©Alasdair McLellan

泣く子も黙るエレクトロ・ポップの伝説、Pet Shop Boys(ペット・ショップ・ボーイズ)が、次作『Nonetheless』からセカンド・シングル「Dancing Star」を配信した。彼らの痛快なディスコポップはABBAの楽曲と双璧をなし、アンセミックな響きを持つキラーチューンばかりだ。

 

リード曲「Loneliness」に続くナンバーは、1961年にソビエト連邦から亡命し、世界的スターとなったバレエ・ダンサー、ルドルフ・ヌレエフにインスパイアされた。ブレエフはドキュメンタリー映画としても取り上げられている。

 

従来と同様にPSBらしいディスコポップのサウンドアプローチが図られているが、アーティスティックな香りがわずかに漂う。それは近代の歴史に翻弄された芸術家の姿がリアルに反映されているから。以下よりチェックしていこう。


2020年の『Hotspot』に続く『Nonetheless』は、Parlophone(パーロフォン)から4月26日にリリースされる。

 

 

「Dancing Star」


アフロ・ビートとエレクトロを融合させるロンドンの多国籍のグループ、Ibibio Sound Machine(イビビオ・サウンド・マシーン)は、Merge Recordsから5月3日にリリースされる待望のアルバム『Pull The Rope』から最新シングル 「Mama Say」を配信リリースした。Ezra Collective(エズラ・コレクティヴ)と同様にアフロ・フューチャリズムの継承者である。


「ママ・セイ」は、イーノ・ウィリアムスのリリックがイビビオ語からピジン英語へと軽快に切り替わり、魅力的なシンセ・ラインを奏でる。完璧に作られたエレクトロ・ポップの逸品だ。


このトラックはシンプルに女性への敬意を歌っている。メイン・コーラスのヴォーカルはピジン語で歌われている。このグルーヴィーなナンバーについてグループは次のように説明している。

 

「”Mama say make I honor am”は、言い換えれば、"Mother says I must honor her"というようになる。この曲は本質的に私たちの生活にいる女性に力を与え、高揚させることを歌っている。コーラスのアルペジオは、ジュノ60で演奏している。さらに、ヴァースの西アフリカのヴォーカル・スタイルは、これらのエレクトロニックな要素とは対照的な雰囲気を醸し出している」

 

 

「Mama Say」


サウスロンドンのWu-Luは、ソロ名義でありながらコレクティヴの形で活動している。彼らはバンドになったかと思えば、次の瞬間、グループで熾烈なラップバトルをステージで繰り広げる。形やスタイルにとらわれない。その流動性こそがアーティスト、ひいてはロンドンのカルチャーの魅力なのだ。


Wu-Luはラップとグランジを融合させた劇的なシングル「South」で同地のシーンに名乗りを上げ、徐々に知名度を獲得していった。その後、WARPと契約し、新作アルバム「Loggerhead』をリリースした。リリース後にはフランスのメディアにも出演し、BBCでもライブパフォーマンスを披露した。


Wu-Luは新作アルバム『Learning To Swim on Empty』の制作を発表した。このアルバムはWARPから5月17日にリリースされる。おそらく2024年の注目作の一つとなりそうだ。


待望のニューアルバム「Learning To Swim On Empty」は、ウー・ルーのサウンドの深みと幅が増していることを示している。反ジェントリフィケーションのアンセム「South」でブレイクし、アルバム『LOGGERHEAD』は爆発的なエネルギーを持ち、広く賞賛されたが、タイトル曲でWu-Luがよりニュアンスに富んだ個人的なアプローチをとっていることがわかる。


アルバムの最初のシングル「Daylight Song」の試聴は下記より。各種ストリーミングはこちら




Wu-Lu「Learning To Swim On Empty」


Label: WARP

Release: 2024/05/17


Tracklist:


01.Young Swimmer

02.Daylight Song

03.Sinner

04.Mount Ash

05.Blunted Strings

06.Last Night With You

07.Crow's Nest

 


オーストラリア出身のシンガー・ソングライター/女優、グレース・カミングス(Grace Cummings)が、ATOより今週末に発売される三作目のアルバム『Ramona』から最終シングル「A Precious Thing」をミュージック・ビデオで公開した。

 

「A Precious Things」は美しさと雄大さを兼ね備えたポップバラード。アウトロのオーケストラストリングスは、伝説のソウルシンガー、また米国のブラックミュージックの先駆者でもあるサム・クック(Sam Cooke)の「Change Gonna Come」のような偉大さがある。昨年、デビューアルバムをリリースしたニューヨークの新人シンガー、マディソン・マクファーリン(Madison McFerrin)に続いて、ソウルフルなカラーを持った実力派の歌手の登場である。

 

曲の終盤の圧倒されるような素晴らしい歌唱力は鳥肌もの。オーケストラをフィーチャーしたドラマティックな曲の展開も◎。今週の”Best New Tracks”として紹介します。アルバム発売日を目前にチェックしてみよう。

 

グレース・カミングスは同国の人気ロックバンド、ライブアクトとして世界的に支持を集めるキング・ギザード&ザ・リザード・ウィザード(King Gizzard & The Lizard Wizard)との共演を含むツアーを予定している。


このドラマチックなポップバラードについて、カミングスはプレスリリースで次のように語っている。「この曲は2022年のクリスマス・イヴに書きました。この曲は以前、ワシの金切り声をフィーチャーしていた。私たちはその部分を取り除き、ティンパニに置き換えることにしました」


グレース・カミングスは舞台俳優としても活躍している。それが彼女の音楽における演劇性や声の力強さとなっている。ジョナサン・ウィルソンは『Ramona』をプロデュースした。アルバムのタイトルとタイトル曲は、ボブ・ディランの1964年の曲 "To Ramona "にインスパイアされている。


「自分自身になりたくなかったから、代わりに激しさとメロドラマに満ちたラモーナになろうと決めたの」とカミングスはプレスリリースで説明している。「私にとって、コスチュームや仮面をかぶることは安全なこと。本当の正直さや弱さを表現する唯一の方法だと感じることもある」

 


「A Precious Thing」

RIDE 『Interplay』


 

Label: Withica Recordings Ltd.

