ロサンゼルスを拠点に活動する四人組のティーンネイジャーパンクバンド、The Linda LindasがEpitaph Recirdsからデビューアルバム「Growing Up」のリリースをepitaph recorrdsを通じて発表しました。デジタル盤が4月8日に、次いで、フィジカル盤が6月3日に発売されます。


これに併せて、 ファッションブランド”Opening Ceremony”の共同設立者であり、ロサンゼルスのレストラン「Chifa」のオーナーであるHumberto Leonが監督を務めたミュージックビデオも公開されています。

 

The Linda Lindasは、EP「The Linda Lindas」や「Oh!」を始め、幾つかのフレッシュなパンクロックソングをリリースしていますが、epitaphからの期待の若手バンドの登場ということで、「Growing Up」はパンクロックファンとしては聴き逃がせないデビュー作品となりそうです。

 

このミュージックビデオの監督をつとめたウンベルト・レオンは、以下のようにこのバンドとの仕事について語っています。

 

 

「The LINDAS LINDASのビデオを手掛けたのは夢のような出来事でした。彼女たちの声が私は大好きで、真のファンだからです。彼女たちの猫に対する愛情にとてもインスパイアされ、それをさらに次のレベルに引き上げたいと考えていました。ですから、このビデオは彼女たちの人生の分岐点をすべて猫の視線を通して見るというような内容になっています。

 

このミュージックビデオは彼女たちと一緒に、Batshevaで衣装デザインをし、RoderteとWarbyParkerでスタイリングを行ったので、格別なものになりました。このミュージックビデオ全体が私と彼女たちのコレボレーションとなりました。iPhone Pro Maxで撮影を行ったことで、The Linda Lindaの一日を聴いているかのような親密な作品に仕上がったと思います。

 

 

 

 

 ・「Growing Up」のリリース情報については、以下、epitaph recordsのオフィシャルサイトを御覧ください。



https://www.epitaph.com/artists/the-linda-lindas

 

 

Spotifyの著名なアーティストの撤退についての騒動を巻き起こしているコメディアン、格闘技のコメンテーター、ポッドキャストのホスト役として有名なジョー・ローガン氏が以前配信していたポッドキャストの番組内で人種差別的な蔑称、N-Wordを用いたことについて公式に自身の見解を述べています。

 

 

ジョー・ローガン氏は、「私が人種差別主義者ではないと言わなければならないような状態にさらされるとき、あなた方は滅茶苦茶になってしまう」という主旨の発言を行っています。

 

ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェルのSpotify撤退騒動に続いて、再び、ローガン氏の過去の発言が世界的な騒動を巻き起こしているようです。ことのあらましは、以前、彼が自身の番組「The Joe Rogan Experience」内で、人種差別的な蔑称を用いたとして、今回、spotifyはジョー・ローガン氏の番組の中の70ものエピソードを削除する結果になりました。依然として最初の騒動の発端であるワクチン情報についてのエピソードについては、現在も視聴することが可能です。 

 

 

 

・ The Joe Rogan Experience spotify


https://open.spotify.com/show/4rOoJ6Egrf8K2IrywzwOMk

 

 

 

 

今回の騒動の発端は、ポッドキャストの番組内でジョー・ローガン氏が映画「猿の惑星」を引き合いに出し、N-Word(人種的蔑称)を繰り返し用いたと、アメリカ、コロラド州出身のシンガーソングライター、India.Ariaがクリップの編集を用いて指摘したことにあるようです。

 

 

Joe Rogan Twitter

 

 

この後、インディア・アリーは、ニール・ヤング、ジョニー・ミッチェルに続いてspotifyから自身の楽曲を削除した3人目のアーティストとなった。spotify側はジョー・ローガン氏の番組の70のエピソードを削除する対応に追われることになりました。


インディア・アリアの指摘についてローガン氏も黙認するわけではなく、Instagramの六分間の動画のビデオキャプションを介しての弁解に追われることになった。彼は、Instagramの動画内で以下のような発言を行っています。

 

