じる」


ビデオについて、ソフトカルトのメルセデスは「モーションはミュージック・ビデオの大きな要素でした。不安なスパイラルに引き込まれていく感覚を呼び起こしたかった。世界が自分の周りで制御不能に回転している感覚を再現したかった」と説明している。


"スパイラル・アウト "は、資本主義に対する批評である "Shortest Fuse"、デュオが過去の人間関係で受けた影響の余韻を解き明かした "Haunt You Still"、そしてEPのタイトル・トラックである "Heaven "に続く、4曲目のトラックである。


EP全体について、バンドは次のように語っている。「このEPには根底にあるテーマがある。私たちは、私たちの社会の中の矛盾や、理想的な世界がどのようなものなのか、そして私たちがその現実にどれだけ近づいているのか、あるいは遠ざかっているのかについて書きたかったのです。そもそも「天国」とは何なのか?それはおそらく、誰に尋ねるかによる...。天国はご褒美?この惑星で生きている間、カードを正しく使い、決められたルールのリストに従って生きていれば、いずれは行ける場所なのか?そのルールは誰が決めたのか?そのルールは私たちにどのような影響を与えるのか?」


「もしかしたら天国は、気まぐれに入る価値があると判断された人々のためのユートピア的な目的地ではないのかもしれない。もしかしたら、現在この地球上で生きている私たちの人生は、私たちがその存在を知ることのできない死後の世界を保証する、つまらないテスト以上のものなのかもしれない」


「私たちの人生の総和は、私たちが残した遺産であり、生きている間に起こした変化であり、私たちが触れた人々と私たちが起こした影響なのかもしれない。私たちは、自分が死んだ後により良い場所を望むのではなく、生きている間に、自分の住む世界を人類にとってより良い場所にすることにもっと集中すべきなのかもしれない。天国」とは、私たちがまだここにいて体験できる間に、私たちの生活や愛する人たちの生活の中に、地上に存在する場所になり得る。死後の世界で何が待っているかに執着するのではなくて、私たちはこの地上にあるものに注意を払うべきなのかもしれない」


「Spiralling Out」



新作EPからタイトル曲「Haunt You Still」が先行シングルとして公開されています。



Soft Cult 『Heaven』

 

Tracklist:


Haunt You Still

One Of The Pack

Spiralling Out

9 Circles

Shortest Fuse

Heaven

 

©Richard Ramirez Jr.

ロサンゼルスのアート・ロックグループ、ウォーペイント(Warpaint)は、バンド結成20周年を記念した新作7″のB面に収録される新曲「Underneath」をリリースした。先にリリースされた「Common Blue」に続く新曲だ。試聴は以下から。


「これらの新曲で、私たちは人生のこの時期、そして私たちが長年にわたって共有してきたすべての経験と曲を結びました」とバンドは声明で述べています。「信じられないような旅で、美しい人々と楽しい時間を分かち合い、世界中を旅してきた。私たちの心は満たされています!」



ベッドルームポップ・ギタリスト、Amy Oがニューアルバム『Mirror Reflect』の制作を発表した。この新作はWinspearから5月6日に発売される。リードシングル「Drible Drible」が先行配信された。試聴は下記より。


『Mirror,Reflect』では、エイミーOがパンデミック初期の母性への移行を記録すると同時に、4トラック・テープレコーダーを駆使して、彼女の優しさ、熱気、そしてワイルドでキャッチーなグランジ・ポップ・ソングを自宅で録音している。


『Mirror,Reflect』は、当初、不安な日々の中で友人たちと作った曲を記録するためのローファイな試みとして構想されたもので、収集した自宅録音やフィールド・レコーディングに、きらめくシンセサイザーとオールズナーの遊び心あふれるリリシズムを織り交ぜた、親密で探求的な作品となっている。


2012年以来、インディー・アンダーグラウンドにおける確固たる存在であるMirror, Reflectは、閉鎖的な状況の中で、オールズナーが自身の音楽活動とクリエイティブなコミュニティの両方を密接に保つ方法を模索する中で生まれた。彼女のレコード制作へのアプローチを、製品よりもプロセスを重視するようにシフトすることで、『Mirror, Reflect』の楽曲は、無数のホーム・セッション、ソング・ア・デイ・プロジェクト、ソングライティング・ワークショップ、オンライン・コラボレーションから生まれた。このようなパッチワークのような自家製のアプローチは、最新アルバム『Shell』を含む3枚のスタジオ・アルバムをリリースする前に、きらびやかな自家製ポップ・ソングでその名を知らしめたオールズナーにとっては馴染み深いものだった。


『Mirror、Reflect』は、これらのスタジオ・アルバムの輝きをそっとそぎ落とし、「Honey」のアンビエントに近いインストゥルメンタル・プレリュードでは、オールズナーの娘の心音を録音した初期の録音がオープニングを飾る。



Amy O 『Mirror, Reflect』



Label: Winspear

Release: 2024/05/06


Tracklist:


1. Honey

2. Dribble Dribble

3. Reveal

4. Arc

5. Sediment

6. Early Days

7. Canyon

8. Green

9. Superbloom

10. Almost Fall

11. Three Cups

12. Casio


フィールドレコーディングを行うミュージシャン、Chris Watson

 

フィールドレコーディングとはいうのは文字通り、屋外の自然の中にマイクを立て、それを録音する手法のことです。上掲した写真を見ると分かる通り、そんなに気軽にできるものではなく、プロフェッショナリティーと体力と忍耐が必要とされます。音楽でもよく使用される場合があり、アンビエントを始めとするエレクトロニック、最近ではポピュラーミュージックやインディーロックで使用される場合もあるようです。  


主要な効果としては音楽そのものにナラティヴな試みを取り入れられることや、楽曲に映像的な効果やメタ構造を生み出すことが出来ます。外側の風の音や、鳥の声、虫の鳴き声、それから水の流れの音等、録音する内容によって、その音響効果はまったく異なります。以前は、AppleのLogic Studioのサウンドループに標準的に付属しており、実際にSonic Youthは『Daydream Nation』で飛行機のパイロットの無線の声やエンジンの音を取り入れたりしています。

 

現在のポピュラー・ミュージックでは、録音そのものの他に効果音(SE)を導入する場合が多く、これらはプロのプロデューサーにより導入されるため、高品質のサウンドが提供されますが、フィールドレコーディングを行う際には、風や外気音のノイズを軽減する必要がありますし、さらに意図したものとは別の音声が録音されてしまうケースもある。つまり、簡単にマイクを立てて録音すれば良いというものではなく、あまりミックスやマスタリング、そして録音機材に詳しくない方が挑戦すると、思うように意図する録音が出来ないケースもあるようです。

 

機材のピックアップについては、録音の専門家や、あるいは専門のショップで質問してもらいたいと思いますが、今回フィールドレコーディングをどのような段階を踏んで行うのかについて大まかにご紹介します。

 

フィールドレコーディングの定義

 


フィールドレコーディングとはスタジオの外で現実的な環境のもと、自然に発生するサウンドをマイクロフォンで拾うことを意味します。

 

それらの音のスペクトルの中には、様々なものがあり、森林や都市環境といった対極にある雰囲気から、他の珍しい音響に至るまで、非常に広汎です。意図的に制作されたスタジオの録音とは異なり、何が録音されるのかは、実際に行ってみるまでは分からないというおもしろさもあるようです。つまり、フィールドレコーディングは多種多様な場所のユニークな音響を録音することを意味しているわけです。

 

そもそもこの録音技術は、音楽にとどまらず、様々なシーンで活用されています。芸術、科学研究、メディア制作等、広汎なシーンで使用されています、もちろん音楽的なプロジェクトとしても使用することが可能で、録音されたサウンドスケープから音楽的な基礎を作り上げられる。フィールドレコーディングは録音した後に、様々な音響効果を及ぼすことも出来ます。科学的な観点からもフィールドレコーディングは様々な環境をテクストにする手助けをしています。


 

 ・録音に必要な機材

 

 

フィールドレコーダー

 



フィールドレコーディングを行うときに不可欠となるのが、フィールドレコーダーと呼ばれるオーディオレコーダーの一種です。これらは屋外の環境で高品質のオーディオをキャプチャするように設計されたデバイスです。これらのデバイスには、ステレオマイクが内蔵され、屋外のあらゆる種類のサウンドを録音するのに適しています。特に、この機材で有名なのはTescamがあります。手頃な価格で使いやすいと評判で、Tascam DR-05Xを始めとするデバイスは、初心者にとっても最適となりそうです。

 

これらの専用機材に加えて、スマートフォンのようなデバイスでも録音を行うことが可能です。アプリストアでは無償で録音のAppが提供されている場合がありますので、ぜひ探してみて下さい。高品質のオーディオデバイスや指向性マイクに比べ、ノイズを拾いやすく、外気のザーッという音を拾ってしまう欠点こそありますが、本録音の前の仮録音として、どのような感じになるのかを掴むのに最適です。もちろんその後のポストプロダクションでこれらのサウンドに磨きをかけることも可能でしょう。

 

さらに高性能な製品を求める場合は、Zoomを使用することが出来ます。Zoom H4n Proを始めとするフィールドレコーダーには外部マイク用のXLRの出力があり、録音時に役立つ可能性があるでしょう。サウンドデバイスでは、プロのメディア業界でもよく使用されている、Sound Device Mix Ore-6 Ⅱなども有名です。最大8トラックが付属しており、映画製作でも使用されることがあるようです。

 

フィールドレコーダーは基本的にサンプルレート 44.1k Hzの24ビットWAVが使用されるのが一般的です。 ファイルの容量が大きくなるという欠点があるものに、高品質の音でファイルを書き出すことが可能です。

 

マイクロフォン 



フィールドレコーダーにマイクは標準的に装備されてはいるものの、別のマイクが必要になるケースもあるようです。追加のマイクは、特定の音をキャプチャするために必要となり、正確な録音を行うためにも不可欠です。

