先月28日に「I Dream Of Christmas」デラックスバージョンをリリースしたばかりのアメリカのジャズ・シンガー、ノラ・ジョーンズは1月28日、YouTubeの公式アカウントを通じ、エンパイア・ステートビルの屋上展望台でビートルズの名曲カバーを収録したミュージックビデオを公開しました。

 

このライブパフォーマンスは先月に録画された映像で、ビートルズの伝説的なライブ盤「ルーフトップショー」のリリースに先駆けて公開されています。

 

今回、ノラ・ジョーンズは、ドラマーのブライアン・ブレイド、ベーシストのガス・セイファート、そして、ジョーンズのバンドメイトでもあるサーシャ・シンプソンが「I've Got The Feeling 」「Let It Be」の二曲の演奏に参加しています。ノラ・ジョーンズは、以前、同じ場所で同じミュージシャンと共演したホリデーアルバム「I Dream Of Christmas」の一連の楽曲を公開していました。

 

「I’ve Got The Feeling」「Let It Be」は、ビートルズの最後のスタジオアルバムである1970年代の「Let It Be」に収録されている名曲としてご存じの方は少なくないはずです。

 

このアルバムのライブセッションは、マイケル・リンジーホッグ監督の1970年代の同名のドキュメンタリー動画のために記録され、映画製作者ピーター・ジャクソンの「Get Back」で再録されました。


今回、ノラ・ジョーンズは、「ザ・ビートルズの伝説的なセッション「Rooftop Show」の記念リリースの栄光に浴する事ができてとても嬉しいです、私達は二曲の演奏をエンパイア・ステートビルにて披露しています。楽しんで!」と、twitter公式アカウントを通じてファンにむけてコメントを出しています。

 

ノラ・ジョーンズのエレクトリック・ピアノの華麗なる演奏にとどまらず、偉大なアメリカのシンガーのルーツゴスペルにも比する入魂のビートルズカバーがお楽しみいだだけます。是非ご覧下さい!

 

 ・Nora Jones 「Let It Be」(Live At The Empire State Building)


 

・Nora Jones 「I've Got The Feeling 」(Live At The Empire State Building)

Pinegrove

 

パイングローヴは、2010年、ニュージャージー州、モントクレアにて、エヴァン・ステファンズホールとザック・レヴァインを中心に結成されたインディーロックバンド。ステファンズホールとレヴァインは幼馴染で、パングローヴを結成する以前に様々なロックバンドでの活動を行っている。

 

パイングローヴのバンジョーやペダルスティールギターを活用する音楽スタイルは、一般的にはエモとオルタナティヴロックの中間に位置づけられている。2012年に、デビューアルバム「Meridian」をリリースし、DIYスタイルのホームライブを中心に活動を行ってきたバンドである。


パイングローヴは、インディーズレーベル”Runfor Cover"と契約した後、「Everything So Far」という初期作品のアンソロジーを発表。その後、二作目スタジオアルバム「Cardinal」の発表を期に、熱心なファンを獲得し、 様々な音楽メディアのトップ10リストに選出される。次の作品「Skylight」を録音した後、パイングローヴはメンバーの個人的問題により一年間活動を休止を余儀なくされる。スタジオアルバム「Skylight」は、その後、2018年に自主制作としてリリースされ、その後続いて行われたツアーは多くがソールドアウトとなり、大盛況を博した。

 

2019年、パイングローヴは次なる挑戦に踏み切るため、UKの名門インディーズレーベル"Rough Trade"との契約に署名し、十一曲収録の快作アルバム「Marigold」をリリースした。


パイングローヴは、文学的な叙情性とファンの根強い人気を誇ることで知られている。最初期はインディー・エモシーンで人気の高かったバンドであるが、徐々にファン層の裾野を広げつつある。バンド名は、エヴァン・ステファンズホールが以前在学していたケニオン大学の自然保護区にある有名な松並木にちなんでいる。それらの実際、ステファンズホールの脳裏にやきついてやまない記憶の情景は、特に、正方形の形状を使用した幾何学模様のアルバムアートワークや商品のアンパサンドのデザインに積極的に取り入れられている。また、パイングローヴは、歌詞の中で、政治的な問題を積極的に提起し、実際の活動の段階においても、アメリカの公民権団体への慈善寄付などを率先して行い、進歩的な目的を持って活動するインディー・ロックバンドである。