「ポッドキャストの古いエピソードから私が実際には言わなかったこと、あるいは、別のニュアンスを曲解した発言にいたるまで、多くの誤解が生じています。これは今回の最悪の自体に対する私の正直な見解でもあります」

 

彼は自身の発言について、「 私は、白人がこれらの言葉を用いることは本来許されるべきではないと十分承知しています。そして、現在でもその考えに変わりはありません。しかしながら、私は既に何年もこういった言葉を用いていないことは確かです」

 

 

ジョー・ローガン氏はさらにこのように述べています。

 

 

「私はかつてポッドキャストの番組内で、レニー・ブルースやクエンティン・タランティーノがパルプ・フィクションで用いた類のナンセンスな言葉を引用したことがありました。そして、こういった言葉は、一般的にある種のグループだけが使用することを許されています。例えば、白人がこれらの言葉を用いれば、それは人種差別的で有害な言葉となる一方で、黒人はこれらの言葉を用いることを許されています。たとえば、パンチライン、愛情の言葉、ラップソングの歌詞として認められるのです」

 

 

私は、現在ではこれらの事情を、よく理解しています。私は人種差別主義者ではないため、以前番組内で用いたような言葉を人種差別の意味合いで用いたことはありません。そして、あなたがたが「私が人種差別主義者ではない」と言わなければならないような状況にあるとき、あなたがたは滅茶苦茶になるのです。今回、同時に私も同じように滅茶苦茶にならざるをえませんでした。N-Wordを繰り返し使用したことについては取り返しのつかないことをした。もし、取り返しが出来るものならそうしたい」

 

さらに、ジョー・ローガン氏は語っています。

 

「そもそも、私は、人種差別のような愚かなことで、娯楽性を妨げ、誰かを怒らせるようなことは本来したくないんです。しかし、おそらく、これは、その言葉が白人の口から発せられると、どれほど不快なニュアンスになりえるのかを理解していない人々にとっては、今後、良い教訓になりえると私は考えています。 今回のことについては深くお詫び申しあげます。ビデオを見ているだけで気分が悪くなります」

 

ジョー・ローガン氏は、先々週の日曜日にSNSを介して、彼自身の番組内でのワクチンの情報について沸き起こった多数の反発に対処した。ローガン氏はInstagramを介して視聴者に以下のように語っています。

 

 

「より良い視点を見つけることが出来るように、物議を醸すような新しい視点と、他の人々の一般的視点のバランスを取るように、私は今後最善を尽くしていくつもりです」

 

 

また、最初の騒動となったSpotifyから大物歌手二人が離れたことについて、ローガン氏は以下のように語っています。

 

 

「今回の出来事を、私は非常に残念に思っています。なぜなら、私は、ニール・ヤングの大ファンです。そう、私はいつだって、ニール・ヤングのファンだったのです」


 Steve Tibbetts


 

スティーヴ・チベッツは、アメリカのギタリスト兼作曲家。アートスクールに在学していた時代からギターの多重録音に夢中になり、その後、ドイツのECMと契約を交わし、これまで多数の作品をECMからリリースしている。

 

スティーヴ・チベッツは、レコーディングスタジオをサウンドを作成するためのツールとみなしている。チベッツの楽曲は、ニューエイジ、アンビエント、ワールド・ミュージック、実験音楽と、幅広いサウンドの特徴を持つ。

 

特に、チベッツの楽曲性として顕著なのは、ギターの多重録音である。複雑なループディレイ、ディケイのサウンド処理を施した録音の素材を幾重にもダビングさせ、独特なミニマル色の強いギター音楽へ昇華する。彼のギター演奏が特異なのは、ライブの演奏のためでなく、それをレコーディング、完成されたプロダクションのためにループエフェクトをプログラミングとして用いていることである。

 

スティーヴ・チベッツは、自身の楽曲について「ポストモダンのネオプリミティヴィズム」と称している。ギターのチョーキングを駆使し、周囲のサウンドスケープと電気的な歪みを交互に繰り返しながら、インドの民族楽器”サーランギー”のようなサウンドを生み出す。 また、スティーヴ・チベッツはギターの他に、ケンダンやカリンバといった民族楽器を演奏することでも知られている。

