昨年12月は駆け込み需要ならぬ駆け込み供給があったというべきか、国内外のビックアーティストのアルバムリリースが目立っていたように思えます。

 

今月は年始めということもあって、フルレングスのアルバムではなく、比較的シングルリリースが多かったかなという印象を受けました。

 

今回の記事では、気になる作品をピックアップ。もちろん、この他にも良い作品がリリースされていると思われますので、以下のリストを参考がてら貴方にとっての最適な作品を探してみて下さい!!

 

 

 

・David Byrne/Yo La Tengo

 

「Who Has Seen The Wind?」

 

 

今年2月1日にオノ・ヨーコのトリビュートアルバム「Ocean Child」のリリースを間近に控え、先行シングルとして発表された「Who Has Seen The Wind?」は今月のシングルリリースの中でも注目の一作となります。

 

アルバムの収録には、ジャパニーズ・ブレックファーストをはじめとする今最もホットなインディーアーティストが勢揃い。シングル「「Who Has Seen The Wind?」はトーキング・ヘッズのデイヴィット・バーンとヨ・ラ・テンゴと、インディーレジェンドがコラボレート。両者のオノ・ヨーコへの敬愛がたっぷりと感じられる音源となっています。

 

 

 


 

 ・Eels

 

「Amateur Hour」

 

 

イールズは、アメリカのインディーロック界の鬼才と称するべき"マーク・オリヴァー・エヴェレット"を中心に1995年にカルフォルニアのLAで結成。

 

これまで大きな商業的な成功こそ手中におさめていませんが、良質なインディーロック/ポップをひっそりと奏で続けているグループです。2022年1月5日にリリースされた「Amateur Hour」は、イールズの魅力でもある親しみやすいメロディー、ガレージロック/パブロック色を交えたノリのよいロックンロールを体感できるあまりに渋すぎるシングル作。ロックマニアは必聴の一枚となります。  

 

 

 

 

・Karen Dalton/Angel Olsen

 

「Something on Your Mind」 


 

今年1月13日にリリースされたエンジェル・オルセンの「Something on Your Mind」は1993年に55歳で亡くなられたアメリカのフォークブルースシンガー、カレン・ダルトンのカバーとなります。

 

近年、現代のフォーク音楽に女性シンガーとして新鮮な息吹をもたらそうとしているエンジェル・オルセンは、実力派ヴォーカリストの渋い楽曲を選出、改めて往年の名歌手の名曲に光を投げかけています。エンジェル・オルセンの伸びやかで、ソウルフルで、美しい歌声が堪能できる作品です。  

 





 

・Ben Lucas Boysen/Kiasoms


「Clarion-Kiasoms Remix」

 

 

「Clarion-Kiasoms Remix」は、ドイツ、ベルリンを拠点に活動する電子音楽家、ベン・ルーカス・ボイセン、アイルランドのエレクトロニックユニット、Kiasmosが国境を越えての豪華コラボレーションを実現させたシングル作品として注目です。

 

ここではキアスモスらしいシンセサイザーを介しての超大な音響世界の構築、それとは正反対のオーラヴル・アルナルズのピアノの演奏の繊細なメロディー、そして叙情性を味わえる一作、それに加えて、ボイセンの緻密な構築力が加わり、壮大な宇宙的なエレクトロが生み出されています。シングル一曲だけのリリースであるものの、フルレングスアルバムに比する聴き応えを持った一曲。 

 

 

 

 

 

・Particie Kid/J Mascis/Paul Bushnell/Sunny War


「Someone Else's Dream」

 

 

ローリングストーン紙が選出する「歴史上最も偉大なシンガー」の88位にランクインするウィリー・ネルソンを父に持つParticie Kid、そしてアメリカの1990年代のインディーロックの伝説、J・マスシスほか、ポール・ブッシュネル、サニ・ウォーと、四者が共同制作を試みた一作。

 

一般的に、船頭多くして船山に上るとも言われていますが、「Someone Else's Dream」はそのことわざには当てはまらない、四者のアーティストの個性ががっちり組み合わさった音源です。

 

往年のUSインディーの旨味を凝縮したような作風で、ディストーションサウンドという側面では、J・マスシスのギターの演奏はどっしりとした安定感を与えています。加えて、マイカ・ネルソンの実力派ヴォーカリストとしての力強い歌声が味わえます。  

 

 

 

・Cavetown

 

「squares/y13」

 

Cavetownとして活動を行っている英国、オックスフォード出身のシンガーソングライター、ロビン・ダニエル・スキナーは14歳から作曲を行っているアーティスト。インディーロック、インディーフォーク、ベッドルームポップをかけ合わせた穏やかな親しみやすい楽曲をこれまでにリリースしています。

 

今年1月十四日にリリースされた「swuares」は、2曲収録のシングル。穏やかな雰囲気を感じさせる楽曲で、アコースティックギターとロビン・ダニエル・スキナーの優しげな歌声が魅力の一枚。Mumをはじめとする北欧フォークトロニカとの共通性も見いだせるような良質な作品です。近年、USのフォーク部門のチャートでも健闘していて、今後の活躍が楽しみなアーティストです。 

 

 

 

 

 

・Young Guv

 

「It's Only Dancin’」


 

タワーレコーズonlineによると、「トロントポップス請負人」と称されるカナダ、トロント出身のアーティスト、ベン・クックによるソロ・プロジェクト、Young Guv。

 

今年1月5日にリリースされた「It's Only Dancin’」は、往年のパワー・ポップサウンドを復刻させた甘酸っぱいサウンドが特徴。ギターの演奏にしても、ボーカルにしても、楽曲自体の独特な移調にしても、ポップスサウンドの良さをとことん追求した雰囲気を持った良質なシングル作品です。

 

 

 

 

 

・Spiritualized 


「Crazy」

 

1990年にイギリス、ラグビーにて結成されたロックバンド、スピリチュアライズド。既に大御所ロック・バンドと言っても良いかも知れません。

 

サイケデリック、スペース、アート・ロックと、これまで、様々な斬新なロックのスタイルに果敢に挑戦してきたスピリチュアライズド。

 

今回、2022年1月10日にリリースされた「Crazy」は、ノスタルジアに彩られたフォーク音楽性を強く打ち出し、大自然を感じさせるような美麗さの満ち溢れた楽曲。バラード曲としては、UKの歴代のシーンを見ても名曲の部類に入るのではと思えますが、いかがなものでしょう??