Release: 2024/03/29

 


Review

 

オックスフォードの四人組、RIDEは1990年代にマンチェスターの音楽ムーブメントの後に登場し、オアシスやブラーの前後の時代のUKロックの重要な中核を担う存在であった。もちろん、アンディ・ベルはオアシスから枝分かれしたビーディー・アイとしても活躍した。RIDEの音楽は、1990年代の全盛期において、ストーン・ローゼズとシューゲイザーサウンドの中間にあるものであった。 

 

バンドの中心人物でギタリストのアンディ・ベルはUKロックの象徴的な人物とみても違和感がない。彼は先日、Rough Trade Eastを訪れ、レコードをチョイスする姿が同レーベルの特集記事と合わせて公開されていた。そしてその佇まいのクールさは、今作の音楽にも反映されている。

 

今作の音楽はスコットランドのギター・ポップを元に、シンセ・ポップや1990年代のUKロックを反映させている。その中には、シューゲイザーの元祖であるJesus And Mary Chainや同地のロックシーンへのリスペクトが示されている。しかし、80年代から90年代のUKロック、スコットランドのギター・ポップが音楽の重要な背景として示されようとも、RIDEの音楽は、決して古びてはない。いや、むしろ彼らのギターロックの音楽の持つ魅力、そしてメロディーの良さ、アンディ・ベルのギター、ボーカルに関しても、その醍醐味はいや増しつつある。これは、実際的に、RIDEが現在進行系のロックバンドでありつづけることを示唆している。もちろん、これからギター・ポップやシューゲイズに親しむリスナーの心をがっちり捉えるだろう。

 

面白いことに、昨年に最新作をリリースしたボストンのシューゲイザーバンド、Drop Nineteensとの音楽性の共通点もある。

 

オープニングを飾る「Peace Sign」はギターロックのアプローチとボーカルが絶妙にマッチした一曲として楽しめる。音楽の中には回顧的な意味合いが含まれつつも、ギターロックの未来を示そうというバンドの覇気が込められている。曲そのものはすごく簡素であるものの、アンディ・ベルのギターはサウンド・デザインのように空間を自在に揺れ動く。いわば90年代のような紋切り型のシューゲイズサウンドは、なりを潜めたが、その中にはUKロックの核心とそのスタイリッシュさが示されている。二曲目の「Last Fontier」では改めてシューゲイズやネオ・アコースティックの元祖であるスコットランドの音楽への親和性を示す。そして彼らはこれまでの音楽的な蓄積を通し、改めてかっこいいUKロックとは何か、その理想形を示そうとする。

 

シューゲイズサウンドやギターポップの魅力の中には、抽象的なサウンドが含まれている。アンビエントとまではいかないものの、ギターサウンドを通じてエレクトロニックに近い音楽性を示す場合がある。RIDEの場合は、三曲目の「Light In a Quiet Room」にそのことが反映され、 それをビーディー・アイのようなクールなロックとして展開させる。アンディ・ベルのボーカルの中に多少、リアム・ギャラガーのようなボーカルのニュアンスがあるのはリスペクト代わりなのかもしれない。少なくとも、この曲において、近年その意義が失われつつあったUKロックのオリジナリティーとその魅力を捉えられる。それは曲から醸し出される空気感とも呼ぶべきもので、感覚的なものなのだけれど、他の都市のロックには見出しづらいものなのである。

 

「Monaco」ではよりエレクトロニックに接近していく。ただ、この曲でのエレクトロとはUnderworldを始めとする 80年代から90年代にかけてのクラブ・ミュージックが反映されている。もちろん、92年からRIDEは、それらをどのようにしてロックと結びつけるのか、ストーンローゼズと同じように追求していた。そして、多少、80年代のディスコサウンドからの影響も垣間見え、ベースラインやリズムにおけるグルーブ感を重視したバンドアンサンブルを通じて、アンディ・ベルのしなやかで爽やか、そしてクールなボーカルが搭載される。少なくとも、曲には回顧的な音楽以上の何かが示されている。これは、現在も音楽のチョイスはもちろん、ファッションにかけても人後に落ちないアンディ・ベルらしいセンスの良さがにじみ出ている。それが結局、踊りのためのロックという形で示されれば、これは踊るしかなくなるのだ。

 

続く「I Came to See The Wreck」でも80年代のマンチェスターサウンドに依拠したサウンドがイントロを占める。「Waterfall」を思わせるギターのサウンドから、エレクトロニック・サウンドへと移行していく瞬間は、UKロックの80年代から90年代にかけてのその音楽の歩みを振り返るかのようである。その中に、さりげなくAOR/ソフト・ロックやシンセロックの要素をまぶす。しかし、異なるサウンドへ移行しようとも、根幹的なRIDEサウンドがブレることはない。

 

続く「Stay Free」は、従来のRIDEとは異なるポップバラードに挑戦している。アコースティックギターに関しては、フォーク・ミュージック寄りのアプローチが敷かれているが、ギターサウンドのダイナミクスがトラック全体に重厚感を与えている。いわば、円熟味を増したロックソングの形として楽しめる。そしてここにもさりげなく、Alice In Chains,Soundgardenのようなワイルドな90年代のUSロックの影響が見え隠れする。もっといえばそれはグランジやストーナー的なヘヴィネスがポップバラードの中に織り交ぜられているといった感じである。しかし、ベルのボーカルには繊細な艶気のようなものが漂う。中盤でのUSロック風の展開の後、再びイントロと同じようにアイリッシュフォークに近いサウンドへと舞い戻る。


あらためてRIDEは他のベテランのロック・バンドと同じように普遍的なロックサウンドとは何かというのを探求しているような気がする。「Last Night-」は、Whamのクリスマスソングのような親しみやすい音楽性を織り交ぜ、オーケストラベルを用い、スロウバーナーのロックソングを書いている。そして反復的なボーカルフレーズを駆使しながら、トラックの中盤では、ダイナミックかつドラマティックなロックソングへと移行していく。そこには、形こそ違えど、ドリーム・ポップやシューゲイズの主要なテーマである夢想的な感覚、あるいは、陶酔的な感覚をよりポピュラーなものとして示そうという狙いも読み解くことができる。これらのポップネスは、音楽の複雑性とは対極にある簡素性というもうひとつの魅力を体現させている。

 

アンディ・ベルの音楽的な興味は年を重ねるごとに、むしろよりユニークなものへと向けられていることもわかる。シリアスなサウンドもあるが、「Sunrise Chaser」ではシンセポップをベースに、少年のように無邪気なロックソングを書いている。ここには円熟したものとは対極にある音楽の衝動性のようなものを感じ取ることができる。また、この曲にはバンドがトレンドの音楽もよくチェックしていて、それらを旧知のRIDEのロックサウンドの中に取り入れている。 