 


 

1999 Choying and Steve, Walker Art Center
 

 

 

 

Steve Tibbettsの主要作品

 

 

 

・「Northern Song」1981    

 

 

 


スティーヴ・チベッツの最初期の名盤として挙げられる。1981年のノルウェー、オスロでエンジニアにヤン・エリック・コングショーマンを迎えて録音が行われた作品。彼のアコースティックギタリストとしての才覚が花開いたECMと契約を結んで最初にリリースされた作品である。

 

このスタジオ・アルバムで、スティーヴ・チベッツこれまでのアコースティックギターの可能性を押し広げている。

 

弾くというより、撫でるような繊細なギターのフィンガーピッキングの演奏に加え、詩的でナチュラルなアコースティックギターの演奏を堪能できる作品。チベッツは、フォーク音楽の革新性をワールド・ミュージック寄りのアプローチを行うことにより、楽曲をアンビエントに近い領域まで推し進めている。

 

1981年という年代には、ギターアンビエントというジャンルが存在しなかったはずだが、その音楽性をここでスティーヴ・チベッツは世界で初めて取り入れていることに驚かずにはいられない。

 

スティーヴ・チベッツの生み出すギター音楽は、瞑想的であり、沈思的であり、独創性に飛んでいる。最後に収録されている「Nine Doors/ Breaking Space」は、ギター演奏のミュートのニュアンスを徹底的に突き詰めていった民族音楽の色合いが強く引き出された楽曲であるが、それと同時に、Fenneszのようなアンビエントギターを世界に先駆けて発明した伝説的な名曲でもある。




   

 

 

 

・「Safe Journey」 1983


 

 


上記の「Northern Song」が、もしかりに地ベッツのアコースティックギタリストとしての傑作だとするなら、「Safe Journey」はエレクトリックギタリストとしての名盤として挙げられる。

 

この作品においてチベッツは、エレクトリック・ギターのテープループを用いた多重録音、コンガ、カリンバ、スチールドラムといった民族音楽をリズム的に取り入れることにより、これまでに存在しなかった電子音楽寄りの民族音楽を生み出している。

 

このアルバムでのスティーブ・チベッツの速弾きのテクニックは、ハードロック色を感じさせる熱狂性が込められていることはよく指摘される。これは「The Fall of Us」から突き進めてきたエレクトリックギタリストとしての完成形、究極形が提示されている。

 

特に一曲目の「Test」では、ヴァン・ヘイレン、ヘンドリックスに引けを取らない凄まじいギターテクニックがインドの打楽器タブラとともに狂乱的に繰り広げられる様はほとんど圧巻というよりほかない。その他にも、「Version」「Any Minute」といった民族音楽の色合いが強い独特な楽曲が収録されている。彼の作品の中では特に民族音楽の性格が絶妙に引き出された作品である。




 

 



 

・「A Man About A Horse」2001

 

 

 


スティーヴ・チベッツの作品の中では、最高傑作のひとつに挙げられることが多い作品である。

 

アルバムジャケットの海に釣り上げられたバクバイプが燃やされた象徴的なアートワークも衝撃的であり、実際の音楽性についても独特や特異といった性質を越えた前衛音楽をスティーヴ・チベッツは生み出している。これまで、アフリカ、インドといった様々な民族音楽を取り入れてきたチベッツは、この作品において、自身の活動名の由来であるチベットの宗教音楽へと踏み入れている。

 

「A Man About A Horse」には、チベット地域の宗教音楽を特異なアンビエンスとして取り入れた楽曲が数多く収録されている。マントラをはじめとする、チベット高地発祥の宗教音楽を、アンビエントという側面から西洋的解釈を試み、そこに彼らしいギター音楽に昇華した作品である。

 

「Burning Temple」に代表されるように、東洋と西洋の概念を融合させたような楽曲がこのスタジオ・アルバムには多数収められており、アンビエント音楽とチベット密教の宗教音楽を融合させた静謐な楽曲群は、これまでにないジャンルがこの世に生み落とされた瞬間と言えるかもしれない。「A Man About A Horse」に収録されている楽曲は当時、ニューエイジという名で呼ばれていたようだが、そういった枠組みで収まりきる音楽ではなく、精神的な音楽といえる。