 

 

 

 



・Samuel Aguilar/Brian Eno


「Lago Escondido」


「Lago Escondido」は、鍵盤奏者、ソングライターとしても活躍するSamuel Aguilarと、ご存知、ブライアン・イーノのコラボレート作品。このシングルにおいて、ブライアンイーノは、ハロルド・バッドとの共同制作を行っていた時代に回帰したという印象を受けます。どことなくエキゾチックさを感じさせるアンビエンス、それに加えて、癒やしの要素を持ったアンビエントピアノ。鍵盤奏者、Samuel Aguilarの特性を見事に引き出すことに成功した楽曲といえるでしょう。

 




・Yumi Zouma 

 

「In The Eyes Of Our Love」

 

Yumi Zoumaは、NZのクライストチャーチを拠点に活動する男女四人組のオルタナティヴ・ポップバンド。これまで、弱冠のメンバーチェンジを繰り返しつつ、2017年「Willowbank」をはじめ、数々の軽快なベッドルームポップ、シンセポップの名作をリリースしている実力派のグループです。

 

2022年1月13日にリリースされた「In the Eyes Of Our Love」もこれまでの音楽性と変わらず、ユミゾーマ節が炸裂したキャッチーでノリノリなシンセ・ポップ、または、ドン・ヘンリー、フィル・コリンズ時代の良質なソフト・ロックを彷彿とさせる一曲です。クリスティーナ・シンプソンのヴォーカルは、どのような暗鬱な気分であっても爽快な気分をもたらしてくれるはず。

 

 




・Pinegrove

 

「Respirate」

 

アメリカ、ニュージャージー州モントクレアを拠点に活動するパイングローヴ。エモやインディー・ロックを主体に、アメリカのルーツ・ミュージックを掛けわせた懐深い音楽性が魅力のバンドです。

 

三曲収録のシングル作「Respirate」は、叙情性を徹底して引き出すことに成功し、なおかつ、曲の性格の力強さを充分に兼ね備えた聴き応えある楽曲がズラリと並ぶ。このバンドの楽曲の主要なソングライティングを務めるエヴァン・ステファンズの人物としての温かさ、性質のおおらかさが前面に表れた名作シングルです。アメリカン・ロック、インディーロックの良心とも喩えるべき素晴らしいロックバンドであり、今後のリリースにも注目しておきたいアーティスト。



 


・ginla 


「Carousel」


ginlaは、それぞれ、アメリカ・ニューヨークとカナダ・トロントを拠点に活動するジョン・ネルソン、ジョー・マンツォーリの電子音楽ユニット。

 

これまで、電子音楽とコンテンポラリーフォークをかけ合わせた美麗なボーカルトラックを制作しているユニットの新作シングル「Car3ousel」は、現代的なフォーク音楽の魅力を見事に引き出し、ゲストヴォーカルとして参加した”Adrianne Lenker”のヴォーカルの華やかさが彼らの作風に見事に合致。なんともいえず、うっとりな気分にさせてくれる美麗な作品。フォークトロニカ周辺の音楽をお探しの方、爽やかなポップスをお探しの方には最適な一作となるはずです。  

 

 

 

 

 

・Joep Beving


「Noctural」

 

ポスト・クラシカル界隈では、アイスランド勢のアーティストと共にかなりの知名度を誇るアメリカの音楽家、ユップ・へヴィン。
 
 
ドイツ・グラモフォンからも作品のリリースを行っているアーティスト。近年、世界的に知名度が上がっている音楽家のひとりです。
 
 
今回リリースされたシングル「Nocturnal」はまさに題名にも見える通り、フレドリック・ショパンの時代のロマン派の時代のピアノの小品を現代にそのまま蘇らせたかのような作品。今回もユッピ・へヴィンはこれまでと同様、叙情性と繊細性を絶妙に兼ね備えた美麗なピアノ曲を生み出しています。
 



 

 

 

・Mitski

 

「Love Me More」

 

Mitskiとして活動するミツキ・ミヤワキは、ニューヨークを拠点に活動する日系アメリカ人のシンガーソングライター。今後、アメリカ国内で絶大な人気を獲得するであろうシンガーとして再注目のアーティストです。

今月二十一日にリリースされた「Love Me More」は、2021年の「Heat Lightnig」に続く四曲収録のシングル作。

 

これまでのミツキの作風と同様、エレクトロポップの性質が色濃く、そこに、ミツキ・ミヤワキのヴォーカルのみずみずしい響きが付加されています。テクノのクールさ、ポップスの痛快さが絶妙にマッチした作品。

 


 

 

 

・Franz Ferdinand

 

「Curious」

 

2000年代から、アークティック・モンキーズと連れ立ってダンスロックムーヴメント旋風を巻き起こした、スコットランド、グラスゴーの四人組ロックバンド、フランツ・フェルディナンド。

 

2022年1月下旬にリリースされた二曲入りのニューシングル「Curious」は、フランツ・フェルディナンド節が炸裂の最高のトラックです。2004年「Franz Ferdinand」を引っさげて衝撃的なデビューを果たしたあの時の勢いをそのまま再現させた、激渋のしぶとさのあるグルーヴ感が満載の快作です。彼らの新作アルバムに向けて、ただならぬ期待を予感させる作品となっています。

 

 

エモコアというジャンルを傑作「Diary」で確立したシアトルの伝説的なロックバンド、サニー・デイ・リアル・エステイトが、アメリカ国内の熱狂的なファンの間で、2022年に再結成ツアーを行うのではないか、という噂話がまことしやかに囁かれはじめているのを皆さんはご存知だろうか。

 

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 CC 表示 2.0, リンクによる

 

 

サニー・デイ・リアル・エステイトは1992年に、ジェレミー・エニグクとウィリアム・ゴールドスミスを中心にシアトルで結成され、ゲット・アップ・キッズやミネラルとならんで、90年代から00年代にわたって、インディーエモシーンを牽引しつづけたいわば伝説的な存在である。

 

彼らは、2009年から2010年にツアーを敢行して以来、一度もバンドとしてパフォーマンスを行っていない。

 