アルバムの中で、マンチェスターのダンスミュージックのムーブメントやHappy MondaysやInspiral Carpetesのようなストーン・ローゼズが登場する前夜の音楽性が取り入れられてイルかと言えば、間違いなくイエスである。「Midnight Rider」はまさにクラブハシエンダを中心とする通称マッドチェスターの狂乱の夜、そしてダンスフロアの熱狂へとバンドは迫っていこうとする。そして実際、RIDEはそれを現代のリスニングとして楽しませる水準まで引き上げている。これは全般的なプロデュースの秀逸さ、そしてベルの音楽的な指針が合致しているからである。

 

前にも述べたように、RIDEは、PixiesやPavementのようなバンドと同じように、年齢と経験を重ねるごとに普遍的なロックバンド、より多くの人に親しまれるバンドを目指しているように思える。「Portland Rocks」は、スタジアム・ロック(アリーナ・ロック)の見本のような曲で、エンターテイメントの持つ魅力を音源としてパッケージしている。この曲には何か、何万人収容のスタジアムで、スターのロックバンド、またはギターヒーローのライブを見るかのような楽しさが含まれている。それはとりも直さず、ロック・ミュージックの醍醐味でもある。


アルバムの終わりでは、アンディ・ベルの音楽的な趣味がより強く反映させている。いわば、バンドという枠組みの中で、ソロ作品のような音楽性を読み解ける。最後2曲には、RIDEの別の側面が示されているとも言える。

 

「Essaouira」はマンチェスターのクラブ・ミュージックの源流を形作るイビサ島のクラブミュージック、あるいは現代的なUKのEDMが反映されたかと思えば、クローズ「Yesterdays Is Just a Song」では男性アーティストとしては珍しい例であるが、エクスペリメンタル・ポップのアプローチを選んでいる。強かな経験を重ねたがゆえのアーティストとしての魅力がこの最後のトラックに滲み出ているのは疑いない。それは哀愁とも呼ぶべきもの、つまり、奇しくも1992年の『Nowhere』の名曲「VapourTrail」と相通じるものがあることに気づく。

 

 

 

84/100




「Peace Sign」


 

LA Priest(別名: サム・イーストゲート)は、新曲「City Warm Heart 」と共に、近日リリース予定のEP『La Fusion』を発表した。このEPはDomino Recordingsから5月3日に発売される。

 

P昨年リリースされたサード・スタジオ・アルバム『フェイズ・ルナ』に続き、LAプリーストは次作『ラ・フュージョン』の詳細を発表した。前作は、イリノイ大学で教授を務めたダニエル・L・エヴェレット(Daniel L eonard Everett)の著作『Don't Sleep There Are Snakes (邦題: ピダハン』のように、コスタリカにアーティストが数ヶ月滞在し、その土地の文化性を汲み取り、それを音楽として昇華させた。(ちなみに、この著作の中で、ダニエル・エヴェレット教授は、文化的なプログラムの一貫として、キリスト教の伝道師としてアマゾンに家族と一緒に滞在する。逆に、ピダハン族の人間として生きることの智慧に感化されてしまったのである)

 

サム・イーストゲートの音楽の場合もフュージョンという手法を通じて、そこには白人社会から見る固有の土地性、スペシャリティーという内在的なテーマが含まれる。そこに、キューバの作家/音楽評論家、アレホ・カルペンティエル(Alejo Carpentier)の『Los pasos perdidos(邦題: 失われた足跡)のような、ナラティヴな試みが含まれていると見ても違和感がない。

 

少なくとも、LA Priestは、見知らぬ場所に馴染み、その土地から見える音楽や文化性を探求していたのである。イーストゲートは、新作EPのリードシングルについて次のように解き明かしている。


「コスタリカのジャングルで、再び世界の都市を回るために戻ってくる自分を思い描きながら書いた曲だ。この曲は、そういう場所から外の世界と向き合うためのマントラのようなものだよ」

 

付属のビデオについて、彼はこう付け加えた。「レコーディングのセットアップや曲の録り方を少し見せられたらいいなと思ったんだ。このビデオは、この曲を作っている間に僕がやったことを、できる限り再現したものだから、いつもの僕のようなものよりも正直なビデオになっている」


『La Fusion』は、イーストゲートがコスタリカのジャングルに住んでいた時期の終わりに書かれたもので、2023年にリリースされた評価の高いアルバム『フェイズ・ルナ』の大部分もそこで書かれた。

 

「フュージョンを他の何かとブレンドすることはできないんだ。フュージョンそのものが、現実の融合でもある。これらは、ジャングルでは録音できなかったアイデアなんだ。大都会の曲かもしれない。外側から内側に向かって書いたアイデアを、内側から外側に向かって完成させたんだ」


LAプリーストは今年5月から6月にかけて、『La Fusion』を携えてイギリスとヨーロッパ・ツアーを行う。

 

 

 「City Warm Heart」

 

 

 

LA Priest 『La Fusion』EP  


Label: Domino

Release: 2024/05/03


Pre-save/Pre-add:

https://lapriest.ffm.to/lafusion 

Sub Popに所属する四人組、La Luzがニューシングル「Poppies」をリリースした。バンドは、サーフミュージック、ドゥワップ、そして、ネオサイケを主要な音楽性に置いている。「Poppies」はサーフ音楽とサイケの中間にあるようなナンバーだ。以下よりチェックしてほしい。


新曲について、バンドのシャナ・クリーヴランドはこう語っている。"Poppies”は、癌の診断と治療という恐怖と孤独を経て、突然明るい世界に戻ってきたときのシュールな感覚について歌っている」

 

次作アルバム『News of the Universe』からは先行シングルとして「Strange World」が配信されている。

 


「Poppies」


 


アイルランドの新進気鋭バンド、カーディナルス(Cardinals)がこの夏、デビューEPをリリースする。この新作はSo Youngから6月7日に発売される。


「このEPは、僕たちがコークに住んで演奏していた時に書いた曲のコレクションなんだ。この曲はポップ・ミュージックの核をなすもので、個人的で、若々しく、そして、もしあなたがカオスとノイズの向こう側を見ることができるなら、とても温かいものとなるだろう。それを探す心があれば、物語がある。これは僕らの最初のEPで、みんなに聴いてもらえるのを楽しみにしているよ」