 

また、最終曲の「Koshala」での、静と動、緩急をまじえた楽曲、最終盤部でのタブラの狂気的なパーカッション、チベットボウル、ほとんど鬼気迫る勢いで繰り広げられるギター演奏のミニマリズムがかけあわさることにより,独特な内向きの渦のような凄まじいエネルギーが生み出される。

 

2002年というリリースされた年代を考えると、「A Man About A Horse」は、虐げられるチベットの民族、それから、チベット密教へのギター音楽を通しての「精神的な讃歌」ともとれなくもない。






・この作品の他にも、Steve Tibbettsがチベット仏教の尼僧Choying Drolmとコラボレーションを行った1997年の「Cho」では、Nagi寺院の尼僧たちのチベット語による美しい歌声を聴くことが出来る。

 

昨今のチベット・ウイグル自治区の情勢を鑑みると、今後、重要な歴史的資料ともなりえるかもしれない。

 

チベット周辺の文化の研究を行っている方には、密教のマントラのミュージックライブラリーと合わせて是非聴いてみていただきたい作品である。「Cho」は、Rikodiscというワーナー傘下のレーベル”Rhino"からリリースであるため、ここでは、取り上げないことをお許し願いたい。



Mitski

 

ミツキ・ミヤワキはニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライター。日本生まれで、アメリカ人と日本人のハーフである。

 

幼年期から父親の仕事の関係で、コンゴ共和国、マレーシア、中華人民共和国、トルコ、様々な国々を行き来する環境の中で育った。その後、ニューヨークに渡り、ニューヨーク州立大学バーチェス校で音楽を専攻、ベースメントショーをはじめとするパンクシーンでミュージシャンとしての経験を積んだ。

 

アメリカの音楽メディア”Pitchfork”は、楽曲「Your Best American Girl」Best New Trackに選出し、いち早くこのアーティストのスター性を見抜いた。その後、Rolling Stoneで知っておくべき10人のアーティストに選出され、シンガーソングライターとして注目を浴びる。スタジオ・アルバム「Puberty 2」はTime誌や主要な音楽メディアの「Best Album of 2016」に選出されている。2016年に行われたUSツアーは好評を博し、ニューヨーク、ボストン、フィラデルフィアの公演すべてソールドアウトとなった。

 

ミツキのサウンドを形作る上で欠かさざる人物は、 大学時代の友人であり、過去全てのタイトルに関わってきたパトリック・ハイランドである。これまで、すべての楽器を彼とミツキの二人で演奏し、ミキシング、マスタリング、ジャケットのデザインにいたるまですべてふたりで行ってきている。


また、日本人の母親の影響で、日本のJ-POPに深い造詣を持っており、影響を受けたアーティストに、松任谷由実、山口百恵、中島みゆきを挙げている。その他にも、インスパイアされたアーティストとして、M.I.A、Bjork,Mariah Carey、Mica Levi,Jeff Buckley、椎名林檎らを挙げている。

 

 


 

「Laurel Hell」 Dead Oceans


 







Tracklist

 

1.Valentine,Texas

2.Working for the Knife

3.Stay Soft

4.Everyone

5.Heat Lightning

6.The Only Heartbreaker

7.Love Me More

8.There's Nothing Left Here for You

9.Should've Been Me

10.I Guess

11.That's Our Lamp



アメリカ合衆国東部に自生する月桂樹のバラ、それは、美しい花弁と豊かな緑色の葉を有している。愛らしさと毒素を含み、枝分かれしているこの植物を、地元の人は「Laurel Hell」と呼んでいる。毒素を含んだ美しいバラ。それはミツキの新作の名にぴったりな表現と言えるでしょう。

 

日系アメリカ人シンガーソングライター、Mitskiは、前作「Be The Cowboy」をリリースするまもなく、音楽メディアから絶賛を浴び、ツアーに出た後、2019年の秋、一度は音楽業界からの引退を決意した。それは、ポピュラーシンガーソングライターとして過分な注目を浴びたことに依るものだった。