加えて、Circa Surviveとのスピリット「リプトンウィッチ」を2014年に発表して以来、7年にもわたり沈黙を守り続けている。かつてSDRSのドラマーのゴールドスミスが立ち消えとなった幻の五枚目のスタジオ・アルバムの噂をもたらして以来、彼らの動向の噂は常にファンの間でゆらいでいるように思える。

 

ところが、今年に入って、SDRSに新たな動きが出て来ている。バンドのUS版Wikipediaには、[Years Achive]の項目に、新たに「2022ーpresent」という記述が何者かによって追加されたことを受けて、多くの熱烈なファンの間で、サニー・デイ・リアル・エステイトの再結成ツアーの噂が流れ始めている。

 

 

・Sunny Day Real Estate Wikipedia 


https://en.wikipedia.org/wiki/Sunny_Day_Real_Estate 

 

 

サニー・デイ・リアル・エステイトのWikipediaのページ更新については、バンドメンバーや関係者が記述したのかまでは定かでないため、情報として信頼にたるものなのかまでは不明である。もちろん、第三者のいたずらの可能性も無きにしもあらず。


しかし、現在、SDRSの周辺には、いくつかの動向が見られることだけはたしかである。ウォッシュアップエモは、バンドがInstagramを立ち上げたという情報をいち早く取り上げたほか、Brooklyn Veganも、新たに中心人物のウィリアム・ゴールドスミスが新しい自身のInstagramの個人アカウントに、SDRSのライブのスクリーンショットを新たに追加したと報じている。


これらがもし、個人的な趣味や懐古的な意味を持つものでないなら、このバンドが再結成を果たす可能性が高いとのことである。

 

まだ、依然として、SDRSの正式な再結成にまつわる情報は出ていない。どころか、これらが完全に飛ばし記事に終わる可能性もゼロではない。また、SDRSのFacebookやtwitterアカウントにもメンバーの明確な投稿がなされていないが、今後のバンドの動向にファンとしては注視していただきたい。


アメリカン・フットボール、ミネラルに続いて、サニー・デイ・リアル・エステイトが再結成を果たせば、往年の熱烈なエモファンにとっては驚愕のサプライズとなることだろう。

 


英リーズを拠点に活動するYard Actは、今年の1月21日にZen F.C(islands)から「The Overloard」をリリースして鮮烈なデビューを飾った。

 

ヤードアクトは、ブラックカントリー、ニューロード、そして、スリーフォード・モッズとともに現在最も英国で注目を浴びる四人組と言える。UKポスト・パンク、ディスコパンク、ヒップホップ、果ては、ノーウェイヴまでをも取り込んだ革新的な音楽性はどのように生み出されたのだろうか。


ヤードアクトの魅力は、1970年代に隆盛したUKポスト・パンクの歴史を引き継ぐサウンドにある。そして、ヤードアクトのもうひとつの魅力は、ヴォーカリスト、ジェームス・スミスの生み出す痛烈で皮肉たっぷりのスポークンワードにある。ジェームス・スミスの紡ぎ出す歌詞は、往年のモリッシーのように、皮肉交じりではあるが、そこにはザ・スミスのような自己陶酔は存在せず、ただひたすら現状を痛快に笑い飛ばすばかりである。ブラックユーモアにみちてはいるが、それはジメッとした雰囲気とは程遠く、乾いた笑いの印象を聞き手にもたらす。そして、実際の楽曲にしても、MVにしても、共感性のような感情を受け手に与えるのは不思議でならない。

 

ヤードアクトが今月21日にリリースした「The Overload」の最後のプレリリース「Rich」という楽曲では、資本家からみた資本主義自体の虚しさ、あるいは、資本主義への不信が痛烈に暴き出される。それは、資本主義社会に参加することのできない爪弾きにされた多くの一般市民の心を捉えた。 

 

 

 

 

 

ヤードアクトがスポークンワードという形式で表現する歌詞、つまり、英国社会にとどまらず世界全体に蔓延する一般市民が共感性を見出すことができない「資本主義社会の完全なる行き詰まり」を暴き出そうとするスタイルは、資本主義とは一定の距離を置いて生活をする若者だけにとどまらず、毎日のデスクワークに翻弄される会社員、何らかの思想的な活動に明け暮れて疲れ果てた活動家というように、幅広い層の心に強く響くものがある。それは言ってみれば、お体裁の良い商業ポップスとは完全に異なる図太さのある音楽なのだ。もちろん、彼らが冷笑を交えて痛烈に批判を繰り広げるのは、社会のような蒙昧とした概念にとどまらず、実際の政治であったり、まつりごとを司る政治家に向けられる場合もある。ヤードアクトは、常に逃げも隠れもせず、実態のある何かを相手取り、それをブラックユーモアを交えて表現しているのである。

 

 

 

そもそも、ヤードアクトのバンドとしての始まりは、奇しくも、パンデミックが始まった時期と重なっている。バンドとしての活動を開始し、三回目のギグを地元リーズで行った時、パンデミック時代が到来した。

 

このパンデミックの時代について、ヤードアクトのヴォーカリストのジェームス・スミスは「すべての出来事は当時の私にとっては、あまりに早く起こったように思えました。それでも、完全な憂鬱に陥ることはありませんでした」とヤードアクトとして活動をはじめた当初のことをスミスは振り返っている。

 

 「最初、私は・・・」と、ジェームス・スミスは、後に以下のようにヤードアクトの結成秘話について語っている。

 

 

「ライアン・ニーダムと何年にもわたり、友達以上の関係を築き上げて来ました。彼は、私が”ポストウォークグラマーガールズ”という地元のバンドで活動を行っていた時代、ライアン・ニーダムは、メナスビーチというサイケ・ポップバンドで演奏をしていて、ジャンボレコードから7インチのスプリットシングルをリリースしたばかりでした。ニーダムと知り合った当初、お互い意見がぶつかりあうことも多かったけれど、その後、何度かリーズのパブでニーダムと会って話すことが多かった」とジェームス・スミスは語っている。「私達は、かねてから一緒にバンドをやろうとパブで話していたんですが、なかなか実際にバンドを始める機会を見失っていたんです」

 

 