 

ニュー・シングル「If I Could Make You Care」は、彼らの核となる価値観に触れ、渦巻くようなミニマルなアレンジがカージナルスを最も魅力的に見せている。歌詞にはシナトラへの微妙な言及があり、パフォーマンスにはある種のドラマが込められている。

 

フロントマンのユアン・マニングが、この曲について次のように付け加えている。

 

「この曲の歌詞については、フランク・シナトラの『I Could Make You Care』から引用したタイトルを除けば、多くを語ることはない。この曲は私とオスカルの共作で、私たちの間で特別なものになるまで黙々と取り組んだ。バンドとのアレンジがドラマとスケールをもたらし、予想以上に大きなものになった。この曲を書いたときは、人生のある部分に終止符を打ったような、大きな安堵感があったんだ」

 

「If I Could Make You Care」



Cardinals 『Cardinals』 EP


Label: So Young

Release: 2024/06/07

 

Tracklist:

1.Twist and Turn

2.Unreal

3.Roseland

4.Amphetamines

5.Nineteen

6.If I Could Make You Care


 Pre-order:


https://cardinals.lnk.to/cardinalsEP

 

 


今日、デヴィッド・バザンによるインディーロックプロジェクト、ペドロ・ザ・ライオン(Pedro The Lion)は6月7日発売のアルバム『Santa Cruz』を発表した。2022年の前作『Havasu』はハザンが若い時代を過ごしたアリゾナを訪れ、その追憶と共に書かれた作品だった。このアルバムには「Teenage Sequencer」を始め、素晴らしいインディーロックナンバーが収録されていた。


続いて、10代の目覚めの不安な興奮が波打つアルバム『Santa Cruz』は、その続編のような意味を持つ。彼が13歳になった直後から「大人」の頂点に立つ21歳頃までの約10年間をカバーしている。


ファースト・シングルの「Modest」は、彼の人生で最も変貌を遂げた体験となった、モデスト市での半年間の滞在を描いている。


悲しい女性たちに掃除機を売るのをやめた彼は、ギター店でギターを弾くことになり、そこで地元のバンドからローファイ・ワザードの鮮明な作品を聴く。ビートルズ並みの啓示を受けたかのような瞬間、つまり、自分が望むだけの小さなスケールで音楽を作っても良いという許可証のような瞬間、彼は最初のペドロ・ザ・ライオンの曲を書く。このカタルシス溢れるゴージャスな曲のクライマックスで、彼はシアトルに戻り、バンドを組み、恋をし、自分らしく生きることを誓う。


この曲についてハザンは次のように説明している。


「このアルバムに収録されている曲の中で、自分の意志を表現した曲は他にないと思う。自分が何をしたいのか、本当に選択できたのはこの曲が初めてだった。モデストに住んでいたあの6ヵ月間で、他の仕事はしたくない、音楽をやってみたいという気持ちがはっきりしたんだ。この曲は間違いなく、僕が選んだ人生の出発点のような気がする」


コディ・クラウド監督によるミュージック・ビデオは以下から。ペドロ・ザ・ライオンはこの夏、全米でヘッドラインツアーを務める。



「Modest」





Pedro The Lion 『Santa Cruz』


Label: Polyvinyl
Release: 2024/06//07


Tracklist

1. It’ll All Work Out
2. Santa Cruz
3. Little Help
4. Tall Pines
5. Don’t Cry Now
6. Remembering
7. Teacher’s Pet
8. Parting
9. Modesto
10. Spend Time
11. Only Yesterday



Santa Cruz Tour:





グリーン・デイは、昨夜、LAのドルビーシアターで開催されたiHeartRadio Music Awardsのレセプションで素晴らしいパフォーマンスを披露した。バンドはランドマーク賞を贈呈されている。


バンドはステージに登場すると、今年リリースされた最新アルバム『Saviors』から「Bobby Sox」と、ドゥーキーの名作シングル「Basket Case」の2曲メドレーを演奏した。


しかし、後者の曲ではフロントマンのビリー・ジョー・アームストロングが2番の歌詞を変更し、代わりにこの曲のオリジナル・デモ・バージョン(最近、『ドゥーキー』30周年記念盤に収録された4トラック・デモで日の目を見た)で書いた言葉を歌った。


ステージにはアヴリル・ラヴィーンが登場し、受賞トロフィーを手渡すシーンもあった。アヴリルはアームストロングと一緒に受賞を微笑ましく祝福した。


 


TOPSのリードシンガー、Jane Penny(ジェーン・ペニー)が今週末発売されるデビューEP『Surfacing』から最終シングル「Beautiful Ordinary」をリリースした。メロウで親しみやすいシンセポップ・ナンバー先行配信された「Messages」「Wear You Out」に続く三作目のシングルとなる。

 

最新のEPについて、ジェーン・ペニーは次のように説明している。「このEPは、暗黒の時代、そして弱さの時期から生まれたものだが、リスナーにある種の回復力を残すことに責任を感じている」とペニーは言う。

 

「アーティストとして、このような感情を探求することが自由であることを人々に示すことが私の仕事である」

 

TOPSの活動でも知られているジェーン・ペニー。今回のソロ・プロジェクトは何か相違点について次のように説明しています。

 

「TOPSの文脈では、不可能な、音響的、創造的に探求したいことがあった。すべてのパートを書き、ドラムをプログラミングして、すべてのサンプルを選び、ベースラインを書いていった。自分が創り出す音楽の世界全体をコントロールすることで、孤独から生まれる感情的な空間、官能性、直感が大きく開かれると感じた。共有する準備ができたと感じるところまで到達するのに時間がかかったけれど、今は門が開いている。間違いなくこの道を続けていくつもりだ」



「Beautiful Ordinary」


『A Far From Home Movie』は、1990年代のシューゲイザー・アイコン、LUSHの新しい短編ドキュメンタリー映画で、1992年から1996年のツアー中にベーシストのフィリップ・キングが撮影したスーパー8の映像が元になっている。

 

この映画は本日、クライテリオン・チャンネルで初公開された。以下は、バンドのレーベル、4ADが公開した予告編(トレイラー映像)である。35分に及ぶ映画全編はクライテリオン・チャンネルで視聴可能です。