 

 

 

 

「11:11」 Rough Trade

 

 

11:11 [国内流通仕様盤CD / 解説・歌詞対訳付] (RT0270CDJP)  

 

Tracklisting

 

1.Habitat

2.Alaska

3.Iodine

4.Orange

5.Flora

6.Respirate

7.Let

8.So What

9.Swimming

10.Cyclone

11.11th Hour



今週のおすすめとして紹介させていただくのは、昨日1月28日にラフ・トレードからリリースされた「11:11」となります。

 

この作品は、デス・キャブ・フォー・キューティーのクリス・ウォーラをレコーディング・エンジニア、プロデューサーとして迎え入れ、これまでホームレコーディングを中心にアルバムを制作してきたパイングローヴが、初めて本格的にスタジオレコーディングを行った音源となります。


「11:11」は、ニューヨーク州北部の2つの施設、マールボロビル、また、バンドの元ドラマーに因んで名付けられた18エーカーの複合施設ウッドストックのレボンヘルムスタジオで大方の録音がなされ、COVID-19のパンデミックの起こった最初期に、大部分の録音が行われた作品です。レコーディングは上記の2つのスタジオを中心にバンドメンバー行われていますが、その他、ベーシストのミーガン・ペナンテがLAで別録りした音源素材を提供している作品でもあります。

 

先行してリリースされているパイングローヴの多くの作品は、サム・スキナーがミックスを手掛けていましたが、バンドは過去の洗練された作風とは裏腹に、より完成度の高いアプローチを模索しており、今回「11:11」の音のテクスチャーの中に「メシエ」の技法を取り入れるため、新たにデス・キャブ・フォー・キューティーのクリス・ウォーラを起用、その抜擢が功を奏し、以前はややぼんやりしていた曲の雰囲気が、今回の作品ではマスタリング段階においてダイナミクスの振れ幅を大きくしたことにより、これまでになかった華やいだ効果をこれらの楽曲に与えています。

 

先行シングルとしてリリースされた「Alaska」「Orange」「Respirate」といったアルバム全体の中でも鮮烈な印象を聞き手に与えるであろう楽曲において、パイングローヴはまた、上記のような未知への挑戦へ踏み出す過程において、ロックバンドとしての類まれなる力量を演奏と作曲を介して見事に示してみせたといえるでしょう。これらのパイングローヴらしさが遺憾なく発揮されたアメリカのルーツ・ミュージック「アメリカーナ」の影響を強く感じさせるおだやかでききやすさのある作風は、長きにわたり楽しんでいただけるはずです。

 

その他にも、シングル作としては収録されなかった「Lodine」「So What」は、これまでのエモコアの歴代の楽曲の中でも屈指の伝説的な名曲に数え上げられ、コンテンポラリーフォークとエモを巧みに融合し、エヴァン・ステファンズホールのアメリカーナから引き継いだ歌唱法があたたかみのあるコーラスと合致し、デス・キャブ・フォー・キューティーのクリス・ウォーラのオンオフのダイナミクスを最大限に活用したマスタリングの手腕が見事に生かされた楽曲です。


また、今回のアルバムで新たなサウンドレコーディングの手法を取り入れたパイングローヴは、作詞の側面でも新たなチャレンジを試みています。

 

世界の気候変動に対して無関心を装う政治家についてうたう「Orange」。人種的な計略とアメリカ国家の衰退についてうたう「Habitat」。また、個人的な失敗を朗らかにうたう「Let」。パンデミック時代の個人的な心情を恬淡とうたう「Lodine」をはじめ、このロックバンドの支柱、エヴァン・ステファンズホールの紡ぎ出す文学的世界は、社会的関心から個人的問題まで幅広いテーマが掲げられており、この題材の間口の広さが、パイングローヴの作風に音楽性に奥行きと多様性をもたらしています。

 

そして、このスタジオアルバムに流れている時間が、実際の再生時間よりもはるかに豊潤かつ上質、何より美しく感じられるのは、他でもない、今回、パイングローヴが苦難多き現代というパンデミック時代において、このフルレングスの傑作「11:11」に深い愛情と人間的な温かみを添えているからなのです。

 


 

 


・Apple Music Link 

 

 

 


 

 

ザ・ビートルズの1969年1月の伝説のラストセッションの模様を収録した「The Rooftop Performance」が本日1月28日から、Apple MusicやSpotifyを中心にデジタル配信が開始されました。