 

たとえば、ショットガンマイクには極性パターンの高い志向性があり、目の前の音を正確に拾うように設計されているので、フィールドレコーディングの際に親しまれています。さらにこのマイクは多く場合、内蔵されたマイクよりも優れた音質を提供します。二種のマイクを使用することは思惑通りの録音を行うために不可欠となるかもしれません。

 

たとえば、RODEは低価格帯ながら、ショットガンマイクの高品質のクオリティーを提供しています。完全な周波数の応答、及びノイズ軽減を備えたプレミアムコンデンサーマイク、NTG--1は初心者にとってはおすすめとなるでしょう。理想を言えばノイマンがおすすめですが、高価なので、初心者向きではありません。


 

ヘッドフォン

 


録音を行う時にもう一つ不可欠なのは、ヘッドフォン。どのように音が録音されたのかを確認するために使用します。フィールドレコーディングの録音に最適な種類を選択することが重要となるでしょう。

 

フィールドレコーディングで使用されるヘッドフォンは、外側の音との分離のためにクローズドバックする必要があり、フラットな周波数の出力を特徴とする製品がおすすめとなります。(iPhoneのライトニングやBluetooth接続のイヤホンなどはほとんどフラットでは出力されず、ゲインが出て、派手な音になります)これによって特定の周波数を増強させることなく、自然なサウンドを聞き取ることが出来るようになります。マスタリングの際には必ずフラットな音域が出力されるヘッドホン、あるいは専用のスピーカーで出音を確認してください。


つまり、具体例は挙げませんが、フィールドレコーディングでは脚色のある製品ではなく、リアルな音が聞き取れるヘッドフォンを選んで使用する必要がありそうです。ゲインが出るヘッドフォンは使わないのが最善です。Beyer(ベイヤー)のDTRシリーズが良いかも??



オーディオソフトウェア



フィールドの録音を終えた後、音源ファイルを編集し、ラップトップなどに書き出す必要があります。オーディオ編集ソフトウェアは、波形のトリミングや強化、全般的な編集作業が可能であるため、マスタリングソフトと合わせて必要になってくるでしょう。


編集作業の種類によっては無償のAudiocityや、Logic Studio、そしてプロ御用達のPro Tools等の有償のソフトウェアを使用するケースも考えられます。


音源そのものの他に映像も同期させたいという場合は、フィールドの録画の編集するために適した広汎なツールが用意されています。例えば、AbletonやReaperのようなソフトウェアは、幅広いオーディオ編集ツールとサウンドデザインを制作するために最適となるかもしれません。より低コストで編集したいと言う場合は、AppleのGaragebandを使用するのもありかもしれません。

 

フィールド録音を編集するには必要となるツールは、イコライザー(EQ)、ノイズリダクション、及び、音の圧縮を行うためのリミッターやコンプレッサーです。これらはLogic Studioなどにも標準装備されていますが、よりプロフェッショナルなものを求めるなら、WAVESやアナログの機材も必要になるでしょう。


これらのプラグインはサウンドそのものを洗練させる効果があり、不要な音を除去するために不可欠となります。また、音に艶を出すためにリバーブとディレイの導入も考えると最高の音質になるかもしれませんよ。

 

©Decca

北欧ポップスの新世代シンガーであるオーロラが、新曲「Some Type Of Skin(サム・タイプ・オブ・スキン)」をリリースした。海外ではDecca、国内ではUniversal Musicより発売された。


ヤングブラッドやグライムスらとの仕事で知られるクリス・グレアッティが共同プロデュース、オリヴィア・ロドリゴ、レディー・ガガ、コナン・グレイの作品を手掛けたミッチ・マッカーシーがミキシングを担当したエレクトロ・ポップな同曲でオーロラは、無防備さと、感情的な回復を必要とする気持ちとの葛藤を表現している。

 

オーロラは、最新曲について次のようにコメントしている。「私はずっと、ある種の皮膚を作り出すべきだって言われてきた。いつも私は世界に自分を溶け込ませすぎて、どこが世界の終わりで、どこが自分の始まりかがほとんど分かっていなかった。この曲ではその膨大さを叫びにしている。それから、人間であることは喜ばしいこと。たとえそれが私たちの誰の手にも負えないことだとしても」

 

さらに、オーロラとKaveh Nabatianが共同で監督を務めた、「Some Type Of Skin」のミュージック・ビデオも併せて公開された。

 

オーロラは2023年11月にリリースした楽曲「Your Blood(ユア・ブラッド)」のミュージック・ビデオでもタッグを組んだKavehとの仕事について、「Kavehは別の世界にいる奇妙なソウルメイトのような存在。私たちの心が衝突すると、いつだって素晴らしいものになるの。もう一度私たちの心の中に飛び込んで、孤独というものに視覚的に生命を吹き込むことができたのは素敵なことだった」と話している。

 

オーロラは2024年のサマーソニックで来日公演を予定しています。 最新のフルアルバムは2022年の『The God You Can Touch』です。



 「Some Type of Skin」