この映画の限定版ポスター2種も公開された。リゾグラフ印刷のA3限定ポスターで、1枚は上、もう1枚は下。4ADから予約注文できる。


キングはプレスリリースで次のように語っている。 「1996年10月にドラマーのクリス・アクランドが悲劇的な早すぎる死を遂げるまで、さらに320回ほどプレイすることになる。私は信頼できる三共のスーパー8カメラをツアーによく持って行ったが、フィルム代が高かったので、映像は控えめに撮るようにしていた。このフィルムがツアー中の興奮(と退屈さ)をとらえていてくれることを願っている。

 

「そして、悲しいことだが、振り返ってみると、私たち全員がクリスを惜しんでいたことにふさわしい追悼となることを願っている」


昨年、4ADはLushの3枚のスタジオ・アルバム、Spooky (1992)、Split (1994)、Lovelife (1996)をリイシューした。


1月には、LUSHのシンガー/ギタリストであり、現在はピロシカのメンバーでもあるミキ・ベレニイが、5月と7月にLUSHのアルバムをリリースすることを発表した。

 

Official Trailerー『A Far From Home Movie』


Flyer


 


シカゴのソングライター、Lala Lalaとしても知られるLillie West(リリー・ウェスト)が、自身初の名義でのプロジェクト、インストゥルメンタルアルバム『If I were a real man I would be able to break the neck of a suffering bird』を発表した。アルバムは4月5日(金)にHardly Artよりリリースされる。


このアルバムはアイスランドで録音された。公式の声明で、リリー・ウェストはこう語っている。


「『If I were a real man I could break the neck of a suffering bird』の大半は、2022年1月、アイスランドのSeyðisfjörður(セイジスフィヨルズル)にあるLungA Landでの滞在中に書かれ、レコーディングされた。Seyðisfjörðurはアイスランドの東海岸にある人口約650人の町、冬の間は太陽がフィヨルドに入ることはない」

 

「プログラム期間中、他の研修生と私は、ナイフ作り、吹雪の中でのバックパッキング、アイスランドのハーブ、地質学、歴史についての学習、ライムグラスをテーマにした夕食会、外での寝泊まりなど、さまざまな活動に参加した。また、氷、草、水、岩、雪、動物、人々など、町周辺の環境をフィールドレコーディングした。」


「インストゥルメンタル・アルバムを作ろうとは考えたこともなかったし、これらのフィールド・レコーディングをするつもりもなかった。そのため、このプロセスはとても自然で、有機的で、ほとんど私的なものに感じられた。この音楽が、私がセイジスフィヨルズル(Seyðisfjörður)の風景で感じたリズム、揺れ、そして、つながりを呼び起こすことができればと思う」

 

 

アルバムのリードシングル「holyholyholy」が配信されている。ヒーリング・ミュージックやアンビエント、エレクトロニックの中間点にある癒やしのトラックである。以下からチェックしてみよう。

 

 

「holyholyholy」

 



Lillie West 『if i were a real man i would be able to break the neck of a suffering bird』


Label: Hardly Art

Release: 2024/ 04/05


 Tracklist:


1. 1

2. holyholyholy

3. weather report [feat. YATTA]

4. lunga [feat. Baths]

5. lymegrass

6. rivur

7. mirror

8. lunga2


Beyoncé(ビヨンセ)のニューアルバム『Cowboy Carter(カウボーイ・カーター)』は予告どおり、三部作の二作目として3月29日(金)にリリースされた。米国メディアは週末、今年最大の盛り上がりをみせた。一作目はハウス・ミュージック、二作目はカントリー/フォークがコンセプトとなっている。

 

しかし、聞くところでは、一部のファンは購入した商品にそれほど満足していなかった。というのは、ビヨンセの『カウボーイ・カーター』のフィジカル盤には、複数の重要な楽曲が収録されていなかったのだ。「YA YA」、「SPAGHETTII」、「THE LINDA MARTELL SHOW」、「OH LOUISIANA」、 「FLAMENCO」といった期待された曲がレコード盤には収録されていない。


CD盤には「FLAMENCO」が収録されているが、Rolling Stone誌によれば、当初、限定盤CDには追加曲が収録されるはずだった。


「FLAMENCO」は『カウボーイ・カーター』のデジタル盤に収録されているが、最初から追加曲だったことが判明している。

 

しかし、レコードには「FLAMENCO」は収録されておらず、カントリー歌手、リンダ・マーテル(Linda Martell)のフィーチャリング曲「SPAGHETTII」と「THE LINDA MARTELL SHOW」も収録されていない。これらのロスト・トラックは一体どこへ行ったのか??


今回、収録されるべき曲が最終プレスのトラックリストに入らなかったことについて、BBCは、これらの曲がカウボーイ・カーターのトラックリストに追加されたのが遅かったため、アルバムのリリースの期日に間に合うように、フィジカルフォーマットに追加しなかったと推察している。ヴァイナルにプレスされる前に、アルバムはプレス工場に数ヶ月前に提出する必要がある。


初期のCDプレスでは「MR.ROSE」のタイトルが「MR.SIR」になっていたり、フィジカル盤の背表紙やアートワークが”Cowboy Carter”ではなく、”Beyincé”になっていたりした。Beyincéは、シンガーの先祖代々の姓を指し、祖母の出生証明書では、ビヨンセに変更されている。

 

また、曲のタイトルに”I's”が頻繁に追加されている。これは南部で疎外されているブラック・アメリカンに対するコメントとして機能している。伝統的に黒人だったアイデンティティを取り戻すという意義があるようだ。


また、ビヨンセ自身、フィジカル・リリースのミスに気づいている可能性があるとの指摘もある。彼女のウェブストアは、金曜日のアルバム・リリースに先駆け、『Cowboy Carter』のCDとレコード・バージョンのトラックリストを提供していなかったからである。『カウボーイ・カーター』のフィジカル盤を購入したファンは、アルバムを受け取った際にも、トラックリスト(収録曲)を渡されなかった。ビヨンセは、アルバムのトラックリストを、ジャケットの表や裏に提示するのではなく、アルバムのライナーノーツとクレジットにリンクするQRコードを追加することを選択した。これは、もしかすると、事後的な対応ではないかとも推察できるわけなのだ。