 

この度リリースされた「Get Back The Rooftop Performance 」は、永遠の名曲「Don't Let Me Down」や「Get Back」の複数のライブテイクが収録されています。今回の音源はピーター・ジャクソンのドキュメンタリー「Get Back」と拡張版「Let It Be」のスペシャルエディションボックスのリリースを足がかりにした作品で、ジャイルズ・マーティンとサム・オケルがエンジニアとしてリミックスを手掛け、ビートルズの幻のライブギグの模様が約40分間収録されています。

 

今回のライブアルバムにミックス作業を担当したエンジニア、ジャイルズ・マーティンは以下のようなコメントを出しています。

 

「私達は、本来、これらのテイクをボックス・セットに収録したかったのです。しかし、これらのテイクは四十分という長さのため、ディスクの容量を占有するものでしたから、前回のボックスセットに惜しくも収録出来なかったのです」

 

今回、ルーフトップショーは、実際にビートルズの四人がセッションを行った1969年1月30日の記念日に間に合うように配信されています。当時、ザ・ビートルズは、警察によって閉鎖されるまで、見物人の群衆が建物の下にまで群がったので、ロンドンのアップル本社の屋上に上がってセッションを行った。このライブには、アップル社の下の通りの通行人の老婦人の叫び声が収録されていたり、ビートルズファンの間では伝説的なラストセッションと見なされています。

 

今回のビートルズの幻のラストセッションが、あらためてデジタル音源としてリリースされるに至ったのか、そのいきさつについて、ジャイルズ・マーティンは以下のように話しています。

 

「当初、私達は、The Rooftop Performanceは、ただ聴くよりも、映像として扱い、見たり聴いたりするほうが良いだろうと考えていました」

 

しかし、前回ボックス・セットとしてリリース「Get Back」に対する熱狂的なファンの称賛が彼の考えを転換させたようです。

 

「これはファンからの圧倒的な要求のように思えました。なぜ、”音源”としてこの伝説的なラストセッションがリリースされていないのか。そのファンの要求に答えるため、今回のリリースが行われたのです」

 

マスタリングエンジニアを務めたジャイルズ・マーティンは続けて語っている。「私は、このライブテイク「Get Back-The Rooftop Performance」は、間違いなく、ビートルズファンにとって歴史的な音源の一つになると確信しています。ファンが待ち望んでいるものを余すことなく提供したいと考えながら、ビートルズの生み出す音の全てを、この作品の中に込めたつもりでいます。今回、マスタリング作業において、最後のテイクの音を少しだけカットしてはいるものの、実際、これは、屋外の風を切るノイズを削ぎ落としただけに過ぎず、サウンドとして聞きやすくするための手段でしかありませんでした。1969年1月30日にアップル社の屋上でのラストセッションでビートルズが生み出した精彩な音のすべてを、この作品で聴くことが出来るはずです」

 

1月30日の日曜日には「Get Back-The Rooftop Performance」のドキュメンタリー映像の上映イベントがアメリカとUKのIMAXシアターで開催される。このイベントではピーター・ジャクソン監督との質疑応答が行われる予定です。 


 

 

春ねむりが「春と修羅」以来四年ぶりとなる2ndフルアルバム「春火燎原」をリリースを発表。一昨日の1月25日に全ての楽曲レコーディングを終え、アルバムが無事完成したとtwitter上でコメントを出しています。

 

新作「春火燎原」は、デジタル盤、12インチアナログ盤の二形式で4月22日にリリース予定となります。21曲収録のフルレングスアルバム、作詞、作曲、編曲すべてを、春ねむりが手掛ける。また、アルバムの発表に併せて、新たなアーティストヴィジュアルも公開。衣装は、ファッションデザイナーの田中優が担当。撮影は、フォトグラファーのJun Ishibashiが手掛けています。

 

 

 

 

新作アルバムの詳細については後日公開されるとのことです。春ねむりは、今年3月から北米ツアーを予定しています。今後の活躍が期待されるアーティストの新作に注目したいところです。

 

 

 

・HARU NEMURI「North America Tour 2022」

 


 