2019年9月、ライアン・ニーダムがジェームス・スミスの自宅の空き部屋に引っ越した時から、ヤードアクトは本格的な活動を開始した。彼らは、ハウスメイトとして暮らしながら、デモトラック制作に専念した。ソングライティングにおけるパートナーシップを築き上げることにより生産性はみるみるうちに上昇し、スミスの自宅で数多くのデモトラックがシンセを介して生み出された。

 

その後、彼らは明確なバンド形態を取るため、リーズで活動していたTreeboy&Arcから残りのドラマーとギターのメンバーを引き入れることに成功し、追い風が吹き始めたように思えた。しかし、バンドの思いはパンデミック時代の到来により、一度はくじかれてしまったのだった。

 

「私達は、2020年1月にヤードアクトとして門出を果たしましたが、皮肉にも、その後すぐ世界的なロックダウンが始まったんです・・・」とヴォーカリスト、ジェームス・スミスは当時のことを回想している。

 

「それでも、私達は、バンドとしての活動をやめるつもりはありませんでした。 そこで、ロス・オートンというエンジニアに、制作したライブ録音のデモテープ「Fixer Upper」を持っていって、この曲を目に見える形にしたいと考え、デモをリミックスしてもらったんです。その過程、ギタリストのサミー・ロビンソンが私達の元を去っていったのは、正直、とても残念な出来事でした。別に、彼とは仲違いをしたというのではありません。サミーとは常に友好的な関係を築きあげられていたと思っています。新たなギタリストSam Shjipstone が加入したことは、それほどバンド活動を行っていく上で、明確な違いが生じたとは思っていません」


 

彼らが最初に明確なレコードの形にした「Fixer Upper」は後にEP「Dark Days」に収録されている。この曲はThe Streetsの「The Irony of It All」と同様、風刺的なシニカルな架空のキャラクターを歌詞の中に登場させている。

 

この曲で、ジェームス・スミスが描き出しているのは、新自由主義の英国の社会的な描写であり、スミスのスポークンワードの特性を活かし、暗鬱としながらもコメディーに満ちたタッチで曲の世界観が見事に描き出されている。

 

彼が「Fixer Upper」の曲中に登場させたグラハムという架空の人物は、2020年代の社会の主流といえるような典型的な人物である。

 

グラハムは、法を遵守する善良な市民であり、さりげなく人種差別主義者でもあり、また、彼自身の持ちうる特権にあえて気がつこうとしていない人物でもある。この曲は、パンデミック以前に書かれた楽曲だというが、この愛国的な思想を持つ架空の人物が現在のイギリス社会の出来事について、何らかの私的な意見を抱えているということを暗示している。

 

 

「"Fixer Upper"の歌詞に登場するグラハムというキャラクターについては・・・」とジェームス・スミスは苦笑を交えながら語っている。

 

 

「99%、ほとんど確実に、例えば、All Lives Matterのような思想を前面に掲げる人間だと言えるでしょう。彼がパンデミックという概念にどっぷりはまり込んでいるのには2つ原因があります。それは、俗に言われる”ピアーズ・モーガン効果”と呼ばれるものです。このグラハムという人物が、個人的になんらかの社会的な制約を受けている場合、彼は充分な政策を打っていないイギリス政府に反意を唱えるでしょう。 あるいはもし、彼がパンデミックによって傷ついた人を、直接的に友人や知人、あるいは親族を介して知らなければ、彼は間違いなく「私は絶対マスクを着用しません。これはただのインフルエンザなんですから」と主張するはずです。なぜなら、グラハムという人物は、正しいと思うことだけを信条とする人間であり、それ以外のことは興味を示さない、つまり、彼の思想の核心は彼自身に集約されたマキャベリストだからです」

 

「この曲では、グラハムの後に引っ越しをしてきた人々について、実際にフォローアップを書いていますが、それをあんまり仰々しく取り上げるつもりはありません」とジェームス・スミスは語る。

 

「私は、この曲を聴いてくれる人々が、このキャラクターに深く接してくれることが何よりの喜びなんです。そして、私の曲を聴いてくれた人々が、”この男は、今の社会に必要なことを歌ってくれている”なんて称賛してくれればこの上ない喜びなんです、まあ、それでも本心ではそうでないことを願っていますよ」

 

 

ジェームス・スミスはこれまでのUKの歴代のシーンにあって、存在しそうで存在しなかったタイプのヴォーカリストとも言える。

 

UKポスト・パンクの伝説、The Fallのヴォーカリスト、マーク・E・スミスからの直接的な影響を公言していて、ワードやセンテンスの語尾にわざと本来意味のない発音を付け加える遊び心を欠かさないアーティストである。

 

また、ヴォーカリスト、ジェームス・スミスの人物像というのも面白い。そこには、モリッシーのようなブラックユーモアこそあるが、自己陶酔はない。トム・ヨークのような社会的なメッセージ性こそ持つが、内向的な悲観主義者ではなく、外交的な楽観主義者である。ジェームス・スミスは歴代のUKのロックシーンを見渡しても、とびきり風変わりで、魅力的な人物のように思える。


しかし、彼は本質的に、政治色の強いメッセージを掲げるバンドとして自分自身を表現しようとは考えていない。言い換えれば、彼は、人々に何かを考えるべきかということを明瞭に伝えたくないとも考えている。それは、彼自身、何らかの一つの概念に縛られることを嫌うばかりではなく、自分がアイコンのように見なされ信奉され、スターとして神棚にまつりあげられることだけは避けたいと考えているからなのかもしれない。つまり、一つの強固な考えを標榜するように、他者に押し付けるのでなく、多種多様な価値観があって良いではないかとスミス自身は認めているのかもしれない。

 

もっとも、現代社会のAll Lives Matterをはじめとする様々な概念が、「ポリティカルコネクトネス」として氾濫する時代において、幅広い選択肢をもたらすスポークンワード、コミカルな雰囲気をにじませた楽曲の世界観は、現代社会の人々に少なからず安息を与えてくれるに違いない。そして、ヤードアクトの楽曲がなぜ一方通行にならないのかという点についての答えは出ている。

 