ビヨンセは以前、前作『Renaissance(ルネッサンス)』をリリース後に修正し、障害者を卑下するような表現が使われた歌詞を削除している。しかし、『Cowboy Carter』のリリース前、ビヨンセは、『Cowboy Carter』が”5年前から制作されていた”と主張しており、『ルネッサンス』のセッションより以前と推測される。なぜアルバムがフィジカル・フォーマットで不完全な状態で届いたのか、ファンを困惑させている。ビヨンセは、それぞれ4種類の限定版がリリースされたレコード盤とCD盤が修正されるかどうかについて、まだ正式な声明を出していない。


他方、ポップ・スターが自分のアルバムの圧倒的な数のバリエーションや別バージョンを提供することについては、喧々諤々の議論がなされている。ビリー・エイリッシュは、最近、アルバムの売り上げを伸ばすため、複数のヴァリアント盤をリリースするアーティストを非難し、「とても無駄なこと」と言い、持続可能なアプローチを推奨している。ビヨンセは、売上を最優先しているという指摘もあり、ドリー・パートン(Dolly Rebecca Parton)に「Jolene」の作詞作曲のクレジットを単独で与え、この曲の印税がビヨンセではなくパートンに入るようにしている。収録曲にとどまらず、クレジットの話題についても、さまざまな憶測を呼びそうだ。

Interview -Kazuma Okabayashi

 

アンビエント制作の核心にあるもの  アーティストの生活の一部をなす音楽の意義とは何か??

 


現在の日本のアンビエントシーンで注目すべきアーティスト、Kazuma Okabayashi。2009年頃からMy Spaceで楽曲を発表するようになった後、2019年頃に自主レーベルを設立し、多数のアンビエント・ミュージックをリリースしてきた。アーティストのリリースの主要な特徴は、毎週のようにアルバムやシングルの発表を行う、ということである。アーティストのアンビエントはギターとシンセを中心に構築され、エモーショナルなニュアンスがわずかに漂う。

 

最近、Kazumaの音楽は、海外のリスナーの注目が集めるようになっている。Spotifyのアンビエントのプレイリストで特集が組まれ、スコットランドの老舗ファッション・ブランド、Johnstons of Elgin(ジョンストンズ・オブ・エルガン)の製品のルック動画の音楽を手掛け、米国のギタリスト、Hollie Kenniffとのコラボも行った。今後、海外での知名度も徐々に高まっていく可能性もある。

 

今回、注目のアンビエント・プロデューサーの制作にまつわる秘話、機材について、レーベルの運営、そして複数のコラボレーション、また、ストリーミングを活動の主軸に置くアーティストの心境について、貴重な話を伺うことが出来ました。以下、そのエピソードの全容をご紹介します。

 



Music Tribune:   


2019年頃から自主レーベルからアンビエント作品をリリースしているようですが、”place.”を立ち上げたきっかけについて教えていただけますか? また、レーベル名の由来等はありますか?



Kazuma Okabayashi: 


 "Place."という名前は元々、自身の音楽作品を発表するためのブランド名として使用していたものでした。当時はパワースポット巡りにハマっていて、パワーの集まる場所を自ら作りたいと考え、Place.と名付け、そのまま現在でも使用しています。

音楽レーベルとしてのPlace.を立ち上げたのは、“音楽家”とざっくりとした未来像を想像した時、「レーベルの運営者として活動していたい」という想いから、しっかりと運営できるシステムを作れるまでは、自分の作品だけリリースするためのレーベルを始めた、という経緯でした。



Music Tribune:   


正直、アンビエントはメジャーなジャンルではないと思うんですが、このジャンルに興味を持った理由や、そして実際に音源制作をはじめるに至った経緯について教えていただけますか?



Kazuma Okabayashi:  


 自身の経験の中で最も古いアンビエントに近い音楽に触れるきっかけは、2004年にRed Hot Chili Peppersのギタリスト、John Frusciante(ジョン・フルシアンテ)のソロアルバム『The Will To Death』の「Helical」という一曲との出会いでした。スプリングリバーブの心地よい響きと即興演奏によるエレクトリック・ギターの1発録りは、今でも自分が憧れるギターアンビエント像そのものでした。繰り返し何度も聴いた覚えがあります。


宅録作品もリリースしていたJohn Fruscianteの影響もあって、音楽制作自体は高校生の時に買ったZoomのMTR 'MRS-1044'を用いて、様々なジャンルの音楽を制作していました。そして、2009年頃から”Myspace”にアップロードしていた音楽をネットで発表するようになりました。その後、2016年頃から、アンビエント感のある曲を作ってはいたものの、アンビエントに明確に興味を持ったのは2019年というように、かなり遅いです。正直なところ、それまでは、特に好んで聴いていた音楽ではありませんでした。

 

しかし、Michiru Aoyama(青山ミチル)氏の曲との出会いがアンビエントに興味を持つ大きなきっかけとなりました。

 

Aoyamaさんの作る曲は、今すぐにでも外に飛び出して走り出したくなるような、そんな胸騒ぎがしました。アンビエントの多くは、リラックスやチルアウトを目的として作られた“静”の印象が一瞬で崩れ、“動”のアンビエントがあるんだと、大きな衝撃を受けたのを覚えています。もちろんアンビエントにそんな定義などないのですが......(笑)。 そこから、Aoyamaさんに“追いつきたい”と、2019年に初期衝動をそのままにアンビエントの楽曲制作を開始しました。



Music Tribune: 


岡林さんは、ソロプロジェクトに加えて、genfukeiという名義でも音楽をリリースなさっています。もうひとつの自分というべきか、若干、音楽性の指針に違いがあるような気がします。双方のプロジェクトの音楽性やコンセプトの違いを挙げるとするなら、どんな点があるでしょうか?

 


Kazuma Okabayashi:   


実はあまりコンセプトを決めて別名義への取り組みをスタートしたわけではありませんでした。


Michiru Aoyamaの衝撃の後、Helios、Goldmund(注: 坂本龍一ともコラボレーション経験がある)などのアンビエントに触れて、後にそれがKeith Kenniff(キース・ケニフ)によるプロジェクトである事を知り、とても驚いたのを覚えてます。そして、まったくの無名な自分がリスナーに印象付ける一つの手段として考えたことが別名義のプロジェクトに取り組むきっかけとなりました。


実は、Genfukeiの他、Flat Lake、Shaded Navy、Yurikagoといった名義でも音源をリリースしています。今はそれぞれ決まったコンセプトは考えないで、自由に活動していますが、別名義での活動を続ける中で、自然とコンセプトが作られていくように感じます。音楽性で言うと、”Genfukei”では、Post-rockやGloomcore、Bedroompop などアンビエントの枠を飛び越えたジャンルに挑戦したいと考えてます。アンビエント以外のアーティストとのコラボレーションも模索している最中です。



Music Tribune:   


これまで、ギターサウンドを基調にしたアンビエントから抽象的なシンセによるドローンまで、多岐にわたる音楽性を追求されているように見受けられます。2019年からご自身の作風はどんなふうに変化してきたとお考えでしょうか? 