・2022年3月4日 アメリカ ニューヨーク州 ブルックリン Knitting Factory
 

・2022年3月7日 アメリカ イリノイ州 シカゴ Sleeping Village
 

・2022年3月9日 アメリカ カリフォルニア州 サンフランシスコ DNA Lounge
 

・2022年3月11日 アメリカ カリフォルニア州 ロサンゼルス The Echo
 

 ・2022年3月13日 アメリカ テキサス州 ダラス Three Links
 

 ・2022年3月14~16日 アメリカ テキサス州 オースティン

 



 

USインディーシーンの象徴的なロックバンド、ダイナソーJr.が制作に携わったドキュメンタリー映画「ダイナソーJr./フリークスシーン」が、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにて3月25日から上映されます。この公開に先行して、映画宣伝用の日本版キービジュアル、場面写真が同時公開。

 

 

作品内容は、ギター兼ボーカルのJ・マスキス、ベースのルー・バーロウ、ドラムのマーフというオリジナルメンバー3人の関係にフォーカスし、貴重な過去の素材や彼らに親密なミュージシャンたちの証言を通して、ダイナソーJr.の約30年にわたる軌跡を辿る。バンド自身が製作を手がけ、J・マスキスの義理の親族である音楽映像作家フィリップ・ロッケンハイムが制作監督を務めています。


日本版キービジュアルは、ダイナソー・Jrのギタリスト、J・マスシスが絶賛するドイツ人デザイナー”Mario Lombardo”が描いた本国版キービジュアルを元に作製されています。また、今回追加で公開された場面写真には、J・マスシスが富士山を眺めている写真も含まれているようです。

 

 

 


 


 

 




シネマート新宿・シネマート心斎橋ほかにて 2022年3月25日(金)公開
 
 
 
2021年メルボルン国際映画祭]正式出品
 
 
2021 年モントリオール・ニューシネマ国際映画祭] 

 
監督:フィリップ・ロッケンハイム 製作:ステファン・ホール、アントワネット・コスター、フィリップ・ロッケンハイム

 
共同製作:ダイナソーJr.、J・マスキス

 
出演:
 
 
ダイナソーJr.(J・マスキス、ルー・バーロウ、マーフ)
 
 
キム・ゴードン(ソニック・ユース)
 
 
ヘンリー・ロ リンズ(ブラック・フラッグ)
 
 
ボブ・モールド(ハスカー・ドゥ)
 
 
サーストン・ムーア(ソニック・ユース、
 
 
フラ ンク・ブラック(ピクシーズ)
 
 
ケヴィン・シールズ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)
 
 
ソニック・ブーム(スペースメン 3)
 
 
マット・ディロン

 
 
2020 年 上映時間82分 ドイツ=アメリカ合作
 
 
原題:   FREAKSCENE the story of Dinosaur Jr.
 

© 2020 by Rapid Eye Movies/ Virus Films/ Dinosaur Jr. Inc.

 
 
 
キングレコード提供
ビーズインターナショナル配給

 
 
・「ダイナソーJr./フリークスシーン」公式サイト


 

宇宙ネコ子(Ucyu Nekoko)

 

 

宇宙ネコ子は、2012年に結成されたオルタナティヴロック・ユニット。羊文学、揺らぎとともに日本のシューゲイザーシーンの注目株。

 

初期メンバーは、ネムコ(Vo)とタナベコウヘイ(Ba)の二名。2014年に、ゲストボーカルに”ラブリーサマーちゃん”を迎え入れ、「宇宙ネコ子とラブリーサマーちゃん」を自主制作する。


2016年、再びラブリーサマーちゃん、入江陽、itoken(相対性理論)をゲストとして迎え、ファーストアルバム「日々のあわ」を制作し、P-Vine Redcordsからデビューを果たしている。 


2017年には初期メンバーであったタナベコウヘイが脱退している。アルバムのアートワークに関しては、すべて大島智子が手掛けている。アニメーション色の強いアートワークは宇宙ネコ子の魅力的な世界観の一貫とも言える。

 

 

 

「日の当たる場所にきてよ」(Hi No Ataru Basyo Ni Kiteyo) Loom

 

 


 

 

 

scoring

 

 

 

 

tracklisting

 

1.日の当たる場所にきてよ

2.Skirt

3.部屋

4.スロウ

5.Rebirth

6.9

7.hikage

 




 

 

ディスクユニオンが設立したインディーズレーベル「Loom」からこれまで宇宙ネコ子はアルバム、及びEP作品をリリースしている。

 