彼らの音楽は、オーディオ機器、あるいは、ライブパフォーマンスを通しての聞き手との対話、また、コミュニケーションの始まりなのであり、また、ヤードアクトの楽曲を聴いた後、聞き手自身が、それを自分の頭の中で咀嚼し、最終的に自分なりの答えを見出してもらいたい、自分で最終的な結論を導き出してもらいたい、というように、ジェームス・スミスは考えているのだ。

 

「現在、政治的なメッセージ性を持った音楽は、世界のシーンの中でも非常に目立っているように思えます・・・」とジェームス・スミスは語っている。

 

 

「それらは、すべて、何々党が悪いだとかいう当てつけにも酷似していて、私達は、同じような事例がその他にも数え切れないくらいあるのを知っているんです。私達は、常に、上記のような、何かもっともらしい言葉を垂れるぐらいなら、多くの人をたのしませるような事柄を言うことを優先したいんです。バンドの最初のリリースである「Fixer Upper」のような曲において、私にとって重要だったことは、鮮烈な印象を外側の世界に与えることだった。たとえ、もし、そんなふうに誰かから揶揄されたとしても、その人が完全に間違っていると断言するつもりはありません。

 

もちろん、それと同時に、私達は、社会の背後からものをいい、「私たちは左翼ではないんだ!!」という自己防衛的な人達のようになりたいわけでもないですし、それと同様、私は自分の意見を表明するためだけに、このような風変わりで馬鹿げた物言いをしているつもりもありません。一般的な人々が何らかのことについて発言するのは、必ずしも、自分の責任にはなりえない、と私は考えていますが、同時に、私自身がなんらかの的はずれな発言をした場合には、弁解や弁明をするための場に束縛されるべきとも考えています。これまで、ヤードアクトの活動を行っていく上で、上記のようなことについては、それなりに上手く対処できたのではないかと私自身は考えてますが・・・」

 

 

ヤードアクトの人気が沸騰していくにつれ、 政治に対して率直な意見を述べる、IDLES、Sports Teamのように、彼らの部分的に表現される政治的な思想を全面的に取り上げ、ポップスターとして祭り上げていこうと考えている人々は、イギリス国内、世界全体に少なからず存在することは間違いのないのことである。けれども、こういったアーティストたちは、その後、祭り上げられた挙句、商業的な成功を手にするかわりに、それと引き換えにアーティストらしく生きる上で大切なものを失ってしまったのだ。

 

しかし、ヤードアクトは、今後、過去のスターの悪例に染まらないであろうと考えられる。彼らは、事実、デビュー前に、「Black Lives Matter」を支持しているファンに、facebookを介して怒りのコメントを数多くぶつけられた。この時、ヤードアクトはまさに、上記のような考えを手放した、あるまじきロックバンドであると痛撃な批判を浴びたのだ。この出来事について、ジェイムス・スミスはこのように回想している。

 

 

「古い世代の考えを持つ人々の中には、進歩的な考えを持てない人たちも一定数いるのかもしれません。この問題については非常に難しいことですが、全体的なポイントはそういう出来事を通して、私達はすすんで建設的な会話、コミュニケーションを図っていきたい、と考えているんです。他のバンドが、例えば、一例として、右翼的な思想を持つファンが、彼らの政治的なメッセージに対して疑問を投げかけている出来事を私はかつて見たことがあるんです。そういったファンに対して、常にバンド側は、

 

”それなら、ファンをやめればいい、私達の音楽を聞かなければ良いんだ”と言っただけでした。私は、このバンド側の対応について、完全に同意するわけにはいきませんでした。私は、中産階級の白人として、自分と異なる階級の人達、例えば、労働者階級の同性との会話に際しても、彼らが自分たちとは異なる存在とみなしている場合でも、しっかりとした会話が組み立てられるという奇妙な特性があるんです。ですから、私は、これからもファンと建設的な会話をしていきたいと考えていて、彼らに対して、一方的で好戦的な考えを押し付けたりするようなことだけはしたくないな、というふうに考えているんです」

 

 

ヤードアクトのフロントマンであるジェームス・スミスがどのような考えでバンド活動を行ってきたのかについては以上のコメントが明確に物語っている。それでは、バンドの音楽性や歌詞についてはどうだろう?? 

 

ジェイムス・スミスは、1970−80年代のパンク・ロックサウンドからの強い影響を公言しているが、その他にも1980年代のオールドスクール・ヒップホップ、1970年のイタロ・ディスコ、さらに、2000年代のインディー・ロック、これらすべてを踏襲した独特なサウンドを生み出し続けている。

 

彼が幼年期から音楽ファンとして聴いてきた様々なサウンドが一度は記憶として定着し、その後、スポークンワードを交えた刺激的なポスト・パンクとしてアウトプットされる。もちろん、デビュー・アルバム「The Overload」において、彼らのミクスチャーサウンドの魅力は表題トラック「The Overload」を始め、「Payday」「Rich」といった秀逸な楽曲に表れ出ている。

 

 

「The Overload」

 

 

既に、デビューアルバム「The Overload」がリリースされる以前に、EP「Black Days」そして、四作のシングルがリリースされた後、ヤードアクトの清新な雰囲気に満ちたサウンドは、多くのメディアやファンの興味をひきつけることに成功したことは確かだ。 彼らのような痛烈なポストバンドの台頭を、常に、多くのコアな音楽ファンは待ち望んでいたのかもしれない。その過程で、ヤードアクトは”BBC Radio 6”でのレギュラーポジションを獲得し、さらに、四作目となるシングル「Rich」は、音楽雑誌NMEを始め、多くの音楽メディアに好意的に取り上げられるまでに至った。

 

 

1月21日にリリースされたデビュー作「The Overload」について、フロントマンのジェイムス・スミスは下記のように話している。

 

「私達ヤードアクトは、まだ駆け出しの新進バンドであるため、最初期のシングルリリースにおいて、何らかの印象をシーンやファンに与えられたのはとても嬉しいことでした。しかし、私自身、歌詞を書くことに関してはまだ全然納得していません。

私は、このアルバムの制作段階で、多くのキャラクターの研究、歌詞についてもより抽象的な概念を交え、早いテンポの楽曲を書くこともアルバム制作の構想として取り入れていました。しかし、それらの事とは別に、自分の書く言葉についてはまだ、果たして、これを「詩」と呼んでよいものなのかどうか自信が持てずにいるんです・・・