Kazuma Okabayashi:   


2019年からの最初の作品はエレクトリックギターとループエフェクターを使用して制作したシンプルなインストゥルメントでした。その頃の音を聞くと、John Fruscianteの影響とMichiru Aoyama氏の影響を自分なりにアンビエントとして生み出していたように思います。


そこから、2021年の頃まで初期衝動のままにずっとギターアンビエントを制作していました。”Michiru Aoyamaさんの音に近づくにはどうすれば良いか?"と考え、ギターアンプやマイク、エフェクターやプラグインなどいろいろ試していた時期でもありました。

 

その一環で、購入したMoog Matriarch(モーグのセミモジュラーシンセ)のの導入により、音楽性の幅が広がる契機となりました。モジュラーシンセを使用したアンビエントの不規則で偶発的な音作りと、その逆とも言えるDAW上でMIDIを打ち込むタイプの曲作りにも興味を持つようになりました。それらに取り組むに際して、Moog Matriarchは双方の可能性を擁する理想的な機材でした。


それまで一貫して使用していたエレクトリックギターを使わない曲も作り始めることで、音作りにも変化が起こり始めたと思います。それまでは、ほぼ即興的な偶発性のある曲作りが大半でしたが、2023年あたりからはコード進行や曲展開にも注力し、より曲としての完成度を高めていくことにも取り組むようになりました。


初期衝動から始まり、これからも長く音楽活動を続けていくには、作曲家としての進化をしていきたい、と考えるようになりました。自身のマインドが変わることで実際の作風も徐々に変化していったように思います。



Music Tribune:   


近年、米国のギタリスト、Hollie Kenniff(注: ホリー・ケニフはキースの妻で、音楽的なコラボレーターでもある)とのコラボレーションを行っています。実際、私はこのリリースで岡林さんの音楽に注目するようになりました。このコラボがどのように実現したのか教えてほしいです。また、具体的な制作過程についても、こっそり教えていただけますか? 



Kazuma Okabayashi: 


 コラボレーション以前のHollie Kenniffさんとのやり取りのきっかけは、Instagramのダイレクトメールで、Hollieさんから私の音源に対して好意的なコメントを送ってくれたことが始まりでした。


前述の通り、Keith Kenniffに対して、とてもリスペクトの念を抱いていましたし、もちろんアーティストとしてのHollie Kenniffの存在も知っていました。なので、DMが届いた時は本当に驚きました。


そこから思い切って、私からHollieさんにコラボレーション依頼を打診したところ、彼女自身も「コラボに挑戦していきたい」と考えていて、タイミングが重なったことで共同制作がスタートしました。

 

前向きな言葉を貰ってからすぐ、曲の制作を開始し、現在リリースされている2曲の元となる素材、及びデモトラックを完成させました。その録音データをHollieさんに送ることで、本格的に曲制作がスタートしました。

 

私自身から提供した音は、”Moog Matriarch”のアルペジオ、エレクトリックギターのコードやメロディの素材でした。それを元にし、ボーカルやピアノ、シンセなどの音をHollieさんに追加してもらい、最終的に、編曲や各トラックのMIXまで施していただきました。シンセの音作りや編曲など、すべてが自分とは違った新しいアプローチだったので、かなり新鮮でした。特に、私から提供した素材もMIXを経て、音楽そのものも、よりいっそう煌びやかに変化したことにも驚きました。



Music Tribune:   


最近、スコットランドのファッション・ブランド、”Johnstons of Elgin(ジョンストンズ・オブ・エルガン)”のルック動画の作曲も手掛けたということで、本当に驚きました。これは、ブランド側から依頼があったんでしょうか? 実際に映像にまつわる音楽を制作してみて、印象はいかがだったでしょう?

 


Kazuma Okabayashi:   


ルック動画への曲提供は、Johnstons of Elginのビジュアルメディア全般を請け負っているイギリスのデザイン事務所から依頼が来ました。


最初は、先方が”Genfukei”のアルバムをチェックしてくれていて、「アルバムの中から曲を使用させてくれないか?」というお話をいただきました。しかし、配信手続きの済んでしまった楽曲を広告やソーシャルメディアで使用したりすると、思わぬトラブルが発生する可能性があるため、結果的に映像に合わせた曲を制作することになりました。


映像音楽の制作は初めての経験だったので刺激を受けました。印象としては、普段の音楽制作との違いを明確に感じました。音の主張が強すぎても弱すぎても難しく、双方が納得できるまで音楽を磨き上げるのに苦労しました。


仕上がった曲に対して、クライアントからフィードバックをいただいた後、何度か曲を修正をかけていく、といったことも新たに経験しました。レコーディングにより組み立てられた音を修正するのは、それほど容易なことではありませんが、MIDIデータの打ち込みであれば、より細かな修正が可能であったりと、普段の音楽制作では気づかないような未知の発見もありました。







Music Tribune: 


現在の制作環境や使用機材、レコーディング方法について、大まかで構いませんので、教えてもらえますか? 制作のこだわり、力を入れている点について教えてください。

 


Kazuma Okabayashi:   


現在は自宅を録音スタジオとして利用し、PCの音楽編集ソフトCubaseを用いて録音した素材のMIXや編集をしています。

 

録音に主に使用しているのは、エレクトリック・ギターと複数のエフェクト・ペダル。セミ・モジュラーシンセの”Moog Matriarch”。最近は少量のモジュラーシンセを導入し、実験的な音作りにも取り組んでます。


また、レコーディング方法については様々です。一番最初に取り掛かる音がその曲の雰囲気を左右することが多いので、エレクトリックギターからフレーズを作ったり、Cubase(注: スタンドアローンの作曲ソフトウェア)でソフトシンセを用いて、コード進行から作ったり、複数のエフェクトペダルを用い、インプロヴィゼーション的で偶発性のあるループ素材から作ったりと、様々な手法を用いる事を意識しています。


音源制作におけるこだわりや特に力を入れていることは、やはり、エレクトリックギターでの音作りです。楽器は人間の手によって実際に演奏して録音するので、手元のわずかなニュアンスの強弱や完璧でないリズムなどが、そのまま録音に反映されます。それにより、その曲の中でギターのサウンドが様々な意味合いを持ち、また、比喩的な事象が起きる瞬間(燃えるような音、風のような音、波のような音、呼吸するような音になる)にとても惹かれてしまいます。



Music Tribune: 


岡林さんは、これまで多数の作品をリリースしています。正直なところ、数が多く、聞ききれない印象もあるんですが、毎週のようにリリースを重ねるのはなぜでしょう? また、アンビエント制作というのは、サウンドデザインのようだったり、アートのようだったり、日記のようだったり、商業的なものだったりと、制作者によって捉え方は多種多様であるように感じます。岡林さんにとって、この音楽はどのような意味を持つのでしょうか? 