 

 

この時のことについて、Mitskiは、ローリング・ストーン誌のインタビューにおいて以下のように話しています。

 


「世界が私をこの立場においたとき、私は世間の関心と引き換えに、自分自身を犠牲にすることになる取引に応じたことに気がついていなかった」

 

 

こういった暗喩的な表現を使ったのには理由があり、ミツキは、熱狂的なファンがあまりに個人情報を得たいと望んでいることを感じ、それ以来、ソーシャルメディアを完全にシャットアウトし、世間の喧騒や注目から一定の距離をとることを望んだ。しかし、ミツキ・ミヤワキは音楽がみずからの人生にとって欠かさざるものと気が付くまでにはそれほど時間を要さなかった。

 

Mitskiの新作アルバム「Laurel Hell」に収録されている楽曲のほとんどは2018年以前に書かれ、COVID-19のパンデミックのロックダウン中に録音が行われた。その間、ミツキは世間から一定の距離をおいた。その制作背景を受けてか、以前の作風より内省的な思想が反映された作風となった。


アルバムは三十分の長さで驚くほど簡素なポップスで占められているため、以前からのミツキのファンはこの作品について刺激性が少し物足りないと考えるかも知れません。それでも、このアルバムで展開される1980年代のカルチャー・クラブ、デュラン・デュラン、ティアーズ・フォー・フィアーズといったディスコポップを彷彿とさせるミツキらしい妖艶な雰囲気を持った楽曲群は、聞き手に懐かしさを与えるとともに、癒やしさえもたらしてくれることは事実でしょう。

 

この作品では、ミュージックスターとして注目を浴びることへのミツキの戸惑い、大衆という得体のしれぬものに対する恐怖を克服しようとする試みが音楽を介して表現されているように感じられます。それは、言い換えるなら、ディスコポップ/シンセポップというキャッチーな形質を表向きには取りながらも、その深淵を覗き込んでみると、哲学的なメタファーに近い概念に彩られています。「Love Me More」「The Only Heartbreaker」「Stay Soft」といったシンセ・ポップの色合いが強い楽曲群は、表面上では親しみやすいポピュラー・ミュージックでありながら、その内奥には、音楽という抽象概念を通して、生々しい内的世界が描き出されているのです。

 

音楽というきわめて抽象的な世界において、ミツキは今回、内的な恐怖を克服しようとするべく、いくつかの楽曲制作において、歌をうたうこと、ミュージックビデオでバレエダンサーのように踊ることにより、大衆の注目や関心という見えづらい恐怖を乗り越えようと試みている。それは目に見えないものにやきもきする現代社会での生き様を反映しているようにも感じられます。

 

そして、この三十分というスタジオアルバムに収録されているポピュラー音楽は、そういった現代的な気風を反映しながら、ひとつらなりの妖艶な物語として進行していきます。山あり、谷あり、そういった幾つかの難所を乗り越えた先に見えるのが「I Guess」という、清涼かつ純粋な境地です。「I Guess」という、薄暗がりにまみれていた真実を見出した瞬間、このスタジオアルバム作品が世間の評判よりもはるかに傑出したものであることが理解できるのです。

 

2022年2月4日にインディーズレーベル”Dead Oceans”からリリースされた最新スタジオ・アルバムにおいて、ミツキ・ミヤワキは、世間の関心や評価を越えた、自分なりの答え、音楽を通して納得できる最終的な結論を見出したようにも思えます。それは、ミツキ自身がプレスに対して公式に語っているように、いくつかのドラマティックな物語の変遷、ときに、地獄的な苦しみを経巡りながら内省的な旅を続けたのち、「Laurel Hell」と銘打たれた音楽の物語は、その最後の最後で「勝ち負けとは関係のない、”愛”という純粋な感情」という抽象的結論へと帰結していくのです。

 

今回、アメリカ国内で最も期待される日系人シンガーソングライター、ミツキ・ミヤワキが提示した新たな概念は、この世には、勝ちや負けを超越した普遍的概念が存在するのだということをはっきりさせました。これは旧時代の概念が既に古びてしまったことの現出であり、このスタジオアルバムを聴くことは、苛烈な競争社会に生きる現代の人々にとって、癒やしや安らぎにも似た不思議な感覚を与えてくれるはずです。 