宇宙ネコ子の音楽性の魅力を端的に述べるとするなら、なんといっても、正統派のシューゲイザーサウンドの継承、そして、相対性理論の”やくしまるえつこ”に近い独特な声質にあるといっても過言ではない。もちろん、音楽として導き出される作風も、アルバムジャケットに描かれるような切ない青春、または、なんとなくノストルジアを感じさせる雰囲気に込められている。

 

1月19日にリリースされた「日の当たる場所にきてよ」でも、これまでの宇宙ネコ子らしいシューゲイザー/ドリーム・ポップサウンドは全面的に展開され、ファンの期待を裏切らない素晴らしい作品となっている。


特に、表題曲の「日の当たる場所にきてよ」、二曲目の「部屋」という楽曲がアルバムの中では白眉の出来栄えと言え、ドリーム・ポップの色合いは、既存作品より一層強固になったというような印象を受ける。 もちろん、言うまでもなく、歌詞についても同じように、その印象は以前よりも強められ、このアーティスト、宇宙ネコ子にしか紡ぎ得ない揺るぎないノスタルジアが日本語詞として「歪んだディストーションサウンド」に、心地よくふんわり乗せられている。

 

これまで、シューゲイザー/ドリーム・ポップ一直線の音楽性であった印象もある宇宙ネコ子のサウンドは、最新作においてかなりの進化を遂げたと断言出来る。それは、五曲目の「Rebirth」という一曲に顕著に表れていて、宇宙ネコ子は、ドリームポップの向こう側にあるアンビエントに近い質感を持った楽曲を生み出している。こういった穏やかで癒やしの質感を持った楽曲は、このアーティストが既存作品には見られなかった新境地を切り開いた瞬間ともいえる。


その他にも、ラストトラック「hikage」では良質なJ-POPサウンドを生み出していることにも注目である。

 

 日本のシューゲイザー/ ドリーム・ポップシーンにおいて、商業主義とは一線を画しながらも、良質なメロディー、そして、淡いノスタルジアの込められた日本のアーティストらしい雰囲気のある楽曲を生み出し続けている宇宙ネコ子。今後、どういった良質な作品を日本のインディーロックシーンにもたらしてくれるのだろうか、一ファンとしてはワクワクしながら心待ちにしたい。

Aurora


 

オーロラは、ノルウェーのシンガーソングライター兼音楽プロデューサー。ジャンルはエレクトロ・ポップに分類されることが多く、フォーク音楽との関係性も指摘される場合も多い。オーロラの作品には、個人的な感情、政治、セクシャリティ、死生観といった多岐にわたるテーマが掲げられる。

 

オーロラ・アクスネスは、ノルウェー、ローガラン県スタヴァンゲル、ホルダラン県の自然豊かな街に育った。音楽を始めたのは六歳頃からで、友人がインターネットにアップロードした自作曲がきっかけとなり、弱冠17歳でプロデビューを果たした。

 

大手レコード会社”Decca”との専属契約を結び、2013年からシンガーソングライターとして活動を行い、これまでに四作のフルレングスアルバムをリリースしている。オーロラ・アクスネスの主な作風は親しみやすいエレクトロ色の強いポピュラー音楽で、自国ノルウェーやイギリスを始めとするヨーロッパ圏、また、アメリカを中心として堅調なセールスを記録し、幅広いリスナー層を獲得している。他にも、ディズニー映画「アナと雪の女王 2」のサウンドトラック、ケミカル・ブラザーズの作品「No Geography」へのゲスト参加が著名な仕事として知られている。

 

オーロラ・アクスネスの歌声は北欧シンガーらしく、伸びやかで奥行きがあり、自然を感じさせるような独特な響きが込められている。音楽制作を行う上で強い影響を受けたアーティストとしては、エンヤ、をはじめとする北欧のポップスシンガー、また、レオナード・コーエンといったフォークシンガー、あるいは、フォーク・ロックの立役者、ボブ・ディランなどを列挙している。

 

また、ノルウェーの文化に強い影響を受けているオーロラ・アクスネスは、その他にも、日本文化やネイティヴ・アメリカン文化にたいする深い造詣を持っている。アクスネスは、みずからのファンを「ウォーリアー」や「ウィアード」と呼び習わしているのも特徴的と言える。 また2021年には来日し、千葉幕張で行われる音楽フェスティヴァル「Supersonic」に出演している。