Kazuma Okabayashi: 


最初は、すごく単純に、制作する曲のスキルアップへの課題や経験値の積み上げを目的とし、多数の曲をレコーディングしていました。何年も続ける事で、いつしか、それが自分にとって大事な生活の一部となっていることに気づきました。仕事が忙しくなり、音楽制作ができなくなると呼吸が浅くなり、身体が固くなる感覚に襲われた事がありました。

 

自分にとっての音楽制作は、例えるなら、”深呼吸やストレッチ”のようなものに近いのかもしれません。


そして、生活の一部として出来上がった複数の曲を放置しておくことも、自分にとってはストレスのように感じてしまうため、現在のように音源を毎週リリースをするという形になりました。


聞ききれない曲数であったり、リリースそのもののペースが早すぎることは、リスナーに寄り添っていないかのようなネガティブな印象もありますが、仕事と両立して音楽活動を行っている現段階では、スキルアップや経験値として積み上げていくことを最優先に取り組んでいます。




Music Tribune:  


アルバムやシングルのアートワークも、絵画的で印象的なものが多いと思います。眺めているだけで癒やされてしまいます。これらのデザインは、どなたが手掛けているのでしょう。また、音楽と関連して、ジャケットのコンセプトや指針のようなものはありますか?



Kazuma Okabayashi:  


アートワークに関しては、2019年の頃は自ら撮影した写真を使用していました。

 

2021年の後半からは、曲の印象に合った素材を探して使用していました。2023年からは、AI生成によるアートワークに移行しました。


AI生成は、作曲をする時の楽器と同様に、頭の中のイメージを具現化してくれるツールとして、また、人間には思いつかないような、偶発的で斬新な発想を、AIを駆使して得る事により、自分の音楽的表現の一つとして発表することが出来るかも、と考えています。この選択をすることで、毎週リリースを重ねる生活の中で、写真を撮影するよりも時間的なコストが軽減され、音楽制作に多くの時間を費せるようになる。それが現段階の自分の音楽スタイルと合致しました。

 

実際のフォトグラフィーでは、表現する事が難しかった抽象度の高いアートワークを制作することによって、リスナーの曲への理解や受け取り方が、より自由になるかもしれないと感じています。



Music Tribune:  


アンビエント制作の最も魅力的な点を挙げるとするなら、それはどのような瞬間に求められるでしょう。

 

また、作曲に関してですが、岡林さんは制作者として、構想として既に出来上がっているものを提示するタイプでしょうか、それとも、制作過程で今までになかった何かを探していくタイプでしょうか? 

 


Kazuma Okabayashi:   


アンビエントはまだこれから発展していく音楽だと考えていますので、アンビエントの定義や枠から外に踏み出すような制作ができた時、可能性や魅力をひときわ強く感じることができます。

 

作曲に関しては、取り掛かる前にざっくりとした音の構想をイメージし、楽器やシンセサイザーで、それを曲として形にしていくことが多いです。

 


Music Tribune:  


 岡林さんは、2020年代のストリーミング世代に登場し、時代の波に上手く乗っているアーティストなのかなと思っています。最近ではSpotifyの特集プレイリストにもピックアップされたと聞きます。


近年、ストリーミングサービスに関して、マージン(収益配分)の側面で商業的に難しい問題があるという指摘もなされています。あらためてお聞きしますが、ストリーミングをメインとして音楽をリリースすることの最大の利点を挙げるとするなら、それはどんなところにありますか?



Kazuma Okabayashi:   


やはり誰でも簡単に音楽を世界に配信することができるのが最大の利点であるかと思います。

 

また、それにより、海外のアーティストと繋がってコラボレーションなどに発展していくことができます。

 

アマチュアのアーティストにとっては収益配分の問題よりも、そういった側面での利点が大きいように感じています。



Music Tribune:  


お答えいただき、ほんとうにありがとうございました。今後のリリースにも期待しております。

 

©Alexis Aquino

オーストラリア出身のシンガー・ソングライター、Phoebe Go(フィービー・ゴー: 本名フィービー・ルー)は、近日発売予定のデビューアルバムを発表した。サイモン・ラム(Charli XCX、Cub Sport)との共同プロデュースによる『Marmalade』は、AWALから5月17日にリリースされる。最近のシングル「7 Up」と 「Something You Were Trying」を収録している。


「曲は傷つきやすく、同時に勇敢でありたかった。人生にはいろいろなことがあった。それは一瞬の出来事なんだ。このアルバムを作りたいという思いは、それに対する恐れよりも常に大きかったんだと思う」


彼女はさらに、「これらの曲に取り組むことは、はけ口であり、私が前進するのを助けてくれた」と付け加えた。


新曲「Leave 」は、ルーの典型的な渋いテクスチャーを引き出しており、サビの冒頭の質問にユーモアがある。"私を置いてくつもり?"と彼女は歌い、葦のようなギターのレイヤーの中でクールで冷静なヴォイスが続く。


「"Leave "は、ある意味、自己を麻痺させることなの」とシンガーソングライターはこの曲について語った。

 

「この曲は、恐怖のために心を閉ざし、それを実行することについて歌ってる。その感覚、つまり、絶望と解離を表現したかった。私の人生の中で、ある種の麻痺を感じてた時期について歌っているの。ちょっと辛辣で、両刃の刃のような曲なんだけど、ある意味この曲は謝罪の曲でもある」

 

 

 「Leave」



Phoebe Go『Marmalade』




Label: AWAL Recordings

Release: 2024/ 05/17


Pre-save/ Pre-add:


https://phoebego.ffm.to/marmalade