でも、元来、話し言葉ースポークンワードというのは、詩的な意味を持つといえます。おそらく、多分、本当の詩人は、話し言葉について悩ましく考えるかもしれませんが・・・」


 

デビュー作「The Overload」は、イギリス国内にとどまらず、日本でも音楽ファンの間で話題騒然となっている。

 

 


このバンドの楽曲の主要なソングライターでもあるジェイムス・スミスは、現在、幸いなことに、ライターズブロックに悩まされたことは一度もないという。それは彼が常に全力で走り続け、ホットなスポークンワードを紡ぎ出し続けるからこそなのだろう。

 

ヤードアクトは既に60曲以上ものデモトラックを温存しているという。おそらくデビュー作にも収録されていない素晴らしい楽曲が既に生み出されているかもしれない。まだまだ、それらの楽曲の多くはリリースされていない。

 

鮮烈なデビュー作を掲げて2022年のUKのミュージックシーンに華々しく台頭したヤードアクト。これから、どういった形でリリースがなされるのだろうか、今後のバンドの活動からしばらく目を離す事は出来ない。



Padro The Lion


ペドロ・ザ・ライオンは、1995年に米国、ワシントン州シアトルにて、デヴィッド・バザンを中心に結成されました。インディーロック/エモシーンの中心的な存在として息の長い活動を行っています。

 

2002年にはEpitaphから快作「Control」をリリース、特にこのアルバムに収録されている「Rapture」は、USインディーロック/エモの隠れた名曲にあげられます。その後も、バラード楽曲を主体とするエモ界の伝説的な存在"Jets To Brazil"との共通性も少なからず見いだされるフロントマン、デイヴィット・バザンの良質なメロディーセンスを活かした「Arizona」をリリース。

 

結成当初から、Pedro The Lionは、デヴィット・バザンのソロ・プロジェクトの延長線上にあるスリーピースバンドとしての活動を行っていましたが、2006年、ハザンが外活動を始めたため、バンドは一度解散する。

 

その後、2017年後半に、デヴィッド・バザンは、バンドを再構築し、再び活動を開始する。

 

ペドロ・ザ・ライオンは、これまでのキャリアにおいて、六作のフルレングスアルバムのリリースを行っています。

 

バンドは政治的および宗教的なテーマを掲げ、一人称の物語形式で歌詞が紡がれるのが特徴。エモ、パンク、スロウコアをかけ合わせた独特な雰囲気を持つバンド、いかにもアメリカらしい魅力を持つサウンドが魅力です。

 

 

 

「Havasu」 Polyvinyl 

 



 

 

Tracklisting

 

1.Don't Wanna Move

2.Too Much

3.First Drum Set

4.Teenage Sequencer

5.Own Valentine

6.Making the Most of It

7.Old Wisdom

8.Stranger

9.Good Feeling

10.Lost Myself

 

 

 

さて、今週のおすすめとして紹介させていただくのは、1月20日にサプライズリリースされたPedro The Lionの「Havasu」となります。現在、デジタルヴァージョンのみが配信されている作品です。

 

また、NPR Musicでは、このリリースに際して特集を組み、マッカーサーフェローシップ賞を受賞した詩人、作家、文化評論家のハニフアブドゥラキブとデヴィット・バザンの対談企画が組まれています。


  

・Pedro the Lion's David Bazan in conversation with Hanif Abdurraqib「NPR Music Listening Party: Pedro the Lion, 'Havasu'」
 

https://www.youtube.com/watch?v=G5sOTIEyjUo 

 


Pedro The Lionの中心人物、デヴィット・バザンは、今回のサプライズリリースにおいて、今作「Havasu」が2019年にリリースされた「Phoenix」の続編であると明らかにしまいます。この一連のコンセプトアルバムの構想は、5つの連作となる予定で、今回のリリースは二番目の作品と当たります。

 

次の作品がどのような意図で生み出されるのかについてはまだ詳細が明らかにされていませんけれども、少なくとも、今回の構想については、デヴィット・バザン自身の若い少年時代の淡い回想、音楽を介しての長い長い記憶の旅を企図する目的で制作されました。

 

「Havasu」は、アリゾナ州に実在するコミュニティで、バザンはこの土地で中学生時代を一年過ごしています。

 

本作は、彼の淡い少年時代の記憶に基づかれ制作された作品で、アルバムのコンセプトについて、デヴィット・バザンは以下のように説明しています。



「今回のアルバムの主要なテーマとなったハバス湖は、曲がりくねった丘の中腹にある道路のコミュニティで、1960年代に元のロンドン橋の煉瓦ごと再建されたのと同時に生み出された土地なんだ。

 

このなんともソウルフルで、荒涼としている風景の中にある合理的であり、また奇をてらったような場所でもある。当時、僕は中学生で、一年間だけアリゾナシティに引っ越してきたんだ」

 


デヴィット・バザンは今回の新作を生み出すにあたり、アリゾナのハヴァスを四回再訪し、自分の記憶が確かなるものなのか下調べをしてから、ソングライティングにあたった。


彼は、アリゾナのハヴァスを訪れ、少年時代の様々な回想を蘇らせた。 訪れたのは、自分が少年期に過ごした思い入れの深い場所、中学校の校舎、魔法のようなスケートリンク場、その他懐かしい場所をハザンは訪れたことにより、長いあいだ、抑圧されていた感情を呼び覚ますことに成功した。

 

 

「これらの思い入れのある場所を訪れることはものすごい効果があった。私が三十年間覚えていなかった場所にあらためて接してみたことで、隠されていた記憶が洪水のようにあふれてきたんだ」

 

 

「Havasu」は、前作「Phoenix」で共同制作にあたったプロデューサー兼エンジニアAndy・D・Parkを招き、全ての楽曲で、PTLのギタリスト、Sean T.Laneの助けを借りて制作がなされています。デヴィット・バザンは、殆どのソングライティングを手掛け、アレンジ、演奏を自ら行っています。

 

長年にわたり、コラボレーションを務めているAndy Fittsのシンセサイザーの演奏の魅力はもちろんのこと、前作「Phonix」の最終曲として収録されている「Leaving The Valley」のレコーディングに参加したSean T.Laneの意図的にタイムラグを設けたかのような独特なギターリフが展開される「Don't Wanna Move」は、アルバム全体を聴き終えた後、表向きの素朴な印象とは異なり、驚くほどあざやかな印象をもたらすはずです。