「The Gods We Can Touch」 Universal Music /Decca

 

 

   

Tacklisting:

 

1.The Fobidden Fruits Of Eden

2.Everything Matter

3.Giving In To The Love

4.Cure for Me

5.You Keep Me Crawling

6.Exist For Love

7.Heathens

8.The Innocent

9.Exhale Inhale

10.A Temporary High

11.A Dangerous Thing

12.Artemis

13.Blood In The Wine

14.This Cloud Be A Dream

15.A Little Place Called The Moon



2022年1月21日にリリースされたスタジオ・アルバム「The Gods We Can Touch」はオーロラの約2年ぶりとなる新譜。アルバムリリースに先行して「Giving In To The Love」が先行配信された。

 

これまで、デビュー作「All My Deamons Greetnig As Me A Friend」からオーロラ・アクスネスはギリシャ神話のストーリ性をポップスミュージックの中に込めてきたが、そのあたりが、コクトー・ツインズに代表される「エーテル」と呼ばれるゴシック的な雰囲気を擁する音楽ジャンルとの親和性が高いと評される所以かもしれない。そしてまた、そのゴシック性は、オーロラ・アクスネスというミュージシャンの個性、アメリカやイギリスのアーティストにはないキャラクター性、ヴォーカリストとしての強烈な魅力となっている。今作「The Gods We Can Touch」でも、その点は変わらず引き継がれており、オーロラ・アクスネスは、ギリシャ神話の物語に題材を取り、幻想性というテーマを介して、現実性に焦点を絞ろうと試みている。

 

今回のフルレングスの作品では、表向きな楽曲性には、少なからずファンタジー色が込められていて、それは特に、一曲目の「The Fobidden Fruits Of Eden 」のストーリー性のあるポピュラー音楽に顕著に感じられる特徴でもある。しかし、アクスネスの描き出すのは必ずしも幻想の世界にとどまるものとは言えないかもしれない。その内奥にある強い現実性を描き出す力をソングライターとしての実力をアクスネスはすでに充分に兼ね備えており、つまり、彼女は、恥、欲望、道徳といった現実的な概念を「幻想」というプリズムを透かして映し出しているのだ。

 

この作品は、文学性の強いポピュラーミュージックである。もちろん、そこには、上記に書いた通り、エレクトロ・ポップス、エーテルだけでなく、レオナード・コーエン、ボブ・ディランといったコンテンポラリーフォークからの強い影響を感じさせる楽曲も多数、今作には収録されている。

 

表向きには、商業音楽を強く意識している作品なのだが、その中に、強烈な個性、商業性にかき消されない特性を兼ね備えた作品であることも事実だ。そのあたりが、エンヤ、ビョーク、もしくはアバにも近い雰囲気を持った北欧のアーティストらしい個性派シンガーといえるかもしれない。

 

全15曲で構成される新作アルバム「The Gods We Can Touch」は、各曲がそれぞれ異なるギリシャ神話の神々をモチーフにして制作されている、このコンセプトアルバム全体に、通奏低音のように響いている「世界観」について、 オーロラ・アクスネスは、以下のように話している。上記のレビューよりも、はるかに、この作品を知るための手がかりとなりえるはずである。

 

特に、以下のコメントに垣間見えるのは、ギリシャ神話の宗教性という概念を通してみた先にある人間としての生き方と、オーロラ・アクスネスの一筋縄でいかないような人生哲学である。

 

 

「人間と神々の間にある精神的な扉は、とても複雑なものです。正しく歩み寄れば、信仰は最も美しいものとなりえる。育み、温かさを感じさせてくれるものとなる。

 

しかし、それでも、誤った歩み方をすると、戦争と死に繋がる。

 

私は、人間は生まれつき価値がなく、人間らしくいるために自分の中の力を抑え込むことにより、自分を価値あるものにしなければならない、という考えにかねてから違和感を覚えていました。

 

完全でなくて、完璧でもない、ごく普通の人間に対して。

 

世の中の不思議なものに執着して、誘惑されながらも、自分の中に神聖な力を取り戻すことができるのか。

 

肉体、果実、そして、ワインのように・・・

 

こういった要素が、私がギリシャの神々に興味を持った理由。昔の世界の神々。それらの存在はすべてが不完全で、ほとんど私たちの手の届くところにいる。まるで、私たちが触れうる神々のように・・・

 

 

 

 

 

 

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