 

 

 



Circuit des Yeuxとして活動するシカゴのエクスペリメンタル・フォークの体現者、Haley Fohrは、2月3日、新作シングル「The Manatee(A Story Of This World PartⅢ)」をMatadorからリリースしました。

 

この作品は、昨年にリリースされたスタジオアルバム制作「-io」のセッション中に録音された楽曲となります。  



 

 

今回、Haley Fohrは、声明の中でこの新曲「Manatee」について、次のように述べています。

 

 

「2020年2月4日、マナティーが海から飛び出して、私のことをじっと見つめていたんです。

 

約十秒間。今回、その出来事について曲を書いてみました。ミュージックビデオにおいて、この映像作品の監督をつとめたルディ・ルビオ氏は、今回のシングルのコンセプトとして、映像の中に登場する私自身の姿をマナティーのようなキャラクターとして反映させています」

 

The Manatee」は、Cicuit Des YeuxのSteve Gunnのリミックス作「Nakama」に続くシングルリリースとなります。Haley Fohrは、4月6日、ロンドンコンテンポラリーオーケストラの五重奏を伴い、UK,ロンドンのバービカンにて、スペシャルショーを開催する予定です。インディー・フォークがお好きな方は是非是非チェックしていただきたい、ユニークなシングル作です。

 

 

 

 

・Matador Records Official

 

 https://www.matadorrecords.com/bands/view/324

 



「Untidy Soul」 Dorm Seven


Review


R&Bアーティストというのは、これまでのスターダムに上り詰める過程において、メジャーレーベルと契約を結び、その後、大掛かりなプロモーションを経て、ビックスターへの道のりを突き進んでいくのが定石だった。

 

けれども、今後、2020年代は、サム・ヘンショーのように、インディーズレーベルからタフな作品リリースを行い、根強いコアなファンを獲得していくというスタイルが主流になるかもしれない。

 

サム・ヘンショーは、2015年にUKコロンビアと契約したが、2020年からは独立したアーティストとしての活動を行っている。

 

サム・ヘンショーの「Untidy Soul」は彼の最初のスタジオアルバムであり、メジャーアーティストとしてリリースが叶わなかった悲しみ、そして、恋人との別れを経て、制作された実質的なデビュー作である。

 

一曲目の「Still No Album」は、上記のような経緯を踏まえての自虐的な意味合いが込められているように思えるが、このデビュー作はメジャーアーティストの作品の出来に引けを取るどころか、上回っている部分さえある。このアーティストの音感の良さ、そして、それをいかに現代的に聞きやすくするのか、歌手としてのセンスの良さが「Untidy Soul」では存分に発揮されている。

 

ここで、サム・ヘンショーが展開するモダン・ソウルは、彼の若い時代から聴き込んできたソウルミュージックの巨匠たち、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、それからオーティス・レディング、はては、サム・クックのサウンドの懐深さを踏襲している。ヘンショーの楽曲は付け焼き刃のものではなくて、本格派のソウルミュージックを継承しているともいえるのだ。

 

1970年代のアメリカ、デトロイト周辺のモータウンサウンドにしか求むべくもないノスタルジアにまみれた旋律の甘さ、メロウさ、まるで、楽曲そのものに酔いしれて歌うかのような「魂」がこの作品には随所に感じられる。もちろんこの作品は懐古主義を誇張するため生み出されたものではない。

 

そして、さらに素晴らしいのは、サム・ヘンショーは、ニューソウルの質感に加え、DJスクラッチを楽曲の中に取り入れ、ヒップホップ的なグルーヴ効果を加え、さらには、ジャズのインプロヴァイゼーションのような間奏曲をアルバムの合間に挿入し、作品全体の雰囲気をゴージャスに彩って見せている。


彼のメジャーアーティストとしての活躍がかなわなかったという思い、その悔しさをバネにし、それを、ソウルという華やいだ形に昇華し、今作は非の打ち所がないソウルミュージックに仕上がったといえる。