 

他にも、このコンセプトアルバムにはインディーロックの最高峰と称するべき楽曲が数多く収録されていますので聞き逃せません。

 

特に、今作のハイライト「Teenage Sequencer」「Own Valentine」といった素朴な雰囲気と深い味わいのある楽曲を聴くにつけ、デヴィット・ハザンは活動二十年、アーティストとしてついに山の頂へと登り詰めたと言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

「Havasu」のリリース情報につきましては、以下リンク、polyvinyl recordsの公式HPをご覧下さい。


 https://www.polyvinylrecords.com/

ABCやNew York Timesが速報として報じているように、テキサス州ダラス出身の偉大なアメリカのロックミュージシャン、Meat Loaf(マーヴィン・リー・アーディー)が74歳で死去しました。 

 

 


 


マーヴィン・リー・アーディーの死去に際して、盟友のアリス・クーパー、レニー・クラヴィッツ、チープ・トリックといった名だたるアーティストが、偉大なロックシンガー、ミートローフの死を悼む声明を出しています。

 

今週金曜日、マーヴィン・リー・アーディー氏の家族はfacebook上で声明を出し、マーヴィン・リー・アーディーが亡くなる際、彼は家族とともに最後の24時間を過ごし、二人の娘に最後の別れを告げたと述べています。ミートローフは、彼の50年という長いキャリアにおいて、1億枚のアルバムを売り上げ、ファイト・クラブ、ロッキーホラーピクチャーショー、ウィインズワールドといった映画にも出演し、ドナルド・トランプ前大統領の番組にもかつて出演しています。

 

また、マーヴィン・リー・アーディー氏の死に関しては、ドナルド・トランプ前大統領は以下のような声明を出しています。

 

 

 ーJanuary 21 2022ー

Statement by Donald J. Trump、45th President of the United States of America

 

 Meat Loaf was a great guyーgot to know him very well doing Celebrity Apprentice,He Was smart,talented,open,and warm.


 

https://twitter.com/realLizUSA/status/1484532637905694723?s=20 



また、Meat Loafのfacebookの公式アカウントでは、彼の死去に関して以下のようなマーヴィン・リー・アーディー氏の家族による声明が出されています。



「彼という存在が、あなた方の多くにどれほど大きな意味を持っていたのかを知っています。そして、このような感動的なアーティストと美しい男を失ったこと、さらに、この悲しみの時代を乗り越えていくにあたって、私達はあなた方のすべての愛と励ましに深く感謝しております、今後も、彼の心から伝わるあなた方の魂へのロックを決して止めないでいただきたく思います!」

 

死因については、はっきり断定出来ていませんが、 ミートローフがここ数週間、Covid-19に感染していたとTMZは報じており、彼は深刻な病態に陥った後に死去したと報じています。サイトによると、彼は今週、ヒット曲に因んで名付けられた番組出演の計画をキャンセルしていたといいます。

 

ミートローフの娘、パール・アディは1月7日に、Instagramを投稿し、彼女の友人や家族の何人かが最近Covid-19の検査を行った際、陽性反応が出たと述べています。「私達は深刻な病気ではありませんが、現在、あまりにと陽性反応が出ている友人や家族が多すぎます」とパール・アディは書いています。


ミートローフがワクチン接種をどの程度受けていたかについては不明です。上記TMZは、オーストラリアで計画されているワクチンの義務化に対して、マーヴィン・リー・アーディー氏が反対声明を出していたと報じています。 


これまでMeat Loafは、名作「Bat Out Of Hell Ⅱ」といった作品を通じて、世界中の多くのロックファンにたくさんの素晴らしい喜びと興奮、勇気を与えてくれました。彼の打ち立てた数々の功績、そして何より、彼の素晴らしいロック作品の数々を私達は忘れることは決してないでしょう。


 

Broken Social Scene



カナダ・トロントで結成された”スーパーグループ”と称されるインディーロックバンド。バンドの略称は”BSS”である。

 

Broken Social Sceneの殆どのメンバーは、以前から異なるバンドやソロ・プロジェクトで活動しており、一時は20人を超える大所帯のロックバンドだった。各メンバーの持つ個性がこのバンドのサウンドに反映され、多彩な音楽性を感じる事ができるはずだ。多くの楽器を使用するため、一つ一つの楽曲は濃密である。

 

BSSの中心メンバー、ケビン・ドリュー(Kevin Drew)とブレンダン・カニング(Brendan Canning)が数名のアーティストと共にデビュー・アルバム「Feel Good Lost」を発表したのがバンド活動の始まりである。

 

このアルバムは、アンビエントとも称され、楽器のみの演奏で構成されたポストロック/インストゥルメンタルロックの性質の強い作風であった。

 

その後、アンドリュー・ホワイトマン(Andrew Whiteman)、ファイスト(Leslie Faist)がメンバーとして加入し、二作目のアルバム「You Fogot It In People」を発表。このアルバムによって、ブロークン・ソーシャル・シーンは音楽メディアや評論家により高い評価を受けるようになる。


その後も、頻繁にメンバーチェンジを繰り返しながら、


・「Bee Hives」2004、

・「Broken Social Scene」2005


上記二作のアルバムを発表する。


2005年にリリースしたセルフタイトルアルバムは、CMJチャートの一位を獲得。また、同年3月には、東京、及び大阪で開催された音楽イベント「Canada WET」 の出演のため初来日している。

 

2007年には、新プロジェクト「Broken Social Scene Presents...」を開始している。


また、2010年には、Tortoiseの中心人物、ジョン・マッケンタイア(John McEntire)を共同プロデューサーとして迎え、「Forgiveness Rock Rocord」をリリースし、2006年以来となる「Fuji Rock Festival」への二度目の出演を果たす。

 

2017年には五作目となるアルバム「Hug of Thunder」をリリース。


2020年には、White Stripesのジャック・ホワイトが主宰するインディーレーベル「The Thirdman Records」で録音されたキャリア初となるライブアルバム「Live At The Third Man Recrods」をリリースしている。

 

 

 

 