 

まだ2月の上旬ではあるが、2022年のソウルミュージックのリリースの中、注目すべき作品となることは間違いない。

 

 

 

 

Tracklist:

 

1.Still No Album

2.Thoughts and Prayers

3.Grow

4.Chicken Wings

5.Mr.Introvert

6.8.16

7.My Introvert-Reprise

8.Loved By You(feat.Tobe Nwigwe)

9.Take Time

10.Waterbreak

11.It Won't Change(feat.Maverick Sabre)

12.East Detroit

13. Enpugh

14.Keyon-Interlude

15.Still Broke(feat.Kayon Harrold)

16.Joy

 

 

Untidy Soul
Untidy Soul
Samm Henshaw
価格: 1,681円

posted with sticky on 2022.2.4



Samm Henshaw 


サミュエル・ヘンショーは、イギリス、ロンドンを拠点に活動するR&Bアーティスト。サウスロンドンのナイジェリア系の牧師の家庭に生まれ、若い時代から音楽に親しみ、教会内で楽器の演奏をおこない、音楽家としての土壌を培い、才覚を養った。

 

その後、サウサンプトン、ソレントでポピュラー音楽パフォーマンスの学位を所得。2015年にはコロンビアレコードとの契約に署名、一躍メジャーアーティストとして注目を浴び、BBCラジオ1のレギュラーポジションを獲得し、ジェイムス・ベイ、チャンス・ザ・ラッパーのツアーサポートに抜擢され、徐々に知名度を獲得していった。

 

2015年には、ウェイン・ヘクターやフレッド・コックスの協力を得て、デビューEP「The Sound Experiment」を発表。

 

2016年にはセカンドEP「The Sound Experiment 2」をリリースし、ミュージシャンとしてのキャリアが流れにのったと思われた矢先、UKコロンビアとの契約を終了した。その後、Sony Musicなどからのリリースを経て、2020年からインディーレーベルからのリリースを行っている。

 

Samm Henshawは、1970年代のニューソウルからの強い影響を公言している。スティーヴィー・ワンダー、マイケル・ジャクソン、 カーク・フランクリン、ローリン・ヒル、マーヴィン・ゲイ、などといった往年のR&Bアーティストの系譜を受け継いだ、古典的なソウルミュージックの色合いに加えて、ヒップホップ、ジャズの要素を交えたモダン・ソウルの体現者と言える。

 

2019年には、シングル「Church」が日本のトヨタの新型カローラのCMで使用されていた。その後、日本での来日公演が決定していたが、パンデミックにより公演がキャンセルとなっている。




バージニア州リッチモンド出身のSSW、ルーシー・ダカスは、2月2日に新曲のミュージックビデオ「Kissing Lessons」を公開した。このビデオはマラ・パレナ監督が制作を手掛けている。


この楽曲は、先週、ニューヨーク、ブルックリンにあるグリーンポイント・アヴェニュー駅の地下鉄構外に、「(804)409−4451に電話して下さい」と謎めいたチラシが張り出されており、上記のホットラインに電話を掛けると、ルーシー・ダカスの新曲が聴けてしまうというほとんどギャグみたいなプロモーションが行われていた。(実際、聴けたかどうかは不明)以下に掲載する画像が実際にNYの地下鉄構外に張り出されていたプロモーション用のチラシとなる。

 

「Kissing Lessons」は、子供の頃の恋愛について歌われたノスタルジーに溢れるシングル作である。この楽曲は、昨年のベスト盤として数々の著名なメディアに取り上げられた傑作「Home Video」のセッションの最中にレコーディングが行われた。「Kissing Lessons」は2曲収録の7インチビニール盤としてMatadorから発売予定で、公式サイトでプレオーダーが開始されている。

 

現在、ルーシー・ダカスは、Indigo De Souzaを帯同してのアメリカツアーを2月下旬から予定している。今回、「Kissing Lessons」は、アルバムの先行作品でなく限定シングルとしてリリースされる。 

 

 

 

 



Lucy Ducus 「Kissing Lessons」 Matador