 「Old Dead Young B-Sides&Rarities」 

                     Arts & Crafts Productions

 


 

 

 


Scoring

 

 



今年1/14に発売された「Old Dead Young B-Sides&Rarities」はSocial Broken Sceneの20年に渡る長いバンドとしてのキャリアの間に録音されたBサイド収録楽曲、レアリティ、アウトテイクといった作品をひとまとめにしたアルバム。この度、ブロークン・ソーシャル・シーンは、アルバムリリースの間のギャップを埋める幻のトラックリストをファンに提供してくれました。



このレア・トラック集には、2009年のアルバム「Forgiveness Rock Record」のセッション中に録音されていた未発表のドリームポップソング「This Housels On Fire」、プロデューサー、Dave Newfieldと最初のレコーディング制作となった「Death Clock」2001といった幻の楽曲も収録されています。


BSSのフロントマン、ブレンダン・カニングは、このアルバムリリースに際してthe Calgary Heraldのインタビューに対して以下のように回答しています。

 


「これらのレア・トラック集をリリースできて幸せに思う。改めて分かったのは、もしかすると、これらの曲のいくつかは、本来、A-sideに収録するべきであった素晴らしい楽曲も含まれている。

 

言ってみれば、クローゼットの中の収納を今回きれいさっぱり片付けられたというような気分でいる」



カニングは、2001年にケヴィン・ドリューと一緒にBSSを結成し、その間の数年間、数多くのミュージシャンをプロジェクトに迎えいれてバンドサウンドを洗練させようと試行錯誤を重ねてきました。中には、Metricのエミリー・ヘインズ、Solo Starのファイスト、Starのエヴァン・クランリーなどが含まれていました。


BSSは2001年にデビュー・アルバム「Feel Good Lost」をリリースし、秀逸なアンビエントアルバムと称されました。その後、2002年の「You Forgot In People」では、21世紀のインディーロックの新基準を打ち立てた。このアルバムにおいて、BSSは、90年代のルーツを飛び越え、音響的な広がりを付加し、ロックミュージックの感情表現の新たな可能性を示してみせました。


今回のレアトラック集「Old Dead Young B-Sides&Rarities」には、従来のBSSの幅広いサウンドアプローチの真価が見られ、そこには、オルタナティヴ/インディーロックの全てのジャンルがここに詰め込まれていると言えるでしょう。


これらの楽曲を未発表曲としてストックしておくことは、上記、カニンガムの言葉にちなむと、既に使わなくなった愛着のある古着をクローゼットに溜め込んでおくようなものだったのかもしれません。今回、リリースされた作品「Old Dead Young B-Sides&Rarities」は、BSSのクロニクルともいえ、また、このインディーロックバンドの新たな魅力を見つける契機となりえるはずです。




 


 

 

 

今年1月31日に開催予定だったアメリカ最大の音楽祭、グラミー賞は、今年始め無期限の延期がアナウンスされたが、新しい日程と会場が公式に発表された。2022年のグラミー賞は、ラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナに会場を変更し、開催日程についても4月3日日曜日に繰り越された。

 

 

グラミー賞を主催するレコーディングアカデミーとアメリカの放送局CBSは、このアメリカ最大の音楽式典の延期について当初、以下のような共同声明を、公式ウェブサイト上で提出している。

 

 

「市や州の役人、健康と安全の専門家、アーティストコミュニティ、そして、多くのパートナーと慎重に検討し分析を行った結果、レコーディングアカデミーとCBSは、第64回グラミー賞を延期することを決定しました。

 

私達の音楽コミュニティの人々、ライブの聴衆、そして私達のショーを制作するためにたゆまぬ努力をし、何百もの人々の健康と安全は私達の最優先事項でもあります。オミクロンの変種を取り巻く不確実性を考えると、1月31日に開催することは単にあまりにも多くのリスクを含んでいます」



この声明に続いて、今回、賞を主催するレコーディングアカデミーとCBSはグラミー賞の日程及び会場の変更を正式に決定した。上述したように、授賞式はラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナで4月3日に開催される。

 

しかし、この日程変更に全く波及効果がないとは言いがたい。 これは、同日開催されるCMTミュージックアワードに日程が重なることになる。グラミー賞は、アメリカの音楽賞として最大の権威を持つ賞として古くから知られてきたが、近年、その影響力が低下しつつあり、国内での注目度も低下している。nprによると、昨年のセレモニーでは、視聴者数は、880万人に減少している。これは、前年の2020年の数値から、53%の減少率を示しているという。

 

また、2021年の式典では、ザ・ウィークエンドがノミネート後、完全なボイコットを宣言している。ザ・ウィークエンドの抗議の矛先は、グラミー賞の最初の投票組織である匿名委員会へと向けられていた。 

 

 

The Weeknd
The Weeknd

"The Weeknd" by enjoytheshownet is licensed under CC BY-NC-SA 2.0

 

 

 

ザ・ウィークエンドの行動は大きな波紋を呼んでおり、今後、アーティスト側もこの式典に対してボイコットを行うアーティストも少なからず出てくる可能性もある。(因みに、グラミー賞は、その昔、1970年代後半近辺には、ブラック・ミュージックに理解のないレコーディングアカデミーの評者が、ブラックミュージック部門受賞作を恣意的に選出していたと、後年、米ビルボードの記者を務めていた人物が告発している)上記した、視聴率の低下、あるいは、国民の関心の低下を示す数値は、グラミー賞の権威性、賞に対する信頼性自体が揺らいでいる証だろう。


ザ・ウィークエンドのセンセーショナルなボイコットの事実を受けて、グラミー側も選考過程の透明性や信頼性を高めるべく苦心を重ねており、賞のファイナリストの名簿の公平性をより高めるため、選考過程における是正を図っている。その詳細としては、今回、新たに投票の匿名委員会の廃止をし、次いで、ジャンルカテゴリーの受賞者の総数を拡大する追加決定を行った。

 

このアメリカ最大の夜の音楽祭、グラミー賞の司会進行役には、お馴染み有名コメディアン、デイリーショーにも出演するトレバーノアが務める。新たに日程と会場が組み直された第64回グラミー賞の式典の模様は、Paramaount+生中継されるほか、ストリーミング配信もされる予定だ。